147 / 272
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編
147 気が付けば……。
しおりを挟む
あの後、長期の休暇に入り、オレの実家、ルイの実家にそれぞれ滞在した。ルイはオレの両親には壁を感じないから問題ねぇんだけど、自分の両親には無意識に一線を引く。仕方ねぇんだろうけど。でも、今回ばかりはそうも言っていられない。なんせ、精霊王が指定してきたのはオレとルイなんだからさ。
「あー、やっぱりこの味」
カエデさんがルイから教わって作ったエッグタルト。うん、母さんの味だ。
「それで、何があった?」
クレハさんがルイに問い掛ける。今は夕食あとのお茶をいただきつつ、エッグタルト試食会だったんだ。それがひと段落して、訊かれたんだ。
「なにがって?」
「姿を消していた一週間。どれだけ心配したと思ってるんだ。サクヤもだ」
「好きで消えたんじゃねぇって。エアリエルにいつ呼び出されるか分かんねぇって言われてたけどさ。いきなりだったし」
精霊やら妖精やらは、こっちの都合などお構いなしなんだろうな。少しは考えて欲しかったんだ。
「クチバとシロガネに聞いたよ。二人に魔力を帯びた精霊も見せてもらったし」
カエデさんはやっぱり、可愛い感じだよな。
二人に隠し通すのは無理だとルイは判断したみてぇ。多分、副会長にも押し切られて渋々話したんだろうな。
「そう言うことか」
「ただね。卵の魔法使いの一族全ての魂が最低条件なんだ」
「その時代って意味だろう?」
「だと思うけど」
「その話はカイトを通して、俺が話をつけてやる。だがな、種を身に宿す話はここだけの話にしろ」
クレハさんが渋い顔をした。どうしてだ?
「そうだね。下手したら実験材料にされる。あんな思いはもうしたくないしね」
カエデさんが溜め息混じりに言葉を吐き出す。って、実験材料ってなんだ?!
「ユグドラシルは元々、こちらの世界にあった大樹だ。それが、いつの時代からなのか、姿を消した。マナ自体は枯渇してはいないからな。どこかに存在していることは分かっていた」
「その、ユグドラシルから種の保管を頼まれたってことは、重要なことなんだよ。考えようで、一度枯れたことがあるんだ。でも、その時はなんとかなったって考えるのが自然だよ」
……やっぱり、クレハさんとカエデさんも頭が良いんだな。今の話だけで、これだけ考察できんのかよ。脱帽だ。
「でも、誰にも言わないのは問題ない?」
「魔法大臣にのみ知らせるに留めるべきだ。おそらく、魔法大臣がお前達に直接接触してくるだろう。精霊王との契約は他の魔法使いでは無理だ。今の話で、選ばれた理由が普通の感覚の魔法使いではないからってことだろう?」
「そうだけど」
「種の安全を考えるなら、知るのは最小限にとどめておくのが妥当だ。まあ、ライカとその相手には口止めしてあるんだろう?」
オレとルイは素直に頷いた。副会長はルイのためにならないことは基本的にしねぇし、ユエにしても友達になって日は浅いけどさ、良いやつだし。
「我が子ながら、こうも特殊続きだと疲れるね」
カエデさん、その言い方もどうかと思うけど。
「禁書庫の司書官に、門の監視人。卵の魔法使いにユグドラシルの種の護り手。どれだけの肩書きが付くんだか」
「私だって好きで引き受けてるわけじゃないよ」
ルイが若干、不機嫌になる。お、両親の前なのに進歩してるじゃん。
「はっきり言うけど、これ以上はなにを押し付けられても拒絶するからね」
「あ……、オレも拒絶する」
魔法使いに関わる前は、ごくごく当たり前の一般人してたんだ。いきなり、あれもこれもって、ついてけねぇって。目の前で二人が盛大に息を吐き出した。あれは、呆れてる感じだよな。でもよ、オレ達は被害者じゃねえの? その態度はおかしいよな?
「あー、やっぱりこの味」
カエデさんがルイから教わって作ったエッグタルト。うん、母さんの味だ。
「それで、何があった?」
クレハさんがルイに問い掛ける。今は夕食あとのお茶をいただきつつ、エッグタルト試食会だったんだ。それがひと段落して、訊かれたんだ。
「なにがって?」
「姿を消していた一週間。どれだけ心配したと思ってるんだ。サクヤもだ」
「好きで消えたんじゃねぇって。エアリエルにいつ呼び出されるか分かんねぇって言われてたけどさ。いきなりだったし」
精霊やら妖精やらは、こっちの都合などお構いなしなんだろうな。少しは考えて欲しかったんだ。
「クチバとシロガネに聞いたよ。二人に魔力を帯びた精霊も見せてもらったし」
カエデさんはやっぱり、可愛い感じだよな。
二人に隠し通すのは無理だとルイは判断したみてぇ。多分、副会長にも押し切られて渋々話したんだろうな。
「そう言うことか」
「ただね。卵の魔法使いの一族全ての魂が最低条件なんだ」
「その時代って意味だろう?」
「だと思うけど」
「その話はカイトを通して、俺が話をつけてやる。だがな、種を身に宿す話はここだけの話にしろ」
クレハさんが渋い顔をした。どうしてだ?
「そうだね。下手したら実験材料にされる。あんな思いはもうしたくないしね」
カエデさんが溜め息混じりに言葉を吐き出す。って、実験材料ってなんだ?!
「ユグドラシルは元々、こちらの世界にあった大樹だ。それが、いつの時代からなのか、姿を消した。マナ自体は枯渇してはいないからな。どこかに存在していることは分かっていた」
「その、ユグドラシルから種の保管を頼まれたってことは、重要なことなんだよ。考えようで、一度枯れたことがあるんだ。でも、その時はなんとかなったって考えるのが自然だよ」
……やっぱり、クレハさんとカエデさんも頭が良いんだな。今の話だけで、これだけ考察できんのかよ。脱帽だ。
「でも、誰にも言わないのは問題ない?」
「魔法大臣にのみ知らせるに留めるべきだ。おそらく、魔法大臣がお前達に直接接触してくるだろう。精霊王との契約は他の魔法使いでは無理だ。今の話で、選ばれた理由が普通の感覚の魔法使いではないからってことだろう?」
「そうだけど」
「種の安全を考えるなら、知るのは最小限にとどめておくのが妥当だ。まあ、ライカとその相手には口止めしてあるんだろう?」
オレとルイは素直に頷いた。副会長はルイのためにならないことは基本的にしねぇし、ユエにしても友達になって日は浅いけどさ、良いやつだし。
「我が子ながら、こうも特殊続きだと疲れるね」
カエデさん、その言い方もどうかと思うけど。
「禁書庫の司書官に、門の監視人。卵の魔法使いにユグドラシルの種の護り手。どれだけの肩書きが付くんだか」
「私だって好きで引き受けてるわけじゃないよ」
ルイが若干、不機嫌になる。お、両親の前なのに進歩してるじゃん。
「はっきり言うけど、これ以上はなにを押し付けられても拒絶するからね」
「あ……、オレも拒絶する」
魔法使いに関わる前は、ごくごく当たり前の一般人してたんだ。いきなり、あれもこれもって、ついてけねぇって。目の前で二人が盛大に息を吐き出した。あれは、呆れてる感じだよな。でもよ、オレ達は被害者じゃねえの? その態度はおかしいよな?
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる