銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

154 屋敷

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 リッカに連れられ向かった先はかなり寂しい場所だった。辺りに生い茂る雑草。木々もただ生えているだけなのか無秩序で、どこか暗い印象を受ける。
 
 目の前に現れた屋敷は大きく、でも、暗く沈んでいるように見えた。
 
「サクヤって本当に空気清浄機」
 
 コウガの言葉に首を傾げたオレ。何も変わってないだろう?
 
「本当だね。空気が違う」
 
 ルイは後ろを振り返ってコウガに答えた。つられて振り返ると、今来た道のようなそうでないような獣道が視界に入った。でも……。
 
「あれ? 少し明るく感じる?」
 
 不思議だ。空気の色が違う。視線を前に戻すと目の前に門扉がある。金属の柵でできたそれは、冷たい印象を受けた。でも、それ以上に感じるのは感覚的に感じる壁。これが結界なんだろうな。
 
 リッカが杖を出すと小さく何かを呟いて杖を振った。鍵としての役目は長老に解いてもらったけど、結界は鍵だった魔法使いじゃないと解けないんだと。そうだよな。そうじゃないと鍵としての意味がない。
 
 結界を解いてすぐに感じるのは冷たい圧迫感。そういえばオレって、小さい時から変なものが普通に見えたから、こういう場所に来ても恐怖とかはない。結界を解いた後に何かが迫ってくるのを感じる。でも、一定の距離を保ったまま、邪悪な塊は停止した。
 
「サクヤがいると便利」
 
 便利?
 
「普通なら飛びかかってきて、取り殺すからね」
 
 鍵の役目を解かれたリッカはしゃんとしてて、すげぇ違和感。
 
「問題は、今目の前にいるのは目的の魂じゃないってことだよね」
 
 ルイが落ち着いた声音で言い切る。確かにそうかも。目の前にいるのは、理不尽に命を奪われた魂だ。まあ、好奇心に駆られてここに来たってことだろうから、自業自得だと思うけどさ。
 
「オレが先に行ってもいいか?」
 
 なんとなく、ルイを先頭にするのは論外な気がする。で、リッカとコウガもだ。となると、オレが先頭だよな?
 
「怖くないの?」
「どうしてだよ。ゴーストなんて珍しくもないだろう? その辺に当たり前のように浮遊してるんだしさ」
「やっぱり、見えてたんだね」
「魔法使いなら見えてんじゃねぇの? オレの場合、日常的に周りにいたからさ」
 
 三人が沈黙。どうしてだ?
 
「それ、子供のゴーストが多くなかった?」
「そうだけど」
「そのあと、上に上がっていったでしょう?」
「そうなんだよな。不思議だったんだ」
 
 更に三人が盛大に息を吐き出した。
 
「卵の魔法使いの魂が浄化されるのは問題なんだよ。他はしてもらっても周りのためだからね」
 
 そんなこと言ったってさ。勝手に魔力が放出されてんだって。あっ、でも、ベニが魔力を食べてんだろう? ベニがいる前より効果は薄いんじゃねぇか?
 
「ベニ効果で浄化作用が抑えられたりしてねぇの?」
「どうかな? ベニ、元のサイズに戻って、できる限りサクヤの放出されてる魔力を喰べてくれない?」
「キュウ」
 
 素直に元のサイズに戻ったベニはオレの左肩に落ち着く。クレナイはルイを守るように警戒していることがはっきりと分かった。
 
 オレとルイ。そして、コウガも杖を手に持つ。何かあったときに、対応できるようにだ。
 
 門扉を開くと、軋んだような不気味な低音を響かせた。敷地内も雑草に覆われていて、石畳の隙間からも、容赦なく草が生い茂ってる。玄関までの距離はさほどないのに、この緊張感はなんなんだよ。オレ達に寄ってくるゴーストは多いけど、緊張感を読み取っているのか、遠巻きにしているだけで、ある一定の距離から近づいて来ない。それに感謝しつつ、古びだ玄関扉の前で立ち止まる。異様な空気を放つその場所が、中の状態を不明確にしていた。
 
 
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