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久遠の時の先……。
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玉響は不意に見えた映像に目を瞬いた。基本的に玉響に占術の才はないのだが、稀に見える映像は必ず起こる未来の事象だった。不意に見えたので、本当に、最初は意味が分からなかった。しかし、見えたのは灯璃であるので、千樹の眷属であるのだから玉響が見てもおかしくはない。しかし、その映像の意味が少しばかり分からなかった。灯璃の側に一人の少年の姿が見えたのだ。少年と言っていいのか分からないほどの微妙な年齢に見えた。
「玉響様、如何されました?」
「あ、頗梨さん。実は変なモノが脳裏に浮かんで……」
あれを変と解釈するのは可笑しいのか、と玉響は困惑する。
「先見ですか?」
「如何でしょう? 灯璃様は見た目が変わりませんし、もう一人には認識がありませんし」
「灯璃様なのですか?」
「はい。でも、何となくですが、僕と千樹様とも縁がある様な気がするんです」
玉響の言葉に頗梨は首を傾げる。
「それは兆し、だと思う」
そう言ってきたのは玉音だ。まだまだ見た目は少年である。しかし、その魂は玉響の父親である貴彬である。
「兆し?」
「不意に見えたのなら、先見や占術ではない。だから、おそらく、主様達と灯璃様にとって必ず起こるべき事象で、回避出来ない兆し、であると言い切れると思う」
玉響は頗梨と顔を見合わせた。千樹に問い掛けてみたいが、あいにくと留守である。瓊音を伴い、妖桜の元まで行っている。何故なら、妖桜が二人を呼び付けたからだ。千樹は不機嫌も顕に、仕方なく重い腰を上げていた。今も昔も千樹は厄介事を好まないが、勝手に色々な厄介事が飛んでくるので仕方ないとも言えた。玉響はそんな千樹が心配であり、これ以上の厄介ごとを拾わない様に結界の中で大人しくしている事にしていた。
「うーん。見えた感じでは少年は人間だと思うんです。何かしらの力は持ってるみたいだけど、そこは正確には分かりません」
「妖桜が主様と瓊音を主様から離したのは、それを見せるためだと思いますね」
玉音の言葉に玉響と頗梨は更に首を傾げる。つまり、二人がいては見ることが叶わない映像だということになる。
「え?」
「主様達は力が強すぎるんです。そのお陰で縄張りは強い力と結界に守られ、多くの動植物は安穏と生きていられるのですが」
「でも、千樹様がいる時も、見える時は見えるけど?」
「ええ。それはあくまで主様達に直接関係があるものだけですよね」
玉音の言っていることは間違えていない。確かに、玉響が普段見るものは千樹と玉響に直接関係があるものだ。灯璃の関係の映像が頭の中で像を結ぶこともあるが、それはあくまで千樹と玉響に直接関係がある事象だ。
「それって、僕達に直接関係ないけど……」
「接点はある、と考えるのが自然かと」
玉響は思う。流石、父親である貴彬の魂を持つ存在だと。では、玉音の言葉が真実であるとして、玉響の脳裏を掠めた像の意味するところは何なのか。玉響は像の内容を考えてみる。本当に日常を切り取った様な映像なのだ。おそらく、その場面は出会い、であると考えられた。何せ、灯璃は草原のど真ん中で尻尾と妖力を隠して日向ぼっこをしているのだ。妖としては如何なのかと思う。人に見付かりでもしたら、はっきりきって面倒である。灯璃は時々、不用意な行動をとる傾向があった。
「僕達に関係あるけど、直接の関係はなくて」
「いつかは受け入れなくてはいけない事象、そんな感じではないでしょうか?」
玉響の中である出来事がパッと思い浮かんだ。千樹が握り潰した穢れた神だ。禍つ神となり、結局は、その姿を保てなくなった。そして、天照は言っていたではないか。千樹の眷属となる。灯璃は表向きは千樹の友人の立ち位置だが、正確には眷属である。瓊音も前の世では千樹の眷属であったが、今は玉響の眷属となっている。
「そう言えば、彼の神もそろそろ復活される時期でしょうか?」
「神ではなくなっていると思いますけど。別の命となる為の時だったと考えるべきであると思いますが、主様に霧散されてるので、少なくとも、主様の影響は受けていると思います」
千樹と玉響の影響を受けている、とは如何考えれば正解なのだろうか。玉響は更に首を傾げた。
「主様は水と炎を操りますが……」
そう言った玉音は玉響に視線を向ける。
「主様は見る力がお強い。つまり、どちらかの能力を少なからず継いでるかと推察します」
それは喜ぶべきなのか、悲観するべきなのか。玉響は考える。九尾狐である千樹と芙蓉は言い換えるなら、相手が見付かり、力が安定したと考えられる。千樹に至っては、前の世で付いていた聖獣すら身に宿してしまっている。それで更に力が安定するという、まさに規格外の存在だが内面は全く変わっていない。面倒見のいい、妖とは思えない性格である。芙蓉は玉響を守る為に命を失い、夫となった貴彬と共に新たな体を与えられた。血肉から誕生していない為、ある意味、玉響並みに狙われているのだが、中身が黒狐九尾の芙蓉と、稀代の陰陽師であった貴彬である為、返り討ちにしているのが現状である。つまり、狙われているが、甚振りまくっているのである。
「うーん。でも、あの見えてる子が本当にあの、禍つ神なのかな。本当にただの人間の男の子に見えるんだけど」
確かに少しばかり変わった感じは受ける。灯璃をしっかり認識している時点で、普通ではない。しかし、そこは玉響である。玉響の基準ではそこは普通に分類されてしまう。
「どの様な場面が見えたのですか?」
玉音は玉響が普通の感覚でないことに気が付いている。何故なら、千樹が玉響が見たものに意見を言う場合、それを考慮しているからだ。千樹は前の世からそのままの生を紡いでいる。獣と妖の違いはあれど、一般的な人間の生活に根差した常識を持っている。だが、玉響は陰陽師の一族として生まれ、行動の全てに両親が付き添っていた。人間の常識に疎い芙蓉との行動が多かったせいなのか、時々、考え及ばない様な答えをたどり着いたりするのである。
「灯璃様が日向ごっこしてました」
「え?」
「気持ちよさそうでしたよ。そこに少年が現れて……」
「待って下さい。その、灯璃様が誰に見つかるかも分からない場所で、陽の光を浴びてらしたのですか?」
玉音の問いに、玉響は首を振った。灯璃がいたのはおそらくかなりの山奥である。多分だが、自分の縄張り内であろう。それくらいなら、物知らずの玉響でも分かっている。妖、しかも金狐九尾狐が人間に見つかる様な場所で無防備にはしていないだろう。
「おそらく、ご自分の縄張りだと思います。人が入り込んでいる様な感覚はないですし。でも……」
「緊張感なく、陽の光を浴びてらしたと」
玉響は頷いた。玉音は額に右手を当てて溜め息を一つ吐いた。緊張感がないにも程があるではないか。確かに、今の人間が妖を見る能力を低下させているとは言え、絶対ではないのだ。しかも、見えなくなったせいなのか、人間はありとあらゆる場所に手を伸ばし始めている。灯璃が縄張りとし、結界を張っている場所とて例外ではない。
「ほう。そんなものを見せる為に、俺と玉響を引き離したと?」
いきなり聞こえてきた声に玉響は視線を向けた。そこにいたのは、壮絶な笑みを浮かべた千樹だ。腕を組み目を細めている。
「千樹様! お帰りなさいませ!」
「ああ。妖桜が秘蔵の酒をくれたが、こんな物では足りなくはないか?」
千樹は玉響が何かを見る事を歓迎していない。それは少なからず負担になるからだ。
「玉音、お前は如何考える?」
千樹の問いに玉音は思案する。玉音は前の世の記憶はなくとも、陰陽師であった時の知識はしっかりと残っていた。術も普通に扱えるのである。
「兆しですね。おそらく、最高神様が干渉したのでは?」
「天照か?」
「ええ。彼の神が次の生の準備に入ったのではないでしょうか」
「厄介な。眷属はいらんとあれ程っ」
千樹の呟きに苦笑いが漏れる。玉音にしても頗梨にしてもである。瓊音はただ、コロコロと笑うだけだ。
「主様、いくら文句を言おうと、そんな物、笑い飛ばすのが彼の方だと思うえ」
瓊音は何とも楽しそうだ。物言いも前の世と寸分違わぬ。千樹が困ると嬉しそうに笑みを浮かべる。千樹も性格を分かっているのか否定はしない。
「でも、これは何時時期の話なのでしょうか? 春であるのは分かるんですけど」
「おそらく、その見えたモノはかなり未来の話だろうな」
千樹の言葉に一同は首を傾げた。おそらく、見せはしたが、対応せよ、という事ではないだろう。
「何故ですか?」
「もし仮にだが、玉響が考える様に禍つ神であったとしよう。玉響が次の命を授かるまでに少なくとも一千年だ。仮に、玉響の様に力を持つのではなく、ただ命として次の生の準備に入ったのなら、見えたモノはもう少しで現実となる事象だろうな」
しかし、灯璃が最初に見えたのなら、何か意味があるのだ。
「でも、何故、灯璃なのだ?」
「千樹様。もしかして、灯璃様の番となられると言う兆しではないでしょうか?」
玉響とて半信半疑だ。千樹は目を見開いた。
「僕の見立てでは、灯璃様の力は安定していません」
九尾狐として、本人が気が付いていないだけで、実はかなり不安定なのである。ムラがかなりあり、時々、体調も崩している様に見えた。つまり、何かしらの理由で妖力が体内で滞っているのだろう。理由は本当に分からないのだが。
「まあ、確かに、とくに最近は眠ってる事が多いとは言っていたか」
千樹の言葉に一同は目を見開く。
「まさか、陽の光を浴びてらしたと言うのは?」
頗梨が疑問を投げかける。
「陽の光を浴びるだと?」
「はい。僕が見えたモノは、灯璃様の日向ぼっこのモノでした!」
千樹は少し考え、吹き出した。齢千年を超えた妖狐が陽の光を浴びているのだ。正に天照にその姿を晒しているのに等しいのである。
「まあ、報告を待とうじゃないか」
千樹は喉の奥で笑いながら、そんな事を呟いた。
「玉響様、如何されました?」
「あ、頗梨さん。実は変なモノが脳裏に浮かんで……」
あれを変と解釈するのは可笑しいのか、と玉響は困惑する。
「先見ですか?」
「如何でしょう? 灯璃様は見た目が変わりませんし、もう一人には認識がありませんし」
「灯璃様なのですか?」
「はい。でも、何となくですが、僕と千樹様とも縁がある様な気がするんです」
玉響の言葉に頗梨は首を傾げる。
「それは兆し、だと思う」
そう言ってきたのは玉音だ。まだまだ見た目は少年である。しかし、その魂は玉響の父親である貴彬である。
「兆し?」
「不意に見えたのなら、先見や占術ではない。だから、おそらく、主様達と灯璃様にとって必ず起こるべき事象で、回避出来ない兆し、であると言い切れると思う」
玉響は頗梨と顔を見合わせた。千樹に問い掛けてみたいが、あいにくと留守である。瓊音を伴い、妖桜の元まで行っている。何故なら、妖桜が二人を呼び付けたからだ。千樹は不機嫌も顕に、仕方なく重い腰を上げていた。今も昔も千樹は厄介事を好まないが、勝手に色々な厄介事が飛んでくるので仕方ないとも言えた。玉響はそんな千樹が心配であり、これ以上の厄介ごとを拾わない様に結界の中で大人しくしている事にしていた。
「うーん。見えた感じでは少年は人間だと思うんです。何かしらの力は持ってるみたいだけど、そこは正確には分かりません」
「妖桜が主様と瓊音を主様から離したのは、それを見せるためだと思いますね」
玉音の言葉に玉響と頗梨は更に首を傾げる。つまり、二人がいては見ることが叶わない映像だということになる。
「え?」
「主様達は力が強すぎるんです。そのお陰で縄張りは強い力と結界に守られ、多くの動植物は安穏と生きていられるのですが」
「でも、千樹様がいる時も、見える時は見えるけど?」
「ええ。それはあくまで主様達に直接関係があるものだけですよね」
玉音の言っていることは間違えていない。確かに、玉響が普段見るものは千樹と玉響に直接関係があるものだ。灯璃の関係の映像が頭の中で像を結ぶこともあるが、それはあくまで千樹と玉響に直接関係がある事象だ。
「それって、僕達に直接関係ないけど……」
「接点はある、と考えるのが自然かと」
玉響は思う。流石、父親である貴彬の魂を持つ存在だと。では、玉音の言葉が真実であるとして、玉響の脳裏を掠めた像の意味するところは何なのか。玉響は像の内容を考えてみる。本当に日常を切り取った様な映像なのだ。おそらく、その場面は出会い、であると考えられた。何せ、灯璃は草原のど真ん中で尻尾と妖力を隠して日向ぼっこをしているのだ。妖としては如何なのかと思う。人に見付かりでもしたら、はっきりきって面倒である。灯璃は時々、不用意な行動をとる傾向があった。
「僕達に関係あるけど、直接の関係はなくて」
「いつかは受け入れなくてはいけない事象、そんな感じではないでしょうか?」
玉響の中である出来事がパッと思い浮かんだ。千樹が握り潰した穢れた神だ。禍つ神となり、結局は、その姿を保てなくなった。そして、天照は言っていたではないか。千樹の眷属となる。灯璃は表向きは千樹の友人の立ち位置だが、正確には眷属である。瓊音も前の世では千樹の眷属であったが、今は玉響の眷属となっている。
「そう言えば、彼の神もそろそろ復活される時期でしょうか?」
「神ではなくなっていると思いますけど。別の命となる為の時だったと考えるべきであると思いますが、主様に霧散されてるので、少なくとも、主様の影響は受けていると思います」
千樹と玉響の影響を受けている、とは如何考えれば正解なのだろうか。玉響は更に首を傾げた。
「主様は水と炎を操りますが……」
そう言った玉音は玉響に視線を向ける。
「主様は見る力がお強い。つまり、どちらかの能力を少なからず継いでるかと推察します」
それは喜ぶべきなのか、悲観するべきなのか。玉響は考える。九尾狐である千樹と芙蓉は言い換えるなら、相手が見付かり、力が安定したと考えられる。千樹に至っては、前の世で付いていた聖獣すら身に宿してしまっている。それで更に力が安定するという、まさに規格外の存在だが内面は全く変わっていない。面倒見のいい、妖とは思えない性格である。芙蓉は玉響を守る為に命を失い、夫となった貴彬と共に新たな体を与えられた。血肉から誕生していない為、ある意味、玉響並みに狙われているのだが、中身が黒狐九尾の芙蓉と、稀代の陰陽師であった貴彬である為、返り討ちにしているのが現状である。つまり、狙われているが、甚振りまくっているのである。
「うーん。でも、あの見えてる子が本当にあの、禍つ神なのかな。本当にただの人間の男の子に見えるんだけど」
確かに少しばかり変わった感じは受ける。灯璃をしっかり認識している時点で、普通ではない。しかし、そこは玉響である。玉響の基準ではそこは普通に分類されてしまう。
「どの様な場面が見えたのですか?」
玉音は玉響が普通の感覚でないことに気が付いている。何故なら、千樹が玉響が見たものに意見を言う場合、それを考慮しているからだ。千樹は前の世からそのままの生を紡いでいる。獣と妖の違いはあれど、一般的な人間の生活に根差した常識を持っている。だが、玉響は陰陽師の一族として生まれ、行動の全てに両親が付き添っていた。人間の常識に疎い芙蓉との行動が多かったせいなのか、時々、考え及ばない様な答えをたどり着いたりするのである。
「灯璃様が日向ごっこしてました」
「え?」
「気持ちよさそうでしたよ。そこに少年が現れて……」
「待って下さい。その、灯璃様が誰に見つかるかも分からない場所で、陽の光を浴びてらしたのですか?」
玉音の問いに、玉響は首を振った。灯璃がいたのはおそらくかなりの山奥である。多分だが、自分の縄張り内であろう。それくらいなら、物知らずの玉響でも分かっている。妖、しかも金狐九尾狐が人間に見つかる様な場所で無防備にはしていないだろう。
「おそらく、ご自分の縄張りだと思います。人が入り込んでいる様な感覚はないですし。でも……」
「緊張感なく、陽の光を浴びてらしたと」
玉響は頷いた。玉音は額に右手を当てて溜め息を一つ吐いた。緊張感がないにも程があるではないか。確かに、今の人間が妖を見る能力を低下させているとは言え、絶対ではないのだ。しかも、見えなくなったせいなのか、人間はありとあらゆる場所に手を伸ばし始めている。灯璃が縄張りとし、結界を張っている場所とて例外ではない。
「ほう。そんなものを見せる為に、俺と玉響を引き離したと?」
いきなり聞こえてきた声に玉響は視線を向けた。そこにいたのは、壮絶な笑みを浮かべた千樹だ。腕を組み目を細めている。
「千樹様! お帰りなさいませ!」
「ああ。妖桜が秘蔵の酒をくれたが、こんな物では足りなくはないか?」
千樹は玉響が何かを見る事を歓迎していない。それは少なからず負担になるからだ。
「玉音、お前は如何考える?」
千樹の問いに玉音は思案する。玉音は前の世の記憶はなくとも、陰陽師であった時の知識はしっかりと残っていた。術も普通に扱えるのである。
「兆しですね。おそらく、最高神様が干渉したのでは?」
「天照か?」
「ええ。彼の神が次の生の準備に入ったのではないでしょうか」
「厄介な。眷属はいらんとあれ程っ」
千樹の呟きに苦笑いが漏れる。玉音にしても頗梨にしてもである。瓊音はただ、コロコロと笑うだけだ。
「主様、いくら文句を言おうと、そんな物、笑い飛ばすのが彼の方だと思うえ」
瓊音は何とも楽しそうだ。物言いも前の世と寸分違わぬ。千樹が困ると嬉しそうに笑みを浮かべる。千樹も性格を分かっているのか否定はしない。
「でも、これは何時時期の話なのでしょうか? 春であるのは分かるんですけど」
「おそらく、その見えたモノはかなり未来の話だろうな」
千樹の言葉に一同は首を傾げた。おそらく、見せはしたが、対応せよ、という事ではないだろう。
「何故ですか?」
「もし仮にだが、玉響が考える様に禍つ神であったとしよう。玉響が次の命を授かるまでに少なくとも一千年だ。仮に、玉響の様に力を持つのではなく、ただ命として次の生の準備に入ったのなら、見えたモノはもう少しで現実となる事象だろうな」
しかし、灯璃が最初に見えたのなら、何か意味があるのだ。
「でも、何故、灯璃なのだ?」
「千樹様。もしかして、灯璃様の番となられると言う兆しではないでしょうか?」
玉響とて半信半疑だ。千樹は目を見開いた。
「僕の見立てでは、灯璃様の力は安定していません」
九尾狐として、本人が気が付いていないだけで、実はかなり不安定なのである。ムラがかなりあり、時々、体調も崩している様に見えた。つまり、何かしらの理由で妖力が体内で滞っているのだろう。理由は本当に分からないのだが。
「まあ、確かに、とくに最近は眠ってる事が多いとは言っていたか」
千樹の言葉に一同は目を見開く。
「まさか、陽の光を浴びてらしたと言うのは?」
頗梨が疑問を投げかける。
「陽の光を浴びるだと?」
「はい。僕が見えたモノは、灯璃様の日向ぼっこのモノでした!」
千樹は少し考え、吹き出した。齢千年を超えた妖狐が陽の光を浴びているのだ。正に天照にその姿を晒しているのに等しいのである。
「まあ、報告を待とうじゃないか」
千樹は喉の奥で笑いながら、そんな事を呟いた。
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読んでいて楽しくなりました。毎日が楽しみになります。