銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

146 一週間?!

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『また、召喚する。それまでに、結論を出してほしい』
 
 ユグドラシルが微笑みを浮かべて一言言ったあと、いきなり放り出されるような感覚を覚えた。この感じ、杖に部屋を追い出された感じに似てんだけど。
 
 辺りを見渡すと寮の部屋の中だった。何より驚いたのが外の景色だ。なんで白いもんが舞ってんだよ。
 
「参ったね。あそことここでは時間の流れが違うんだ」
 
 ルイはそう言うと寮の部屋を出て行って、副会長の部屋の扉をノックする。空は雲に覆われてはいるけど暗いから夜だっていうのは分かる。
 
「サクヤ!」
 
 叫び声と共に体に衝撃。なんとか踏ん張って、ぶつかってきた者に視線を向けた。オレ、どうしてユエに抱きつかれてんだよ。
 
「学校で大騒ぎになってんだぞ!」
 
 まあ、授業中に召喚されたから、騒ぎにはなってんだろうな。
 
「一週間もどこに行ってたんだよ?!」
「一週間?!」
 
 待てよ。オレとルイって、また、親との約束破ったことになるのかよ。ルイが時間の流れが違うって言ってたけどさ、流れ過ぎだろう。脱力するわ。
 
「ちょっと、精霊王に召喚されたんだよ」
「それなんなの?!」
 
 なんなのって言われてもさ。オレだって好きで召喚されたんじゃないって。エアリエルに言われてたけど、まさか、授業中に呼びつけることはないと思うんだ。
 
「話せば長いんだって」
「ライカが会長に問い質してるけど」
「……やっぱり」
 
 溜め息しか出ないわ。
 
「それにさ。明日から冬季休暇。サクヤと会長が行方不明だからって、ライカがここに残るって言い出して。先生達だけじゃなくてさ、魔法省からも慌てて人が来るし。会長の両親も来てたんだ」
 
 そんなに人が動いたのかよ。まあ、オレとルイがいた場所がとてつもなく特殊な場所だったからな。見つけるのはほぼ無理。
 
「それで、なんで、精霊王なんかに呼び出されてんだよ?」
「あ……、それは」
「俺には言えないの?」
「そうじゃねぇけどさ。こう、ややこいしことになってんだよ」
「は?」
「卵の話はしてねぇよな?」
「卵って、同性の魔法使いが貰えるやつだろう?」
 
 ん? ユエは知ってるんだな?
 
「なんで知ってんだよ?」
「なんでって。両親は異性同士だけどさ、祖父母は同性だから」
 
 そうか。そう言う魔法使いもいるよな。
 
「その卵。どうもさ、簡易的で許可なく作ってるみたいでさ」
「許可って、誰に許可が必要なんだよ?」
「精霊王」
 
 あ、ユエが固まった。
 
「こんな話、本当ならしたら駄目なんだと思うんだよな。ここだけの話でなら、話すけど」
「口外はライカとだけしかしない!」
 
 副会長とはするのな。まあ、ルイが根掘り葉掘り訊かれてんだろうし、必然的にユエには伝わるよな。
 
「卵の魔法使いが一族全員、亡くなってんだよ」
「?!」
 
 あ、更に固まった。
 
「どう言うこと?」
「あいつ、その卵の魔法使いの実験で生まれたみてぇ」
「あいつって、あの人のこと?!」
「そう」
 
 この話を魔法大臣に通したら、大騒ぎになんだろうな。でもさ、正式に卵を作れるようになるには、隠し通してた卵の魔法使いをなんとかしねぇと。本当の意味で、魔力の強い魔法使いはいなくなる。根源の精霊王が強い魔力を持つ魔法使いがいなくなると都合が悪いようなことを言っていたから、こちらが折れないと精霊側が納得しねぇよな。なんせ、魔法使いは今まで、精霊に無許可で卵を作ってたんだからさ。それを認めるかが、問題だよな。本当に頭が痛くなる。
 
 
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