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1章

第4話 生贄

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「なんだったんだ?」

 俺は空に掲げた手をおろした。
不意に舐められるような視線と殺気を感じて、咄嗟にダークボルトを放ってしまった。
正直、本能に近いぐらいの感覚だ。

 あれは本当に何だったのかわからない。ただろくな物じゃないのは確かだろう。

 どうにも魔力の馴染み方がおかしく感じる。少しずつ体の中が変わり、馴染みやすくはなりつつあるけどもまだまだだ。

 当面は、今持ち合わせている力をうまく工夫して使うしかない。
 そうなると、一気に行う殲滅戦は難しくなる。一体ずつ倒す必要があり、かなり手間がかかるのは間違いない。

 今はまだ追手がいないし、アイツらに気がつかれていないだけだ。最悪、物量で押し切られるとかなりきつくなりそうだ。

 今回探している焼印師と召喚師は、一体どこにいるのやらと、ため息が思わず出てしまう。
手がかりが、あるか無いかと問われればある。召喚師の方は、目印が比較的わかりやすい。

 本当は先の町で、実践したかったところを、何やら怪しい視線を感じて止めた。

 俺が聞いた話だと、人の魂を狩りまくっていると、この三人いずれかが現れるという。召喚師”ゴルドニア”・”ダルザード”・”アルアゾンテ”の三名だ。

 そいつのもつ”ある物”を奪うのが最初の目的だ。それに悪魔の血を使い召喚すると、一度だけ門が現れそこから何者かを召喚できるという。

 何が現れるかは、”運任せ”みたいなものらしい。
ただ、かなり強力な力が手に入るとのことだ。

 ところが誰も興味を示さないのは、普通は読まない古い書物の話で、お伽話程度だと思われたんだろう。

 こいつらは単純に三体いるから、三回召喚できると考えたらいい。さらにもう一人いるらしい情報はあるけども、詳細は不明だ。そいつについては、気にしても仕方ないので無視しておく。

 大事なことは追手に気がつかれず、さらに先のおかしな視線からも逃れながら、次の町を目指す必要がある。しかも召喚が完了するまで、慎重にする必要がある。

「難儀だな……」

 思わず声が漏れてしまう。

 次の町まではまだある。俺は可能な限り人目につかぬように、移動をしていた。
事前にギャルソンから転生先の大体の地理的位置は聞いていたので、あらかじめ調べておいたのが功を奏したのかもしれない。

 町をでてからというもの、あれからまとわりつく視線は、まったく感じない。

 やはり、監視があったと見るべきだろう。もしくは、潜伏先が被った別の悪魔かもしれない。ただし、神族の連中は可能性が低いだろう。

 仮にそうだとしたら、少し早めた方がよさそうだ。奴らが来る前に最低でも一回は召喚して、力を入手しておきたい。
 
 その前に、焼印師が先に見つかれば、何の問題もない。

 ただことは、それほどうまくは進まないだろう。それこそ、見つかったら処置をしてもらったのち、奴らと殲滅戦だ。その時は、今度はこちら側がすぐに乗り込みたいぐらいだ。

 俺はこうして、考えごとをしながら、道なき道を進んでいく。

 恐らくあの視線の持ち主は、俺のことを見失ったと見えるので今のうちに距離は稼いでおきたいと思いさらに昼夜を問わず突き進んだ。

――五日目の昼

「それなりの広さか?……」

 天然の城壁が整えられた町で、自然と切り落とされた岩肌の裂け目を埋めるように門が存在する。
よく見ると門の柱には、どこかで見た奴らの彫像が掘り込まれていた。

 ああ。あれは神族の奴の姿だ。
つまりここは、信者がいる町の可能性がある。
ただし、神族の気配は何一つない。

 気だるさを感じながら、俺はひとまず列に並んで、入場をまつことにした。

 そういえば俺は、ドッグタグのような物が、手元にあったことを思いだす。もともとこの体の持ち主の物だ大いに使わせてもらうとしよう。

 身分証を尋ねられて、このタグを渡すと何か水晶に掲げられる。とくに変化はなくこのまま通される。
はじめて持ち主関連で、役に立った瞬間だ。

 門を抜けたそこは、噴火口ような形でまるでカルデラの作りだった。
壁面をくりぬき住居にしているのを見ると、出入り口さえふさげばかなり合理的に思えた。

 そう、今夜はここで行う・・としよう。

 ーー数刻後

 すでに夜のとばりがおりて、あたりは暗くなる。ちらほらと生活のためのあかりはともる程度だ。
昼間のうちに下調べした結果でいえば、やはり出入り口はあの門一つだけだ。
門番はすでに心臓を撃ち抜いている。あとは門を破壊するだけだ。

「ダークボルト!」

 頭上の岩を破壊すると轟音と共に、岩肌が崩れ落ちて門が塞がってしまう。
これで誰も脱出などできなくなった瞬間だ。

 ちょうどよく何事かと人々は家から出てくる。

「おいおいこりゃひでーな。兄ちゃん大丈夫か?」

「……」

「グボっふ」

 ひと突きでこときれた。

 さあ宴のはじまりだ。

「ダークボルト!」
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