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一章
第12話:階位上昇
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遠目からでも光る二本の柱が見え、それぞれ異なる光の挙動を示していた。赤く明滅する光が現れた瞬間、アイラは静かに解説した。「その明滅は、瀕死のサインよ。赤に変わったら全滅。すべてがダンジョンに吸収されてしまうの」
アイラの言葉通り、赤く光る支柱は数秒で元の乳白色に戻り、隣の支柱も消灯し、それが使用中であることを示した。悠人とリリスはそれぞれの支柱を注意深く観察しながら前に進んだ。
「さて、この入り口からダンジョンに入るわよ」とアイラが先導し、「リリス、行くか!」と悠人が後に続いた。「ええ、行きましょう」とリリスも同意し、共にその場を後にした。
彼らは石畳が敷かれた、滑らかな壁のある広大な空間に足を踏み入れた。天井は十メートルもの高さがあり、柔らかい光が全体を照らしていた。太い無骨な石の柱が連なっており、その間にはただ空間が広がっている。
「ここは敵が突然現れるから注意が必要ね。入ってから六十秒で湧いてくるから、準備をして」とアイラが警告した。悠人は即座にワンドペイジと審判のカードを手に取り、必殺技「神罰裁断」を準備した。
リリスが予知を活かして指示を出す。「悠人、アイラ。最初は正面から、次に左右から波状攻撃が来るわ」
「了解」と悠人が応じ、「了解よ」とアイラも返事をした。そして、突然現れる敵に対する戦いが始まった。
狼頭の人型獣が棍棒を手に叫びながら迫って来る。悠人は反射的に動き、最初の敵に素早く距離を詰めた。一撃で敵を地面に叩きつけ、爆裂音とともに敵を倒した。彼の動きは連続しており、次々と敵を倒していく。ローキックで敵の足を掬い、側頭部に掌底を打ち込んで脳梁を露わにする。
次の敵が棍棒を振り下ろすが、悠人は敏捷に避け、その勢いで敵を別の敵の棍棒に打ち付けた。さらに掌底を繰り出し、敵の背中を爆散させた。そして、続けざまに強烈な回し蹴りで敵の首と体を切り離し、その技巧を見せつけた。
背後からの攻撃にも即座に反応し、背負い投げで敵を地面に叩きつけた。別の敵が棍棒を水平に振り抜こうとすると、悠人は素早く避け、胸骨中央に掌底を打ち込んで敵を内部から爆散させた。八体目の敵が上段から攻撃を仕掛けてきた際、悠人は振り上げた腕の下を潜り抜け、瞬時に腹部に掌底を叩き込んだ。敵は苦悶の表情を浮かべながら横倒しになった。
九体目の敵が両腕を挙げて攻撃の構えを取る中、悠人はその隙を突いて顎に膝蹴りを食らわせた。蹴りの衝撃で敵の顎が跳ね上がると同時に、悠人は「神罰裁断!」と叫びながら最終的な一撃を放った。敵の頭部は瞬時に粉砕され、その場に倒れ伏した。
最後の敵が突進してきたところを、悠人は軽やかに右にステップを踏んで避け、右側面からその脇腹に掌底を繰り出し、敵を内部から爆破した。この連続した戦闘で、わずか数分間のうちに敵を一掃した悠人は、再び深呼吸をして周囲を警戒した。戦いの緊張が少し和らぎ、彼は次の挑戦に向けて心を整えた。
一方、アイラは広範囲にわたる魔法で敵を一掃していた。「暗黒卿!」と叫ぶと、その声と共に遠くの魔獣の足元から暗黒がわき起こり、魔獣たちは次々と闇に呑み込まれていった。この魔法により、彼女は接近する敵を容易に制圧していた。
「これで第一陣は片付いたわ。第二陣の準備を!」リリスの声が冷静に響く。悠人は「問題ない」と短く答え、その言葉には自信が篭もっていた。
突然、アイラが銀色の粒子に包まれた。「あれ? あれあれ?」と彼女は慌てふためく。これは階位の上昇の兆しだった。アイラは苦痛に耐えながらも、「くっ!」と息を呑み、自身を抱きしめるようにして膝を抱え込んだ。その間、ダンジョン全体が激しく揺れ、地響きが響き渡った。
やがて、アイラの背後の空間が裂け、彼女たちを滑り台のように外へと放出した。「ごめん」とアイラは謝罪したが、悠人は「いや、問題ない。むしろ、ちょうどいいタイミングだったな」と慰めた。「確かにそうね」とリリスも同意した。
「私がこんなタイミングで階位が上がるとはね……」アイラは少し肩の力を抜いて言った。悠人は彼女に向けて「そんなことない。とにかく、階位上昇おめでとう。大伯爵になるのか?」と明るく問うた。「ええ、そうよ。ありがとう、悠人」とアイラは微笑み、リリスも足元に集まって「おめでとう、アイラ」と彼女を労った。
「なんだ? これは?」悠人が地面に散らばる魔石に気付き、声を上げる。「これね、ダンジョンの中では拾えないの。戦いが終わると一斉に出現するのよ」とアイラが説明する。「他の者がいたら盗まれることはないのか?」と悠人が尋ねると、「うん、結界があって一定時間は誰も触れられないのよ。今のうちに拾っておきましょう」とアイラが促した。
周囲には宝箱は見当たらず、数十個の魔石が転がっているだけだった。リリスも一緒に魔石の回収を手伝い、「それにしても、こんな短時間でこれだけ集められるとはな……」と悠人が感心する。「そうね、これで金貨五百から六百は余裕で行くわね」とアイラが推測する。「それはすごいな……だからみんな、ここに入りたがるんだな」と悠人は納得した。
「そうよ。ほら、周りも順番待ちみたいになってきたでしょ。今回は待たずに済んでラッキーだったわ」とアイラが周囲を指し示すと、先ほどまで人気のなかった場所が、今では入場を待つ者たちで賑わっていた。様々な階位の募集看板が掲げられており、騎士一名募集や伯爵二名募集など、パーティーを組むための告知が目立つ。これらはいわゆる野良パーティーの募集であり、一時的なチームを組んで挑戦するスタイルだ。この世界では、戦利品の自動配分システムが存在せず、狩ったものがそのまま報酬となるため、公平な分配が求められる。
「今日はもう一回利用できないからな。丸一日待たないと再入場はできないから一旦戻るか」と悠人が話す。現在は十六層で、今回得られた戦利品が予想以上に多かったため、一度「ヴィルライベル」へ戻って現金化する計画を立てた。
宿屋に戻ると、彼らは食堂で食事をとりながらくつろいでいた。あのように生命を賭けた戦いがあったとは思えないほど、気が抜けた様子だった。常に神経を尖らせていると身が持たないから、たまにはこうして息を抜くことも必要だ。さらに、今は敵方も彼らが消えたと勘違いしているだろうから、なおさらリラックスできる状況だ。
金貨の買取では、総計で千二百枚が手に入り、彼らはそれを均等に三人で分けた。それぞれが四百枚ずつ受け取り、アイラは今回も「うん、勝利の美酒ね!」と満足げに言った。この町の酒場でさっそく祝杯をあげる悠人たち一行。アイラは変わらず酒を飲みご満悦で、悠人は肉を食べ、パンをかじりながらスープを飲み干した。いつも通りの彼の落ち着いた食事の様子が、平穏な時間の流れを感じさせる。
リリスは足元で寛ぎながら、二人の会話を楽しそうに聞いていた。アイラは悠人に感謝の言葉を述べ、「こんなに早く階位が上がるとは思わなかったわ」と再び話を戻す。「これでまた新しい挑戦ができるわね」と彼女は前向きに加えた。悠人も「それが探索者の醍醐味だからな」と笑いながら応じた。周りの景色が暗くなり始めたが、彼らのテーブルは暖かい灯りで照らされ、外の世界とは別の安らぎを提供していた。
この食事の時間は、彼らにとってただの休息以上の意味を持っていた。それは戦いからの回復、心の安定、そして次なる冒険への準備期間でもある。食堂の隅では他の冒険者たちも食事を楽しんでおり、彼らの話し声が背景に溶け込みながら、平和な夜がさらに深まっていった。
アイラの言葉通り、赤く光る支柱は数秒で元の乳白色に戻り、隣の支柱も消灯し、それが使用中であることを示した。悠人とリリスはそれぞれの支柱を注意深く観察しながら前に進んだ。
「さて、この入り口からダンジョンに入るわよ」とアイラが先導し、「リリス、行くか!」と悠人が後に続いた。「ええ、行きましょう」とリリスも同意し、共にその場を後にした。
彼らは石畳が敷かれた、滑らかな壁のある広大な空間に足を踏み入れた。天井は十メートルもの高さがあり、柔らかい光が全体を照らしていた。太い無骨な石の柱が連なっており、その間にはただ空間が広がっている。
「ここは敵が突然現れるから注意が必要ね。入ってから六十秒で湧いてくるから、準備をして」とアイラが警告した。悠人は即座にワンドペイジと審判のカードを手に取り、必殺技「神罰裁断」を準備した。
リリスが予知を活かして指示を出す。「悠人、アイラ。最初は正面から、次に左右から波状攻撃が来るわ」
「了解」と悠人が応じ、「了解よ」とアイラも返事をした。そして、突然現れる敵に対する戦いが始まった。
狼頭の人型獣が棍棒を手に叫びながら迫って来る。悠人は反射的に動き、最初の敵に素早く距離を詰めた。一撃で敵を地面に叩きつけ、爆裂音とともに敵を倒した。彼の動きは連続しており、次々と敵を倒していく。ローキックで敵の足を掬い、側頭部に掌底を打ち込んで脳梁を露わにする。
次の敵が棍棒を振り下ろすが、悠人は敏捷に避け、その勢いで敵を別の敵の棍棒に打ち付けた。さらに掌底を繰り出し、敵の背中を爆散させた。そして、続けざまに強烈な回し蹴りで敵の首と体を切り離し、その技巧を見せつけた。
背後からの攻撃にも即座に反応し、背負い投げで敵を地面に叩きつけた。別の敵が棍棒を水平に振り抜こうとすると、悠人は素早く避け、胸骨中央に掌底を打ち込んで敵を内部から爆散させた。八体目の敵が上段から攻撃を仕掛けてきた際、悠人は振り上げた腕の下を潜り抜け、瞬時に腹部に掌底を叩き込んだ。敵は苦悶の表情を浮かべながら横倒しになった。
九体目の敵が両腕を挙げて攻撃の構えを取る中、悠人はその隙を突いて顎に膝蹴りを食らわせた。蹴りの衝撃で敵の顎が跳ね上がると同時に、悠人は「神罰裁断!」と叫びながら最終的な一撃を放った。敵の頭部は瞬時に粉砕され、その場に倒れ伏した。
最後の敵が突進してきたところを、悠人は軽やかに右にステップを踏んで避け、右側面からその脇腹に掌底を繰り出し、敵を内部から爆破した。この連続した戦闘で、わずか数分間のうちに敵を一掃した悠人は、再び深呼吸をして周囲を警戒した。戦いの緊張が少し和らぎ、彼は次の挑戦に向けて心を整えた。
一方、アイラは広範囲にわたる魔法で敵を一掃していた。「暗黒卿!」と叫ぶと、その声と共に遠くの魔獣の足元から暗黒がわき起こり、魔獣たちは次々と闇に呑み込まれていった。この魔法により、彼女は接近する敵を容易に制圧していた。
「これで第一陣は片付いたわ。第二陣の準備を!」リリスの声が冷静に響く。悠人は「問題ない」と短く答え、その言葉には自信が篭もっていた。
突然、アイラが銀色の粒子に包まれた。「あれ? あれあれ?」と彼女は慌てふためく。これは階位の上昇の兆しだった。アイラは苦痛に耐えながらも、「くっ!」と息を呑み、自身を抱きしめるようにして膝を抱え込んだ。その間、ダンジョン全体が激しく揺れ、地響きが響き渡った。
やがて、アイラの背後の空間が裂け、彼女たちを滑り台のように外へと放出した。「ごめん」とアイラは謝罪したが、悠人は「いや、問題ない。むしろ、ちょうどいいタイミングだったな」と慰めた。「確かにそうね」とリリスも同意した。
「私がこんなタイミングで階位が上がるとはね……」アイラは少し肩の力を抜いて言った。悠人は彼女に向けて「そんなことない。とにかく、階位上昇おめでとう。大伯爵になるのか?」と明るく問うた。「ええ、そうよ。ありがとう、悠人」とアイラは微笑み、リリスも足元に集まって「おめでとう、アイラ」と彼女を労った。
「なんだ? これは?」悠人が地面に散らばる魔石に気付き、声を上げる。「これね、ダンジョンの中では拾えないの。戦いが終わると一斉に出現するのよ」とアイラが説明する。「他の者がいたら盗まれることはないのか?」と悠人が尋ねると、「うん、結界があって一定時間は誰も触れられないのよ。今のうちに拾っておきましょう」とアイラが促した。
周囲には宝箱は見当たらず、数十個の魔石が転がっているだけだった。リリスも一緒に魔石の回収を手伝い、「それにしても、こんな短時間でこれだけ集められるとはな……」と悠人が感心する。「そうね、これで金貨五百から六百は余裕で行くわね」とアイラが推測する。「それはすごいな……だからみんな、ここに入りたがるんだな」と悠人は納得した。
「そうよ。ほら、周りも順番待ちみたいになってきたでしょ。今回は待たずに済んでラッキーだったわ」とアイラが周囲を指し示すと、先ほどまで人気のなかった場所が、今では入場を待つ者たちで賑わっていた。様々な階位の募集看板が掲げられており、騎士一名募集や伯爵二名募集など、パーティーを組むための告知が目立つ。これらはいわゆる野良パーティーの募集であり、一時的なチームを組んで挑戦するスタイルだ。この世界では、戦利品の自動配分システムが存在せず、狩ったものがそのまま報酬となるため、公平な分配が求められる。
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宿屋に戻ると、彼らは食堂で食事をとりながらくつろいでいた。あのように生命を賭けた戦いがあったとは思えないほど、気が抜けた様子だった。常に神経を尖らせていると身が持たないから、たまにはこうして息を抜くことも必要だ。さらに、今は敵方も彼らが消えたと勘違いしているだろうから、なおさらリラックスできる状況だ。
金貨の買取では、総計で千二百枚が手に入り、彼らはそれを均等に三人で分けた。それぞれが四百枚ずつ受け取り、アイラは今回も「うん、勝利の美酒ね!」と満足げに言った。この町の酒場でさっそく祝杯をあげる悠人たち一行。アイラは変わらず酒を飲みご満悦で、悠人は肉を食べ、パンをかじりながらスープを飲み干した。いつも通りの彼の落ち着いた食事の様子が、平穏な時間の流れを感じさせる。
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