置き去りの恋

善奈美

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暁×雪兎編

03 変態観察日記2(響也視点)

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 よく晴れた日曜日の朝。俺は親父とコーヒーブレイク中だ。ま、通常運行の休みの朝だな。
 
 で、あっちもある意味、通常運行だ。
 
「もう、どうして、響也は思い通りにならないの!」
 
 大声をあげてるのは、腐ってる姉貴だ。
 
「育て方、間違えたかしら」
 
 ふざけた事をぬかしてるのはお袋。二人して腐ってる。マジ、ネットリ、腐ってやがる!
 
 姉貴だけならまだしも、お袋も筋金入りだ。マジ、勘弁だ。
 
「なあ、訊きたいんだけど」
「何が訊きたいんだ」
 
 親父はお袋達の話など聞こえていないように、のほほん、とコーヒー飲んでる。
 
「お袋の趣味、わかってて結婚したのかよ」
 
 そう言いながらコーヒー啜った。ちょっと、冷めてきたな。
 
「付き合う前から知ってたぞ」
 
 こら、待てよ。今、面っと何ぬかした。
 
「三浦、知ってるだろう」
「……おう」
 
 三浦さんってのは、親父の同僚で、同じ大学の同期だったな。名前は晶也さん。時々会うっていうか、お袋と三浦さんの奥さんが仲いいんだよ。
 
「美和さんと莉嘉さんで、まあ、俺と三浦をネタに、そっちの話を書いてたんだ」
 
 知ったのは偶然だったのだと、親父は言った。母娘して同じことしてんなよな。溜め息しか出ないわ。あ、親父はお袋を名前で呼ぶんだ。しかも、さん付け。ちなみに親父の名前は彬。お袋もさん付けの名前呼びだ。

「新人研修で俺達がまあ、親しく話してるのを見て、ネタにっていうか、モデルにしたらしくてな」
 
 研修の後、配属になった部署がお袋と親父、三浦さんと莉嘉さんが同じところだったらしく、つまりは観察されていた、って何やってんだよ。マジ、頭いてぇよ。
 
「初めは勘違いしてな。互いに相手に訊いたら、まあ、趣味で観察していたと」
 
 だが、ジッと見詰められていては周りも勘違いをする。で、四人で連むようになったというのが真相だと、軽い調子で親父は言う。
 
「でもよ。何で結婚したんだよ」
 
 気になるのはそこだよな。親父達はまあ、ぶっちゃけ、あっちの話のモデルだったわけだろう。
 
「早い話が、プロポーズされたんだよ」
「は?」
「自分達の趣味を知っても、まあ、態度変わらなかったしな」
 
 趣味が迷惑なだけで、他は普通だったらしい。他も迷惑だったらやってらんねぇと思うけどさ。
 
「まさか、クウまで同じになるとは思わなかったしな」
 
 クウっていうのは、姉貴の愛称だ。名前が空音だからな。
 
「もっと言えば、三浦の娘もなんだよ」
 
 親父、乾いた笑いしてるぞ。
 
「蛙の子は蛙か。お前を男子校に入れたのだって、美和さんの趣味だからな」
 
 おい、待てよ。それなんだよ。
 
「いや、まさか、中学受験で受かるなんて思わなかったしな。お前、頭良かったんだな」
 
 父親のくせに、他人事か! 突っ込みたくなるわ! ん? なんか、大切なこと言われた気がするぞ。そうだよ。あの学校、中高一貫で受験があったんだよ。
 
「どうした?」
 
 俺、血の気が引いた。
 彼奴、莫迦じゃねえよ。
 あの学校、倍率高いんだよ。で、受かってんだよ。があああああ、俺、墓穴掘ってんじゃんよ!
 
 どうすんだよ、俺!
 
 
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