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第二章 竜胆
予期せぬ出来事
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蒼万が緑龍殿を後に自殿へ向かう途中、怪しげな突風が吹いた。空に大量の烏が飛び回り一箇所へと集まっている。まさに、その場所は蒼万殿の方だった。蒼万は急ぎ走りながら腕輪を外し青龍を出す。
「志瑞也の元へ先に行け!」
「グアォォォォォオッ!」
青龍は疾風の如く空から蒼万殿へ向かった。
丁度蒼万が門前に着いた時、志瑞也の叫び声が響いた。
「志瑞也ー‼︎」
蒼万は一気に血の気が引き、葵や沙羅、他の者達も庭園に駆けつける。
「志瑞也さん!」
「志瑞也様!」
蒼万は急ぎ庭園に走る。
「グルルゥゥゥウアウゥッ」
「うぎゃゃゃあ……ひぃひぃ……おのれぇぇぇ」
庭園では既に、妖魔が巻き付く青龍を引き剥がそうともがき、青龍は鋭く尖った牙で喉元に咬み付いていた。蒼万は辺りを見渡し志瑞也を探す。倒れた椅子と机の横に、紅く染まる布の塊が転がっているのが見えた。
「志瑞也っ…」
蒼万は駆け寄るが、望みを打ち砕くような惨事に愕然とする。先程まで、腕の中で泣いたり笑ったりしていた者の姿ではなく、腕を妖魔の爪で荒々しく引き裂かれ、青白い顔で倒れてる志瑞也がいた。
「し、志瑞也さんっ……」
「志瑞也様っ……」
蒼万の後を追いかけてきた葵と沙羅も、志瑞也の姿を見て愕然とする。
すかさず沙羅が志瑞也に駆け寄る。
「葵様っお怪我が酷いですっ 葵様!」
沙羅が絶句している葵を気付かせる。
「沙羅っ、今直ぐ青龍湖の水を龍水室に汲んでこいっ」
「はい!」
「葵っお前は急ぎ傷の処置だっ」
「わっわかりましたっ」
葵や侍女達に運ばれて行く志瑞也は、血が片方の顔と首まで飛び散り、死人の様にぐったりとしていた。
蒼万は顔に血管が浮き出るほど激昂する。
「妖魔如きがぁー‼︎」
蒼万の瞳が光を放ち髪がうねり逆立つ。その怒りの心情により、青龍の胴体が二倍に膨れ上がり、妖魔はジタバタと足掻きながら地面に「ドシャッ」と倒れた。
「うぎぃぃぃ……血ぃぃ……うぎゃゃゃ」
妖魔は這い蹲ばいながらも体を引き摺らせ、紫色の舌を伸ばして地面を舐めだす。その姿はなんとも悍ましく、妖魔の口から漂う悪臭に吐き気がする程だ。見ていた蒼万の嫌悪感が増幅し、拳を上げ妖魔に向かって鋭く四指を弾いた。「ボタボタボタ」妖魔の舌が花火のように飛び散り、同時に青龍が妖魔の首を喰い千切る。
「あぅぅぁぁ…」
目玉が飛び出し舌を失くしても、まだ生首は唸っている。切り離された胴体はピクピクと痙攣し、青龍が「ボーッ」と青い炎を吹きかけると、目まで沁みる刺激臭を漂よわせた。鎮火しても尚臭いは取れず、蒼万は志瑞也の焼け焦げた血溜りを見つめ、険しい顔で奥歯を食いしばった。
この一件で予定より早く、宗主蒼明から蒼万は呼び出されたのだった。
「志瑞也の元へ先に行け!」
「グアォォォォォオッ!」
青龍は疾風の如く空から蒼万殿へ向かった。
丁度蒼万が門前に着いた時、志瑞也の叫び声が響いた。
「志瑞也ー‼︎」
蒼万は一気に血の気が引き、葵や沙羅、他の者達も庭園に駆けつける。
「志瑞也さん!」
「志瑞也様!」
蒼万は急ぎ庭園に走る。
「グルルゥゥゥウアウゥッ」
「うぎゃゃゃあ……ひぃひぃ……おのれぇぇぇ」
庭園では既に、妖魔が巻き付く青龍を引き剥がそうともがき、青龍は鋭く尖った牙で喉元に咬み付いていた。蒼万は辺りを見渡し志瑞也を探す。倒れた椅子と机の横に、紅く染まる布の塊が転がっているのが見えた。
「志瑞也っ…」
蒼万は駆け寄るが、望みを打ち砕くような惨事に愕然とする。先程まで、腕の中で泣いたり笑ったりしていた者の姿ではなく、腕を妖魔の爪で荒々しく引き裂かれ、青白い顔で倒れてる志瑞也がいた。
「し、志瑞也さんっ……」
「志瑞也様っ……」
蒼万の後を追いかけてきた葵と沙羅も、志瑞也の姿を見て愕然とする。
すかさず沙羅が志瑞也に駆け寄る。
「葵様っお怪我が酷いですっ 葵様!」
沙羅が絶句している葵を気付かせる。
「沙羅っ、今直ぐ青龍湖の水を龍水室に汲んでこいっ」
「はい!」
「葵っお前は急ぎ傷の処置だっ」
「わっわかりましたっ」
葵や侍女達に運ばれて行く志瑞也は、血が片方の顔と首まで飛び散り、死人の様にぐったりとしていた。
蒼万は顔に血管が浮き出るほど激昂する。
「妖魔如きがぁー‼︎」
蒼万の瞳が光を放ち髪がうねり逆立つ。その怒りの心情により、青龍の胴体が二倍に膨れ上がり、妖魔はジタバタと足掻きながら地面に「ドシャッ」と倒れた。
「うぎぃぃぃ……血ぃぃ……うぎゃゃゃ」
妖魔は這い蹲ばいながらも体を引き摺らせ、紫色の舌を伸ばして地面を舐めだす。その姿はなんとも悍ましく、妖魔の口から漂う悪臭に吐き気がする程だ。見ていた蒼万の嫌悪感が増幅し、拳を上げ妖魔に向かって鋭く四指を弾いた。「ボタボタボタ」妖魔の舌が花火のように飛び散り、同時に青龍が妖魔の首を喰い千切る。
「あぅぅぁぁ…」
目玉が飛び出し舌を失くしても、まだ生首は唸っている。切り離された胴体はピクピクと痙攣し、青龍が「ボーッ」と青い炎を吹きかけると、目まで沁みる刺激臭を漂よわせた。鎮火しても尚臭いは取れず、蒼万は志瑞也の焼け焦げた血溜りを見つめ、険しい顔で奥歯を食いしばった。
この一件で予定より早く、宗主蒼明から蒼万は呼び出されたのだった。
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