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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編
056 対極の存在
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一学年は選択授業はない。決まった課目を決まった時間勉強して、二学年に上がると、自分自身で課目を選択する。つまり、将来の職業に合わせて勉強をするってことだ。
当然だけど、教室移動はルイと副会長、オレとユエという、有名人を二人引き連れて歩くから、異常に目立つんだよ! しかも、オレの頭には火の鳥の雛のベニがいる。何気にオレとユエも名前と顔が学校中に広まってて、今じゃ、立派な有名人だ!
「あのさ。この視線の中にいて平気でいられるコツでもあんのかよ?」
次の授業の教師の部屋に移動して、一番後ろの席に着いてから、ルイと副会長に問い掛けた。なんせ、この二人。あの視線と黄色い声の中にいて、普通に話してんだよ。周りなんか気にしないどころか、最初からいないみたいな態度だ。
「コツ? そんなものはないよ。ただ、意識から切り離してはいるけどね」
ルイは小首を傾げて言ってきた。
「気にしてたら神経すり減るでしょう。とりあえず、近付くのはご法度なんだし、あとは、気にしないに限るよ」
副会長も面っと言ってのける。ちなみに、オレとユエは二人に挟まれて座ってる。完全に過保護発動だ。誰も近付いて来ねぇって。せいぜい……。
「面倒を起こすなよ」
オレ達の目の前に立ったのは風紀委員長。威圧感が半端ない。
「起こすとしたら私達じゃないでしょう?」
「まあな」
「それで、なにかあった?」
「あの人が脱走した」
ルイが小さく息を吐き出した。
「……そう」
「驚かないんだな」
「使い魔がいなかったでしょう? 捕まるのはあの人の予定に入っていたってことだよ。地下に連れていかれる前に、使い魔があの人を助け出した。確か、強い魔力を持つ妖魔だった筈だから、手下もいるだろうしね」
淡々と話すルイに、風紀委員長が眉間に皺を寄せた。
「最初から、逃げることが分かっていたのか?」
「まあ……ね。挨拶に来たんだよ。サクヤに自分の存在を認識させるためにね。選ぶとかの選択肢は最初から与えるつもりはないんだろうけど、覚悟を促したんだろうね。人形のように飼い殺すつもりだから諦めろって」
オレは背中を悪寒が走った。ルイとよく似た容姿をしながら、中身が全く違う。その、対極のような存在に。
「どうするつもりだ?」
「当分は動かないでしょう。今は周りがピリピリしてる。下手に動けば足取りを追われるからね。隠れ家を知らせるつもりはないんだろうし。まあ、妖魔の住処に暮らしてるんだろうけど」
「……そんなところに住んでたら、見つけ出せないな」
「プロでもね」
副会長が鋭い視線をルイに向ける。
「居場所を知っていたの?」
「知っていたとしても、場所の特定は無理だよ。同じ次元にいたら、あの魔力の強さだよ。すぐに魔法省地下の番人が感知するでしょう。それに、妖魔の暮らす次元はこことは違う。もちろん、ルールもね。あそこは強さが全てだから」
ルイは架空に視線を向ける。
「あの人は何度でもこいつを狙ってくる」
「そうだね。ただ、あの人はサクヤを本当に分かっていない。サクヤを妖魔の暮らす次元に連れて行ったら、大騒ぎになる」
「どういうこと?」
ルイは目を細めた。
「サクヤの持つ魔力は強い浄化の能力を持つ。それはありとあらゆる闇を孕んだものを。つまり、妖魔達が浄化される。しかも、サクヤは魔力を常時放出してるから、回避しようがないんだよ」
それって、自滅じゃねぇか。
「しかも、サクヤの魔力は私が鍵を掛けたから、妖魔の住処で鍵を破壊したら、あっという間に魔力の弱い妖魔は蒸発するだろうね」
面っと恐ろしいこと言ってんじゃねぇ! しかも、楽しそうに。オレ、本当に珍獣なんだな。
当然だけど、教室移動はルイと副会長、オレとユエという、有名人を二人引き連れて歩くから、異常に目立つんだよ! しかも、オレの頭には火の鳥の雛のベニがいる。何気にオレとユエも名前と顔が学校中に広まってて、今じゃ、立派な有名人だ!
「あのさ。この視線の中にいて平気でいられるコツでもあんのかよ?」
次の授業の教師の部屋に移動して、一番後ろの席に着いてから、ルイと副会長に問い掛けた。なんせ、この二人。あの視線と黄色い声の中にいて、普通に話してんだよ。周りなんか気にしないどころか、最初からいないみたいな態度だ。
「コツ? そんなものはないよ。ただ、意識から切り離してはいるけどね」
ルイは小首を傾げて言ってきた。
「気にしてたら神経すり減るでしょう。とりあえず、近付くのはご法度なんだし、あとは、気にしないに限るよ」
副会長も面っと言ってのける。ちなみに、オレとユエは二人に挟まれて座ってる。完全に過保護発動だ。誰も近付いて来ねぇって。せいぜい……。
「面倒を起こすなよ」
オレ達の目の前に立ったのは風紀委員長。威圧感が半端ない。
「起こすとしたら私達じゃないでしょう?」
「まあな」
「それで、なにかあった?」
「あの人が脱走した」
ルイが小さく息を吐き出した。
「……そう」
「驚かないんだな」
「使い魔がいなかったでしょう? 捕まるのはあの人の予定に入っていたってことだよ。地下に連れていかれる前に、使い魔があの人を助け出した。確か、強い魔力を持つ妖魔だった筈だから、手下もいるだろうしね」
淡々と話すルイに、風紀委員長が眉間に皺を寄せた。
「最初から、逃げることが分かっていたのか?」
「まあ……ね。挨拶に来たんだよ。サクヤに自分の存在を認識させるためにね。選ぶとかの選択肢は最初から与えるつもりはないんだろうけど、覚悟を促したんだろうね。人形のように飼い殺すつもりだから諦めろって」
オレは背中を悪寒が走った。ルイとよく似た容姿をしながら、中身が全く違う。その、対極のような存在に。
「どうするつもりだ?」
「当分は動かないでしょう。今は周りがピリピリしてる。下手に動けば足取りを追われるからね。隠れ家を知らせるつもりはないんだろうし。まあ、妖魔の住処に暮らしてるんだろうけど」
「……そんなところに住んでたら、見つけ出せないな」
「プロでもね」
副会長が鋭い視線をルイに向ける。
「居場所を知っていたの?」
「知っていたとしても、場所の特定は無理だよ。同じ次元にいたら、あの魔力の強さだよ。すぐに魔法省地下の番人が感知するでしょう。それに、妖魔の暮らす次元はこことは違う。もちろん、ルールもね。あそこは強さが全てだから」
ルイは架空に視線を向ける。
「あの人は何度でもこいつを狙ってくる」
「そうだね。ただ、あの人はサクヤを本当に分かっていない。サクヤを妖魔の暮らす次元に連れて行ったら、大騒ぎになる」
「どういうこと?」
ルイは目を細めた。
「サクヤの持つ魔力は強い浄化の能力を持つ。それはありとあらゆる闇を孕んだものを。つまり、妖魔達が浄化される。しかも、サクヤは魔力を常時放出してるから、回避しようがないんだよ」
それって、自滅じゃねぇか。
「しかも、サクヤの魔力は私が鍵を掛けたから、妖魔の住処で鍵を破壊したら、あっという間に魔力の弱い妖魔は蒸発するだろうね」
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