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銀の鳥籠Ⅱ マシロ&アサギ編
007 囲いと卵
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精霊王を見送って、自宅に戻る。この時間、本来なら母さんは子供を育てる為にある場所にいる。敷地内ではあるんだけど。
母さんは俺を見ると少し目を見開いて、駆け寄って来た。そして、傷付いている頰に触れる。その時にスッと何かが頰から消えた。あれか。まさか……。
「全く。少しは気を付けろ」
やっぱり、あの傷。ただの傷じゃなかったのか。母さんの浄化力は魔法使い一だからな。母さんは黒髪黒瞳、象牙色の肌。今は若干育った感じだけど、見た目が本当に若い。本人は否定してるけど、叔母のツバキより確実に見た目は若い。でもって、言葉使いが悪い。俺の言葉が微妙なのは確実に母さんのせいだ。でも、教師にはそこそこ、敬語は使える。母さんは出来ないけど。
「ベニを貸してくれる?」
「ベニが納得すれば問題ねえ」
「 二人に卵を作って貰うから。その後の作業もね」
それを聞いた母さんの頭の上を陣取ってた火の鳥。見た目は雛なんだけど。ぽってり感は雛とはかなり違う。そのベニが一鳴きすると元のサイズに戻りアサギの左肩に鎮座。ベニは伸縮自在なんだ。つまり、俺がクレナイか。クレナイはベニの母親で、サイズは変わらない。
何処からともなくやってきた魔狼のキンとギン。キンは体毛が金色で瞳が水色。ギンは体毛が銀色で瞳が薄い紫。元冥界の門の番人の眷属。今は妖魔界との穴の上にある門の番人をしてる。何でも母さんの魔力の影響で冥界に帰れなかったんだとか。母さんの持つ浄化力は半端じゃないから。
父さんに促されて、卵を作る建物内に移動する。移動する時に外は通らない。魔法省にあるエレベーターと同じ原理で繋がってる。唯一違うのは、生活している屋敷と、子供達を育てている建物の地下が、繋がっていることだ。
「クレナイはマシロだよ。ベニはアサギに呪文を教えて」
「キュウ!」
いきなりの事態に、アサギが若干、挙動不審だ。本来使い魔は、主人でない魔法使いに意思疎通は出来ない。呪文もだ。でも、クレナイとベニは聖獣だ。だから、それも可能だと父さんと母さんは俺で知ることになったんだ。
「本当に僕がするの?」
「当たり前だろう。実は父さんと母さんは仕事が多くて。俺がどちらかの代わりをしてたんだけど」
そうなんだよな。二人は無理してたんだよな。役職が多すぎなんだ。兄弟もいるけど。まだまだ幼い。でも俺は、父さんの魔力の変な能力は引き継いでる。つまりは、一族の家業にする為の能力だよな。禁書を読めて、尚且つ、間違った箇所を訂正する。大変な仕事だ。母さんも時々してる。
「魔法省の方でアサギの銀行口座をうちの銀行口座に変える手続きがされたよ。これが新しい鍵」
アサギは驚いたように父さんを見上げる。それは、今日で一族を離れるという事だ。アサギは小さく息を呑み、元々持っていた銀行の鍵である指輪を外して父さんに渡した。そして、新しい鍵を元の場所に嵌ると魔法で隠した。
「早いと思うかもしれないけど、種を宿した以上、仕方ないんだ」
「はい」
「勿論、今まで通り向こうの実家に帰るのは問題ないよ。ライカとも話してるからね」
アサギは納得したように頷く。精霊王に会ってるし。後には引けないと分かってるんだろうけど。
「採集の仕事だけど、今まで通りしてもらって構わないから。ただ、此方の仕事で魔法省から給料が支払われる。それは認識しておいて」
「はい」
「それと、おそらくだけど、マシロと循環の魔法を使うと種の影響で知識を共有すると思う。卒業後は禁書庫の勤務と卵の魔法使いとしての仕事があると思って。他の時間を採集の仕事に当ててもらえたら問題ないから」
うわ。もう囲った形になるんだ。
「マシロは少し過激な行動は……」
「父さんに言われたくない。入学した後、どれだけ聞かされたと思ってるの?」
俺が反撃すると父さんが肩を落とした。自分を棚上げするのは問題だと思うよ。
「それで今日は何個?」
「三つだよ。その後、魔法省の方で遺伝子投入の儀式。魔法省の方には連絡済みだから」
「分かった」
俺はアサギの腕を取って、建物の中心に足を向ける。視線をベニに向けると、分かっていると一鳴きした。俺の左肩に鎮座したクレナイも一鳴き。そして、キンはアサギに、ギンは俺の足元に落ち着く。
「杖出して」
「うん」
俺とアサギは深呼吸すると魔法の詠唱を開始する。父さんと母さんと作る時と感覚が若干違う。でも、馴染んだ感じだ。不思議だけど。
展開される魔法陣。二つの魔法陣に重なるように中央に小さい魔法陣が現れる。体の中にある種が干渉を開始する。何時もと同じだ。
中央の魔法陣に三つの力の塊。二人で杖を振ると鶏の卵に似た姿が現れる。それを、籐の籠で受け止めた。アサギはそれを驚いたように見詰める。そして、ベニは父さんの頭の上で、ポンっと音がしそうな勢いで、いつものサイズに変わった。クレナイも父さんの左肩に移動する。
ベニは母さんがいないと父さんの頭の上に鎮座するようになったんだよ。多分、母さんの近くに行くとそっちに移動するんだろうけど。
「こんな風に作られてるんだ」
アサギは俺に近付いて来て感動してる。
「これで終わりじゃない。父さん、魔法省に行ってくる」
「頼んだよ。今日は三組だけど、アサギが慣れ始めたら、二人に完全に頼むから」
「分かった」
父さんはそう言うと、二羽の火の鳥と二匹の魔獣を連れて出て行った。禁書庫の仕事に戻ったんだ。父さんのその姿を二人で見送った。
母さんは俺を見ると少し目を見開いて、駆け寄って来た。そして、傷付いている頰に触れる。その時にスッと何かが頰から消えた。あれか。まさか……。
「全く。少しは気を付けろ」
やっぱり、あの傷。ただの傷じゃなかったのか。母さんの浄化力は魔法使い一だからな。母さんは黒髪黒瞳、象牙色の肌。今は若干育った感じだけど、見た目が本当に若い。本人は否定してるけど、叔母のツバキより確実に見た目は若い。でもって、言葉使いが悪い。俺の言葉が微妙なのは確実に母さんのせいだ。でも、教師にはそこそこ、敬語は使える。母さんは出来ないけど。
「ベニを貸してくれる?」
「ベニが納得すれば問題ねえ」
「 二人に卵を作って貰うから。その後の作業もね」
それを聞いた母さんの頭の上を陣取ってた火の鳥。見た目は雛なんだけど。ぽってり感は雛とはかなり違う。そのベニが一鳴きすると元のサイズに戻りアサギの左肩に鎮座。ベニは伸縮自在なんだ。つまり、俺がクレナイか。クレナイはベニの母親で、サイズは変わらない。
何処からともなくやってきた魔狼のキンとギン。キンは体毛が金色で瞳が水色。ギンは体毛が銀色で瞳が薄い紫。元冥界の門の番人の眷属。今は妖魔界との穴の上にある門の番人をしてる。何でも母さんの魔力の影響で冥界に帰れなかったんだとか。母さんの持つ浄化力は半端じゃないから。
父さんに促されて、卵を作る建物内に移動する。移動する時に外は通らない。魔法省にあるエレベーターと同じ原理で繋がってる。唯一違うのは、生活している屋敷と、子供達を育てている建物の地下が、繋がっていることだ。
「クレナイはマシロだよ。ベニはアサギに呪文を教えて」
「キュウ!」
いきなりの事態に、アサギが若干、挙動不審だ。本来使い魔は、主人でない魔法使いに意思疎通は出来ない。呪文もだ。でも、クレナイとベニは聖獣だ。だから、それも可能だと父さんと母さんは俺で知ることになったんだ。
「本当に僕がするの?」
「当たり前だろう。実は父さんと母さんは仕事が多くて。俺がどちらかの代わりをしてたんだけど」
そうなんだよな。二人は無理してたんだよな。役職が多すぎなんだ。兄弟もいるけど。まだまだ幼い。でも俺は、父さんの魔力の変な能力は引き継いでる。つまりは、一族の家業にする為の能力だよな。禁書を読めて、尚且つ、間違った箇所を訂正する。大変な仕事だ。母さんも時々してる。
「魔法省の方でアサギの銀行口座をうちの銀行口座に変える手続きがされたよ。これが新しい鍵」
アサギは驚いたように父さんを見上げる。それは、今日で一族を離れるという事だ。アサギは小さく息を呑み、元々持っていた銀行の鍵である指輪を外して父さんに渡した。そして、新しい鍵を元の場所に嵌ると魔法で隠した。
「早いと思うかもしれないけど、種を宿した以上、仕方ないんだ」
「はい」
「勿論、今まで通り向こうの実家に帰るのは問題ないよ。ライカとも話してるからね」
アサギは納得したように頷く。精霊王に会ってるし。後には引けないと分かってるんだろうけど。
「採集の仕事だけど、今まで通りしてもらって構わないから。ただ、此方の仕事で魔法省から給料が支払われる。それは認識しておいて」
「はい」
「それと、おそらくだけど、マシロと循環の魔法を使うと種の影響で知識を共有すると思う。卒業後は禁書庫の勤務と卵の魔法使いとしての仕事があると思って。他の時間を採集の仕事に当ててもらえたら問題ないから」
うわ。もう囲った形になるんだ。
「マシロは少し過激な行動は……」
「父さんに言われたくない。入学した後、どれだけ聞かされたと思ってるの?」
俺が反撃すると父さんが肩を落とした。自分を棚上げするのは問題だと思うよ。
「それで今日は何個?」
「三つだよ。その後、魔法省の方で遺伝子投入の儀式。魔法省の方には連絡済みだから」
「分かった」
俺はアサギの腕を取って、建物の中心に足を向ける。視線をベニに向けると、分かっていると一鳴きした。俺の左肩に鎮座したクレナイも一鳴き。そして、キンはアサギに、ギンは俺の足元に落ち着く。
「杖出して」
「うん」
俺とアサギは深呼吸すると魔法の詠唱を開始する。父さんと母さんと作る時と感覚が若干違う。でも、馴染んだ感じだ。不思議だけど。
展開される魔法陣。二つの魔法陣に重なるように中央に小さい魔法陣が現れる。体の中にある種が干渉を開始する。何時もと同じだ。
中央の魔法陣に三つの力の塊。二人で杖を振ると鶏の卵に似た姿が現れる。それを、籐の籠で受け止めた。アサギはそれを驚いたように見詰める。そして、ベニは父さんの頭の上で、ポンっと音がしそうな勢いで、いつものサイズに変わった。クレナイも父さんの左肩に移動する。
ベニは母さんがいないと父さんの頭の上に鎮座するようになったんだよ。多分、母さんの近くに行くとそっちに移動するんだろうけど。
「こんな風に作られてるんだ」
アサギは俺に近付いて来て感動してる。
「これで終わりじゃない。父さん、魔法省に行ってくる」
「頼んだよ。今日は三組だけど、アサギが慣れ始めたら、二人に完全に頼むから」
「分かった」
父さんはそう言うと、二羽の火の鳥と二匹の魔獣を連れて出て行った。禁書庫の仕事に戻ったんだ。父さんのその姿を二人で見送った。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
魔法使いのいる世界、大好きです。卵から孵化はかなりビックリしましたが、数日で一気読みしました。
続きも楽しみにしています。
閲覧ありがとうございます。
実はこのお話は、ブログ機能で読んでくださってる方の意見を取り入れつつ書いたものでした。
卵は完全に私の趣味と勢いの産物ですが、楽しんでいただけて嬉しいです。
もう少し続く予定ですが、お付き合いいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。