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23 颱風の目(暁視点)
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ゆっくり開かれた扉。現れたのは白髪混じりの紳士、宗一郎さん。その後ろに二人のご婦人。流石に髪は綺麗に白色になっていた。
更に後ろに聖月さん。視線を向けている先は兄さんだった。うん、観察されてる。兄さんはといえば、当たり障りがない笑みを浮かべている。騙し合い?
「おじいちゃん、いらっしゃい」
雪兎が嬉しそうに宗一郎さんに飛び付いた。流石にそれは阻止出来ないよね。
「久しぶりだな、雪兎。そして、暁」
宗一郎さんを見据え、俺は小さく頭を下げた。なんだろう? この変な感じの緊張感。主に、兄さんとシィ兄なんだけど。兄さんはまあ、いつもと変わりないかな? 試されてるって分かってるから、威嚇してるんだろうし。でも、シィ兄は如何してだろう?
「其方が貴羅、か?」
「初めまして。秋保 貴羅です。ようこそ」
……こんな兄さん初めてかも。
「此方が紫綺、か?」
「そうです。秋保 紫綺といいます」
「紫綺は完全に草壁の血を引いたようだな。その容姿は私の父の若い頃とそっくりだ」
そうか。陽月さんを見たとき、懐かしい感じがしたのは、シィ兄と似ていたからだ。
「……知っています。そう言われていましたから」
そうか。疎遠になったと言っても、血は争えないから。
「宗ちゃん。そんなことはいいのよ。この子達が私達の曾孫なの?」
目をキラキラさせて問い掛けてきたのは、二人のご婦人うちの一人。着ている服は違うけど、見た目が良く似てる。双子って言われると、そうかな? くらいなんだけど。
「そうです。秋保家のはぐれ者の三人ですよ。彼方のうちとは関わりを絶ってます」
「本当に。櫻子さん、見て頂戴な」
「そうね。薫子さん。本当に綺麗なお顔立ち。もう、堪らないわね」
うわあ……。見た目はお年寄りだけど、中身が少女だ。雪兎が言っているように、キャッキャッしてるかも。
「それに、雪兎ちゃんが綺麗なのは知ってるけど、他の二人の子も可愛いわ」
うっとりしてる。二人で旅立ってる。キョウが肩を落としてる。分からなくないけど。
「大叔母さん、もう少し待ってもらえますか? はっきりさせなければいけないので」
「宗ちゃん?」
「三人には是非、こちら側に来てもらわなければ。後々、おかしなことになる」
秋保と氷室、だよね。そんなに会社がヤバいんだ。自分達で接触を試みても、素気無く返される。それに、俺達と草壁の関係を調べようとすれば、容易に調べられる。兄さんに、泣きつけば何とかなると安直に考える可能性が多分にあるから。
「彼奴等のことなんて、なんとも思ってないけど」
兄さんが何時もの軽い口調で口を出してきた。
「自滅するなら勝手にすれば。好き勝手やってきたツケくらい、自分達で対処すべきでしょう?」
何時もの兄さんだね。口調は軽いけど、言ってることはキツい。
「自分を作り出した者だとしてもか?」
宗一郎さんはあえて、兄さんに問い掛けてきた。試してるよね。
「入れ物はね。中身は育ててもらってないけど。俺にしろ暁にしろ。紫綺にしても、演技をさせられて育ったわけだし、逃げられても文句は言えないでしょう? 人を見抜く能力がないんだから、どうしようもないしね?」
兄さんは無害な微笑みを浮かべた。本当に何を考えてるのか表情に出ないよね。それが恐ろしいって、最近認識したけど。宗一郎さんと聖月さんが兄さんを凝視した。スッと細められた目。
「面白い。そして、愚かだな」
宗一郎さんの言葉に兄さんの表情がなくなった。
「秋保も氷室も。血筋を重んじるなら、君を据えるべきだった。変なこだわりなど捨てて。それが出来ていれば、傾くこともなかっただろうに」
「それは違うと思うが」
シィ兄が口を出してきた。
「莫迦達に育てられなかったから、ここまでの人材に育った。俺は莫迦二人を見て育ったからな。誰よりも分かる」
冷静に告げられた言葉に、吹き出したのは聖月さんだった。
「工藤さんが言っていたことは本当だね。お父さんはどう考えます?」
「抱き込むべきだろうな。野放しは此方にも痛い」
抱き込む?
「此方側に来てもらうよ。いろんな意味でね」
聖月さんがなんとも言えない笑みを浮かべた。
更に後ろに聖月さん。視線を向けている先は兄さんだった。うん、観察されてる。兄さんはといえば、当たり障りがない笑みを浮かべている。騙し合い?
「おじいちゃん、いらっしゃい」
雪兎が嬉しそうに宗一郎さんに飛び付いた。流石にそれは阻止出来ないよね。
「久しぶりだな、雪兎。そして、暁」
宗一郎さんを見据え、俺は小さく頭を下げた。なんだろう? この変な感じの緊張感。主に、兄さんとシィ兄なんだけど。兄さんはまあ、いつもと変わりないかな? 試されてるって分かってるから、威嚇してるんだろうし。でも、シィ兄は如何してだろう?
「其方が貴羅、か?」
「初めまして。秋保 貴羅です。ようこそ」
……こんな兄さん初めてかも。
「此方が紫綺、か?」
「そうです。秋保 紫綺といいます」
「紫綺は完全に草壁の血を引いたようだな。その容姿は私の父の若い頃とそっくりだ」
そうか。陽月さんを見たとき、懐かしい感じがしたのは、シィ兄と似ていたからだ。
「……知っています。そう言われていましたから」
そうか。疎遠になったと言っても、血は争えないから。
「宗ちゃん。そんなことはいいのよ。この子達が私達の曾孫なの?」
目をキラキラさせて問い掛けてきたのは、二人のご婦人うちの一人。着ている服は違うけど、見た目が良く似てる。双子って言われると、そうかな? くらいなんだけど。
「そうです。秋保家のはぐれ者の三人ですよ。彼方のうちとは関わりを絶ってます」
「本当に。櫻子さん、見て頂戴な」
「そうね。薫子さん。本当に綺麗なお顔立ち。もう、堪らないわね」
うわあ……。見た目はお年寄りだけど、中身が少女だ。雪兎が言っているように、キャッキャッしてるかも。
「それに、雪兎ちゃんが綺麗なのは知ってるけど、他の二人の子も可愛いわ」
うっとりしてる。二人で旅立ってる。キョウが肩を落としてる。分からなくないけど。
「大叔母さん、もう少し待ってもらえますか? はっきりさせなければいけないので」
「宗ちゃん?」
「三人には是非、こちら側に来てもらわなければ。後々、おかしなことになる」
秋保と氷室、だよね。そんなに会社がヤバいんだ。自分達で接触を試みても、素気無く返される。それに、俺達と草壁の関係を調べようとすれば、容易に調べられる。兄さんに、泣きつけば何とかなると安直に考える可能性が多分にあるから。
「彼奴等のことなんて、なんとも思ってないけど」
兄さんが何時もの軽い口調で口を出してきた。
「自滅するなら勝手にすれば。好き勝手やってきたツケくらい、自分達で対処すべきでしょう?」
何時もの兄さんだね。口調は軽いけど、言ってることはキツい。
「自分を作り出した者だとしてもか?」
宗一郎さんはあえて、兄さんに問い掛けてきた。試してるよね。
「入れ物はね。中身は育ててもらってないけど。俺にしろ暁にしろ。紫綺にしても、演技をさせられて育ったわけだし、逃げられても文句は言えないでしょう? 人を見抜く能力がないんだから、どうしようもないしね?」
兄さんは無害な微笑みを浮かべた。本当に何を考えてるのか表情に出ないよね。それが恐ろしいって、最近認識したけど。宗一郎さんと聖月さんが兄さんを凝視した。スッと細められた目。
「面白い。そして、愚かだな」
宗一郎さんの言葉に兄さんの表情がなくなった。
「秋保も氷室も。血筋を重んじるなら、君を据えるべきだった。変なこだわりなど捨てて。それが出来ていれば、傾くこともなかっただろうに」
「それは違うと思うが」
シィ兄が口を出してきた。
「莫迦達に育てられなかったから、ここまでの人材に育った。俺は莫迦二人を見て育ったからな。誰よりも分かる」
冷静に告げられた言葉に、吹き出したのは聖月さんだった。
「工藤さんが言っていたことは本当だね。お父さんはどう考えます?」
「抱き込むべきだろうな。野放しは此方にも痛い」
抱き込む?
「此方側に来てもらうよ。いろんな意味でね」
聖月さんがなんとも言えない笑みを浮かべた。
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