4 / 49
1章
第4話 生贄
しおりを挟む
「なんだったんだ?」
俺は空に掲げた手をおろした。
不意に舐められるような視線と殺気を感じて、咄嗟にダークボルトを放ってしまった。
正直、本能に近いぐらいの感覚だ。
あれは本当に何だったのかわからない。ただろくな物じゃないのは確かだろう。
どうにも魔力の馴染み方がおかしく感じる。少しずつ体の中が変わり、馴染みやすくはなりつつあるけどもまだまだだ。
当面は、今持ち合わせている力をうまく工夫して使うしかない。
そうなると、一気に行う殲滅戦は難しくなる。一体ずつ倒す必要があり、かなり手間がかかるのは間違いない。
今はまだ追手がいないし、アイツらに気がつかれていないだけだ。最悪、物量で押し切られるとかなりきつくなりそうだ。
今回探している焼印師と召喚師は、一体どこにいるのやらと、ため息が思わず出てしまう。
手がかりが、あるか無いかと問われればある。召喚師の方は、目印が比較的わかりやすい。
本当は先の町で、実践したかったところを、何やら怪しい視線を感じて止めた。
俺が聞いた話だと、人の魂を狩りまくっていると、この三人いずれかが現れるという。召喚師”ゴルドニア”・”ダルザード”・”アルアゾンテ”の三名だ。
そいつのもつ”ある物”を奪うのが最初の目的だ。それに悪魔の血を使い召喚すると、一度だけ門が現れそこから何者かを召喚できるという。
何が現れるかは、”運任せ”みたいなものらしい。
ただ、かなり強力な力が手に入るとのことだ。
ところが誰も興味を示さないのは、普通は読まない古い書物の話で、お伽話程度だと思われたんだろう。
こいつらは単純に三体いるから、三回召喚できると考えたらいい。さらにもう一人いるらしい情報はあるけども、詳細は不明だ。そいつについては、気にしても仕方ないので無視しておく。
大事なことは追手に気がつかれず、さらに先のおかしな視線からも逃れながら、次の町を目指す必要がある。しかも召喚が完了するまで、慎重にする必要がある。
「難儀だな……」
思わず声が漏れてしまう。
次の町まではまだある。俺は可能な限り人目につかぬように、移動をしていた。
事前にギャルソンから転生先の大体の地理的位置は聞いていたので、あらかじめ調べておいたのが功を奏したのかもしれない。
町をでてからというもの、あれからまとわりつく視線は、まったく感じない。
やはり、監視があったと見るべきだろう。もしくは、潜伏先が被った別の悪魔かもしれない。ただし、神族の連中は可能性が低いだろう。
仮にそうだとしたら、少し早めた方がよさそうだ。奴らが来る前に最低でも一回は召喚して、力を入手しておきたい。
その前に、焼印師が先に見つかれば、何の問題もない。
ただことは、それほどうまくは進まないだろう。それこそ、見つかったら処置をしてもらったのち、奴らと殲滅戦だ。その時は、今度はこちら側がすぐに乗り込みたいぐらいだ。
俺はこうして、考えごとをしながら、道なき道を進んでいく。
恐らくあの視線の持ち主は、俺のことを見失ったと見えるので今のうちに距離は稼いでおきたいと思いさらに昼夜を問わず突き進んだ。
――五日目の昼
「それなりの広さか?……」
天然の城壁が整えられた町で、自然と切り落とされた岩肌の裂け目を埋めるように門が存在する。
よく見ると門の柱には、どこかで見た奴らの彫像が掘り込まれていた。
ああ。あれは神族の奴の姿だ。
つまりここは、信者がいる町の可能性がある。
ただし、神族の気配は何一つない。
気だるさを感じながら、俺はひとまず列に並んで、入場をまつことにした。
そういえば俺は、ドッグタグのような物が、手元にあったことを思いだす。もともとこの体の持ち主の物だ大いに使わせてもらうとしよう。
身分証を尋ねられて、このタグを渡すと何か水晶に掲げられる。とくに変化はなくこのまま通される。
はじめて持ち主関連で、役に立った瞬間だ。
門を抜けたそこは、噴火口ような形でまるでカルデラの作りだった。
壁面をくりぬき住居にしているのを見ると、出入り口さえふさげばかなり合理的に思えた。
そう、今夜はここで行うとしよう。
ーー数刻後
すでに夜のとばりがおりて、あたりは暗くなる。ちらほらと生活のためのあかりはともる程度だ。
昼間のうちに下調べした結果でいえば、やはり出入り口はあの門一つだけだ。
門番はすでに心臓を撃ち抜いている。あとは門を破壊するだけだ。
「ダークボルト!」
頭上の岩を破壊すると轟音と共に、岩肌が崩れ落ちて門が塞がってしまう。
これで誰も脱出などできなくなった瞬間だ。
ちょうどよく何事かと人々は家から出てくる。
「おいおいこりゃひでーな。兄ちゃん大丈夫か?」
「……」
「グボっふ」
ひと突きでこときれた。
さあ宴のはじまりだ。
「ダークボルト!」
俺は空に掲げた手をおろした。
不意に舐められるような視線と殺気を感じて、咄嗟にダークボルトを放ってしまった。
正直、本能に近いぐらいの感覚だ。
あれは本当に何だったのかわからない。ただろくな物じゃないのは確かだろう。
どうにも魔力の馴染み方がおかしく感じる。少しずつ体の中が変わり、馴染みやすくはなりつつあるけどもまだまだだ。
当面は、今持ち合わせている力をうまく工夫して使うしかない。
そうなると、一気に行う殲滅戦は難しくなる。一体ずつ倒す必要があり、かなり手間がかかるのは間違いない。
今はまだ追手がいないし、アイツらに気がつかれていないだけだ。最悪、物量で押し切られるとかなりきつくなりそうだ。
今回探している焼印師と召喚師は、一体どこにいるのやらと、ため息が思わず出てしまう。
手がかりが、あるか無いかと問われればある。召喚師の方は、目印が比較的わかりやすい。
本当は先の町で、実践したかったところを、何やら怪しい視線を感じて止めた。
俺が聞いた話だと、人の魂を狩りまくっていると、この三人いずれかが現れるという。召喚師”ゴルドニア”・”ダルザード”・”アルアゾンテ”の三名だ。
そいつのもつ”ある物”を奪うのが最初の目的だ。それに悪魔の血を使い召喚すると、一度だけ門が現れそこから何者かを召喚できるという。
何が現れるかは、”運任せ”みたいなものらしい。
ただ、かなり強力な力が手に入るとのことだ。
ところが誰も興味を示さないのは、普通は読まない古い書物の話で、お伽話程度だと思われたんだろう。
こいつらは単純に三体いるから、三回召喚できると考えたらいい。さらにもう一人いるらしい情報はあるけども、詳細は不明だ。そいつについては、気にしても仕方ないので無視しておく。
大事なことは追手に気がつかれず、さらに先のおかしな視線からも逃れながら、次の町を目指す必要がある。しかも召喚が完了するまで、慎重にする必要がある。
「難儀だな……」
思わず声が漏れてしまう。
次の町まではまだある。俺は可能な限り人目につかぬように、移動をしていた。
事前にギャルソンから転生先の大体の地理的位置は聞いていたので、あらかじめ調べておいたのが功を奏したのかもしれない。
町をでてからというもの、あれからまとわりつく視線は、まったく感じない。
やはり、監視があったと見るべきだろう。もしくは、潜伏先が被った別の悪魔かもしれない。ただし、神族の連中は可能性が低いだろう。
仮にそうだとしたら、少し早めた方がよさそうだ。奴らが来る前に最低でも一回は召喚して、力を入手しておきたい。
その前に、焼印師が先に見つかれば、何の問題もない。
ただことは、それほどうまくは進まないだろう。それこそ、見つかったら処置をしてもらったのち、奴らと殲滅戦だ。その時は、今度はこちら側がすぐに乗り込みたいぐらいだ。
俺はこうして、考えごとをしながら、道なき道を進んでいく。
恐らくあの視線の持ち主は、俺のことを見失ったと見えるので今のうちに距離は稼いでおきたいと思いさらに昼夜を問わず突き進んだ。
――五日目の昼
「それなりの広さか?……」
天然の城壁が整えられた町で、自然と切り落とされた岩肌の裂け目を埋めるように門が存在する。
よく見ると門の柱には、どこかで見た奴らの彫像が掘り込まれていた。
ああ。あれは神族の奴の姿だ。
つまりここは、信者がいる町の可能性がある。
ただし、神族の気配は何一つない。
気だるさを感じながら、俺はひとまず列に並んで、入場をまつことにした。
そういえば俺は、ドッグタグのような物が、手元にあったことを思いだす。もともとこの体の持ち主の物だ大いに使わせてもらうとしよう。
身分証を尋ねられて、このタグを渡すと何か水晶に掲げられる。とくに変化はなくこのまま通される。
はじめて持ち主関連で、役に立った瞬間だ。
門を抜けたそこは、噴火口ような形でまるでカルデラの作りだった。
壁面をくりぬき住居にしているのを見ると、出入り口さえふさげばかなり合理的に思えた。
そう、今夜はここで行うとしよう。
ーー数刻後
すでに夜のとばりがおりて、あたりは暗くなる。ちらほらと生活のためのあかりはともる程度だ。
昼間のうちに下調べした結果でいえば、やはり出入り口はあの門一つだけだ。
門番はすでに心臓を撃ち抜いている。あとは門を破壊するだけだ。
「ダークボルト!」
頭上の岩を破壊すると轟音と共に、岩肌が崩れ落ちて門が塞がってしまう。
これで誰も脱出などできなくなった瞬間だ。
ちょうどよく何事かと人々は家から出てくる。
「おいおいこりゃひでーな。兄ちゃん大丈夫か?」
「……」
「グボっふ」
ひと突きでこときれた。
さあ宴のはじまりだ。
「ダークボルト!」
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
ファンタジー
いつだってボクはボクが嫌いだった。
弱虫で、意気地なしで、誰かの顔色ばかりうかがって、愛想笑いするしかなかったボクが。
もうモブとして生きるのはやめる。
そう決めた時、ボクはなりたい自分を探す旅に出ることにした。
昔、異世界人によって動画配信が持ち込まれた。
その日からこの国の人々は、どうにかしてあんな動画を共有することが出来ないかと躍起になった。
そして魔法のネットワークを使って、通信網が世界中に広がる。
とはいっても、まだまだその技術は未熟であり、受信機械となるオーブは王族や貴族たちなど金持ちしか持つことは難しかった。
配信を行える者も、一部の金持ちやスポンサーを得た冒険者たちだけ。
中でもストーリー性がある冒険ものが特に人気番組になっていた。
転生者であるボクもコレに参加させられている一人だ。
昭和の時代劇のようなその配信は、一番強いリーダが核となり悪(魔物)を討伐していくというもの。
リーダー、サブリーダーにお色気担当、そしてボクはただうっかりするだけの役立たず役。
本当に、どこかで見たことあるようなパーティーだった。
ストーリー性があるというのは、つまりは台本があるということ。
彼らの命令に従い、うっかりミスを起こし、彼らがボクを颯爽と助ける。
ボクが獣人であり人間よりも身分が低いから、どんなに嫌な台本でも従うしかなかった。
そんな中、事故が起きる。
想定よりもかなり強いモンスターが現れ、焦るパーティー。
圧倒的な敵の前に、パーティーはどうすることも出来ないまま壊滅させられ――
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる