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神獣と禊の乙女
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その人の本性を見破れない。それで神だと、妖だと喚いている。この地を収める神獣である彼は、彼女の妹を伴侶として決めた。しかし、その妹は心が卑しく、誰のものでも欲しがる阿婆擦れだ。それを可愛い仮面に隠し、自分が行った所業を双子の姉に押し付けていた。妹の体は純潔を失って久しく、しかし、当の神獣である彼は気が付いていない。神獣の花嫁は純潔が求められる。それは、花嫁となった後に、別の男の種で子をなさない為でもあった。一度、神獣以外と契ると、純粋な神獣が誕生しないらしい。何せ、神獣の寿命が長すぎて、人間はいちいち覚えて居られないのである。勿論、神獣の伴侶となった者は繋がる事で体の時を止める。つまり、若々しいままなのだ。
若さを美しさを何よりも求める妹は、神獣に有る事無い事吹き込んでいた。つまり、双子の姉は阿婆擦れであり、神獣に害をなそうとしていると。妹に心酔していた神獣は愚かにも騙されてしまった。本当なら心身が美しい姉を娶らなければならなかったのだ。しかし、それはもう叶わなかった。妹と契りを交わし、神獣は漸く理解した。次代を望めなくなった事を。何より、神獣としての力がなくなってしまった事を。
「君は僕を騙したんだね」
神獣の言葉に妹は顔色を悪くした。
「この地の守護を担う神獣は君の行いのせいで失われたよ。望んだ事だったのだろうね。私は力を失った。当然、君も今までと同じように老いが待っているよ」
「どう言う事よ!」
「知らなかったんだね。僕達神獣は清らかな乙女を娶らなくてはならない。それなのに、君は既に純潔を失っていた。これは僕の落ち度だ。神託が降った娘は君ではなく、双子の姉の方だったと言う事だよ。まさか、君が僕を騙し、周りを騙し、双子の姉を陥れているなんて知らなかったよ。神獣として恥いるばかりだ」
しかも、彼女の姉は家を追い出され、その土地を追い出されていた。探そうにも、もしかしたら命は儚くなくっているのかもしれない。妹の家は長きに渡り神獣の花嫁を送り出していた。その為か権力があり、やりたい放題していたのだ。妹はそんな両親とそっくりであり、双子の姉は反面教師のようにして育った。それを見抜けなかったのだ。
「申し訳ないけど、出て行ってもらうよ。この土地に君達家族のいる場所はないよ。僕も近々、この地を追われる。愚かであった僕を仲間は許しはしない」
神獣はそう告げると、眷属である者が妹を両親の元に連れて行き、そのままその土地から追い出した。当然、喚き散らしたようだが、真実を教えられ両親は青褪めた。まさか、そんな事になっているなど想像出来なかったのだ。妹の話を鵜呑みにしていたのだ。
「主様……」
「済まない。私が愚かであったばかりに」
「いえ。違います。その、神託の方がお見えです。その、お友達である神獣様と共に」
神獣は驚いたように目を見開いた。意味が理解出来なかったのだ。
「美しい魂の娘が死にそうになっていたそうです。助け介抱し、話をお聞きになったと。それで、此方に」
「今更、どんな顔で会えると思う? 僕は散々、彼女を愚弄したんだよ」
「まあ、それは本当にお前が悪いよな」
朱雀と言う神獣である彼と、白虎と言う神獣である友達である彼は対峙する。
「私で本当に神獣様の力が戻るのですか?」
双子の姉である彼女は控えめながら、はっきりとした声で問い掛ける。自分の命でこの地が守られるならそれでいい。彼女はそう考えていた。
「うん。戻るよ。まあ、此奴がそれを納得するかはまた別の話だけど」
白虎は軽い口調で言い切る。
「全ては私の家族が起こした不祥事です。受け入れます」
双子の姉である彼女は言い切りはしたが、恐怖がない訳ではなかった。自然と体が震える。本来なら次代を生み出すための聖なる婚姻。それが、妹の所業で神獣の禊のための婚姻に代わってしまったのだ。
「そんなことをする必要はないよ。僕がこの地を離れたら、新たなる神獣が生まれる。数年、この地は荒れるだろうけど、愚かな神獣である僕が残るのは逆に問題だよ」
朱雀である神獣はそう言うと瞳を伏せた。人と交わることで次代を残す神獣だが、罪を犯し消えた神獣の代わりは自然とこの土地から生まれ出でる。つまり、何の穢れもない真っ新な存在なのだ。
「お前は馬鹿か。ほんの数年? それは神獣だから言える戯言だ!」
白虎は知っていた。数年、神獣の加護を失ったその地は荒れに荒れ、元の豊かな土地に戻るのに何百年と掛かるのだ。
「禊の乙女を娶れ! 他の神獣にも負担が掛かるんだぞ!」
「では、彼女は?! 穢れた神獣を受け入れる彼女はいいのか?!」
「今まで、穢れた神獣を受け入れた乙女はいない! どうせお前のことだ。穢れが祓われたら命を落とすとか考えてるだろう?! ならばお前が努力しろ!」
白虎に殴り掛からん勢いで胸ぐらを掴まれ、至近距離で怒鳴り散らされる。
「後悔なら誰でも出来るんだ。神も人も変わらんからな。命を失うことを選択した時点で、お前は責務を投げ出した事になるんだぞ!」
白虎の言葉に朱雀は心が揺らいだ。
「いいか。あの女は天性の嘘つきだ。親神様ですら騙される程の魔性の嘘つきなんだよ」
「え?」
「俺達神獣が土地を護るのは、魔の者に侵食されないようにするためだ。その魔をあの女は体の中に飼っていた。両親もだ。双子の姉であった彼女だけあの家にいながら穢れないままでいられた。それは稀有な事なんだぞっ」
「それなら尚更っ」
双子の姉である彼女は今の言葉で迷いが消えた。本当なら怖いと思う。恐ろしいと思う。けれど、少なくとも神獣は理不尽に踏み躙ろうとしている訳ではない。彼女の献身でこの土地は護られるのだ。ならば、迷う必要などないのである。
「どうか私をお使い下さい」
彼女は一言、そう微笑んだ。
⌘⌘⌘
あの後、どうなったのか。白虎はそう物思いに耽った。朱雀を嗾しかけ、彼女を娶らせた。その後、朱雀宮が完全に閉ざされたのだ。朱雀の護っていた土地はそのまま護られているが、主人たる朱雀と、禊の乙女の姿を見ない。完全に繭に包まれてしまった朱雀宮は百年、全く動きを見せなかった。禊の乙女が命を失い朱雀が心を閉ざした結果なのか。それとも、互いに力付き、深い眠りについたのか。分かるのは本人達だけなのだ。
「嗾けた事を後悔しているのか?」
そう声をかけて来たのは青龍だ。白虎は緩く首を振る。結局、あの結果の望んだのは禊の乙女だ。多くの犠牲を彼女は望まなかった。
「いや、後悔はない。でもな、もしかしたら、俺もそうなるのかと、恐怖を感じてるだけだ」
神獣は次代を残すことも仕事のうちである。生まれてくるのは最初は神獣ではない。親である神獣が没した後、神格を得る。その資格を持つ者を生み出すのが次代を残す意味なのだ。
「如何だろうな。再生の炎を持つ朱雀が騙されるなど、本来ならあり得ないのだが」
「聖水を持つ青龍だからの意見か?」
「そうとも言えるし、そうだとも言えない」
どちらにせよ、朱雀の覚醒を待つしかない。季節は移ろい、そんな季節を数えるのをやめて久しくなってから白虎は目を見開く。白虎宮に現れたのは朱雀本人。その傍らには禊の乙女。その腕には幼い命。
「心配を掛けて済まなかった」
「無事だったのか?」
「僕の穢れが酷かったんだ。祓うために眠りにつくように親神様からお言葉があって」
禊の乙女と契りを交わした後、二人は深い眠りについた。そして、目覚めた時、二人の間に新しい命の存在があった。
「私は命を落としていませんでした。覚悟をしていましたのに」
禊の乙女はポツリと呟く。
「君の魂はね、凄く澄んでいた。死にはしないと確信していた」
白虎は目を細め告げたのだ。あの時、脅しのような言葉を並べたのは朱雀の覚悟を促すために他ならない。
「まあ、せいぜい、甘やかしてやるんだな。苦労していたようだし」
白虎の言葉に朱雀は頷く。禊の乙女はただ、顔を赤らめた。
⌘⌘⌘
一方、双子の姉を陥れていた妹と両親は如何なったのか。あの土地を追い出され、彷徨い歩いていた彼等だが、喧嘩が絶えなかった。元々、魔を心に飼っていた彼等は幾らも立たないうちに魔に侵食された。今まで無事だったのは、禊の乙女である双子の姉がいたからに他ならない。あっという間に飲み込まれ、その魂はこの世だけではなく、何処にも存在しなくなっていた。
終わり。
若さを美しさを何よりも求める妹は、神獣に有る事無い事吹き込んでいた。つまり、双子の姉は阿婆擦れであり、神獣に害をなそうとしていると。妹に心酔していた神獣は愚かにも騙されてしまった。本当なら心身が美しい姉を娶らなければならなかったのだ。しかし、それはもう叶わなかった。妹と契りを交わし、神獣は漸く理解した。次代を望めなくなった事を。何より、神獣としての力がなくなってしまった事を。
「君は僕を騙したんだね」
神獣の言葉に妹は顔色を悪くした。
「この地の守護を担う神獣は君の行いのせいで失われたよ。望んだ事だったのだろうね。私は力を失った。当然、君も今までと同じように老いが待っているよ」
「どう言う事よ!」
「知らなかったんだね。僕達神獣は清らかな乙女を娶らなくてはならない。それなのに、君は既に純潔を失っていた。これは僕の落ち度だ。神託が降った娘は君ではなく、双子の姉の方だったと言う事だよ。まさか、君が僕を騙し、周りを騙し、双子の姉を陥れているなんて知らなかったよ。神獣として恥いるばかりだ」
しかも、彼女の姉は家を追い出され、その土地を追い出されていた。探そうにも、もしかしたら命は儚くなくっているのかもしれない。妹の家は長きに渡り神獣の花嫁を送り出していた。その為か権力があり、やりたい放題していたのだ。妹はそんな両親とそっくりであり、双子の姉は反面教師のようにして育った。それを見抜けなかったのだ。
「申し訳ないけど、出て行ってもらうよ。この土地に君達家族のいる場所はないよ。僕も近々、この地を追われる。愚かであった僕を仲間は許しはしない」
神獣はそう告げると、眷属である者が妹を両親の元に連れて行き、そのままその土地から追い出した。当然、喚き散らしたようだが、真実を教えられ両親は青褪めた。まさか、そんな事になっているなど想像出来なかったのだ。妹の話を鵜呑みにしていたのだ。
「主様……」
「済まない。私が愚かであったばかりに」
「いえ。違います。その、神託の方がお見えです。その、お友達である神獣様と共に」
神獣は驚いたように目を見開いた。意味が理解出来なかったのだ。
「美しい魂の娘が死にそうになっていたそうです。助け介抱し、話をお聞きになったと。それで、此方に」
「今更、どんな顔で会えると思う? 僕は散々、彼女を愚弄したんだよ」
「まあ、それは本当にお前が悪いよな」
朱雀と言う神獣である彼と、白虎と言う神獣である友達である彼は対峙する。
「私で本当に神獣様の力が戻るのですか?」
双子の姉である彼女は控えめながら、はっきりとした声で問い掛ける。自分の命でこの地が守られるならそれでいい。彼女はそう考えていた。
「うん。戻るよ。まあ、此奴がそれを納得するかはまた別の話だけど」
白虎は軽い口調で言い切る。
「全ては私の家族が起こした不祥事です。受け入れます」
双子の姉である彼女は言い切りはしたが、恐怖がない訳ではなかった。自然と体が震える。本来なら次代を生み出すための聖なる婚姻。それが、妹の所業で神獣の禊のための婚姻に代わってしまったのだ。
「そんなことをする必要はないよ。僕がこの地を離れたら、新たなる神獣が生まれる。数年、この地は荒れるだろうけど、愚かな神獣である僕が残るのは逆に問題だよ」
朱雀である神獣はそう言うと瞳を伏せた。人と交わることで次代を残す神獣だが、罪を犯し消えた神獣の代わりは自然とこの土地から生まれ出でる。つまり、何の穢れもない真っ新な存在なのだ。
「お前は馬鹿か。ほんの数年? それは神獣だから言える戯言だ!」
白虎は知っていた。数年、神獣の加護を失ったその地は荒れに荒れ、元の豊かな土地に戻るのに何百年と掛かるのだ。
「禊の乙女を娶れ! 他の神獣にも負担が掛かるんだぞ!」
「では、彼女は?! 穢れた神獣を受け入れる彼女はいいのか?!」
「今まで、穢れた神獣を受け入れた乙女はいない! どうせお前のことだ。穢れが祓われたら命を落とすとか考えてるだろう?! ならばお前が努力しろ!」
白虎に殴り掛からん勢いで胸ぐらを掴まれ、至近距離で怒鳴り散らされる。
「後悔なら誰でも出来るんだ。神も人も変わらんからな。命を失うことを選択した時点で、お前は責務を投げ出した事になるんだぞ!」
白虎の言葉に朱雀は心が揺らいだ。
「いいか。あの女は天性の嘘つきだ。親神様ですら騙される程の魔性の嘘つきなんだよ」
「え?」
「俺達神獣が土地を護るのは、魔の者に侵食されないようにするためだ。その魔をあの女は体の中に飼っていた。両親もだ。双子の姉であった彼女だけあの家にいながら穢れないままでいられた。それは稀有な事なんだぞっ」
「それなら尚更っ」
双子の姉である彼女は今の言葉で迷いが消えた。本当なら怖いと思う。恐ろしいと思う。けれど、少なくとも神獣は理不尽に踏み躙ろうとしている訳ではない。彼女の献身でこの土地は護られるのだ。ならば、迷う必要などないのである。
「どうか私をお使い下さい」
彼女は一言、そう微笑んだ。
⌘⌘⌘
あの後、どうなったのか。白虎はそう物思いに耽った。朱雀を嗾しかけ、彼女を娶らせた。その後、朱雀宮が完全に閉ざされたのだ。朱雀の護っていた土地はそのまま護られているが、主人たる朱雀と、禊の乙女の姿を見ない。完全に繭に包まれてしまった朱雀宮は百年、全く動きを見せなかった。禊の乙女が命を失い朱雀が心を閉ざした結果なのか。それとも、互いに力付き、深い眠りについたのか。分かるのは本人達だけなのだ。
「嗾けた事を後悔しているのか?」
そう声をかけて来たのは青龍だ。白虎は緩く首を振る。結局、あの結果の望んだのは禊の乙女だ。多くの犠牲を彼女は望まなかった。
「いや、後悔はない。でもな、もしかしたら、俺もそうなるのかと、恐怖を感じてるだけだ」
神獣は次代を残すことも仕事のうちである。生まれてくるのは最初は神獣ではない。親である神獣が没した後、神格を得る。その資格を持つ者を生み出すのが次代を残す意味なのだ。
「如何だろうな。再生の炎を持つ朱雀が騙されるなど、本来ならあり得ないのだが」
「聖水を持つ青龍だからの意見か?」
「そうとも言えるし、そうだとも言えない」
どちらにせよ、朱雀の覚醒を待つしかない。季節は移ろい、そんな季節を数えるのをやめて久しくなってから白虎は目を見開く。白虎宮に現れたのは朱雀本人。その傍らには禊の乙女。その腕には幼い命。
「心配を掛けて済まなかった」
「無事だったのか?」
「僕の穢れが酷かったんだ。祓うために眠りにつくように親神様からお言葉があって」
禊の乙女と契りを交わした後、二人は深い眠りについた。そして、目覚めた時、二人の間に新しい命の存在があった。
「私は命を落としていませんでした。覚悟をしていましたのに」
禊の乙女はポツリと呟く。
「君の魂はね、凄く澄んでいた。死にはしないと確信していた」
白虎は目を細め告げたのだ。あの時、脅しのような言葉を並べたのは朱雀の覚悟を促すために他ならない。
「まあ、せいぜい、甘やかしてやるんだな。苦労していたようだし」
白虎の言葉に朱雀は頷く。禊の乙女はただ、顔を赤らめた。
⌘⌘⌘
一方、双子の姉を陥れていた妹と両親は如何なったのか。あの土地を追い出され、彷徨い歩いていた彼等だが、喧嘩が絶えなかった。元々、魔を心に飼っていた彼等は幾らも立たないうちに魔に侵食された。今まで無事だったのは、禊の乙女である双子の姉がいたからに他ならない。あっという間に飲み込まれ、その魂はこの世だけではなく、何処にも存在しなくなっていた。
終わり。
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