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貴羅&響也編
01 本気でも、犯罪です(雪兎視点)
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「はい」
そう言って手渡されたのはマグカップ。鼻をつくのはコーヒーのいい香り。あの後、二人でお風呂に入って、僕の着ていた服はそのままでは着れなくて、暁が洗濯してくれてる。必然的に、僕は暁の服を借りてるんだけど。
「体、大丈夫?」
マグカップを両手で持って、頷くことしか出来ない。うう、物凄く恥ずかしい。最初は痛いって言ってたのに、僕、圧迫感の方が強かったし。それに、前立腺ってあんなに感じるものなの。体の中に電気が走ったみたいな、感じたことのない感覚だったし。
「もしかして、一杯一杯になってる」
首傾げて、顔覗き込んで、訊いてこないで。もう、恥ずかしくて死ねるから。
「雪兎、黙りはなしだよ」
「お腹すいた」
僕はそう言ったんだ。だってさ、無事? ことを済ませて、そうしたら安心しちゃって、別の欲求を体が求めたんだもん。僕、お昼も食べてないし。
此処は暁の家の居間。僕の家より少し広いくらいで、あまり違いはない。ただ、シンプル。必要な物以外は置かないようにしてる感じ。店舗の二階が住居空間かと思いきや、その上は賃貸マンション何だって。それも、貴羅さんの持ち物。実はお金持ち、とか? 僕の住んでるところも賃貸マンション。隣がキョウの家なんだ。
「あ……、そうだよね」
時計を見ると九時少し前。此処に来たのが三時過ぎてたから、かなり時間が経ってる。色気がないって言われても気にしない! たとえ、少し前まで妖しい感じだったとしても!
「でも、俺は料理は苦手で」
ん? お菓子作るの趣味って言ってなかった? そんな話をしていると、何処かから、扉の開く音。其方に視線を向けると、現れたのは貴羅さん。
「お帰り」
暁は変わらない様子でそう言ってるけど、僕はまともに貴羅さんを見れない。だって、絶対、分かってるよね。何があったかなんて……。
「こんなところで、何和んでるの?」
「お腹が空いたから」
貴羅さんの質問に、暁は普通に答えてるよ。僕はどうしていいか、分かんないのに。
「呑んできたの?」
「軽くね。ちょっと待ってて、何か作るから」
貴羅さんは軽い調子で言ってるけど、いいの?!
「僕が! ……っ」
勢いよく立ち上がったら、腰に痛みが走った。うん、聞いてたけど、結構、負担がかかるんだね。
「座ってて。無理させたんだろうし」
やっぱり、分かってるし! ボンって、顔が赤くなった。分かってる、自分で墓穴を掘ってるって!
「雪兎、隠したいんだろうけど、顔に全部で出る。キョウのお姉さん、そういうところ、目敏いんじゃないの?」
言われなくても分かってるんだけど、僕に平常心とか器用な真似は無理。両手で顔を覆って、何とかしようとするんだけど、隠せてない。
「響也君にお姉さん何ているの?」
暁の言葉に反応を示したのは貴羅さん。まあ、暁が知らなかったんだから、知るわけないよね。キョウはクウちゃんの事を隠したがるから。とある理由で!
「いるんだけど、ちょっと、問題が……」
何となく、言っちゃいけないような気がする。キョウを気に入ったって言った時の貴羅さんの顔が、僕、忘れられないんだよね。こう、ゾワッてして。
「問題って?」
キッチンで手を動かしながら、問いかけられても、答えたらキョウが窮地に立つ気がする!
「腐女子」
和かに答えたのは、何故か暁。僕は恐る恐る暁を見上げた。顔は笑ってるのに、目が笑ってない。
「楽しそうな家族だね」
「お母さんもだって」
爆弾投下! どうして、そんなこと言うの?!
「兄さんはキョウを気に入ったわけでしょう? 家族とか関係ないんじゃないの?」
どういうこと?!
「確かに関係ないね。でも、使える情報だよね」
怖い! 本能が警鐘を鳴らしてる。僕でも、感じることが出来るほど、凄く怖い!
「兄さん。雪兎を恐がらせないでくれない」
暁が少し剣呑な表情を見せた。貴羅さんは肩を竦めると、四人がけの食卓テーブルにオムライスを乗せた。
「まあ、食べて」
うん。すごく美味しそう。卵はふんわりしてるし、デミグラスソース? なのかな? いい匂いがしてる。二人で並んで座って、揃って「いただきます」と言った。
「美味しい」
僕では絶対作れない味。中のライスはケチャップライスじゃなくて、バターライス。僕が幸せそうに食べるから、二人はじっと僕に視線を向けていた。知らなかったけど。
「うん。雪兎君は歳相応の反応だね。まあ、暁が可愛気ないだけだけど」
貴羅さん、容赦ない言いっぷりだよね。仮にも弟に向かって。
「兄さんに言われたくないんだけど」
「確かに人のことは言えないけどね」
喉の奥で笑ってる姿が、とっても恐いです。見た目穏やかなだけに、違和感と相まって半端ないです。
「君も響也君程じゃないけど、感じ取る感性があるんだね」
「キョウ?」
「そう」
貴羅さんの笑みは本当に素直に受け取ったら痛い目に合うって、本能が僕に告げてる!
「本心を漏らしてもいいかな?」
何だろう。聞いたら、後戻りできなくなるような気がする。
「俺、響也君が欲しいんだよね」
この言葉に、流石の暁も固まった。
「兄さん。歳の差分かってる? 未成年を誑かすのは犯罪だけど」
「大丈夫。本気だから」
本気でも、犯罪です。やっぱり、キョウは危険を呼び寄せてる! 多分、本人判ってると思うけど。いや、見ないようにしてるかも。でも、多分逃げられないと思う。僕は背中に嫌な汗が伝うのを感じた。
そう言って手渡されたのはマグカップ。鼻をつくのはコーヒーのいい香り。あの後、二人でお風呂に入って、僕の着ていた服はそのままでは着れなくて、暁が洗濯してくれてる。必然的に、僕は暁の服を借りてるんだけど。
「体、大丈夫?」
マグカップを両手で持って、頷くことしか出来ない。うう、物凄く恥ずかしい。最初は痛いって言ってたのに、僕、圧迫感の方が強かったし。それに、前立腺ってあんなに感じるものなの。体の中に電気が走ったみたいな、感じたことのない感覚だったし。
「もしかして、一杯一杯になってる」
首傾げて、顔覗き込んで、訊いてこないで。もう、恥ずかしくて死ねるから。
「雪兎、黙りはなしだよ」
「お腹すいた」
僕はそう言ったんだ。だってさ、無事? ことを済ませて、そうしたら安心しちゃって、別の欲求を体が求めたんだもん。僕、お昼も食べてないし。
此処は暁の家の居間。僕の家より少し広いくらいで、あまり違いはない。ただ、シンプル。必要な物以外は置かないようにしてる感じ。店舗の二階が住居空間かと思いきや、その上は賃貸マンション何だって。それも、貴羅さんの持ち物。実はお金持ち、とか? 僕の住んでるところも賃貸マンション。隣がキョウの家なんだ。
「あ……、そうだよね」
時計を見ると九時少し前。此処に来たのが三時過ぎてたから、かなり時間が経ってる。色気がないって言われても気にしない! たとえ、少し前まで妖しい感じだったとしても!
「でも、俺は料理は苦手で」
ん? お菓子作るの趣味って言ってなかった? そんな話をしていると、何処かから、扉の開く音。其方に視線を向けると、現れたのは貴羅さん。
「お帰り」
暁は変わらない様子でそう言ってるけど、僕はまともに貴羅さんを見れない。だって、絶対、分かってるよね。何があったかなんて……。
「こんなところで、何和んでるの?」
「お腹が空いたから」
貴羅さんの質問に、暁は普通に答えてるよ。僕はどうしていいか、分かんないのに。
「呑んできたの?」
「軽くね。ちょっと待ってて、何か作るから」
貴羅さんは軽い調子で言ってるけど、いいの?!
「僕が! ……っ」
勢いよく立ち上がったら、腰に痛みが走った。うん、聞いてたけど、結構、負担がかかるんだね。
「座ってて。無理させたんだろうし」
やっぱり、分かってるし! ボンって、顔が赤くなった。分かってる、自分で墓穴を掘ってるって!
「雪兎、隠したいんだろうけど、顔に全部で出る。キョウのお姉さん、そういうところ、目敏いんじゃないの?」
言われなくても分かってるんだけど、僕に平常心とか器用な真似は無理。両手で顔を覆って、何とかしようとするんだけど、隠せてない。
「響也君にお姉さん何ているの?」
暁の言葉に反応を示したのは貴羅さん。まあ、暁が知らなかったんだから、知るわけないよね。キョウはクウちゃんの事を隠したがるから。とある理由で!
「いるんだけど、ちょっと、問題が……」
何となく、言っちゃいけないような気がする。キョウを気に入ったって言った時の貴羅さんの顔が、僕、忘れられないんだよね。こう、ゾワッてして。
「問題って?」
キッチンで手を動かしながら、問いかけられても、答えたらキョウが窮地に立つ気がする!
「腐女子」
和かに答えたのは、何故か暁。僕は恐る恐る暁を見上げた。顔は笑ってるのに、目が笑ってない。
「楽しそうな家族だね」
「お母さんもだって」
爆弾投下! どうして、そんなこと言うの?!
「兄さんはキョウを気に入ったわけでしょう? 家族とか関係ないんじゃないの?」
どういうこと?!
「確かに関係ないね。でも、使える情報だよね」
怖い! 本能が警鐘を鳴らしてる。僕でも、感じることが出来るほど、凄く怖い!
「兄さん。雪兎を恐がらせないでくれない」
暁が少し剣呑な表情を見せた。貴羅さんは肩を竦めると、四人がけの食卓テーブルにオムライスを乗せた。
「まあ、食べて」
うん。すごく美味しそう。卵はふんわりしてるし、デミグラスソース? なのかな? いい匂いがしてる。二人で並んで座って、揃って「いただきます」と言った。
「美味しい」
僕では絶対作れない味。中のライスはケチャップライスじゃなくて、バターライス。僕が幸せそうに食べるから、二人はじっと僕に視線を向けていた。知らなかったけど。
「うん。雪兎君は歳相応の反応だね。まあ、暁が可愛気ないだけだけど」
貴羅さん、容赦ない言いっぷりだよね。仮にも弟に向かって。
「兄さんに言われたくないんだけど」
「確かに人のことは言えないけどね」
喉の奥で笑ってる姿が、とっても恐いです。見た目穏やかなだけに、違和感と相まって半端ないです。
「君も響也君程じゃないけど、感じ取る感性があるんだね」
「キョウ?」
「そう」
貴羅さんの笑みは本当に素直に受け取ったら痛い目に合うって、本能が僕に告げてる!
「本心を漏らしてもいいかな?」
何だろう。聞いたら、後戻りできなくなるような気がする。
「俺、響也君が欲しいんだよね」
この言葉に、流石の暁も固まった。
「兄さん。歳の差分かってる? 未成年を誑かすのは犯罪だけど」
「大丈夫。本気だから」
本気でも、犯罪です。やっぱり、キョウは危険を呼び寄せてる! 多分、本人判ってると思うけど。いや、見ないようにしてるかも。でも、多分逃げられないと思う。僕は背中に嫌な汗が伝うのを感じた。
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