銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅱ マシロ&アサギ編

006 種と世界樹

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 あの後、クレナイに手紙を託した。どうやら父さんは、直ぐに来てくれたらしく、彼奴の中の繋がりという痕跡は消してもらえたみたいだ。で、彼奴はと言うと、なるべく俺には近寄らない選択をしたらしい。うん。無言で魔法使ったからな。当たり前の反応だ。
 
 そして、学校が休みの日。許可を貰ってアサギと共に自宅へ帰った。帰る時、魔法省経由でなのが若干、面倒。面倒だけど入口が魔法省内の、特殊な場所だからな。魔法省の裏口みたいな場所で、殆ど誰にも会わない。
 
 直接自宅の屋敷に到着。父さんは到着するのを待ってくれていた。そして、連れてこられたのは桜の樹の下。自宅の屋敷の敷地内にある桜で、桜の精霊がいる。どうして桜の樹なんだ?
 
「頼むよ」
『珍しいね。ユグドラシルと積極的に関わるなんて』
「緊急事態だからね」
 
 桜の樹の精霊が柔らかく微笑むと、すっ、と姿を消した。何時見ても綺麗な色なんだ。髪が綺麗な桜色で。瞳は茶色なんだけど。そして、現れたのは長い緑の髪と茶の瞳の精霊。あれ、体の中の何かが脈打った。その後に桜の精霊が姿を現わす。
 
『精霊と妖精達から聞いてる。おいで』
 
 そう言って手招きされたのは何故か俺。なんで俺?! アサギだろう?! 疑問を持ちつつ目の前まで行ったけど。何か逆らったらヤバい感じだし。
 
『左手を上に向けて』
 
 はい。従います。精霊王が俺の左手の平に手を重ねる。そうしたら、手の平に熱が集まる。体内から現れたのは胡桃に似た種だ。本当に保管されてる。聞いてはいたけど、半分、信じてなかった。乾いた笑いが漏れそう。
 
『流石、二人の子だね。増えてる』
「増えるものなの?」
 
 父さんが腕を組んで問い掛ける。精霊王は小さく頷いた。
 
『勿論。増える事で、卵を作るのが楽になるんだよ。まあ、増えれば増えるだけ、魔力が強くなる』
 
 ……これ以上、強い魔力は要らないんだけど。十分以上の魔力を両親から受け継いでんだけど。
 
『それに、新たな種はこの地に馴染まない。君達の中で増えた種しか使えないよ』
 
 精霊王はそう言うとアサギを呼んだ。アサギはと言うと、初めて目にする精霊王に萎縮してる。まあ、俺も初めて見たけど。
 
『君はこの子の伴侶になる。だから、手を貸すよ。だからこそ、この子の種を宿す。あくまで種の主は血筋であるこの子だ。もし、成人した時、循環の魔法が使われなければ種は消える。忘れないで』
「……はい」
 
 アサギは左手の平を差し出すように言われ、素直に従った。精霊王はと言えば、慈愛に満ちた笑みを俺達に向ける。そして、俺の中にあった種をアサギの手の平に押し込んだ。種は抵抗なくアサギに飲み込まれる。
 
『それで、犯人の見当は付いてるの?』
「そこまでは。ただ、マシロが探る過程で攻撃を受けてる」
 
 精霊王の問いに、父さんは何とも言えない顔で答えた。みんながあの人って呼んでる人は魔法省の地下にいる。出るのは無理に近い。封印したのは母さんで、その後、結界を強化したのが両親。魔法使いに一目を置かれる二人だ。しかも、火の鳥と魔狼の力も利用してる。
 
『そうだね。精霊達は動いてるし、妖精達も王達に命令を受けているよ』
「それでも分からない?」
『そう。鍵の魔法使いに聞いたのかい?』
「綻びがあるなどあり得ない、そう言われたよ」
 
 そこは鍵の魔法使いの矜持だよ。否定するに決まってる。
 
『じゃあ、私から一つ。折角、あの場所から呼び出してくれたからね』
 
 精霊王はそう言うと、父さんの前で右手の人差し指を立てる。
 
『魔法学校には一つ綻びがあるよ。随分昔、鍵の魔法使いの一人の能力が低くてね。認めたくはないんだろうけど』
 
 それは言い換えるなら、今は不足ない鍵の魔法使い達が結界を維持してる。でも、その時に小さな綻びが出来ていた。出来ている事を鍵の魔法使い達は知らない。知らなければ綻びは綻んだまま。
 
「綻びがある?」
『そうだね。その綻びから、操った学生を魔法学校内に送り出せば、後は操つる魔法で思い通りに動かせる。それも、綻びがあるから成せる技だよ』
 
 待ってくれ。つまり、魔法学校の結界にある綻びを見付けて補修しないと同じ事が繰り返されるの。
 
「調べてみるよ」
『そうして。この場所は利用される訳にはいかないでしょう。下手をすると、この場所に世界樹を転移させられる』
「目的はこの場所じゃなくて、世界樹だと?」
『そこまでは。一つの可能性だよ。何せ、元々、世界樹はこの森にあったからね』
 
 精霊王はそう言うと姿を消した。今、さらっと凄い秘密を明かしていったよ。世界樹があった土地って。そりゃ、強い力を持ってるよ。他の土地より強い筈だよ。
 
 ほら、父さんまで吃驚してる。アサギは……。どんな様子か確認したら固まってた。
 
 
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