銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

061 職業選択の不自由?

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 言葉通り、朝から晩まで勉強漬けの毎日だ。でもさ、我が身になると必死になるし、覚えようとするから結構頭に入るし、ルイが分かりやすく説明してくれるからか、苦痛がない。
 
 初等部から勉強しなきゃならねぇから、大変かと思ったんだけど、ルイが同じようなものは簡単に纏めてくれっから、思ったより大変さはねぇ。
 
「じゃあ、これを浮かせてみようか」
 
 そう言って差し出されたのは羽根ペン。確かに軽いけどさ。そして、失礼な周りの反応! 一斉に杖出すってどういうことだよ!
 
「気にしないで。水晶を使った時の感覚は残ってるよね?」
「大丈夫だと思うけどさ」
「だったら、問題ないよ」
 
 実はあの日から魔法は使ってない。覚えることが多いっていうのもあるんだけどさ。指を鳴らして杖を出して、深呼吸。あの時の感覚を思い出して、体の中心にある魔力に意識を向ける。吐き出している魔力と折り合いをつけて、呪文を唱えた後、軽く杖を振ってみた。いつもなら、杖を振る前に魔力があらぬ方向に暴走したんだけど。
 
「暴走しないぞ?!」
「ちゃんと魔法が発動してる!」
 
 おい、外野。その言い方もどうよ。羽ペンが頭上近くまで浮いたとき、ベニが嘴で羽根ペンの羽根部分をキャッチした。なんでだ?
 
「やっぱり、魔力の場所を理解してなかっただけなんだね」
「どういうこと?!」
 
 安全だと分かるや否や、俺の横に来たのはユエ。
 
「暴走してたんじゃなくて、魔力の大元の場所を分かってなかったらしくてね」
「……、それは制御ができなくて当たり前だ」
 
 言ってることは本当だしさ、反論ができねぇのが悔しいんだよ!
 
「今、どこまで進んでるの?」
 
 副会長がルイに問い掛ける。
 
「高学年くらいまでかな?」
「実は優秀?」
「どうだろうね。ただ、保身のために必死であることは確かだよ。魔法を知ることが、自分を守ることにつながるからね」
 
 今、学んでいることは基本中の基本だ。だから、ルイから教わることが可能だ。でも、高度になればなるほど、オレとルイの魔力の違いで、教われないものも出てくるらしい。それは自力で学ぶか、詳しい者から教わるかだけど、ルイがいい顔しないんだろうな。
 
「中等部までなら教えることは可能だろうけど、高等部の二学年になれば選択だよ。どうする気?」
「私の場合、将来の仕事は決められてるから、選択はサクヤと同じで問題ないから」
 
 将来の仕事が決まってる?! なんだよそれ?!
 
「それは初めて聞いたよ」
 
 副会長が目を見開いてっし。周りもだけどさ。
 
「魔法省絡みなの?」
 
 副会長が剣呑な気配を身に纏う。
 
「そうなんだけどね。私的にはそれほど苦痛を感じる職種じゃないんだよ」
 
 ルイが苦笑いを浮かべた。その表情にいい顔をしない特定の面々。副会長以下、書記と会計。風紀委員長と副委員長。初等部から監視し続けたルイがまた、魔法省に振り回されるのを快く思ってないみたいだ。
 
「職種はなんだ?」
 
 唸るように訊いてきたのは風紀委員長。
 
「気になるの?」
「当たり前だろう。周りの顔を見てみろ」
 
 ルイは軽く流したかったみてぇだな。
 
「仕方ないね。これは初等部に入る前から決まってたことだしね」
 
 待て。初等部入学前に職業が決まってる子どもがいてたまるか?!
 
「禁書庫の司書官だよ」
「はあ?!」
 
 はあ?! の部分は顔ぶれ全員の叫びだ。また、お堅い職業で。
 
「なんで?!」
 
 副会長がさらに叫ぶ。俺はといえば、みんなの顔がなんか可笑しかった。面と向かっては言えねぇけどさ。
 
 
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