1 / 2
前編
しおりを挟む
現代社会において、人間の世界で住む妖怪たちは昔ほど正体を隠すのに苦心しなくなった。
例えば黒塗りの壁に窓には簾、竹や立葵を組み合わせたフラワーアレンジメントを飾った和モダンな美容室で
「あの、頭に乗せてるのってお皿・・・・・・?」
と客に突っ込まれても
「ファッションです!」
と自信満々に返せば押し通す事ができるくらいには。
この美容院で働く美容師、川端は河童である。見た目は五十代の男性で派手な柄シャツとマンバンヘアに乗っかった白い皿が特徴的だ。垢抜けたイケオジ要素とカリスマ美容師と称される腕前も相まって、川端は人間の社会を上手く渡っている。
そんな川端の楽しみは仕事終わりの一杯だ。美容院での仕事を終えた後、
「おつかれーっす」
と店長の"髪切り"と同僚の口裂け女に声をかけて繁華街に向かう。
川端は解放感に浮かれながら行きつけの店への入り口を探す。
金曜日の夜なので人間が多く、ついついこれはという人物を目で追ってしまう。人物、というより尻であるが。相撲が強そうな尻だとか、尻の形が良いだとか、いい尻子玉を持っていそうだとか。
尻子玉は魂の塊で、河童にとってえもいわれぬ魅力を持ったものである。カラスが光り物に惹かれるのに近い。食べてもよし鑑賞してもコレクションしてもよし、楽しみ方は河童それぞれで、穢れを知らぬ者の尻子玉ほど美しく美味であるとされている。
川端はよほどの上物でないと食指が動かぬ面食いならぬ"尻食い"だ。そんな川端がハッと人混みの中に視線を投げかける。
それは歩くたびたゆんたゆんと上下に弾んでいた。ボウリング玉でも入っているのかと聞きたくなるくらい大きな尻は枯葉色のスーツにむっちり包まれている。まろみのある曲線が尻の肉やまん丸な腹や福々しい頬を縁取り柔らかそうである。
川端は足早に近づいていき、その尻たぶを下からぐぁし、と掴んだ。
「よっ、バコさん」
「びゃっ!」
尻を掴まれた者は肩を跳ね上げ、ぽよんとふさふさの尻尾が飛び出て一瞬で消える。
「川端さあん、ビックリさせんといて」
振り返ったのは恰幅の良い、小柄な中年のサラリーマンだ。つぶらな目の周りには隈のような縁取りがある。
「僕変化が上手くないんやから」
「尻尾が見えてたぞ~?」
「だから川端さんが驚かすからやろ⁉︎」
バコさんこと金長団三郎は化け狸である。普段は妖力を込めた葉っぱのネクタイピンを付けてサラリーマンとして人間の会社で働いている。バーコードのようにまだらな髪から、人間からも妖怪からもバコさんと呼ばれていた。
バコさんはぷりぷりしながらも川端と並んで歩く。二人の行き先は同じだからだ。
川端はバコさんのむっちむちの尻に目が行く。川端にはわかる。あの尻には上質な尻子玉があるには違いないと。人の良い、いや狸の良いバコさんは人間社会で苦労しているらしいがその善き魂が尻子玉に反映されている。採れたてきゅうりのようにピッカピカに違いない。
繁華街を歩くうち、路地にふわりと赤提灯の灯が浮かぶ。その周りをふよふよと鬼火が漂っていた。その灯りを辿っていくと、天海の鬼火亭と書かれた看板がばばんと現れる。それを掲げる木造の居酒屋からはすでに店員同士の掛け合いや炭火の匂いが漏れている。
赤い暖簾をくぐれば
「バコさんに、川端さん! いらっしゃいっす!」
と猫耳を黒い髪から生やした作務衣の少年ーー彼は猫又だーーが威勢よく声を掛けた。いつものようにカウンターの一角に並んで座る。
珍しく人間がいて、だし巻き卵をバクバク食べていた。しかし川端の好みの尻ではなかったのでメニューに目を走らせる。
「サラダマティーニときゅうりのオーブン焼き、あとキムチきゅうりと糠漬け」
「板わさとたぬき豆腐、天かす多めな。あとだし巻き卵に芋焼酎ね」
猫又の少年はメニューを書き留め厨房に消えた。入れ替わるようにして、光り輝くような美青年がカウンター越しに現れる。店長の海老原だ。彼はアマビエである。川端とバコさんを見て赤い眼を細める。
「いらっしゃい。今日は玉藻さんは?」
玉藻は繁華街でクラブを経営する九尾の狐である。
「おらんよ。僕のお給料じゃそう何回も同伴はできんて」
ぽっとまん丸な頬を染めるバコさんに川端は眉を顰める。胸にもやもやしたものが立ち込めるが、手をパタパタ振って掻き消した。
「やめときなって。横にいい男がいるっしょ」
「いやあ二人とも僕なんか釣り合わんて。たまにお酒飲むくらいがちょうどええわ」
「はーん。俺はいい尻してると思うけど」
尻たぶをぺちんと叩くとバコさんのふさふさ尻尾がぽんっと現れた。
だから、とまん丸の目を少しだけ三角にして怒るバコさんだが、
「お通しでーす」
と料理が運ばれてくると顔を綻ばせた。美濃焼の皿に乗った叩ききゅうりと茄子のチーズ焼き、トマトのキムチを運んできた逆バニーの美少年ーー睦月は「ねえねえバコさんおひねりぷりーずう」とアヘ顔でハアハアとバコさんに擦り寄る。
「ごめんなあ給料日になったらな」
「いいじゃんいいじゃんサービスするからあ」
「むーちゃん衣装変わったぁ? カワイイじゃん」
「エヘヘわかるー⁉︎」
川端が声をかけると睦月は上機嫌になる。背中に生えた黒い羽根や尻尾がピコピコ揺れた。
「カラーとリボン新しくした? レモンイエローが夏っぽくていいね」
「さっすが川端さーん!」
などとキャッキャウフフしながら、バコさんの尻を触っていいのは自分だけだと川端はお通しの叩きキュウリを頬張る。
そして誰にでもこんな調子で話しかけるものだから、
「まあ、僕みたいなおっさんより若い子がええわなあ」
とバコさんは密かに嘆息し、自分が口説かれているものだとは露にも思わないのであった。
「そろそろはっきりおっしゃればよろしいのに」
会計を済ませさあ帰ろうと踵を返した川端の背に、店長の海老原の声が届いた。バコさんはまだ会計中で、トレーにえっちらおっちら小銭を出している。
「ん? なに、俺に言った?」
川端は振り向く。海老原は長い睫毛を伏せ物憂げに眉を下げ、儚げな美しさを纏わせる。
「いえねえ、見ているこちらはやきもきするのですよ。はっきり言葉にしないのに好意を向けているつもりになっているのはよくありませんよ。野暮は承知ですが、どこぞの獄卒さんを思い出してしまって」
海老原の赤い眼がめらめらと燃え始め眉間の皺が深くなる。苛ついているような海老原に周りはハラハラし始める。海老原は美人だが怒らせると恐ろしいともっぱらの評判なのである。
「それに、バコさんは近々地元に帰るらしいですよ」
「えっ、聞いてないんだけど」
「だから早めに、ね」
にっこりと神々しいまでの笑みを浮かべる海老原だが、はよ告白せいという無言の圧をひしひしと感じた。川端は引き攣った笑みでお茶を濁し、バコさんと共にそそくさと店を後にするのであった。
鬼火の漂う小道を歩きながら、川端はバコさんを見ながら海老原の言葉を反芻する。しかし想いを告げたところでその後どうするか想像もつかないし、強いて言うなら目の前で揺れるたゆんたゆんの尻を捏ねくり回し愛でまくり、できれば先っちょだけでも尻子玉を拝みたいところである。
とはいえ、天然物のエロガッパにもそれを口にすればドン引かれるだろうなと推測できるくらいの良識はあった。正直なところ、たまに酒を飲んで尻を揉んでわいわい話をするだけで満足してしまっている。
しかし、
「バコさんさあ、地元帰んの?」
このことが気に掛かってしょうがない。バコさんはというと、目をまんまるにして
「そうやけど、僕言ったっけ」
と首を傾げる。
「ふうん、四国だっけ。実家継ぐの?」
バコさんの実家は神社で、狸の中でもエリートの家系だと聞いている。ご先祖様は人間に奉られ神格化しているそうだ。
「いやいや。僕は狸の中でも優秀な方やないし」
「そんなことないって。変化出来ても人間の中で上手くやっていけるかは別でしょ。バコさんみたいに目立たずにそこそこいい人で通ってんのはすごいよ」
バコさんはまたまた目をまんまるにしたあと、うるうると目を潤ませ鼻をスンと啜った。
「川端さんくらいやて、僕にそんな……あああかんな、いいオッサンが。年取ると涙もろくなっていかんなあ」
目をしょぼしょぼさせながらもえへへと嬉しそうに口を綻ばせるバコさんに、川端の胸が思わずきゅーんと切なくなる。尻以外で初めてときめきを覚えた川端は動揺し、思わず
「せっかくだしさあ、地元でゆっくりしてきたら?」
などと口走ってしまい、
「そうやなあ」
とバコさんも頷くものだから、川端は後悔とともに薄汚れた都会の夜空を仰いでしまうのであった。
「えーー︎⁉︎バコさん地元に帰っちゃうのーーーー⁉︎︎」
逆バニーの美少年――睦月の叫び声が週末の店内にこだました。
「むーちゃんの金づ……、いやお財布……じゃなかったお小遣いがあああああ」
「むーちゃんむーちゃん、心の声隠せてないから」
おいおい泣きながらバコさんに縋りつく睦月に、川端が冷静にツッコむ。
お盆前にバコさんは四国へ向かうらしい。今はすでに八月に入ったが、川端とバコさんはまだ酒飲み友達のままだ。
夏野菜が豊富に出回り、キュウリのメニューが増えたのは喜ばしいことだ。しかし来週からは一人で飲みに来ることになるのかと、川端はわずかな苦味を噛み締める。
「さみしくなるなあ」
としみじみ呟くも、バコさんは「そんな大袈裟な」と困ったように麻呂眉を下げるばかりだ。
「案外いい人見つけて帰って来なくなったりするんじゃないの?」
「そんなことあらへんて」
「あ、そうだ。実家帰る前にうちの店来なよ。かっこよくコーディネートするから」
――――コトン
と一升瓶の底がカウンターを打ち鳴らし、微かな音にも関わらずその場の妖怪たちの視線を吸い寄せた。一升瓶を掴む手の先を目線で追えば、店長の海老原がニッコリと微笑んでいる。
「試作品なのですが、よろしければ召し上がってください。バコさんの門出に」
「えっ、あっ、どうもありがとうございます」
夏らしい江戸切子のグラスに注がれた透明な冷酒はキンと冷たく、口の温度で温まると華やかな香りが花火のようにパッと弾けすぅっと消えていく。
「わあ、美味しいなあ」
「川端さんもどうぞ」
「あ、ども。へえーークセになる味っすね」
川端が酒の感想を述べると海老原は笑みを深めた。
「むーちゃんも! むーちゃんにもぷりーずぅ!」
「お客様が先ですよ」
海老原はごゆっくり、と会釈すると酒の瓶を抱え厨房に持っていった。
「あ、それでさあ、さっきの話だけど」
川端はバコさんに顔を向けると
「僕、本当は帰りとうないんや」
と小柄な背中を更に丸くしていた。
「帰っても兄ちゃんや弟と比べられて終いや。孫の顔もはよ見せろ言われるし。兄弟らの子がもう二十匹もおるのに。人間の世界ならて思っとったけど、そこでもパッとせえへんし」
「え、ちょっ、バコさん酔ってる? 大丈夫?」
「でも……川端さんはよう僕を褒めてくれとったなあ」
川端はバコさんのまん丸な手の上で弾ける雫を見てしまいギョッとした。
「むーちゃん、お勘定。バコさん酔っちゃったみたいでさ」
「はーい、毎度ありー」
睦月は椅子の隙間や壁や天井をピョンピョン跳ねながら伝票やら電卓やらを取りに行った。
「人間の世界でようやっとるて……人がいいて、良く見とってくれる御仁がおるんやなあて、僕嬉しかったんや」
「はいはい、水飲んで」
「僕川端さんが好きや」
ガシャン、という音と共に水が床に広がった。グラスを落っことした水掻きのついた手はグラスを持った形のまま固まっている。一拍おいて、ガバッとバコさんが起き上がる。
「ああああああ⁉︎ え、何⁉︎ 僕こんなん言うつもりなかったのに! うわあああああ絶対川端さんに嫌われるううぅぅぅ!!」
その叫び声に「大丈夫っすか⁉︎」と猫又の少年が雑巾を持って駆け寄り、睦月が「なになにぃ?」と電卓とトレーを持って歩いてくる。
「いやちょっと待ってって! まず落ちつこ」
「こんなオッさんに告白されて何が嬉しいねん、シュッとしたイケメンにも若い子のカッコにも変化できへんし」
「俺はむしろそのまんまの方が好みだけど。尻がめっちゃ好みだし」
川端はバッと手のひらで口を押さえた。おかしい。明らかにおかしい。言いたいことというか脳みその中で浮かんだ言葉が口からダバダバ垂れ流されてしまう。
今川端の頭のお皿の下は、バコさんのことでいっぱいだった。河童だけに流されてはならぬと僅かな理性が食い止めにかかるも、尻へのパッションは抑えきれずとうとう決壊した。
「バコさんの尻はマジで世界一だと思う。信じられないほどもちもちでむちむちだし。俺はおっぱいより顔より圧倒的に尻派なんだわ。むしろ一目惚れしたんたわ。尻に。
尻子玉も天下一品だと思うよ。死ぬ前に一目見たい。だってバコさん優しいし真面目だし謙虚だしバッチリ人間の会社に溶け込んでるし普通にすげーんだわ。んで威張らないし。尻子玉てそういうの出るちゃうんだわ。そういう人のはそりゃもうダイヤモンドばりにピッカピカよ。
尻抜きにしてもそういうとこに惚れる。ってか惚れた。だからさ、あれだよ、俺もバコさんが好き……です……」
自分がなんと言っているか自覚するにつれ言葉は尻すぼみになっていき、最後は何故だか敬語になってしまった。周りの客や従業員二人はポカンと口を開けており、海老原は一人笑みを浮かべている。
それを見た瞬間、まさか、と川端の米神に冷や汗が伝う。少し考えてみれば先ほど出された酒が怪しすぎる。
「公開処刑はないでしょ……」
「ですから早めにと。それに公開処刑なんて、祝福してくださる皆様に失礼ですよ」
「外堀埋めてくるのエグ……」
飛び交う拍手や口笛は確かにありがたいが、小っ恥ずかしく皿の水が蒸発しそうである。
バコさんはというと、ボンっと音を立てて顔を真っ赤にしたかと思えばぷしゅううぅと縮んで元の狸の姿に戻ってしまった。心配そうに睦月と猫又の少年が揺さぶるが、バコさんは目を回したままぐんにゃりしている。
「店長なんとかなんないの? さっきの酒ホントに大丈夫なやつ?」
「ほんの少し口の滑りをよくするだけものですよ。酔いが回ったのとキャパオーバーで気絶しているだけかと。まあ二日酔いにならないようにはしてあげましょう」
海老原の手が発光し、バコさんをもふもふと触るとしょぼしょぼだった体毛はつやがでてふんわりした。
「依田くん、送ってあげてください。川端さんも一緒に」
依田と呼ばれた金髪にサングラスの美青年は「承知した」とロッカールームに愛車の鍵を取りに行った。依田のスポーツカーに乗せられバコさんのアパートに着くと、「麗しき海の精霊からの福音だ」とバコさんのビジネスバッグを渡される。なぜかアマビエのラベルの貼られた怪しげな瓶が刺さっていたが見ないふりをした。
「では良い夢を」
「えっ俺は⁉︎」
取り残された川端は中二病キャラで通っている吸血鬼を呆然と見送る。
川端は嘆息し、バコさんのアパートの郵便受けを見て部屋を確認する。しかしプライバシー保護のためか、表札はなく番号のみ振られている。ビジネスバッグを探り鍵を見つけ出すと、それに部屋の番号がマジックで書かれていた。
アパートの部屋の中はほとんど何もなく、家具はちゃぶ台と畳まれた布団、小さな冷蔵庫くらいだ。
本当に行ってしまうのかとしゅんと胸が萎む想いだ。
布団を敷いてバコさんを寝かせると、ふわふわの腹毛を見せて転がった。腹の毛が呼吸に合わせて膨らむ腹に合わせてそよそよ揺れる。
警戒心がなさすぎだろうとちゃぶ台に肘をついてあくびを一つ。そして出来心でふっかふかの毛で包まれた丸いお尻を撫でさする。
「ひゃあっ⁉︎」
と素っ頓狂な声とともに狸は跳ね起きズボッと布団の中に逃げ込んだ。
「マジモンの狸寝入りかい」
「うぅ……帰って。川端さんに合わせる顔あらへん……」
布団からはみ出るふさふさの狸しっぽはぷるぷる震えていた。
「なんで? もういいじゃん。さっきお互い散々恥かいたでしょ。正直俺はバコさんの尻めっちゃ好きだけど? そのままケツ向けてると揉むよ?」
「ひえっ」
ぺちんと尻をはたかれ尻尾と尻が浮き上がった。
「どこがええんやこんなおっさん」
「やっぱデカいとこかな。パーンッと張ってんのにむちむちなとことか」
「ひええなんで尻揉むん⁉︎」
「あ、セクハラかなこれ。いやでもバコさんにしかやらないから」
「嫌、やあらへんけど……は、恥ず」
「マジで? じゃあ尻子玉見ていい?」
「なんでそうなるん⁉︎」
「前から絶対バコさんの尻子玉は天下一品だと思ってたんだよね。あれ魂の一部だからいい人ほどピッカピカになんのよ。バコさんスレたとこないしいいヤツだから絶対綺麗なの出てくるよ」
「魂の一部て、そんなん取り出して大丈夫なん?」
「大丈夫大丈夫先っちょだけだから」
「先っちょだけて何⁉︎」
「頼むよぉ、バコさん帰っちゃうんでしょ」
ううううう、とバコさんは布団に頭を突っ込んだまま唸り、バッと跳ね起きたかと思えばビジネスバッグに突っ込まれた酒瓶を掴んでグビグビと煽った。
「ああーもうしゃあないなー酔ってもうたからなー何やらかしてもしゃあないよなー!」
とバーコード頭の天辺まで真っ赤にしながら棒読みの台詞を吐き出す。
川端は吹き出して、バコさんに倣い酒瓶を掴んでラッパ飲みする。
「ぷはっ、ははっ! そうそう酒のせい酒のせい」
わっはっはと笑いながら肩を組んだりバーコード頭をペチペチしたりとふざけ合うが、川端の
「じゃパンツ脱ごうか」
という台詞にバコさんは途端にスンとして、「え、ホンマに?」などと狼狽えるも相撲を得意とする河童に力で敵うわけがなかった。
例えば黒塗りの壁に窓には簾、竹や立葵を組み合わせたフラワーアレンジメントを飾った和モダンな美容室で
「あの、頭に乗せてるのってお皿・・・・・・?」
と客に突っ込まれても
「ファッションです!」
と自信満々に返せば押し通す事ができるくらいには。
この美容院で働く美容師、川端は河童である。見た目は五十代の男性で派手な柄シャツとマンバンヘアに乗っかった白い皿が特徴的だ。垢抜けたイケオジ要素とカリスマ美容師と称される腕前も相まって、川端は人間の社会を上手く渡っている。
そんな川端の楽しみは仕事終わりの一杯だ。美容院での仕事を終えた後、
「おつかれーっす」
と店長の"髪切り"と同僚の口裂け女に声をかけて繁華街に向かう。
川端は解放感に浮かれながら行きつけの店への入り口を探す。
金曜日の夜なので人間が多く、ついついこれはという人物を目で追ってしまう。人物、というより尻であるが。相撲が強そうな尻だとか、尻の形が良いだとか、いい尻子玉を持っていそうだとか。
尻子玉は魂の塊で、河童にとってえもいわれぬ魅力を持ったものである。カラスが光り物に惹かれるのに近い。食べてもよし鑑賞してもコレクションしてもよし、楽しみ方は河童それぞれで、穢れを知らぬ者の尻子玉ほど美しく美味であるとされている。
川端はよほどの上物でないと食指が動かぬ面食いならぬ"尻食い"だ。そんな川端がハッと人混みの中に視線を投げかける。
それは歩くたびたゆんたゆんと上下に弾んでいた。ボウリング玉でも入っているのかと聞きたくなるくらい大きな尻は枯葉色のスーツにむっちり包まれている。まろみのある曲線が尻の肉やまん丸な腹や福々しい頬を縁取り柔らかそうである。
川端は足早に近づいていき、その尻たぶを下からぐぁし、と掴んだ。
「よっ、バコさん」
「びゃっ!」
尻を掴まれた者は肩を跳ね上げ、ぽよんとふさふさの尻尾が飛び出て一瞬で消える。
「川端さあん、ビックリさせんといて」
振り返ったのは恰幅の良い、小柄な中年のサラリーマンだ。つぶらな目の周りには隈のような縁取りがある。
「僕変化が上手くないんやから」
「尻尾が見えてたぞ~?」
「だから川端さんが驚かすからやろ⁉︎」
バコさんこと金長団三郎は化け狸である。普段は妖力を込めた葉っぱのネクタイピンを付けてサラリーマンとして人間の会社で働いている。バーコードのようにまだらな髪から、人間からも妖怪からもバコさんと呼ばれていた。
バコさんはぷりぷりしながらも川端と並んで歩く。二人の行き先は同じだからだ。
川端はバコさんのむっちむちの尻に目が行く。川端にはわかる。あの尻には上質な尻子玉があるには違いないと。人の良い、いや狸の良いバコさんは人間社会で苦労しているらしいがその善き魂が尻子玉に反映されている。採れたてきゅうりのようにピッカピカに違いない。
繁華街を歩くうち、路地にふわりと赤提灯の灯が浮かぶ。その周りをふよふよと鬼火が漂っていた。その灯りを辿っていくと、天海の鬼火亭と書かれた看板がばばんと現れる。それを掲げる木造の居酒屋からはすでに店員同士の掛け合いや炭火の匂いが漏れている。
赤い暖簾をくぐれば
「バコさんに、川端さん! いらっしゃいっす!」
と猫耳を黒い髪から生やした作務衣の少年ーー彼は猫又だーーが威勢よく声を掛けた。いつものようにカウンターの一角に並んで座る。
珍しく人間がいて、だし巻き卵をバクバク食べていた。しかし川端の好みの尻ではなかったのでメニューに目を走らせる。
「サラダマティーニときゅうりのオーブン焼き、あとキムチきゅうりと糠漬け」
「板わさとたぬき豆腐、天かす多めな。あとだし巻き卵に芋焼酎ね」
猫又の少年はメニューを書き留め厨房に消えた。入れ替わるようにして、光り輝くような美青年がカウンター越しに現れる。店長の海老原だ。彼はアマビエである。川端とバコさんを見て赤い眼を細める。
「いらっしゃい。今日は玉藻さんは?」
玉藻は繁華街でクラブを経営する九尾の狐である。
「おらんよ。僕のお給料じゃそう何回も同伴はできんて」
ぽっとまん丸な頬を染めるバコさんに川端は眉を顰める。胸にもやもやしたものが立ち込めるが、手をパタパタ振って掻き消した。
「やめときなって。横にいい男がいるっしょ」
「いやあ二人とも僕なんか釣り合わんて。たまにお酒飲むくらいがちょうどええわ」
「はーん。俺はいい尻してると思うけど」
尻たぶをぺちんと叩くとバコさんのふさふさ尻尾がぽんっと現れた。
だから、とまん丸の目を少しだけ三角にして怒るバコさんだが、
「お通しでーす」
と料理が運ばれてくると顔を綻ばせた。美濃焼の皿に乗った叩ききゅうりと茄子のチーズ焼き、トマトのキムチを運んできた逆バニーの美少年ーー睦月は「ねえねえバコさんおひねりぷりーずう」とアヘ顔でハアハアとバコさんに擦り寄る。
「ごめんなあ給料日になったらな」
「いいじゃんいいじゃんサービスするからあ」
「むーちゃん衣装変わったぁ? カワイイじゃん」
「エヘヘわかるー⁉︎」
川端が声をかけると睦月は上機嫌になる。背中に生えた黒い羽根や尻尾がピコピコ揺れた。
「カラーとリボン新しくした? レモンイエローが夏っぽくていいね」
「さっすが川端さーん!」
などとキャッキャウフフしながら、バコさんの尻を触っていいのは自分だけだと川端はお通しの叩きキュウリを頬張る。
そして誰にでもこんな調子で話しかけるものだから、
「まあ、僕みたいなおっさんより若い子がええわなあ」
とバコさんは密かに嘆息し、自分が口説かれているものだとは露にも思わないのであった。
「そろそろはっきりおっしゃればよろしいのに」
会計を済ませさあ帰ろうと踵を返した川端の背に、店長の海老原の声が届いた。バコさんはまだ会計中で、トレーにえっちらおっちら小銭を出している。
「ん? なに、俺に言った?」
川端は振り向く。海老原は長い睫毛を伏せ物憂げに眉を下げ、儚げな美しさを纏わせる。
「いえねえ、見ているこちらはやきもきするのですよ。はっきり言葉にしないのに好意を向けているつもりになっているのはよくありませんよ。野暮は承知ですが、どこぞの獄卒さんを思い出してしまって」
海老原の赤い眼がめらめらと燃え始め眉間の皺が深くなる。苛ついているような海老原に周りはハラハラし始める。海老原は美人だが怒らせると恐ろしいともっぱらの評判なのである。
「それに、バコさんは近々地元に帰るらしいですよ」
「えっ、聞いてないんだけど」
「だから早めに、ね」
にっこりと神々しいまでの笑みを浮かべる海老原だが、はよ告白せいという無言の圧をひしひしと感じた。川端は引き攣った笑みでお茶を濁し、バコさんと共にそそくさと店を後にするのであった。
鬼火の漂う小道を歩きながら、川端はバコさんを見ながら海老原の言葉を反芻する。しかし想いを告げたところでその後どうするか想像もつかないし、強いて言うなら目の前で揺れるたゆんたゆんの尻を捏ねくり回し愛でまくり、できれば先っちょだけでも尻子玉を拝みたいところである。
とはいえ、天然物のエロガッパにもそれを口にすればドン引かれるだろうなと推測できるくらいの良識はあった。正直なところ、たまに酒を飲んで尻を揉んでわいわい話をするだけで満足してしまっている。
しかし、
「バコさんさあ、地元帰んの?」
このことが気に掛かってしょうがない。バコさんはというと、目をまんまるにして
「そうやけど、僕言ったっけ」
と首を傾げる。
「ふうん、四国だっけ。実家継ぐの?」
バコさんの実家は神社で、狸の中でもエリートの家系だと聞いている。ご先祖様は人間に奉られ神格化しているそうだ。
「いやいや。僕は狸の中でも優秀な方やないし」
「そんなことないって。変化出来ても人間の中で上手くやっていけるかは別でしょ。バコさんみたいに目立たずにそこそこいい人で通ってんのはすごいよ」
バコさんはまたまた目をまんまるにしたあと、うるうると目を潤ませ鼻をスンと啜った。
「川端さんくらいやて、僕にそんな……あああかんな、いいオッサンが。年取ると涙もろくなっていかんなあ」
目をしょぼしょぼさせながらもえへへと嬉しそうに口を綻ばせるバコさんに、川端の胸が思わずきゅーんと切なくなる。尻以外で初めてときめきを覚えた川端は動揺し、思わず
「せっかくだしさあ、地元でゆっくりしてきたら?」
などと口走ってしまい、
「そうやなあ」
とバコさんも頷くものだから、川端は後悔とともに薄汚れた都会の夜空を仰いでしまうのであった。
「えーー︎⁉︎バコさん地元に帰っちゃうのーーーー⁉︎︎」
逆バニーの美少年――睦月の叫び声が週末の店内にこだました。
「むーちゃんの金づ……、いやお財布……じゃなかったお小遣いがあああああ」
「むーちゃんむーちゃん、心の声隠せてないから」
おいおい泣きながらバコさんに縋りつく睦月に、川端が冷静にツッコむ。
お盆前にバコさんは四国へ向かうらしい。今はすでに八月に入ったが、川端とバコさんはまだ酒飲み友達のままだ。
夏野菜が豊富に出回り、キュウリのメニューが増えたのは喜ばしいことだ。しかし来週からは一人で飲みに来ることになるのかと、川端はわずかな苦味を噛み締める。
「さみしくなるなあ」
としみじみ呟くも、バコさんは「そんな大袈裟な」と困ったように麻呂眉を下げるばかりだ。
「案外いい人見つけて帰って来なくなったりするんじゃないの?」
「そんなことあらへんて」
「あ、そうだ。実家帰る前にうちの店来なよ。かっこよくコーディネートするから」
――――コトン
と一升瓶の底がカウンターを打ち鳴らし、微かな音にも関わらずその場の妖怪たちの視線を吸い寄せた。一升瓶を掴む手の先を目線で追えば、店長の海老原がニッコリと微笑んでいる。
「試作品なのですが、よろしければ召し上がってください。バコさんの門出に」
「えっ、あっ、どうもありがとうございます」
夏らしい江戸切子のグラスに注がれた透明な冷酒はキンと冷たく、口の温度で温まると華やかな香りが花火のようにパッと弾けすぅっと消えていく。
「わあ、美味しいなあ」
「川端さんもどうぞ」
「あ、ども。へえーークセになる味っすね」
川端が酒の感想を述べると海老原は笑みを深めた。
「むーちゃんも! むーちゃんにもぷりーずぅ!」
「お客様が先ですよ」
海老原はごゆっくり、と会釈すると酒の瓶を抱え厨房に持っていった。
「あ、それでさあ、さっきの話だけど」
川端はバコさんに顔を向けると
「僕、本当は帰りとうないんや」
と小柄な背中を更に丸くしていた。
「帰っても兄ちゃんや弟と比べられて終いや。孫の顔もはよ見せろ言われるし。兄弟らの子がもう二十匹もおるのに。人間の世界ならて思っとったけど、そこでもパッとせえへんし」
「え、ちょっ、バコさん酔ってる? 大丈夫?」
「でも……川端さんはよう僕を褒めてくれとったなあ」
川端はバコさんのまん丸な手の上で弾ける雫を見てしまいギョッとした。
「むーちゃん、お勘定。バコさん酔っちゃったみたいでさ」
「はーい、毎度ありー」
睦月は椅子の隙間や壁や天井をピョンピョン跳ねながら伝票やら電卓やらを取りに行った。
「人間の世界でようやっとるて……人がいいて、良く見とってくれる御仁がおるんやなあて、僕嬉しかったんや」
「はいはい、水飲んで」
「僕川端さんが好きや」
ガシャン、という音と共に水が床に広がった。グラスを落っことした水掻きのついた手はグラスを持った形のまま固まっている。一拍おいて、ガバッとバコさんが起き上がる。
「ああああああ⁉︎ え、何⁉︎ 僕こんなん言うつもりなかったのに! うわあああああ絶対川端さんに嫌われるううぅぅぅ!!」
その叫び声に「大丈夫っすか⁉︎」と猫又の少年が雑巾を持って駆け寄り、睦月が「なになにぃ?」と電卓とトレーを持って歩いてくる。
「いやちょっと待ってって! まず落ちつこ」
「こんなオッさんに告白されて何が嬉しいねん、シュッとしたイケメンにも若い子のカッコにも変化できへんし」
「俺はむしろそのまんまの方が好みだけど。尻がめっちゃ好みだし」
川端はバッと手のひらで口を押さえた。おかしい。明らかにおかしい。言いたいことというか脳みその中で浮かんだ言葉が口からダバダバ垂れ流されてしまう。
今川端の頭のお皿の下は、バコさんのことでいっぱいだった。河童だけに流されてはならぬと僅かな理性が食い止めにかかるも、尻へのパッションは抑えきれずとうとう決壊した。
「バコさんの尻はマジで世界一だと思う。信じられないほどもちもちでむちむちだし。俺はおっぱいより顔より圧倒的に尻派なんだわ。むしろ一目惚れしたんたわ。尻に。
尻子玉も天下一品だと思うよ。死ぬ前に一目見たい。だってバコさん優しいし真面目だし謙虚だしバッチリ人間の会社に溶け込んでるし普通にすげーんだわ。んで威張らないし。尻子玉てそういうの出るちゃうんだわ。そういう人のはそりゃもうダイヤモンドばりにピッカピカよ。
尻抜きにしてもそういうとこに惚れる。ってか惚れた。だからさ、あれだよ、俺もバコさんが好き……です……」
自分がなんと言っているか自覚するにつれ言葉は尻すぼみになっていき、最後は何故だか敬語になってしまった。周りの客や従業員二人はポカンと口を開けており、海老原は一人笑みを浮かべている。
それを見た瞬間、まさか、と川端の米神に冷や汗が伝う。少し考えてみれば先ほど出された酒が怪しすぎる。
「公開処刑はないでしょ……」
「ですから早めにと。それに公開処刑なんて、祝福してくださる皆様に失礼ですよ」
「外堀埋めてくるのエグ……」
飛び交う拍手や口笛は確かにありがたいが、小っ恥ずかしく皿の水が蒸発しそうである。
バコさんはというと、ボンっと音を立てて顔を真っ赤にしたかと思えばぷしゅううぅと縮んで元の狸の姿に戻ってしまった。心配そうに睦月と猫又の少年が揺さぶるが、バコさんは目を回したままぐんにゃりしている。
「店長なんとかなんないの? さっきの酒ホントに大丈夫なやつ?」
「ほんの少し口の滑りをよくするだけものですよ。酔いが回ったのとキャパオーバーで気絶しているだけかと。まあ二日酔いにならないようにはしてあげましょう」
海老原の手が発光し、バコさんをもふもふと触るとしょぼしょぼだった体毛はつやがでてふんわりした。
「依田くん、送ってあげてください。川端さんも一緒に」
依田と呼ばれた金髪にサングラスの美青年は「承知した」とロッカールームに愛車の鍵を取りに行った。依田のスポーツカーに乗せられバコさんのアパートに着くと、「麗しき海の精霊からの福音だ」とバコさんのビジネスバッグを渡される。なぜかアマビエのラベルの貼られた怪しげな瓶が刺さっていたが見ないふりをした。
「では良い夢を」
「えっ俺は⁉︎」
取り残された川端は中二病キャラで通っている吸血鬼を呆然と見送る。
川端は嘆息し、バコさんのアパートの郵便受けを見て部屋を確認する。しかしプライバシー保護のためか、表札はなく番号のみ振られている。ビジネスバッグを探り鍵を見つけ出すと、それに部屋の番号がマジックで書かれていた。
アパートの部屋の中はほとんど何もなく、家具はちゃぶ台と畳まれた布団、小さな冷蔵庫くらいだ。
本当に行ってしまうのかとしゅんと胸が萎む想いだ。
布団を敷いてバコさんを寝かせると、ふわふわの腹毛を見せて転がった。腹の毛が呼吸に合わせて膨らむ腹に合わせてそよそよ揺れる。
警戒心がなさすぎだろうとちゃぶ台に肘をついてあくびを一つ。そして出来心でふっかふかの毛で包まれた丸いお尻を撫でさする。
「ひゃあっ⁉︎」
と素っ頓狂な声とともに狸は跳ね起きズボッと布団の中に逃げ込んだ。
「マジモンの狸寝入りかい」
「うぅ……帰って。川端さんに合わせる顔あらへん……」
布団からはみ出るふさふさの狸しっぽはぷるぷる震えていた。
「なんで? もういいじゃん。さっきお互い散々恥かいたでしょ。正直俺はバコさんの尻めっちゃ好きだけど? そのままケツ向けてると揉むよ?」
「ひえっ」
ぺちんと尻をはたかれ尻尾と尻が浮き上がった。
「どこがええんやこんなおっさん」
「やっぱデカいとこかな。パーンッと張ってんのにむちむちなとことか」
「ひええなんで尻揉むん⁉︎」
「あ、セクハラかなこれ。いやでもバコさんにしかやらないから」
「嫌、やあらへんけど……は、恥ず」
「マジで? じゃあ尻子玉見ていい?」
「なんでそうなるん⁉︎」
「前から絶対バコさんの尻子玉は天下一品だと思ってたんだよね。あれ魂の一部だからいい人ほどピッカピカになんのよ。バコさんスレたとこないしいいヤツだから絶対綺麗なの出てくるよ」
「魂の一部て、そんなん取り出して大丈夫なん?」
「大丈夫大丈夫先っちょだけだから」
「先っちょだけて何⁉︎」
「頼むよぉ、バコさん帰っちゃうんでしょ」
ううううう、とバコさんは布団に頭を突っ込んだまま唸り、バッと跳ね起きたかと思えばビジネスバッグに突っ込まれた酒瓶を掴んでグビグビと煽った。
「ああーもうしゃあないなー酔ってもうたからなー何やらかしてもしゃあないよなー!」
とバーコード頭の天辺まで真っ赤にしながら棒読みの台詞を吐き出す。
川端は吹き出して、バコさんに倣い酒瓶を掴んでラッパ飲みする。
「ぷはっ、ははっ! そうそう酒のせい酒のせい」
わっはっはと笑いながら肩を組んだりバーコード頭をペチペチしたりとふざけ合うが、川端の
「じゃパンツ脱ごうか」
という台詞にバコさんは途端にスンとして、「え、ホンマに?」などと狼狽えるも相撲を得意とする河童に力で敵うわけがなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説






寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる