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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編
175 涙目の理由
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卵のことを保留したまま、写真撮影してその写真ができて、店頭に貼り出された頃、学校で結婚式という名の晒し者イベント当日になった。本当にこの高校に来た頃は、こんなことになるなんて思ってなかった。
一度身につけてるから、着る順番が分かるのが唯一の救いだ。それも、救いが一ミリ程度でしかないけどな。鏡を見るとやっぱりオレじゃない別の顔が映ってるように見える。
「用意できた?」
「……」
「サクヤ?」
なんでそう、さりげなく正装を着こなしてやがるんだ。
「……オレもそっちがいいんだけど」
「諦めて」
「………」
オレが沈黙という抵抗を試みてると、不意にルイがいい笑みを向けてきた。まずい。これは何かをするサインだ。大股で近付いてきたルイが俺の目の前で腰を屈めた。ヒョイと持ち上がった体に、若干、パニックだ!
「なにすんだ?!」
「安心してよ。晒し者になるのは最初だけだから。今日、餌食になるのは特Aの生徒だからね」
どういうことだ?
「結婚式は無礼講なんだよ。唯一、普通クラスの生徒が特Aの生徒に近付ける数少ない場なんだよ」
「へ?」
「言い換えるなら、特Aの生徒が循環相手を得られる場でもあるんだけどね」
って、待てよ。このまま行く気か! ルイの腕の中で暴れていたら、耳元に唇が寄って来た。
「そんなに暴れたら落っことしてしまうよ」
落ちるのは嫌だ……。
「そうそう」
ピッタリ暴れるのをやめると、ルイが俺を下ろしてくれた。暴れたせいで乱れたドレスの裾も直してくれる。
「少しだけ我慢して。本当に最初だけだと思うから」
渋々、頷いたオレに、ルイは目を細めて手を取って歩き出す。そう言えば、オレって学校生活の半分は生徒とは関係ないことしてたんだよな。この学校の中で知らないところも沢山あるしさ。
「どうしたの?」
「オレって、この学校の中よく知らないまま卒業なんだな」
「どういうこと?」
「一年の後半なんてさ、授業どころじゃなかったし。二年になったっていろんな存在に振り回されてたし」
だから、あっという間だった。最初は自分を守るために必死で勉強して。ルイの中で本当に危ないのがオレじゃないって知って。大怪我して。解決したって思ったら、ベニ達のせいで、変なことに首突っ込む羽目になるし。
「そうだね。私も高等部に上がって、サクヤと出会って、慌ただしくなったからね」
「絶対、オレのせいじゃねぇぞ」
「分かってはいるけど。多分、私達が接触したせいだろうね」
「それも、ルイのせいじゃねぇの?」
「私が接触しなくても、おそらくだけど。クレナイが動いたと思うよ。今ならそう思う」
……そうかもしれねぇ。だってさ、クレナイが卵を産んだのって、オレとルイが接触する前だよな。時期的に合わねぇしさ。
「サクヤ!」
廊下の先でユエがなぜか涙目に見えんだけど。
「なんで涙目なの?」
オレの目の錯覚じゃないのか。ユエが俺に向かって突進して来る。前も思ったけど、どうしてドレスで走れるんだ。裾が絡まらないのが不思議なんだけどさ。ガバッと俺に抱きついてきて、体が震えてる。
「どうしたんだよ?」
「ねぇ、あり得る?! 公衆の面前でキスするってどういうこと?! 前のときはそんなことしなかったんだ!」
前って、リッカとコウガの時か。待て、キスってなんだ?! ルイに視線を向けると、ルイも首を捻ってる。って言うことは、ルイは知らねぇのか。
「参ったよ」
そう言いながら歩いて来た副会長。そうだ、卒業したら副会長って使えねぇんだよな。ルイと一緒にいるってことは、このまま付き合いは続いていくんだろうし。
「なにがあったの?」
「リッカとコウガのいらないお節介だよ」
へ? 分からねぇんだけど?!
一度身につけてるから、着る順番が分かるのが唯一の救いだ。それも、救いが一ミリ程度でしかないけどな。鏡を見るとやっぱりオレじゃない別の顔が映ってるように見える。
「用意できた?」
「……」
「サクヤ?」
なんでそう、さりげなく正装を着こなしてやがるんだ。
「……オレもそっちがいいんだけど」
「諦めて」
「………」
オレが沈黙という抵抗を試みてると、不意にルイがいい笑みを向けてきた。まずい。これは何かをするサインだ。大股で近付いてきたルイが俺の目の前で腰を屈めた。ヒョイと持ち上がった体に、若干、パニックだ!
「なにすんだ?!」
「安心してよ。晒し者になるのは最初だけだから。今日、餌食になるのは特Aの生徒だからね」
どういうことだ?
「結婚式は無礼講なんだよ。唯一、普通クラスの生徒が特Aの生徒に近付ける数少ない場なんだよ」
「へ?」
「言い換えるなら、特Aの生徒が循環相手を得られる場でもあるんだけどね」
って、待てよ。このまま行く気か! ルイの腕の中で暴れていたら、耳元に唇が寄って来た。
「そんなに暴れたら落っことしてしまうよ」
落ちるのは嫌だ……。
「そうそう」
ピッタリ暴れるのをやめると、ルイが俺を下ろしてくれた。暴れたせいで乱れたドレスの裾も直してくれる。
「少しだけ我慢して。本当に最初だけだと思うから」
渋々、頷いたオレに、ルイは目を細めて手を取って歩き出す。そう言えば、オレって学校生活の半分は生徒とは関係ないことしてたんだよな。この学校の中で知らないところも沢山あるしさ。
「どうしたの?」
「オレって、この学校の中よく知らないまま卒業なんだな」
「どういうこと?」
「一年の後半なんてさ、授業どころじゃなかったし。二年になったっていろんな存在に振り回されてたし」
だから、あっという間だった。最初は自分を守るために必死で勉強して。ルイの中で本当に危ないのがオレじゃないって知って。大怪我して。解決したって思ったら、ベニ達のせいで、変なことに首突っ込む羽目になるし。
「そうだね。私も高等部に上がって、サクヤと出会って、慌ただしくなったからね」
「絶対、オレのせいじゃねぇぞ」
「分かってはいるけど。多分、私達が接触したせいだろうね」
「それも、ルイのせいじゃねぇの?」
「私が接触しなくても、おそらくだけど。クレナイが動いたと思うよ。今ならそう思う」
……そうかもしれねぇ。だってさ、クレナイが卵を産んだのって、オレとルイが接触する前だよな。時期的に合わねぇしさ。
「サクヤ!」
廊下の先でユエがなぜか涙目に見えんだけど。
「なんで涙目なの?」
オレの目の錯覚じゃないのか。ユエが俺に向かって突進して来る。前も思ったけど、どうしてドレスで走れるんだ。裾が絡まらないのが不思議なんだけどさ。ガバッと俺に抱きついてきて、体が震えてる。
「どうしたんだよ?」
「ねぇ、あり得る?! 公衆の面前でキスするってどういうこと?! 前のときはそんなことしなかったんだ!」
前って、リッカとコウガの時か。待て、キスってなんだ?! ルイに視線を向けると、ルイも首を捻ってる。って言うことは、ルイは知らねぇのか。
「参ったよ」
そう言いながら歩いて来た副会長。そうだ、卒業したら副会長って使えねぇんだよな。ルイと一緒にいるってことは、このまま付き合いは続いていくんだろうし。
「なにがあったの?」
「リッカとコウガのいらないお節介だよ」
へ? 分からねぇんだけど?!
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