浅い夜 蝶編

Ⅰ 月光蝶

SS01 王子様？

　シオンとアレンの三人娘、アンジュ、アーダ、セイラ。
　
　祖母であるジゼルに問い掛けた疑問とは……。


本文


「どうして、ルーお姉ちゃんは全然、おっきくならないの」
　
　そう訊いてきたのは、三人娘の年長であるアンジュ。
　
「気になるの」
　
　祖母のジゼルに三人は同時に頷いて見せた。
　
「ルーお姉ちゃんは眠り姫なのよ」
　
　右手の人差し指を三人の目の前で立てて、ジゼルは言った。
　
「眠り姫」
「眠り姫って」
「お姫様なの」
　
　三人が三人共、それぞれに疑問を口にする。
　
「悪い魔法使いに、魔法を掛けられちゃったのよ」
　
　ジゼルは尤もらしく、言っているのだが、絶対に楽しんでいる。

「悪い魔法使いって、誰」
　
　セイラが涙ぐみながら、舌っ足らずに訊いてくる。
　
「昔、昔の古い魔法で、王子様じゃないと、魔法は解けないのよ」
　
　王子様、の言葉に、三人は瞳を輝かせる。
　
「おばあちゃま、ルーお姉ちゃんの王子様は」
　
　アーダがジゼルにしがみついた。
　
「あらあら、何時も一緒に居るでしょう」
　
　三人は顔を見合わせる。少し考え、同時に口を開いた。
　
「「「叔父さんっ」」」
「そうよ」
　
　ジゼルは満面の笑みを向けた。

「今、やっつける準備をしてるのよ。お父さんとお祖父ちゃんも一緒に戦うんだから」
「お母さんは」
　
　アンジュは不安げに問い掛ける。
　
「お母さんはルーお姉ちゃんと一緒にいるのよ。だから、おばあちゃまと一緒に、ルーお姉ちゃんの所に行きましょうか」
　
　三人は更に瞳を輝かせる。そして、素直に頷いた。ジゼルはその様子に、愛おしそうに、目を細める。この子達も、それぞれに相手を見付ける。誕生したときの様子を思い出し、ジゼルは淡い笑みを零した。