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Ⅶ 眠らない月
01 日記
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偶然、 物置の中から見つけたのは古い日記だった。ほんの少し興味を持っただけだった。数ページ読み進めあることに気が付く。
「これ……」
普通の日記ではなかった。綴られていたの苦痛の日々。書いたのは苦痛を与えられた者ではなく、待ち続けた者。
文字は幼く、けれど、憎しみを刻みつけたような書き殴ったような感じがした。両親を奪われ、置き去りにされた孤独の言葉を書き連ねている。
体が震えた。
そこに書かれていた事実に驚愕した。
思い出すのは友人のシオンだった。満月の光で女性となり、次の満月の日に婚礼の儀を迎える。
相手は男性。黒薔薇の主治医の後継者だ。
日記を綴っているのは満月で女性となった者の子供。最後まで両親と暮らすことなく、その両親はこの世から消えた。
「……これが真実だったら……」
恐ろしい現実だ。日記を持つ手が震えた。そのまま日記は落下し、埃が舞い上がる。拾い上げる勇気がわかなかった。
もし、シオンやカイファスが知ったらどうなるだろうか。
相手が知ったらどうなるだろうか。何よりおぞましかった。
吸血族は呪われた種族だ。少なくともルビィはそう思った。何かが狂い、何かが知らない内に決まっていく。
日記の主はおそらくルビィの祖先だ。吸血族に流れる犠牲となった者達の血。その中でルビィの祖先は本当に愛し合った者達の間に生まれ、苦痛と憎しみを育んだ。
「シオン……」
シオンに知らせるべきか悩み、だが、無理であると思い直す。準備に忙しい筈だ。この話しは幸せに水を差すことになる。
だが、一人で抱えるには重すぎる。押しつぶされそうになる。しかし、誰かに語るのは危険すぎた。
では、黒の長に知らせるべきか。ルビィは悩み、決断することが出来なかった。
一日が過ぎ、二日が過ぎ、心は沈んでいく一方だった。シオンから招待状が届くと更に心が沈んだ。祝福したいのに、何かが邪魔をする。
ルビィはそんな中で最大の罪を犯してしまった。友人のエンヴィに漏らしてしまった。無意識だったと言えば嘘になる。
楽になりたかったのだと、心の片隅で呟く者がいた。
「これ……」
普通の日記ではなかった。綴られていたの苦痛の日々。書いたのは苦痛を与えられた者ではなく、待ち続けた者。
文字は幼く、けれど、憎しみを刻みつけたような書き殴ったような感じがした。両親を奪われ、置き去りにされた孤独の言葉を書き連ねている。
体が震えた。
そこに書かれていた事実に驚愕した。
思い出すのは友人のシオンだった。満月の光で女性となり、次の満月の日に婚礼の儀を迎える。
相手は男性。黒薔薇の主治医の後継者だ。
日記を綴っているのは満月で女性となった者の子供。最後まで両親と暮らすことなく、その両親はこの世から消えた。
「……これが真実だったら……」
恐ろしい現実だ。日記を持つ手が震えた。そのまま日記は落下し、埃が舞い上がる。拾い上げる勇気がわかなかった。
もし、シオンやカイファスが知ったらどうなるだろうか。
相手が知ったらどうなるだろうか。何よりおぞましかった。
吸血族は呪われた種族だ。少なくともルビィはそう思った。何かが狂い、何かが知らない内に決まっていく。
日記の主はおそらくルビィの祖先だ。吸血族に流れる犠牲となった者達の血。その中でルビィの祖先は本当に愛し合った者達の間に生まれ、苦痛と憎しみを育んだ。
「シオン……」
シオンに知らせるべきか悩み、だが、無理であると思い直す。準備に忙しい筈だ。この話しは幸せに水を差すことになる。
だが、一人で抱えるには重すぎる。押しつぶされそうになる。しかし、誰かに語るのは危険すぎた。
では、黒の長に知らせるべきか。ルビィは悩み、決断することが出来なかった。
一日が過ぎ、二日が過ぎ、心は沈んでいく一方だった。シオンから招待状が届くと更に心が沈んだ。祝福したいのに、何かが邪魔をする。
ルビィはそんな中で最大の罪を犯してしまった。友人のエンヴィに漏らしてしまった。無意識だったと言えば嘘になる。
楽になりたかったのだと、心の片隅で呟く者がいた。
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