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Ⅴ 月虹蝶
一章
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セイラはいい加減、頭にきていた。ヒューラが煮え切らないのは何時ものことだし、気にもしていなかったのだが、他人の言動に左右される、その心の弱さが許せなかったのだ。
セイラが好きなのはヒューラであって、他の誰でもない。判っているものだと疑っていなかったのに、ヒューラは見事に裏切ったのだ。
姉妹達がそれぞれ進んでいるのに、セイラは立ち止まったまま、何一つ進んでいない。ヒューラをただ、待っていては進展などありはしない。
いきなり立ち上がったセイラに、隣で編み物をしていたルーチェンは驚いたように見上げた。唇を噛み締め、鋭く架空を睨みつける様子に、ただ事ではないと察するのは容易だった。
うじうじと煮え切らないのなら、此方から引導を渡してやると、セイラはそこまで考えていた。気が弱いことは判っている。姉妹達にも、どうして、ヒューラのことが好きなのかと、何回か訊かれたことがあった。
答えは、放っておけない、というものだった。
他の幼馴染み達はきちんと自分の考えを持っている。そのせいで、いざこざがあったとしても、それなりに自分自身で対応出来る。
だが、ヒューラは気が弱いせいか、他人の考えに流れてしまう傾向が強い。母親に似たのだろうと言うが、カイファスは確かに煮え切らないところがある。だが、ヒューラのように気が弱いということはない。言いたいことははっきりと口にしている。
つまり、ヒューラは誰かに似たのではない。生まれたときから、気が弱く、精神的に強くない。成長過程でいくらでも修正することが可能であった筈だが、自分で変わろうと思わなければ、変われるわけがない。
架空を睨みつけたまま、そんなことを考えていると、室内の気配が増えていた。視線を向けると、そこに居たのは叔父のベンジャミン。
「どうかしたの」
ルーチェンがそう、問い掛けていた。
「これから、アーダとファーダが大変なことになるから、何かあったら手伝って欲しいんだ」
ベンジャミンはルーチェンに何が起こっているのか、説明していた。
どうやら、アーダはファーダの気持ちを変えることが出来たのだろう。アーダの性格からして、強引に持っていったとも考えられた。
双子の姉で何時も一緒に居たのに、先に歩いて行ってしまう。その背中を、ただ、見詰めているだけなんて絶対に嫌だった。
「叔父さん……」
呻るように名前を呼ばれ、ベンジャミンは困惑した。姪達の中では比較的温厚で、どちらかといえば、何時も穏やかな気配を身に纏っている。そのセイラから剣呑な気配を察し、ベンジャミンは眉間に皺を寄せた。
絶対に良い傾向ではない。いくら温厚で大人しい性格でも、セイラは兄夫婦の娘なのだ。
「出掛けてくるわ」
ベンジャミンは更に困惑した。今のセイラの状態で、一人にするのは非常に危険だ。だからといって、着いていく事も出来る状況ではない。
「何処に行くの」
「ヒューに引導を渡してくるわ。何時までも、煮え切らないのなら、私にも考えがあるわ」
顔をベンジャミンとルーチェンに向け、セイラは怖い顔で凄む様に言い切った。
「私を莫迦にしないで。これでも、お父さんとお母さんの娘よ。何時までも大人しくしていると思っているなら、思い知らせてやるわっ」
セイラのあまりの勢いに、二人は口を噤んだ。
「何時までも待ち続けると思っていたら大間違いよっ。それに、卑怯な男達なんてこちらから願い下げだわっ」
セイラが叫んだ言葉に、ベンジャミンは首を傾げた。卑怯な男達とは、どう言う事なのだろうか。
「女達が何時までも思い通りになると思っているのなら、思い知らせてやるっ。私にも人並みに心はあるのよっ。意に反する婚姻なんてしたくないわっ。それなら、レーヴと結婚した方が百倍も千倍もましよっ」
レーヴは従兄弟なのだから結婚は無理だ。そんなことはセイラにも判っているだろう。ここまで怒るということは、ヒューラは何か失言をしたのだ。それも、自分の意志ではなく、他人に言われて言ったものだろう。それくらいは想像出来る。
「どうする気」
ベンジャミンは小さく息を吐き出し、問い掛けた。セイラは気を落ち着かせるようにゆっくり息を吸い、吐き出した。
「ヒューの所に行って来るわ」
ベンジャミンは腕を組むと、小さく首を傾げる。ルーチェンは、ハラハラと二人のやりとりを見守ることしか出来ない。
「その後は」
「ヒュー次第よ。最悪、お嫁には行かないわ」
セイラは俯くと唇を噛み締めた。ベンジャミンはただ、セイラを見詰める。セイラは判っているのだろうか。
アレンがその名前に込めた願いを、理解しているのだろうか。代わりになどしたくはないと言っていたが、おそらく、誰よりも幸せになってもらいたかった筈だ。
母方の祖母の色を受け継ぎ、誰よりも苦痛を強いられ、悪者になることを甘受した、セイラ、の為にアレンが名付けたのだ。
黒薔薇の主治医の館に身を寄せてからは、穏やかな時間を過ごしていた姿を、ベンジャミンは覚えている。元来、大人しい性格だったのだろう。終始、シオン、ジゼルとジュディに押されっぱなしだったが、楽しそうにしていた。
だが、後ろめたかったのだろう。楽しそうにしてはいても、どこか、翳りがあった。控え目な笑みを浮かべるその姿を、今でも忘れられなかった。
「止めはしないよ。でも、短絡的に考えては、兄さんにお咎めを受けるから、しっかりと、納得出来る答えを出すんだよ」
ベンジャミンはそう、セイラに言った。セイラはその言葉に顔を歪めた。判ってはいるが、一人だけ取り残されたようで、寂しいのだ。
セイラは逃げるように二人の前から姿を消した。その姿を見送ったルーチェンは、ベンジャミンを見上げる。
「本当に放っておいて大丈夫なの」
ルーチェンに視線を向けたベンジャミンは苦笑いを浮かべた。結局は、本人次第だ。だが、気になっていることがあったのだ。ヒューラは気が弱いと、皆が認識している。その部分に、ベンジャミンは疑問を持っていた。
「判らないわ」
「ヒューは気が弱い。確かにそうなんだけど、納得出来ないんだ」
ヒューラはゼロスの息子で、あの、黒の長の曾孫なのだ。どう考えても、気が弱いとは考えにくい。
「でも……」
「うん。混乱するのは判るんだけど、百歩譲って本当に気が弱いんだとしたら、セイラはヒューを見限ると思う」
しかし、本当に見た目通りなのだろうか。周りの灰汁が強いから、そう見えるだけで、実際は違うのではないかと、ベンジャミンは考えている。
何より、そう、見せかけているような気がするのだ。目的は判らないが、ただ気が弱いでは、説明出来ないこともある。
ヒューラは他の薔薇の子達同様、黒薔薇の主治医の館で、ジゼルの監視の下、一緒に育っている。それは、ファーダのためでもあったのだが、多くの子供達の中で育ち、当然、その中で個性が生まれるのは必然だ。
幼い時の姿を見ている限りでは、気が弱いということはなかった。どちらかと言えば、積極的な方だった。しかし、ある程度成長し、家業を習得するため、それぞれの実家に帰った後、ヒューラの中で何らかの変化があったのだ。
その変化が何であるのか、判っている者などいないだろう。両親ですら判らず、困惑しているくらいなのだ。
「気が弱いで片付けるのは危険な気がするんだ」
ベンジャミンは架空を見詰め、呟いた。
「でも、それなら、どうしてセイラは怒っているの」
「セイラにすら、本心を明かさなくなってるんだろうとは思うんだけど、誰もが気が弱いって言ってるんだ。つまり、誰にも本来の姿を見せていない。それどころか、知られないように慎重になっているんじゃないだろうか」
ヒューラは何らかの理由で、本心を明かさなくなってるのではないだろうか。何より、アレンが全くと言っていいほど、ヒューラについては話さない。それが、ベンジャミンが訝しんでいる理由なのだ。
「アレンさん」
ルーチェンは首を傾げた。何故なら、ルーチェンはアレンの特殊な能力を知らないからだ。
「兄さんは少し変わった特技を持っているんだ」
流石に月読みであるとは、妻であっても言うわけにはいかない。アレンの能力は秘密になっているからだ。
「判らないわ」
「誰もが知りえないことを知ることが出来るんだよ」
ベンジャミンは口を噤み考えた。何も言わないということは、言う必要がないということだ。確かに、セルジュやファーダのような、特殊な存在ではないが、仮にも黒薔薇の部族長の曾孫なのだ。当然、そのことについて、黒の長から難問を吹っかけられている筈である。
あの黒の長が、大人しく成り行きを見守るとは考えられない。
ルーチェンはベンジャミンの言い方で、アレンの能力について教えてはくれないと判断出来た。隠し事は余程でなければしないベンジャミンが口を噤むのだ。詮索するのは間違えているのだと、気持ちを改めた。
「じゃあ、何があったって思っているの」
ルーチェンは質問を変えた。本当の意味で知りたいのはアレンの能力ではないからだ。セイラがあそこまで考え込んでしまった理由を知らなくてはならない。
「実は少し困ったことになってるみたいなんだ」
薔薇の血筋は子孫を残そうとする。だが、女児を産んでいるのは黄薔薇だけで、後は紅薔薇の娘であるルーチェンだけだ。
困ったこととは、薔薇の血筋から薔薇が誕生するのではないかという、誤った情報が流れ始めたことなのだ。
「そんなのおかしいわ」
「そうなんだけど、吸血族の緊迫した状況を考えると、仕方がないんだ」
他の薔薇の子達はどちらかと言えば、体格が良いほうだ。しかし、ヒューラは身長こそあるものの華奢な体付きで、どうやら、幻想を抱いた者が現れ始めたようだ。
最初はセルジュが女性になることを望む者が多かったのだが、変化の兆しすら現れないせいで、矛先がヒューラに向いたのではないかというのだ。
「どうしてそうなるの」
ルーチェンは脱力した。
「ここが重要何だけど、セイラはそのことを知らないんだ」
今、黒薔薇の部族の中で、ヒューラがかなり、おかしな位置付けになっていることを、知っている者は少ない。
おそらく父親のゼロスは気が付いているのかもしれないが、母親のカイファスは気が付いていないだろう。水面下で何かが蠢いているのだ。
「じゃあ……」
「兄さんは何か知っていると思う。僕が気が付くんだから、絶対に知っている筈なんだ」
それでも動かないのは、動く必要がない、と言うことだ。では、何故、動かないのか。簡単に考えるなら、ヒューラは知っていて、何かを隠しているのだ。
確かにベンジャミンの話を聞くと、おかしなことに気が付く。セイラは知らない。ヒューラがどういう状況になっているのか。それは、言い方を変えれば、情報を得られる状況にいないということになる。
だが、アレンは娘達に必要な情報は隠したりしていない。知りたければ、自分で調べればいいという、かなりの放任主義だ。
だから、他の吸血族の娘達と比べれば、下手な男達より知っていることは多い。セイラはその気になれば、ヒューラの状況を知ることは可能なのだ。では、何故、調べようとしないのか。
「セイラを怒らせたことが、ヒューラの中で必要なことだったとしたら……」
怒らせることで、ヒューラにとって有益な何かが発生するのだとしたら。
セイラは他の姉妹達と比べれば温厚だろう。それは言い方を変えるなら、姉妹間で成立する常識に過ぎない。吸血族の女性と比べれば、かなり気の強い部類に入る。
ヒューラはそれを利用しようとしているのではないだろうか。おかれている状況を冷静に判断出来る能力を持っているにもかかわらず、あえて、言いたいように言わせているとしたなら、何かを企んでいるのだ。
「考えようで、もしかしたらヒューラが兄弟の中で一番強かなのかもしれない」
気が弱いのは振りで、冷静に周りを観察しているとしたら、かなり恐ろしいことになる。それに、周りが望んでいるように、薔薇にはならないだろう。それは、アレンがきっぱりと言っていた。
薔薇となるには条件がある。勿論、禁忌を犯すことを前提に考えなくてはいけないが、その前に資質というものがある。
体を変化させる決定的な条件。それは、本来は女性として生まれるべき存在であるということ。それを知るには、華奢な体付きは絶対条件だが、身長も条件に入ってくる。
「兄さんが言うには、今の薔薇の子達の中で、薔薇になりうる条件を満たす者はいないんだ。だから、ヒューラは女性にならない」
同性に好意を寄せたとしても、望むような身体的変化は訪れないのだ。おそらく、そんなことはヒューラには判っているだろう。それでも言わせているのだ。わざと言いたいように言わせている。その真意は何なのか。
結局、ヒューラが何を考えているのかが判らなければ、何を言ったとしてもそれは言っているだけに過ぎない。
「まあ、今はヒューラの話じゃないんだけど」
ベンジャミンは苦笑いを浮かべる。今は、ヒューラではなく、セルジュとファーダだ。
「どうなったの」
先、何かあったら手伝って欲しいと言っていた。つまり、不測の事態が起こる可能性があるということだろう。
「父さんと兄さんがそれぞれの長に確認に行ったよ」
それは本格的にファーダの処置を始めるということだろう。
セルジュは今、変化中だと言っていたから、ルーチェンがいくら心配をしたところで、何かが出来るわけではない。だから、大人しく、この場所に居るのだ。
「セイラは……、カイファスさんに任せるしかない……、かな……」
ベンジャミンは複雑な表情を見せた。何故なら、アレンが言うようにカイファスはボケボケだからだ。本当の意味で役に立つかは疑問である。
「……疑ってるのね」
ルーチェンは半眼でベンジャミンを見詰めた。カイファスが役に立たないと、ルーチェンでも判るのだ。当然、ベンジャミンが判らない筈がない。だから、疑問系なのだ。ベンジャミンは肩を竦め、曖昧な笑みを向けるだけだった。
†††
セイラは居間を飛び出してから、直ぐに向かったのは、ヒューラの元だった。しかし、ヒューラは自宅には居なかったのだ。当然、対応に現れたカイファスを問い質す。
「何処に居るの」
腕を組み仁王立ちで、セイラは強い口調で言い切った。確かに、行けば会えるだろうが、そこには同業者が沢山居るのだ。
「何があったって言うんだ」
カイファスはセイラの様子に、息子が何かとんでもないことを仕出かしたことに、流石に気が付いた。
「私を他の女性と同じに考える何て、信じられないわっ」
カイファスはセイラの憤った声に、脱力した。つまり、言いなりになってしまっているのだろう。カイファス自身も、ゼロスに聞くまで知らなかったのだが、ヒューラはおかしなことになっていたのだ。
「何を言われたんだ」
「他の人を選べだの、両親が選んだ男性と一緒になるべきだのっ。大体、私の両親は本人の意思を尊重するのよっ。私は気が弱かろうが、自分の意思がなかろうが、ヒューラが良いと言っているのにっ」
セイラはそこまで言うと、キッとカイファスを睨み付けた。カイファスは表情が引きつる。
言っていることは間違えていないし、否定のしようもないが、何がどうなっているのか、カイファスは判っていないのだ。
「つまり、そこに行けば会えるのね」
セイラはカイファスを睨み付けた。カイファスは諦めたように息を吐き出す。ここまで怒らせてしまったのだ。怒りの矛先を与えなくては、どうなってしまうのか、想像すら出来ない。
ヒューラは祖父のアジルと共に薬師の会合に出席している。今回はたまたま、黒薔薇の部族内で行われている。だから、連れて行くことは容易だが、セイラの行動が読めないことが、心配の種だった。
アレンにボケボケと評されるカイファスだが、流石に今のセイラを放置してはいけないことくらい判っていた。
吸血族の薬師の会合は年に数回行われる。当然、部族は関係なく集まるのだ。そこには、後継者となるべき者も成人に達すると参加するようになる。それは職業に関わらず、どの職種でも同様だ。
それについてはセイラも知っていた。医者の、それも主治医の一族に生まれたからには、それらの知識は持ち合わせている。
「連れて行って」
少し座った目で、セイラは呻るように言った。何時までもこのままの状態ではいられないのだ。それは、今後のことにも関わってくる。今は大人しく成り行きを見守っている男達やその親族も、セイラを狙ってくるだろう。
何故なら、二人の姉妹は、おそらく上手くいくのだ。
父親と祖父が関わり、何より、性別は確定してないセルジュだが、冷静に考えて、父親がアンジュを側に置いておくのにはそれなりの理由がある筈である。
アーダにしても、これから、ファーダと試練に立ち向かう。それには祖父母が全力で助けようとするだろう。それに、叔父夫婦が何かあれば、手助けをする。
一番、何事もなくすんなり上手くいくと思われていたことなど、セイラには判っていた。
「行ってどうするんだ」
カイファスはセイラを観察するように問い掛けた。いくら、アレンとシオンの娘とは言え、女性なのだ。魔力は確かに薬師の一族の者より強いだろう。しかし、束で掛かられたら一溜まりもない。それが判っているだけに、カイファスは慎重になった。
セイラはカイファスを凝視した。カイファスを責めても何にもならない。判っていたが、それでも、何処かにこの感情のはけ口を見付けなくては、どうすることも出来ないのだ。
何時迄も子供の頃のような訳にはいかない。時は止まってはくれないのだ。
「……はっきりさせるの。これからの、自分の立ち位置を」
カイファスは眉間に皺を寄せた。違う言葉を使ったとしても、セイラから零れ落ちた言葉は、今まで何度となく聞いた言葉と似ていた。
セイラはヒューラとの関係に白黒をつけようとしている。煮え切らない、何より、意思を失ったヒューラに何かを促そうとしている。
「……判った」
カイファスは諦めたように息を吐き出した。ここで否定をして、暴走されたらたまったものではない。姉妹の中で大人しかったと言うことは、裏を返せば何をしでかすか判らないと言うことだ。
だが、アレン達はセイラの行動を知っているのだろうか、アレンは知っていて放置している可能性があるが、シオンは違うだろう。
「両親に言って来たのか」
カイファスは疑問の言葉を舌に乗せた。いくら放任主義とは言っても、限度がある。
「叔父さんが知ってるわ。両親は今、大変だから」
セイラは冷静に答えた。
大変だと言ったその理由をカイファスなりに考えてみた。セイラの二人の姉の相手は普通の存在ではない。つまり、セイラは焦りを覚えたのだろう。置いていかれると言う焦燥感と、自分が置かれる状況を考えた筈だ。
今だに男性人口が多数を占める吸血族は、花嫁となりうる女性がいれば、本人ではなく親族が動く。言いたくはないがヒューラの今の状態では、セイラの立ち位置は微妙になる。
カイファスはセイラを煙に巻くのは無理だと判断した。いくら女性でも、セイラはあのアレンの娘だ。しかも、頭の回転の早いシオンが母親だ。下手な事をしても、直ぐに判ってしまうだろう。
「ついて来て」
カイファスはそう言うとエントランスから外へ出、母親のレイチェルに知らせるために、使い魔を送り、地を蹴った。
セイラが好きなのはヒューラであって、他の誰でもない。判っているものだと疑っていなかったのに、ヒューラは見事に裏切ったのだ。
姉妹達がそれぞれ進んでいるのに、セイラは立ち止まったまま、何一つ進んでいない。ヒューラをただ、待っていては進展などありはしない。
いきなり立ち上がったセイラに、隣で編み物をしていたルーチェンは驚いたように見上げた。唇を噛み締め、鋭く架空を睨みつける様子に、ただ事ではないと察するのは容易だった。
うじうじと煮え切らないのなら、此方から引導を渡してやると、セイラはそこまで考えていた。気が弱いことは判っている。姉妹達にも、どうして、ヒューラのことが好きなのかと、何回か訊かれたことがあった。
答えは、放っておけない、というものだった。
他の幼馴染み達はきちんと自分の考えを持っている。そのせいで、いざこざがあったとしても、それなりに自分自身で対応出来る。
だが、ヒューラは気が弱いせいか、他人の考えに流れてしまう傾向が強い。母親に似たのだろうと言うが、カイファスは確かに煮え切らないところがある。だが、ヒューラのように気が弱いということはない。言いたいことははっきりと口にしている。
つまり、ヒューラは誰かに似たのではない。生まれたときから、気が弱く、精神的に強くない。成長過程でいくらでも修正することが可能であった筈だが、自分で変わろうと思わなければ、変われるわけがない。
架空を睨みつけたまま、そんなことを考えていると、室内の気配が増えていた。視線を向けると、そこに居たのは叔父のベンジャミン。
「どうかしたの」
ルーチェンがそう、問い掛けていた。
「これから、アーダとファーダが大変なことになるから、何かあったら手伝って欲しいんだ」
ベンジャミンはルーチェンに何が起こっているのか、説明していた。
どうやら、アーダはファーダの気持ちを変えることが出来たのだろう。アーダの性格からして、強引に持っていったとも考えられた。
双子の姉で何時も一緒に居たのに、先に歩いて行ってしまう。その背中を、ただ、見詰めているだけなんて絶対に嫌だった。
「叔父さん……」
呻るように名前を呼ばれ、ベンジャミンは困惑した。姪達の中では比較的温厚で、どちらかといえば、何時も穏やかな気配を身に纏っている。そのセイラから剣呑な気配を察し、ベンジャミンは眉間に皺を寄せた。
絶対に良い傾向ではない。いくら温厚で大人しい性格でも、セイラは兄夫婦の娘なのだ。
「出掛けてくるわ」
ベンジャミンは更に困惑した。今のセイラの状態で、一人にするのは非常に危険だ。だからといって、着いていく事も出来る状況ではない。
「何処に行くの」
「ヒューに引導を渡してくるわ。何時までも、煮え切らないのなら、私にも考えがあるわ」
顔をベンジャミンとルーチェンに向け、セイラは怖い顔で凄む様に言い切った。
「私を莫迦にしないで。これでも、お父さんとお母さんの娘よ。何時までも大人しくしていると思っているなら、思い知らせてやるわっ」
セイラのあまりの勢いに、二人は口を噤んだ。
「何時までも待ち続けると思っていたら大間違いよっ。それに、卑怯な男達なんてこちらから願い下げだわっ」
セイラが叫んだ言葉に、ベンジャミンは首を傾げた。卑怯な男達とは、どう言う事なのだろうか。
「女達が何時までも思い通りになると思っているのなら、思い知らせてやるっ。私にも人並みに心はあるのよっ。意に反する婚姻なんてしたくないわっ。それなら、レーヴと結婚した方が百倍も千倍もましよっ」
レーヴは従兄弟なのだから結婚は無理だ。そんなことはセイラにも判っているだろう。ここまで怒るということは、ヒューラは何か失言をしたのだ。それも、自分の意志ではなく、他人に言われて言ったものだろう。それくらいは想像出来る。
「どうする気」
ベンジャミンは小さく息を吐き出し、問い掛けた。セイラは気を落ち着かせるようにゆっくり息を吸い、吐き出した。
「ヒューの所に行って来るわ」
ベンジャミンは腕を組むと、小さく首を傾げる。ルーチェンは、ハラハラと二人のやりとりを見守ることしか出来ない。
「その後は」
「ヒュー次第よ。最悪、お嫁には行かないわ」
セイラは俯くと唇を噛み締めた。ベンジャミンはただ、セイラを見詰める。セイラは判っているのだろうか。
アレンがその名前に込めた願いを、理解しているのだろうか。代わりになどしたくはないと言っていたが、おそらく、誰よりも幸せになってもらいたかった筈だ。
母方の祖母の色を受け継ぎ、誰よりも苦痛を強いられ、悪者になることを甘受した、セイラ、の為にアレンが名付けたのだ。
黒薔薇の主治医の館に身を寄せてからは、穏やかな時間を過ごしていた姿を、ベンジャミンは覚えている。元来、大人しい性格だったのだろう。終始、シオン、ジゼルとジュディに押されっぱなしだったが、楽しそうにしていた。
だが、後ろめたかったのだろう。楽しそうにしてはいても、どこか、翳りがあった。控え目な笑みを浮かべるその姿を、今でも忘れられなかった。
「止めはしないよ。でも、短絡的に考えては、兄さんにお咎めを受けるから、しっかりと、納得出来る答えを出すんだよ」
ベンジャミンはそう、セイラに言った。セイラはその言葉に顔を歪めた。判ってはいるが、一人だけ取り残されたようで、寂しいのだ。
セイラは逃げるように二人の前から姿を消した。その姿を見送ったルーチェンは、ベンジャミンを見上げる。
「本当に放っておいて大丈夫なの」
ルーチェンに視線を向けたベンジャミンは苦笑いを浮かべた。結局は、本人次第だ。だが、気になっていることがあったのだ。ヒューラは気が弱いと、皆が認識している。その部分に、ベンジャミンは疑問を持っていた。
「判らないわ」
「ヒューは気が弱い。確かにそうなんだけど、納得出来ないんだ」
ヒューラはゼロスの息子で、あの、黒の長の曾孫なのだ。どう考えても、気が弱いとは考えにくい。
「でも……」
「うん。混乱するのは判るんだけど、百歩譲って本当に気が弱いんだとしたら、セイラはヒューを見限ると思う」
しかし、本当に見た目通りなのだろうか。周りの灰汁が強いから、そう見えるだけで、実際は違うのではないかと、ベンジャミンは考えている。
何より、そう、見せかけているような気がするのだ。目的は判らないが、ただ気が弱いでは、説明出来ないこともある。
ヒューラは他の薔薇の子達同様、黒薔薇の主治医の館で、ジゼルの監視の下、一緒に育っている。それは、ファーダのためでもあったのだが、多くの子供達の中で育ち、当然、その中で個性が生まれるのは必然だ。
幼い時の姿を見ている限りでは、気が弱いということはなかった。どちらかと言えば、積極的な方だった。しかし、ある程度成長し、家業を習得するため、それぞれの実家に帰った後、ヒューラの中で何らかの変化があったのだ。
その変化が何であるのか、判っている者などいないだろう。両親ですら判らず、困惑しているくらいなのだ。
「気が弱いで片付けるのは危険な気がするんだ」
ベンジャミンは架空を見詰め、呟いた。
「でも、それなら、どうしてセイラは怒っているの」
「セイラにすら、本心を明かさなくなってるんだろうとは思うんだけど、誰もが気が弱いって言ってるんだ。つまり、誰にも本来の姿を見せていない。それどころか、知られないように慎重になっているんじゃないだろうか」
ヒューラは何らかの理由で、本心を明かさなくなってるのではないだろうか。何より、アレンが全くと言っていいほど、ヒューラについては話さない。それが、ベンジャミンが訝しんでいる理由なのだ。
「アレンさん」
ルーチェンは首を傾げた。何故なら、ルーチェンはアレンの特殊な能力を知らないからだ。
「兄さんは少し変わった特技を持っているんだ」
流石に月読みであるとは、妻であっても言うわけにはいかない。アレンの能力は秘密になっているからだ。
「判らないわ」
「誰もが知りえないことを知ることが出来るんだよ」
ベンジャミンは口を噤み考えた。何も言わないということは、言う必要がないということだ。確かに、セルジュやファーダのような、特殊な存在ではないが、仮にも黒薔薇の部族長の曾孫なのだ。当然、そのことについて、黒の長から難問を吹っかけられている筈である。
あの黒の長が、大人しく成り行きを見守るとは考えられない。
ルーチェンはベンジャミンの言い方で、アレンの能力について教えてはくれないと判断出来た。隠し事は余程でなければしないベンジャミンが口を噤むのだ。詮索するのは間違えているのだと、気持ちを改めた。
「じゃあ、何があったって思っているの」
ルーチェンは質問を変えた。本当の意味で知りたいのはアレンの能力ではないからだ。セイラがあそこまで考え込んでしまった理由を知らなくてはならない。
「実は少し困ったことになってるみたいなんだ」
薔薇の血筋は子孫を残そうとする。だが、女児を産んでいるのは黄薔薇だけで、後は紅薔薇の娘であるルーチェンだけだ。
困ったこととは、薔薇の血筋から薔薇が誕生するのではないかという、誤った情報が流れ始めたことなのだ。
「そんなのおかしいわ」
「そうなんだけど、吸血族の緊迫した状況を考えると、仕方がないんだ」
他の薔薇の子達はどちらかと言えば、体格が良いほうだ。しかし、ヒューラは身長こそあるものの華奢な体付きで、どうやら、幻想を抱いた者が現れ始めたようだ。
最初はセルジュが女性になることを望む者が多かったのだが、変化の兆しすら現れないせいで、矛先がヒューラに向いたのではないかというのだ。
「どうしてそうなるの」
ルーチェンは脱力した。
「ここが重要何だけど、セイラはそのことを知らないんだ」
今、黒薔薇の部族の中で、ヒューラがかなり、おかしな位置付けになっていることを、知っている者は少ない。
おそらく父親のゼロスは気が付いているのかもしれないが、母親のカイファスは気が付いていないだろう。水面下で何かが蠢いているのだ。
「じゃあ……」
「兄さんは何か知っていると思う。僕が気が付くんだから、絶対に知っている筈なんだ」
それでも動かないのは、動く必要がない、と言うことだ。では、何故、動かないのか。簡単に考えるなら、ヒューラは知っていて、何かを隠しているのだ。
確かにベンジャミンの話を聞くと、おかしなことに気が付く。セイラは知らない。ヒューラがどういう状況になっているのか。それは、言い方を変えれば、情報を得られる状況にいないということになる。
だが、アレンは娘達に必要な情報は隠したりしていない。知りたければ、自分で調べればいいという、かなりの放任主義だ。
だから、他の吸血族の娘達と比べれば、下手な男達より知っていることは多い。セイラはその気になれば、ヒューラの状況を知ることは可能なのだ。では、何故、調べようとしないのか。
「セイラを怒らせたことが、ヒューラの中で必要なことだったとしたら……」
怒らせることで、ヒューラにとって有益な何かが発生するのだとしたら。
セイラは他の姉妹達と比べれば温厚だろう。それは言い方を変えるなら、姉妹間で成立する常識に過ぎない。吸血族の女性と比べれば、かなり気の強い部類に入る。
ヒューラはそれを利用しようとしているのではないだろうか。おかれている状況を冷静に判断出来る能力を持っているにもかかわらず、あえて、言いたいように言わせているとしたなら、何かを企んでいるのだ。
「考えようで、もしかしたらヒューラが兄弟の中で一番強かなのかもしれない」
気が弱いのは振りで、冷静に周りを観察しているとしたら、かなり恐ろしいことになる。それに、周りが望んでいるように、薔薇にはならないだろう。それは、アレンがきっぱりと言っていた。
薔薇となるには条件がある。勿論、禁忌を犯すことを前提に考えなくてはいけないが、その前に資質というものがある。
体を変化させる決定的な条件。それは、本来は女性として生まれるべき存在であるということ。それを知るには、華奢な体付きは絶対条件だが、身長も条件に入ってくる。
「兄さんが言うには、今の薔薇の子達の中で、薔薇になりうる条件を満たす者はいないんだ。だから、ヒューラは女性にならない」
同性に好意を寄せたとしても、望むような身体的変化は訪れないのだ。おそらく、そんなことはヒューラには判っているだろう。それでも言わせているのだ。わざと言いたいように言わせている。その真意は何なのか。
結局、ヒューラが何を考えているのかが判らなければ、何を言ったとしてもそれは言っているだけに過ぎない。
「まあ、今はヒューラの話じゃないんだけど」
ベンジャミンは苦笑いを浮かべる。今は、ヒューラではなく、セルジュとファーダだ。
「どうなったの」
先、何かあったら手伝って欲しいと言っていた。つまり、不測の事態が起こる可能性があるということだろう。
「父さんと兄さんがそれぞれの長に確認に行ったよ」
それは本格的にファーダの処置を始めるということだろう。
セルジュは今、変化中だと言っていたから、ルーチェンがいくら心配をしたところで、何かが出来るわけではない。だから、大人しく、この場所に居るのだ。
「セイラは……、カイファスさんに任せるしかない……、かな……」
ベンジャミンは複雑な表情を見せた。何故なら、アレンが言うようにカイファスはボケボケだからだ。本当の意味で役に立つかは疑問である。
「……疑ってるのね」
ルーチェンは半眼でベンジャミンを見詰めた。カイファスが役に立たないと、ルーチェンでも判るのだ。当然、ベンジャミンが判らない筈がない。だから、疑問系なのだ。ベンジャミンは肩を竦め、曖昧な笑みを向けるだけだった。
†††
セイラは居間を飛び出してから、直ぐに向かったのは、ヒューラの元だった。しかし、ヒューラは自宅には居なかったのだ。当然、対応に現れたカイファスを問い質す。
「何処に居るの」
腕を組み仁王立ちで、セイラは強い口調で言い切った。確かに、行けば会えるだろうが、そこには同業者が沢山居るのだ。
「何があったって言うんだ」
カイファスはセイラの様子に、息子が何かとんでもないことを仕出かしたことに、流石に気が付いた。
「私を他の女性と同じに考える何て、信じられないわっ」
カイファスはセイラの憤った声に、脱力した。つまり、言いなりになってしまっているのだろう。カイファス自身も、ゼロスに聞くまで知らなかったのだが、ヒューラはおかしなことになっていたのだ。
「何を言われたんだ」
「他の人を選べだの、両親が選んだ男性と一緒になるべきだのっ。大体、私の両親は本人の意思を尊重するのよっ。私は気が弱かろうが、自分の意思がなかろうが、ヒューラが良いと言っているのにっ」
セイラはそこまで言うと、キッとカイファスを睨み付けた。カイファスは表情が引きつる。
言っていることは間違えていないし、否定のしようもないが、何がどうなっているのか、カイファスは判っていないのだ。
「つまり、そこに行けば会えるのね」
セイラはカイファスを睨み付けた。カイファスは諦めたように息を吐き出す。ここまで怒らせてしまったのだ。怒りの矛先を与えなくては、どうなってしまうのか、想像すら出来ない。
ヒューラは祖父のアジルと共に薬師の会合に出席している。今回はたまたま、黒薔薇の部族内で行われている。だから、連れて行くことは容易だが、セイラの行動が読めないことが、心配の種だった。
アレンにボケボケと評されるカイファスだが、流石に今のセイラを放置してはいけないことくらい判っていた。
吸血族の薬師の会合は年に数回行われる。当然、部族は関係なく集まるのだ。そこには、後継者となるべき者も成人に達すると参加するようになる。それは職業に関わらず、どの職種でも同様だ。
それについてはセイラも知っていた。医者の、それも主治医の一族に生まれたからには、それらの知識は持ち合わせている。
「連れて行って」
少し座った目で、セイラは呻るように言った。何時までもこのままの状態ではいられないのだ。それは、今後のことにも関わってくる。今は大人しく成り行きを見守っている男達やその親族も、セイラを狙ってくるだろう。
何故なら、二人の姉妹は、おそらく上手くいくのだ。
父親と祖父が関わり、何より、性別は確定してないセルジュだが、冷静に考えて、父親がアンジュを側に置いておくのにはそれなりの理由がある筈である。
アーダにしても、これから、ファーダと試練に立ち向かう。それには祖父母が全力で助けようとするだろう。それに、叔父夫婦が何かあれば、手助けをする。
一番、何事もなくすんなり上手くいくと思われていたことなど、セイラには判っていた。
「行ってどうするんだ」
カイファスはセイラを観察するように問い掛けた。いくら、アレンとシオンの娘とは言え、女性なのだ。魔力は確かに薬師の一族の者より強いだろう。しかし、束で掛かられたら一溜まりもない。それが判っているだけに、カイファスは慎重になった。
セイラはカイファスを凝視した。カイファスを責めても何にもならない。判っていたが、それでも、何処かにこの感情のはけ口を見付けなくては、どうすることも出来ないのだ。
何時迄も子供の頃のような訳にはいかない。時は止まってはくれないのだ。
「……はっきりさせるの。これからの、自分の立ち位置を」
カイファスは眉間に皺を寄せた。違う言葉を使ったとしても、セイラから零れ落ちた言葉は、今まで何度となく聞いた言葉と似ていた。
セイラはヒューラとの関係に白黒をつけようとしている。煮え切らない、何より、意思を失ったヒューラに何かを促そうとしている。
「……判った」
カイファスは諦めたように息を吐き出した。ここで否定をして、暴走されたらたまったものではない。姉妹の中で大人しかったと言うことは、裏を返せば何をしでかすか判らないと言うことだ。
だが、アレン達はセイラの行動を知っているのだろうか、アレンは知っていて放置している可能性があるが、シオンは違うだろう。
「両親に言って来たのか」
カイファスは疑問の言葉を舌に乗せた。いくら放任主義とは言っても、限度がある。
「叔父さんが知ってるわ。両親は今、大変だから」
セイラは冷静に答えた。
大変だと言ったその理由をカイファスなりに考えてみた。セイラの二人の姉の相手は普通の存在ではない。つまり、セイラは焦りを覚えたのだろう。置いていかれると言う焦燥感と、自分が置かれる状況を考えた筈だ。
今だに男性人口が多数を占める吸血族は、花嫁となりうる女性がいれば、本人ではなく親族が動く。言いたくはないがヒューラの今の状態では、セイラの立ち位置は微妙になる。
カイファスはセイラを煙に巻くのは無理だと判断した。いくら女性でも、セイラはあのアレンの娘だ。しかも、頭の回転の早いシオンが母親だ。下手な事をしても、直ぐに判ってしまうだろう。
「ついて来て」
カイファスはそう言うとエントランスから外へ出、母親のレイチェルに知らせるために、使い魔を送り、地を蹴った。
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