ターゲットハンド!

SF

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2.ストーリング

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 放課後、体育館でストレッチをしていると部長が隣に座った。
「松浦、勧誘がしつこいって苦情が来たぞ」
 声を潜めてそんなことを言われて、背筋がヒヤッとする。マジでチクリやがったか。
「お前の気持ちもわかるけど、バスケ部の素行が悪いってレッテルを貼られたらどうなると思う?そうなったら真面目にやってるヤツらが可哀想だし、次の新入生が入って来なくなるかもしれないだろ。そこのところ、よく考えな」
 正直そこまで考えてなくて、うんともすんとも言えなくなった。
「・・・オレだってバスケ部のことを思って佐野を」
「うん、それはわかるけど、佐野はイヤだって言ってんだろ?人の嫌がることするなって教わらなかったか?」
「じゃあどうすりゃいいんだよもおおぉぉぉぉ!」
   ビターン!と床に大の字になる。なんだよそれオレずっと嫌がらせしてたってこと?でも佐野はオレのこと嫌いじゃないって言ってたし。
 勧誘もダメって、じゃあ何すればいいオレ?
 そんなことをわあわあ言いながら転がってたら、
「じゃあ、まず仲良くなってみれば?」
と部長の口から神託が降りた。オレはガバリと起き上がる。
「それだ!詳しく!」
「だから、バスケが絡まなきゃ松浦のこと嫌いじゃないって言ってんだろ。じゃあ普通に遊んだりすればいいんじゃないか?助っ人くらいやってくれるんじゃ」
「まずはお友だちからってやつですね!」
「うん、まあ」
 なんかめんどうくさくなってきたのか、部長は目を逸らして立ち上がる。
「よし、ストレッチ終わったらヤツからシャトルランな!20本!」
 とステージの前まで走っていった。逃げられた。
 でももうすぐ夏休みだし、佐野と遊ぶ口実はいくらでも出来そうだ。園芸部は水やりに毎日くるらしいしそのうち捕まるだろ。いや、まずは連絡先を聞くところからだな。パーっと目の前が開けたような気分だ。
 オレは最後にアキレス腱をグッと伸ばした後、シャトルランのスタート位置に走った。

「バスケ部に入る前提でお友だちからお願いします!」
 翌朝、そう言いながら佐野の前にスマホを突き出した。
 佐野は
「意味がわかりません」
とホースを持ったままフリーズする。しゃあああっとノズルから水がでっぱなしだ。
「だから、連絡先!交換しよ。でさ、今度夏祭りあるじゃん?一緒にいかね?」
「えっ」
 佐野は瞬きして、「デー・・・いや、連絡先?・・・えっ?・・・」とかなんとかブツブツ言いながらオレのスマホをじっと見つめる。それからハッと顔を上げ、
「・・・もしかして、仲良くなってから勧誘しようとしてます?」
 とじとっと睨んでくる。全部バレてる!
「んんんそうとも言い切れないけどっ!」
「正直すぎでしょ」
 ん?なんか今一瞬笑われた?
「いいですよ。連絡先、交換しても」
 佐野はスマホをズボンのポケットから取り出す。
お、マジで?意外とあっさり通ったぞ。と思いきや
「ただし、バスケ部への勧誘は禁止。バスケの話題も出したらブロックします」
 ときた。
 まあ最初は言うこと聞いた方がいいよな。
 オレは佐野のQLコードを読み取り、スタンプを試しに送ってみる。
「夏祭り、何時にどこに集合します?今度の土曜日ですよね」
「あ、そうだな。じゃあ六時に駅の改札で」
「他の人は?」
「ん?とりあえずお前と二人の予定だけど」
「・・・へえ」
 佐野はスマホの画面をまだじっと見ている。オレが送ったのスタンプ一つだけなんだけど?
「あ!ヤベッ!朝練!」
 スマホの時刻を見ればもう始まる時間だった。
「また連絡するから!」
 そう言いながら体育館にダッシュする。佐野は頷いて返事をした。それからまたホースを手に取り、キラキラした飛沫を撒き散らしながら水やりを再開していた。なんか、いつもより機嫌良さそうに。
 
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