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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編
165 選択肢
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一度来たことのあるその場所は、やっぱり現実味がねぇ。目の前に存在を誇示するように視界に入ってくる大樹。その周りは夜空を映し、現実味が感じがられねぇ。
ルイの肩にいた小鳥が大樹に向かって飛び立ち、ある人物の周りを飛び交う。長い緑の髪、茶の瞳。根源の精霊王ユグドラシル。軽く右手を動かしたと思ったら、ルイが持っていた籠と瓶が浮き上がり、ユグドラシルの元へと移動した。
卵の魔法使い(元凶の方!)はルイが縄みたいのでぐるぐる巻きにしたし、口も目も塞がれてるからかなり異様な姿。
『ウィル オ ウィプスから聞いてはいたが、かなり粗相をしたようだな』
ユグドラシルが苦笑いを浮かべた。
「サクヤを狙ったので」
『それで、この姿か?』
「あまりに煩かったので」
ルイも淡々と答えるし。
『こちらの瓶の中の魂達には用はない。利用されただけだろう。次の世では利用されない生を生きるのだな』
空中に浮いていた瓶が霧散し、中にいた魂が上空に向かっていく。
『しかし、恐ろしいもので入れ物を作ったようだな。お前は怒らせるとかなり危険な人物らしい』
「ウィル オ ウィプスが同じ入れ物は危険だと」
ルイ、淡々としすぎだって。まあ、感情的に話すようなことじゃねぇけどさ。
「あのさ。そいつ、どうすんだ?」
『それなりの報いは受けてもらう。命を弄んだのだから』
確かにそうだけどさ。
『魔法使いと言う者は探究心の塊だな。それを言えば魔術師も似たようなものだが。やっていいことと悪いことの区別もつかないようだ』
『じゃあ、始めようではないか』
「!」
オレの耳元でいきなりした声に驚いて振り返った。そこにいたのは癖が強い黒髪の妖精王。始めるって?!
『魔狼達にマナを』
オレの両腕に抱えられてたキンとギンがピクリと反応する。なんとなく危険を感じて二匹を離した。しっかりと地面に着地した二匹。一度、ブルリと震えて、最初に見たサイズに戻る。うわあ、ちびっ子の時の方が親しみあった!
「いきなり始めるの?」
『こちらとあちらでは時の流れが違うのよ。時間をかければかけるだけ、困るのは貴方達じゃないかしら』
更に背後から女性の声。視線を向けると癖のない黒髪の妖精女王。やっぱり来てたんだな。
『一つの条件は満たした。もう一つの条件をのむか?』
「訊きたいんだけど」
『なんだ?』
「種を宿すことに異論はないよ。でもね、その種を宿すことで印を付けるつもりですか?」
ユグドラシルが面白そうな笑みを見せた。
『気が付いたのか?』
「ええ。ここで私とサクヤが貴方と契約し、今後、その種を持つ血筋が卵を作り続ける。もし、種を宿していない魔法使いが卵を作ることになれば契約は破棄。今後一切、精霊は魔法使いの命に関して関与しなくなる。そうですよね?」
『かなりの頭脳の持ち主ね。気が付くとは思わなかったわ』
妖精女王が感心してるのか、小馬鹿にしてるのか分からない口調で言ってきた。ルイは気が付いたけどさ、俺は気が付いてねぇよ。
『そうだ。それを理解した上で納得するか』
「私達、魔法使いに選択の余地はないのでは? このままではバランスが狂って闇に落ちる魔法使いが増え続ける。闇に落ちれば、その血筋は絶えてしまう。それを理解した上で、同意します」
ルイはきっぱりと言い切った。
『お前はどうする? 卵を作るには少なくとも二人の魔法使いが必要。それも、同等の能力を持つ、だ』
オレの横に立つ妖精王が問い掛けてきた。それこそ、選択の余地はねぇだろう。
「そのつもりでここに来た」
オレはきっぱりと言い切った。
ルイの肩にいた小鳥が大樹に向かって飛び立ち、ある人物の周りを飛び交う。長い緑の髪、茶の瞳。根源の精霊王ユグドラシル。軽く右手を動かしたと思ったら、ルイが持っていた籠と瓶が浮き上がり、ユグドラシルの元へと移動した。
卵の魔法使い(元凶の方!)はルイが縄みたいのでぐるぐる巻きにしたし、口も目も塞がれてるからかなり異様な姿。
『ウィル オ ウィプスから聞いてはいたが、かなり粗相をしたようだな』
ユグドラシルが苦笑いを浮かべた。
「サクヤを狙ったので」
『それで、この姿か?』
「あまりに煩かったので」
ルイも淡々と答えるし。
『こちらの瓶の中の魂達には用はない。利用されただけだろう。次の世では利用されない生を生きるのだな』
空中に浮いていた瓶が霧散し、中にいた魂が上空に向かっていく。
『しかし、恐ろしいもので入れ物を作ったようだな。お前は怒らせるとかなり危険な人物らしい』
「ウィル オ ウィプスが同じ入れ物は危険だと」
ルイ、淡々としすぎだって。まあ、感情的に話すようなことじゃねぇけどさ。
「あのさ。そいつ、どうすんだ?」
『それなりの報いは受けてもらう。命を弄んだのだから』
確かにそうだけどさ。
『魔法使いと言う者は探究心の塊だな。それを言えば魔術師も似たようなものだが。やっていいことと悪いことの区別もつかないようだ』
『じゃあ、始めようではないか』
「!」
オレの耳元でいきなりした声に驚いて振り返った。そこにいたのは癖が強い黒髪の妖精王。始めるって?!
『魔狼達にマナを』
オレの両腕に抱えられてたキンとギンがピクリと反応する。なんとなく危険を感じて二匹を離した。しっかりと地面に着地した二匹。一度、ブルリと震えて、最初に見たサイズに戻る。うわあ、ちびっ子の時の方が親しみあった!
「いきなり始めるの?」
『こちらとあちらでは時の流れが違うのよ。時間をかければかけるだけ、困るのは貴方達じゃないかしら』
更に背後から女性の声。視線を向けると癖のない黒髪の妖精女王。やっぱり来てたんだな。
『一つの条件は満たした。もう一つの条件をのむか?』
「訊きたいんだけど」
『なんだ?』
「種を宿すことに異論はないよ。でもね、その種を宿すことで印を付けるつもりですか?」
ユグドラシルが面白そうな笑みを見せた。
『気が付いたのか?』
「ええ。ここで私とサクヤが貴方と契約し、今後、その種を持つ血筋が卵を作り続ける。もし、種を宿していない魔法使いが卵を作ることになれば契約は破棄。今後一切、精霊は魔法使いの命に関して関与しなくなる。そうですよね?」
『かなりの頭脳の持ち主ね。気が付くとは思わなかったわ』
妖精女王が感心してるのか、小馬鹿にしてるのか分からない口調で言ってきた。ルイは気が付いたけどさ、俺は気が付いてねぇよ。
『そうだ。それを理解した上で納得するか』
「私達、魔法使いに選択の余地はないのでは? このままではバランスが狂って闇に落ちる魔法使いが増え続ける。闇に落ちれば、その血筋は絶えてしまう。それを理解した上で、同意します」
ルイはきっぱりと言い切った。
『お前はどうする? 卵を作るには少なくとも二人の魔法使いが必要。それも、同等の能力を持つ、だ』
オレの横に立つ妖精王が問い掛けてきた。それこそ、選択の余地はねぇだろう。
「そのつもりでここに来た」
オレはきっぱりと言い切った。
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