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「リオン様。起きてください。朝食の用意が出来ましたよ。」

・・・・・なんか・・・懐かしい声がする・・・・。
リオンは夢の中で王国にいたときの懐かしい夢を見ていた。
ミーヤとメアリと楽しくお茶会してる夢。
あの時はまさか魔王の生贄になるなんて思わなかったから、平和ボケしてしまっていた。
また、みんなでお茶会したいなぁ・・・。なんて思っていた時、シェインの声で目が覚めた。

なんだ・・・シェインか・・・。
シェインの声がメアリの声に聴こえたなんて、ボケたのかしら・・・。

「何か懐かしい夢でも見たのですか?」
シェインに言われて、自分が涙を流していることに気が付いた。
「ごめんなさい。とても懐かしい夢を見ていたの。願ってももう叶わないけれど・・・。」
私が困った表情をしながら言うと、シェインが微笑みながら「リオン様にとってとても大事な思い出なのですね。」と励ましてくれた。
そうね・・・私にとってはすごく大事・・・。ミーヤ・・・メアリ・・・会いたいわ。
私は我に返って「さて、朝食を食べましょう。」と言って、身支度を始めた。
そして席について朝食を食べ始めた。
今日の朝食はトーストにスクランブルエッグ、サラダにコーンスープだった。
「今日もおいしいわ。いつもありがとう。」
リオンはそう言うとトーストをもぐもぐ食べ始めた。
「喜んでいただけて私もうれしい限りです。」
シェインはそう言うと食後に飲む紅茶の用意を始めた。

「そういえば、サタン様から伝言を預かりました。本日の夕食はご一緒したいとのことですので、2人分のお食事を用意しますね。」
シェインはそう言うと、微笑んで紅茶をテーブルに置いた。

サタン様とお食事・・・・なんてことなの・・・・。
私は頭を抱えた。サタン様と食事だなんて息が詰まるわ・・・。
どうしたものか・・・。いいえ。これは断れないわ・・・。
「わかったわ。」
そう言うと、シェインが入れてくれた紅茶を一口飲んで心を落ち着かせた。
今夜の夕食が憂鬱で仕方がないと思いながら。


ーーーーーー夕食の時間ーーーーーー

「リオン様。夕食のお時間でございます。」
私は時間まで読書をして過ごしていた。
シェインが言うには、サタンが向こうの世界のものをこよなく愛しているため、食べ物だけではなく向こうの物や本なども取り揃えていた。
だから私は飽きることなく読書に没頭することが出来た。
「ええ。今行くわ。」
私はそう言うと、本を置いて席に着いた。
今日の夕食はステーキにスープとサラダ。サタン様が来るからとシェインが取り寄せたらしい。
いつもすごいと思っていたけれど、お取り寄せって簡単なのかしら?なんて呑気に考えていた。

そして間もなくしてサタンがやってきた。
「遅くなって申し訳ない。」
サタンはそう言うと私の向かいに座って、私を見つめた。
「大丈夫ですわ。私も席に着いたばかりです。」
どうしてそんなに見つめてくるの・・・。と思いながら答えると、サタンはリオンの言葉を聞いて「そうか」と返答した。
「ところで今日は何をして過ごしていたんだ?」とサタンが聞いてきた。
社交辞令かしら?質問されるなんて思ってなかったから、拍子抜けしてしまった。
「部屋で読書をしていましたわ。」と答えると「読書が好きなのか?」と聞いてきた。
質問はまだ続くのね・・・。なんて考えながら、「幼いころから本だけは私の味方でいてくれるし、本を読んでいると心が落ち着くんです。だから今でも読書をしています。」と答えると、サタンは「そうか」と言って夕食を食べ始めた。
私はサタンになんでこんなまじめに答えたんだろう・・・。思いながらも夕食に手を付け、食べ始めた。

それから2人は他愛もない会話をしながら食事を進めていった。
サタン様は口数は少なかったが、交流を深めたいのか率先して話題を振ってくれてリオンも楽しい時間を過ごした。

それからご飯も食べ終わり、場所を移動してソファーで食後の紅茶を楽しんでいた時、サタンから名前を呼ばれて見つめてきた。
「リオン、お前に話しておきたいことがある。イグラン王国についてだ。お前にとっては聞くのがつらいかもしれない。無理して聞いてくれとは言わないが、聞きたいか?」
正直悩んだ。私を苦しめていた国王の話なんて聞きたくないとも思った。でもなぜか聞かなきゃいけないような気がして私は「大丈夫です。話してください。」と答えていた。
「わかった。だが、これ以上聞きたくないなどあったら言ってくれ。すぐに話をやめる。」
サタンはそう言うと、リオンが生贄として捧げられた日、国王と契約していたこと。リオンが去ったあと、国王は契約を破りサタンの逆鱗に触れたことにより、王国が壊滅したこと。その際にメアリとミーヤは保護されて今、魔王国で治療されていることが話された。

まさか、私が居なくなった後そんなことになっていたなんて・・・。
「サタン様。元とはいえ私がいた王国が馬鹿をやっていたことは許されることではありません。大変申し訳ございませんでした。」
私はサタンに深々と頭を下げるとサタンは、「お主が謝ることじゃない。契約を破ったあいつが悪いんだ。だから頭を上げてくれ。」と言ってくれた。
私は「寛大なお言葉ありがとうございます。」と言って頭を上げた。
「2人に会わせてあげたいのだが、ミーヤとやらはお主は我によって殺されたと思っていて、暴れてすごかったから少し眠ってもらっている。メアリとやらは国王からの仕打ちで少し精神状態が不安定になっておるからカウンセリングを受けて治療している。だからしばらくは合わせることが出来ない。申し訳ない。」
サタンは2人の状況を教えてくれて、頭を下げた。
なんかさっきから謝ってばかりだな・・・。と思った私はサタンに「2人を救ってくださりありがとうございます。このご恩は生涯かけても忘れません。」と笑顔で口にした。
するとサタンはびっくりしたのか目を大きく開けて「やっとお主の笑顔が見られた。」とサタンがハグをしてきた。
突然のことでびっくりしたリオンは「サタン様!?」と名前を呼んだが離してくれそうにない。
どうしたものかと考えていると、サタンが顔を上げて、「改めてお主に言おう。お主が幼い時に一目見てからお主のことが忘れられず、何度かお忍びで会いに行ってたんだ。それを繰り返すうちにそばにいてほしいと思った。リオン。我の生涯の伴侶として迎えようと思うがいいか?返事はすぐじゃなくていい。じっくり考えてほしい。」

・・・・・・え!?伴侶!?どうしてそんな話になったのか理解できなかった。
「伴侶ですか・・・。じっくり考えますわ。」
私がそう言うとサタンは「うぬ。いつまでも待っておる。」と言って離れた。

「では、今日は世話になった。リオンよ。よく考えておいてくれ。」
サタンはそう言うと部屋から出て行った。
突然のことでちゃんと挨拶も出来なかったわ。
私を生涯の伴侶にしたいなんて・・・。
色々考えていたら、顔が熱くなるのが分かった。
とりあえず考えるのはやめて読書の続きをしようかしら。
リオンは本を手に取り夕飯前に読んでいた本の続きを読み始めたのでした。


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