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1章
第39話 焼印師
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「アルアゾンテ、待っている間に聞きたいことがある。焼印師と召喚師についてだ」
「その様子だと、ダンジョン最下層にある細工部屋にもいったのだな?」
「やはり、関与していたんだな。召喚師を隠れ蓑にして、焼印師が存在していたんだよな?」
「ああそうだ。汝のいう通りだ。付け加えるならば、焼印師の原点は紋章師だ」
「紋章師?」
「そうだ……。少し、昔の説明をしよう……」
アルアゾンテは焼印師の話だけでなく、その奥にある事柄を語り出した。内容は、俺の予想を超える物だった。
――我は、アルアゾンテ。元紋章師だ。
我は、焼印のまえに紋章師であった。
紋章の技術を永久に固定化するため焼印を用いて、付着させることを行ううちに、我らは焼印師と呼ばれるようになった。もともとは一時的な強化術として、用いていていた物だ。ところが事情があり、何度も重ねがけする方法ではなく、一度の施術で永久継続を可能にしたのが焼印だ。
思い起こせば、何とも懐かしい……。
当時、人族以外は皆、族長を中心にしてあたり前のように入れていた物だ。入れなければならない事情があったと言うべきかもしれない。外側の世界より現れる勇者族と魔獣と神族の対応に、追われていたからだ。人族は耐えられる者がおらず、希望者は例外なく死んだ。
一部成功した人族もおり、失敗する可能性が高いにかかわらず、以降後を絶たない。
失敗の衝撃が原因で、忌み嫌われる存在になったのかもしれない。
今でも道具さえあれば、我が施せる。残念ながら今は、その道具がない。一から作るとするならば、いくつか必要な物がある。材料さえ揃えれば、汝にもやって見よう。
悪魔化している時であるなら、失敗することはまずない。
ただ気をつけてくれ、巨大な力に対抗しようとするとまた、強大な力を呼び寄せてしまうことだ。
我らの歴史は、力で力に対抗してきたことに尽きる……。ゆえにこの紋章は、進化の予兆を残しておる。絶え間ない戦闘の中で、状況に対応するため、紋章自身が進化を促すのだ。
その現象を我らはこういう”紋化”と。
どのような進化をもたらすかは、その紋章次第だ。紋章にも個性があり、個々異なる。
現れる進化は、いわゆる爆発的な進化だ。ただし問題も抱えている。その進化を受け入れた者は
力と引き換えに、死ぬ。即死ではなく余命一ヶ月程度と言うところだろう。
ゆえに誰も残らなかった。そして今に至る。
我は進化を選択したけど、生き残った数少ない事例だ。力に溺れた者とやむを得ず選んだ者など、皆悩んだ理由はさまざまだ。残念ながら共通したことは、”進化”を選び結果、”滅んだ”。
もちろんあくまでも”多数”というだけで、進化を選んでも我のように死なずに済んだ者もいる。
何をもたらしたかというと、得た物は寿命だ。果てしない長さにまで伸び、いつが終わりかわからぬ。
言えるのは寿命が伸びたことにより、”力”に対抗する準備と対抗ができた。まったく崇高なものではない。単にやれる者が、限られているだけだ。やらなければ”終焉”を意味する。
終焉とは、この世界が得体のしれない者たちに食われることだ。
汝が抵抗したあの光球体もその内の一部だ。はじめは友好的に接してくる。ところが最終的にはすべて乗っ取られ制御されて、自身の意識存在は欠片ほどもなくなる。気がついた時は手遅れだ。
あの光の化け物は、そうした者たちのごく一部であり尖兵である。その背後には巨大な何かがおる。
汝の世界にいた女神たちは、おそらくその尖兵が変化した者の一部かもしれない。
勇者族の集団も同様に、どこかの世界から呼び寄せた者たちだろう。
結実は悲劇でしかない。
いずれこの悲劇の連鎖を止めるために、我ら自体が向こうの世界へ乗り込む必要があるやもしれぬ。
だが、今はまだその時ではない。多くの同士を集めることが重要だ。
だからこそ、あえて言おう。いや……聞こう。
"我らの同士にならぬか?"
下衆な言い方をすれば、その代わりエルの蘇生は保証しよう。
もちろん、今回の蘇生は元から事情は関係なくするつもりだ。ここで汝の心が陰るようなことはしたくないからのう。
――アルアゾンテの一人語りは終わった……。
俺の答えは決まっていた。
「アルアゾンテ、俺の答えは決まっている」
「うむ……」
「殲滅だ。塵芥残さずすべて消す。エミリーやかつての仲間たちの敵を打つ。そのために、焼印師を探していた。女神どもを消さない限りは、平穏など訪れやしない」
「そうだな……」
「だからと言ってすべて捨てるつもりはない。俺は、エルとリリーといずれ平穏に過ごしたい。ただ、それだけだ。同士になろう」
「わかった。あらめて言おう”同士”よ。汝を同士と認めよう」
互いに手を差し出し、手を握りしめた。どこか、思わず不敵な笑みを浮かべてしまう。
「一つ言い忘れていたぜ。顎骨指輪はお前だろ? 助かったぜ」
「わかっておったか……」
「ああ。”悪魔の子よ”なんてさ、後にも先にもアルアゾンテだけだぜ、そういうのは」
「なるほど、隠しきれんかったか。ハハハハ」
不器用な笑い方でアルアゾンテは笑う。
あとは、焼印に必要な材料の確保も急務だ。エルの蘇生に関わる条件もどうなるかは気になるところだ。
「その様子だと、ダンジョン最下層にある細工部屋にもいったのだな?」
「やはり、関与していたんだな。召喚師を隠れ蓑にして、焼印師が存在していたんだよな?」
「ああそうだ。汝のいう通りだ。付け加えるならば、焼印師の原点は紋章師だ」
「紋章師?」
「そうだ……。少し、昔の説明をしよう……」
アルアゾンテは焼印師の話だけでなく、その奥にある事柄を語り出した。内容は、俺の予想を超える物だった。
――我は、アルアゾンテ。元紋章師だ。
我は、焼印のまえに紋章師であった。
紋章の技術を永久に固定化するため焼印を用いて、付着させることを行ううちに、我らは焼印師と呼ばれるようになった。もともとは一時的な強化術として、用いていていた物だ。ところが事情があり、何度も重ねがけする方法ではなく、一度の施術で永久継続を可能にしたのが焼印だ。
思い起こせば、何とも懐かしい……。
当時、人族以外は皆、族長を中心にしてあたり前のように入れていた物だ。入れなければならない事情があったと言うべきかもしれない。外側の世界より現れる勇者族と魔獣と神族の対応に、追われていたからだ。人族は耐えられる者がおらず、希望者は例外なく死んだ。
一部成功した人族もおり、失敗する可能性が高いにかかわらず、以降後を絶たない。
失敗の衝撃が原因で、忌み嫌われる存在になったのかもしれない。
今でも道具さえあれば、我が施せる。残念ながら今は、その道具がない。一から作るとするならば、いくつか必要な物がある。材料さえ揃えれば、汝にもやって見よう。
悪魔化している時であるなら、失敗することはまずない。
ただ気をつけてくれ、巨大な力に対抗しようとするとまた、強大な力を呼び寄せてしまうことだ。
我らの歴史は、力で力に対抗してきたことに尽きる……。ゆえにこの紋章は、進化の予兆を残しておる。絶え間ない戦闘の中で、状況に対応するため、紋章自身が進化を促すのだ。
その現象を我らはこういう”紋化”と。
どのような進化をもたらすかは、その紋章次第だ。紋章にも個性があり、個々異なる。
現れる進化は、いわゆる爆発的な進化だ。ただし問題も抱えている。その進化を受け入れた者は
力と引き換えに、死ぬ。即死ではなく余命一ヶ月程度と言うところだろう。
ゆえに誰も残らなかった。そして今に至る。
我は進化を選択したけど、生き残った数少ない事例だ。力に溺れた者とやむを得ず選んだ者など、皆悩んだ理由はさまざまだ。残念ながら共通したことは、”進化”を選び結果、”滅んだ”。
もちろんあくまでも”多数”というだけで、進化を選んでも我のように死なずに済んだ者もいる。
何をもたらしたかというと、得た物は寿命だ。果てしない長さにまで伸び、いつが終わりかわからぬ。
言えるのは寿命が伸びたことにより、”力”に対抗する準備と対抗ができた。まったく崇高なものではない。単にやれる者が、限られているだけだ。やらなければ”終焉”を意味する。
終焉とは、この世界が得体のしれない者たちに食われることだ。
汝が抵抗したあの光球体もその内の一部だ。はじめは友好的に接してくる。ところが最終的にはすべて乗っ取られ制御されて、自身の意識存在は欠片ほどもなくなる。気がついた時は手遅れだ。
あの光の化け物は、そうした者たちのごく一部であり尖兵である。その背後には巨大な何かがおる。
汝の世界にいた女神たちは、おそらくその尖兵が変化した者の一部かもしれない。
勇者族の集団も同様に、どこかの世界から呼び寄せた者たちだろう。
結実は悲劇でしかない。
いずれこの悲劇の連鎖を止めるために、我ら自体が向こうの世界へ乗り込む必要があるやもしれぬ。
だが、今はまだその時ではない。多くの同士を集めることが重要だ。
だからこそ、あえて言おう。いや……聞こう。
"我らの同士にならぬか?"
下衆な言い方をすれば、その代わりエルの蘇生は保証しよう。
もちろん、今回の蘇生は元から事情は関係なくするつもりだ。ここで汝の心が陰るようなことはしたくないからのう。
――アルアゾンテの一人語りは終わった……。
俺の答えは決まっていた。
「アルアゾンテ、俺の答えは決まっている」
「うむ……」
「殲滅だ。塵芥残さずすべて消す。エミリーやかつての仲間たちの敵を打つ。そのために、焼印師を探していた。女神どもを消さない限りは、平穏など訪れやしない」
「そうだな……」
「だからと言ってすべて捨てるつもりはない。俺は、エルとリリーといずれ平穏に過ごしたい。ただ、それだけだ。同士になろう」
「わかった。あらめて言おう”同士”よ。汝を同士と認めよう」
互いに手を差し出し、手を握りしめた。どこか、思わず不敵な笑みを浮かべてしまう。
「一つ言い忘れていたぜ。顎骨指輪はお前だろ? 助かったぜ」
「わかっておったか……」
「ああ。”悪魔の子よ”なんてさ、後にも先にもアルアゾンテだけだぜ、そういうのは」
「なるほど、隠しきれんかったか。ハハハハ」
不器用な笑い方でアルアゾンテは笑う。
あとは、焼印に必要な材料の確保も急務だ。エルの蘇生に関わる条件もどうなるかは気になるところだ。
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