異界の黄金タロット - 死神猫と裏切り者の女神 -

雨井雪ノ介

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一章

第6話:(4/4)新たな力と運命(アイラとの出会)

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 アイラは少し息を整えると、はっきりとした口調で話し始めた。「ありがとうございます。先ほどは名乗りましたが、私はアイラ。回復魔法を使いこなし、攻撃魔法も扱えます」と自己紹介を改めて行う。悠人は少し驚いた表情を見せたが、すぐに礼儀正しく対応を切り替えた。

 悠人は微笑みながら、「さっきは助かりました。お礼を言う前に立ち去ってしまって失礼しました。感謝の意を表して、何かご馳走できればと思います。一緒に食事はいかがでしょうか?」と提案する。アイラは一瞬困惑の色を見せ、その表情には緊張が走ったが、すぐに微笑みが浮かび、心の中では安堵の気持ちが広がった。「こちらこそ、ありがとうございます。喜んでお付き合いします」と応じた。

 リリスが二人のやり取りを見て、「ちょうどいい場所があるわ。高級なステーキハウスよ。どう?」と提案し、二人を案内し始めた。歩いて数分後、彼らはリリスの説明通りにステーキを売り物にしているレストランに到着した。その外観は、悠人がかつていた世界のステーキハウスを彷彿とさせるものだった。

 店内に入ると、彼らは落ち着いた雰囲気の個室に通された。席に着くと、悠人は再び頭を下げて礼を述べた。「改めて、助かりました。本当にありがとうございます」と言うと、アイラは少し戸惑いながらも、「意外ね。あなたがあんなに力を見せつけた後で、こんなに礼儀正しいとは。でも、その態度がとても好感が持てます」と率直な感想を漏らした。悠人はシンプルに答えた。「恩義には礼節をもって応えるのが、俺の流儀ですから」と。

 このやり取りが二人の間に新たな理解と尊敬を生んだ。食事が進むにつれ、会話も弾み、これまでの緊張感が次第に和やかな雰囲気に変わっていく。それぞれの背景とこれからの道が、少しずつでも共有され始めていた。

 悠人は常に成長を重視し、その信念を胸に秘めていた。「自分自身を創造せよ」という言葉を生きがいとしているのだ。悠人は「俺はどんなことであれ、成長に重きを置いている。俺にとって『自分自身を創造せよ』これが最も優先される言葉であり信条だ」と彼は決意を新たにした。

 リリスはその言葉に心から感銘を受け、「自分自身を創造……ね。素敵な信念ね……感銘を受けたわ」と静かに呟いた。彼女の眼差しは、悠人の決意に深い敬意を表していた。

 アイラも同じように感じていた。アイラは「私もあなたと同行して成長したいわ。何より行方不明の兄を探しているの。もしあなたの旅に、何らかの助けになるなら、同行させて欲しいわ」と切実に頼んだ。その眼には期待と不安が交錯していた。

 悠人は彼女の提案を即座に受け入れ、「――わかった」と簡潔に答えた。彼の表情は冷静で、言葉には自信と決意が宿っていた。

 アイラは「え? 本当に? 即決なのね」と驚き、少し安堵の笑みを浮かべた。

 悠人は「ああ、先の行動がなんであれ、俺は助かったし、裏切れば命を刈り取るだけだ」と静かに言い、その言葉には厳然とした覚悟が込められていた。

 アイラは少し戸惑いを隠せずに、「そ、そう。そうならないように願うわ」と応じた。彼女の心中は複雑で、緊張と興奮が混在していた。

 悠人は任務についてさらに詳しく説明した。「詳しくはまた話すが、俺たちは依頼を受けている。とある悪意と悪徳を持った魂が高位貴族に宿ってしまい、暴虐の限りを尽くしている。それを討伐するのが俺の務めだ」と断言した。

 彼は手元に反応石を召喚し、アイラに見せた。「これは……」とアイラは過去に見たことがあるかのような表情で言った。

 悠人は「これについて何か知っているようだな。俺はこの反応石の導きに沿って移動している。今はまだ戦闘力を高めるため、階位を上げている段階だ」と説明した。

 アイラは彼の階位に興味を持ち、「そ、そうなのね……。ちなみに今私は伯爵よ。あなたは?」と問いかけた。

 悠人は「俺は、悠人だ。ユウでも悠人でも好きに呼んでくれ。俺は騎士に先ほどなったばかりだ」と淡々と答えた。

 アイラはその返答に驚き、「え! あの力の波動で?」と問い返した。彼女の声には驚きと尊敬が混じっていた。

 悠人は彼女の反応を静かに受け止め、「アイラがどのように感じたかは俺にはわからないが、事実だ」と簡潔に言った。

 リリスが会話に加わり、「ええ、そうよ。悠人はなったばかりなのよね」と彼の階位の新しさを強調した。

 アイラはさらに驚愕し、「騎士であの力なのね……」とつぶやきながら、悠人の持つ力の程度について考え込むようだった。彼女は思い切ってさらなる質問を投げかけた。「込み入ったことを聞いてしまうけど、もしかしてその依頼は何か悠人が恩義を受けたから?」と聞いた。

 悠人は彼女の洞察力を認め、「よくわかったな。その通りだ。恩義には礼節を持って報うのが主義だ」と真摯に答えた。

 アイラはその返答に心を動かされ、「そうなのね。わかったわ。私も可能な限り支援するわ」と固い決意を込めて言った。

 悠人はこれからの計画を話し始めた。「ああ、よろしく頼む。先に言っておくが、もしかすると奴隷が加わるかもしれない」と少し複雑な表情で付け加えた。

 アイラは少し首を傾げながら、「そう、いいんじゃないかしら? どんな奴隷なの?」と興味深そうに尋ねた。

 悠人は「ああ、一部の者しか知らないキーワードを言っていてな。それを確かめたい」と謎めいた言葉を投げかける。

 アイラは「そうなのね。明日からどうするの?」と次の行動について問い質した。

 悠人は「明日は、二十層と三十層のボスを討伐する」と言った。

 アイラはその言葉に目を見開き、「――え?」と驚きの声を上げた。

 悠人は再度「二十と三十のそれぞれの――」と続けると、アイラは急いで、「うん、それは聞いたわ。私が驚いたのは、このメンバーで挑むことよ?」と心配と不安が混じった声で言った。

 リリスが彼女を安心させるために介入し、「アイラ、大丈夫よ? 悠人は十層のボスを、階位が上がる前に一撃で仕留めているから問題ないわ」と説明した。

 アイラは心底驚き、「え? どういうこと? 悠人、あなたもしかして階位を取得前の状態で一撃で倒したの?」と再び驚き、問いかけた。

 悠人は「坊主がもし階位を取得前を指しているなら、そうだ」と静かに答えた。

 アイラは「もう……。あなたたちの発言で驚いていたら、気がもたないわ」と苦笑しながら言った。

 リリスは「アイラ、悠人の動きを見てから、どこで支援するか検討するといいわよ?」と提案した。

 アイラは「ええ、わかったわ。そうさせてもらうわね」と同意し、額に汗がにじんでいるのを感じながらも、一緒に成長していくことに対する高揚感を隠せなかった。

 悠人は「朝の鐘が鳴る頃にダンジョン前で集合だ」と言い、アイラは「本当にごちそうさま。こんなに美味しい料理を食べたのは久しぶりだわ!」と笑顔で応じ、互いに笑みを浮かべて、三人はその場を後にした。
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