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Ⅱ 銀月蝶
SS02 七夕
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「シアンとゼインって、織り姫と彦星だよね」
いきなり、そんなことを言ったのはルビィだ。娘のルーチェンもルビィが、人間のイベントが大好きなことは知っている。きっと、何処かから仕入れてきたのだ。
「どうして、織り姫? 彦星? なのさ」
シオンは不思議そうに問い掛けた。
「だって、吸血族と銀狼族に横たわる、しがらみって言う川に隔てられてるじゃない」
七夕とは、どういうイベントなのだ。一同は、よく判らずに沈黙する。
この場に居るのはルビィを筆頭に娘のルーチェン。シオンとジゼル。カイファスと、名指しされたシアン。それと、三人娘。
「疑問なんだが」
カイファスは沈黙しても、答えは得られないと判断した。ならば、訊けばよいのだ。
「七夕とは、どういったイベントなんだ」
ルビィは小首を傾げた。
「いっぱい、本を読んだんだけど、複雑すぎて判んなかったんだよね。でも、伝説? みたいなお話がいっぱいあって、似たようなことが書かれてたんだ」
天女である織り姫が天帝もしくは、西王母に認められて、人間の彦星に嫁ぐ。
二人は働き者であったため、認められたのだが、結婚したことで、仕事がおろそかになってしまった。
その事実に、天帝は怒り、二人を引き裂いてしまった。
「互いしか見なくなっちゃったみたいでね」
ただ、あまりにも哀れに思い、一年に一回、会うことを許されたのだ。
「元々は、奇数が重なる日って、人間の中では、陽の気が強くなって、良くないことが起こるって言われてて、それを、祓うのに行われていた行事みたいだよ」
一月七日の人日で七草に、三月三日の桃の節句の雛祭り、五月五日の端午の節句、七月七日の七夕に、九月九日の重陽で菊の節句。
シアンはきゅっと、唇を噛み締めた。織り姫と彦星は、一年に一回は会えるのだ。だが、シアンとゼインは違う。もう、二度と、会えないかもしれないのだ。
「でもね。互いしか見えなくなっちゃったのって、それだけ、大切だったってことでしょう」
ルビィは更に続けた。
「もうさ。二人で逃げちゃえば良かったのにね」
確かに。天帝とやらが、どれだけの力を持っているのかは謎だが、本当に必要なら、手に手を取って、逃げてしまえば良かったのだ。
そう出来たら、どんなに良かっただろう。シアンは二人の気持ちが判るような気がした。
もしかしたら、天帝は凄い力の存在かもしれない。だが、二人はあえて、そうしなかったのかもしれない。
柵も、立場や責任も、必ずついて回るのだ。だから、幼いときのように、タダをこねるわけにはいかない。
「人間の話って、こう、わざと面倒にしてるって思わない?」
一同は沈黙する。そんなことを考えるのは、よほど、人間のイベント関係の資料を読んでいる者だけだ。
「でもね、笹に願いを書き込んだ短冊を付けると、願いが叶うんだって」
七夕とは、一体、どういったイベントなんだと、一同は難しい顔をした。そして、皆が皆、同じことを考えた。
要は、楽しいところだけを、真似ればよいのだ。複雑なところなど、所詮は魔族なのだ。気にする必要はないと、互いに顔を見合わせ、頷いた。
いきなり、そんなことを言ったのはルビィだ。娘のルーチェンもルビィが、人間のイベントが大好きなことは知っている。きっと、何処かから仕入れてきたのだ。
「どうして、織り姫? 彦星? なのさ」
シオンは不思議そうに問い掛けた。
「だって、吸血族と銀狼族に横たわる、しがらみって言う川に隔てられてるじゃない」
七夕とは、どういうイベントなのだ。一同は、よく判らずに沈黙する。
この場に居るのはルビィを筆頭に娘のルーチェン。シオンとジゼル。カイファスと、名指しされたシアン。それと、三人娘。
「疑問なんだが」
カイファスは沈黙しても、答えは得られないと判断した。ならば、訊けばよいのだ。
「七夕とは、どういったイベントなんだ」
ルビィは小首を傾げた。
「いっぱい、本を読んだんだけど、複雑すぎて判んなかったんだよね。でも、伝説? みたいなお話がいっぱいあって、似たようなことが書かれてたんだ」
天女である織り姫が天帝もしくは、西王母に認められて、人間の彦星に嫁ぐ。
二人は働き者であったため、認められたのだが、結婚したことで、仕事がおろそかになってしまった。
その事実に、天帝は怒り、二人を引き裂いてしまった。
「互いしか見なくなっちゃったみたいでね」
ただ、あまりにも哀れに思い、一年に一回、会うことを許されたのだ。
「元々は、奇数が重なる日って、人間の中では、陽の気が強くなって、良くないことが起こるって言われてて、それを、祓うのに行われていた行事みたいだよ」
一月七日の人日で七草に、三月三日の桃の節句の雛祭り、五月五日の端午の節句、七月七日の七夕に、九月九日の重陽で菊の節句。
シアンはきゅっと、唇を噛み締めた。織り姫と彦星は、一年に一回は会えるのだ。だが、シアンとゼインは違う。もう、二度と、会えないかもしれないのだ。
「でもね。互いしか見えなくなっちゃったのって、それだけ、大切だったってことでしょう」
ルビィは更に続けた。
「もうさ。二人で逃げちゃえば良かったのにね」
確かに。天帝とやらが、どれだけの力を持っているのかは謎だが、本当に必要なら、手に手を取って、逃げてしまえば良かったのだ。
そう出来たら、どんなに良かっただろう。シアンは二人の気持ちが判るような気がした。
もしかしたら、天帝は凄い力の存在かもしれない。だが、二人はあえて、そうしなかったのかもしれない。
柵も、立場や責任も、必ずついて回るのだ。だから、幼いときのように、タダをこねるわけにはいかない。
「人間の話って、こう、わざと面倒にしてるって思わない?」
一同は沈黙する。そんなことを考えるのは、よほど、人間のイベント関係の資料を読んでいる者だけだ。
「でもね、笹に願いを書き込んだ短冊を付けると、願いが叶うんだって」
七夕とは、一体、どういったイベントなんだと、一同は難しい顔をした。そして、皆が皆、同じことを考えた。
要は、楽しいところだけを、真似ればよいのだ。複雑なところなど、所詮は魔族なのだ。気にする必要はないと、互いに顔を見合わせ、頷いた。
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