上 下
3 / 14

しおりを挟む
あれから私は、誕生日残りの時間を悔いが残らないように過ごした。



そして迎えた誕生日当日。



私は椅子に座って考え事をしていた。
今日は私の誕生日でもあり、魔王襲来の日でもある。

結局、生贄になってしまったけれど、魔王に連れていかれたら、私は殺されてしまうのだろうか。
それとも奴隷として、働かされてしまうのだろうか・・・。

さっきからこんなことをグルグルと考えていた。

「リオン様。不安なのはわかります。ですが、考えすぎも良くないです。さぁ、これを飲んで気持ちを落ち着かせてください。」

使用人のメアリがそういいながら、カモミールティーを持ってきてくれた。

「ありがとう。どうしても色んなことが頭を駆け巡って落ち着かなかったの。」

その言葉を聞いたメアリは1つ提案をした。
「それでしたら、未練が残らないように手紙を書いたらいかがですか?」

リオンは「なるほど・・・。」と呟いて立ち上がりレターセットを取り出した。

そして、静かに一枚一枚丁寧に手紙を書いていった。






一通り書き終わった時、その時はきた。

「リオン様、お時間です。行きましょう。」


とうとう時間が来てしまったのね・・・。
この19年・・・いえ、誕生日迎えたから20年か・・・楽しかったなぁ・・・。
この運命は変わらないけれど、使用人のメアリや親友のミーヤと出会えたこと、一生忘れないわ。

「行きましょう。」

私はそう言うと私は会場へ向かった。







会場はすでにお祭り状態になっていた。
「みんなは呑気でいいわね。」
リオンは会場の状態を見て、思わず口に出していた。

「リオン様、お気持ちはわかりますが、皆さんは状況を知らないのです。今は落ち着いてください。」
使用人に言われた私は「ごめんなさい・・・。」と言って国王の居る所へ向かった。

「イグラン王国第2王女リオン様がいらっしゃいました。」
使用人がそういうと、国王は満面の笑みを浮かべて「おう、よく来た」とリオンに向けて言った。

その時、私を見つめる鋭い視線を感じて、リオンは視線の感じるほうに目をやった。
そこには、見たことない顔の男性がそこにいた。
容姿はマントを羽織っていていかにも魔王って感じ。
だけど顔立ちがよくて、ブルーアイの瞳がとても綺麗だった。

見慣れないお方だけど誰かしら・・・。
なんて呑気に考えていると、国王から紹介があった。

「この方は魔王国まおうこくの魔王サタン様だ。ご挨拶しなさい。」

この方が魔王・・・?
魔王特有の角とかも無いし・・・本当に魔王かしら・・・?

「イグラン王国第2王女リオンと申します。以後お見知りおきを。」

私は魔王サタンに向かって右足を後ろに下げて、スカートをもって挨拶をした。

すると魔王サタンはリオンに近づいて、リオンに話しかけた。
「お前がリオンか。」
魔王サタンはそう言うと、リオンをじっと見つめた後すぐ席に戻り、また国王と魔王サタンはまた談笑を開始した。

リオンはどうしたらいいか分からず、とりあえずその場に立ち尽くしていた。

すると立ち尽くしているリオンに気づいたサタンがリオンに声をかけた。

「リオンよ、お前も座るといい。」
すると国王がサタンに「この女は生贄だからほっといていいんですよ。それより・・・」
するとサタンの顔色が一瞬怒った表情になったかと思えば真顔になって「そうか」と言って再び国王と話し始めた。





どれぐらいの時間が経っただろう。
魔王サタンが帰り支度を始めた。

「さて、生贄を連れて帰るとする。有意義な時間だった。礼を言う。」
そう言うとリオンの腕をつかんだ。

「生贄のことは焼くなり食うなり好きにして構いません。我が国に安泰を」
国王がそう言うとリオンに向かって
「お前がいなくなって清々するわ。さらばだ。」
そう小声で言うと、不敵な笑みを浮かべた。

我が父親ながら、サタンがいる前で悪態つけるほど性格が悪いとは思わなかった。
呆れてものが言えなくなっているリオンの見たサタンは自身が連れてきた召使に何かを言って、リオンと共にその場を後にした。



その後サタンが使ったであろう結界の中に吸い込まれていった。
その間魔王サタンは無言だった為、何を考えているのかわからなかった。

そしてリオンは気を失い、気づいたら見慣れない天井が広がっていた。
しおりを挟む

処理中です...