銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
上 下
56 / 272
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

056 対極の存在

しおりを挟む
 一学年は選択授業はない。決まった課目を決まった時間勉強して、二学年に上がると、自分自身で課目を選択する。つまり、将来の職業に合わせて勉強をするってことだ。
 
 当然だけど、教室移動はルイと副会長、オレとユエという、有名人を二人引き連れて歩くから、異常に目立つんだよ! しかも、オレの頭には火の鳥の雛のベニがいる。何気にオレとユエも名前と顔が学校中に広まってて、今じゃ、立派な有名人だ!
 
「あのさ。この視線の中にいて平気でいられるコツでもあんのかよ?」
 
 次の授業の教師の部屋に移動して、一番後ろの席に着いてから、ルイと副会長に問い掛けた。なんせ、この二人。あの視線と黄色い声の中にいて、普通に話してんだよ。周りなんか気にしないどころか、最初からいないみたいな態度だ。
 
「コツ? そんなものはないよ。ただ、意識から切り離してはいるけどね」
 
 ルイは小首を傾げて言ってきた。
 
「気にしてたら神経すり減るでしょう。とりあえず、近付くのはご法度なんだし、あとは、気にしないに限るよ」
 
 副会長も面っと言ってのける。ちなみに、オレとユエは二人に挟まれて座ってる。完全に過保護発動だ。誰も近付いて来ねぇって。せいぜい……。
 
「面倒を起こすなよ」
 
 オレ達の目の前に立ったのは風紀委員長。威圧感が半端ない。
 
「起こすとしたら私達じゃないでしょう?」
「まあな」
「それで、なにかあった?」
「あの人が脱走した」
 
 ルイが小さく息を吐き出した。
 
「……そう」
「驚かないんだな」
「使い魔がいなかったでしょう? 捕まるのはあの人の予定に入っていたってことだよ。地下に連れていかれる前に、使い魔があの人を助け出した。確か、強い魔力を持つ妖魔だった筈だから、手下もいるだろうしね」
 
 淡々と話すルイに、風紀委員長が眉間に皺を寄せた。
 
「最初から、逃げることが分かっていたのか?」
「まあ……ね。挨拶に来たんだよ。サクヤに自分の存在を認識させるためにね。選ぶとかの選択肢は最初から与えるつもりはないんだろうけど、覚悟を促したんだろうね。人形のように飼い殺すつもりだから諦めろって」
 
 オレは背中を悪寒が走った。ルイとよく似た容姿をしながら、中身が全く違う。その、対極のような存在に。
 
「どうするつもりだ?」
「当分は動かないでしょう。今は周りがピリピリしてる。下手に動けば足取りを追われるからね。隠れ家を知らせるつもりはないんだろうし。まあ、妖魔の住処に暮らしてるんだろうけど」
「……そんなところに住んでたら、見つけ出せないな」
「プロでもね」
 
 副会長が鋭い視線をルイに向ける。
 
「居場所を知っていたの?」
「知っていたとしても、場所の特定は無理だよ。同じ次元にいたら、あの魔力の強さだよ。すぐに魔法省地下の番人が感知するでしょう。それに、妖魔の暮らす次元はこことは違う。もちろん、ルールもね。あそこは強さが全てだから」
 
 ルイは架空に視線を向ける。
 
「あの人は何度でもこいつを狙ってくる」
「そうだね。ただ、あの人はサクヤを本当に分かっていない。サクヤを妖魔の暮らす次元に連れて行ったら、大騒ぎになる」
「どういうこと?」
 
 ルイは目を細めた。
 
「サクヤの持つ魔力は強い浄化の能力を持つ。それはありとあらゆる闇を孕んだものを。つまり、妖魔達が浄化される。しかも、サクヤは魔力を常時放出してるから、回避しようがないんだよ」
 
 それって、自滅じゃねぇか。
 
「しかも、サクヤの魔力は私が鍵を掛けたから、妖魔の住処で鍵を破壊したら、あっという間に魔力の弱い妖魔は蒸発するだろうね」
 
 面っと恐ろしいこと言ってんじゃねぇ! しかも、楽しそうに。オレ、本当に珍獣なんだな。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...