銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

201 役職名とバスケット

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 ユエは時々、男とは思えないような行動をとる。で、大抵付き合わされるのはオレなんだよな。まず、ユエといて問題視しない存在がオレだけって言うことが困るんだって。
 
 で、ユエはトウヤに突進して行き、寮の部屋に入る許可を取り付けた。まあ、トウヤもユエと言うより、ライカが怖かっただけだよな。半分表情が引き攣っていたのは、ユエの後ろに控えていた、ライカの表情が怖かったからだよな。あの、顔は微笑んでいて、赤い瞳だけで威嚇してるんだから器用だよ。もう、キンとギンが変化する前の睨みつけたような目に似てるのがタチ悪いって。
 
「本当に行く気かよ」
「当たり前! セイトにお祝いを言わないと!」
 
 言葉だけ聞けば、何てことはないと思う。でもな、ユエのは完全に面白がってると思うんだよ。
 
「それに、サクヤが持ってるバスケット。どうしたんだ?」
「ルイが持って行けって。どうせ、セイトは何も食べてないだろうからって」
 
 苦笑いを浮かべて渡してきたルイ。最初からオレが付き合わされるのが分かってたみてぇだ。ちなみに、オレとユエも昼は食べてないからさ。特Aに用意された昼食の中から、持ち運んでも問題ない食べ物を入れてた。サンドイッチとか、マフィンとか。果物とかデザートとかも入れてたな。やたらと楽しそうだったけどさ。
 
「セイトのだけ?」
「そんなわけないだろう。セイト一人が食べるには量が多いと思うけど」
 
 俺が持ってるバスケットはかなり大きい。それに加え、ルイが入らないとか呟いて、中を魔法で広げてたからかなりの量が入ってるんだよ。下手したら三人で食べきれるかも謎だ。
 
「学校の食事って異常に美味しいしさ」
 
 これは本当のことだ。下手なレストランとかで食べるより美味しいんだって。
 
「それはそうだよ。一流の腕を持つシェフが作ってるんだから。特Aクラスと特別寮だけだけどさ」
 
 へ? オレ、普通クラスの食事も美味いって思ってたけど。
 
「気が付いてないんだ」
「クチバさんの料理はピカイチ」
 
 誤魔化すのにクチバさんの名前を出してみた。
 
「あそこの料理は本当に美味しいよ。会長用に作られた親御さんの作ったのも絶品だったし。でも、今はそこじゃないだろう」
 
 言われなくてもわかってるって。照れ隠しだろう! そうか、シェフのランクも特Aだけ上なのか。舌ばっかり肥えるだろうが。
 
「まあ、そこは横に置いておいて」
「誤魔化すし」
「着いたんだから、その話は終わりだって」
 
 風紀委員長の部屋はルイとライカの部屋の一階下。この階にあるのは生徒会書記と会計、風紀委員長と副委員長の四部屋。最上階は生徒会会長と副会長の二部屋だけだ。広さ的に最上階の半分の広さかなぁ、とか考えていたオレが甘かった。部屋の鍵はトウヤから預かったから勝手に入れる。入って吃驚だよ。同じくらいの広さがあって。乾いた笑いしかでねぇよ。
 
「どうして、こう、無駄に広いんだよ」
「特別寮は昔に造られた建物だから。最近建てられた普通寮は合理的に造られてるんだ。四階より下はここの三分の一くらいの広さだって」
「それってライカが教えてくれたのか?」
「そう。って、サクヤ、名前呼びできるようになってる」
「スパルタ、ルイだからな」
 
 役職名で呼ぼうとすると、鉄壁の微笑みが向けられる。そう、微笑んでるけど、微笑んでねぇんだって。オレはこの三年でしっかり学習した。ルイは怒らせないに限る。素直に従うのが我が身のためだ。
 
「ユエも慣れた方がいいと思う。卒業したら学生の時の役職名は使えねぇし。まあ、セイトとトウヤは先生で誤魔化せそうだけどさ」
 
 でも、ライカはしつこく言ってきそうだけどな。
 
 
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