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Whatever 後編
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真木がイッた後、もう少し頑張ってもらって中で出した。普通に気持ちよかった。なんとかなるもんだな。
『うるさかった?』
真木はスマホを見せてきた。頷くと、ごめん、と照れ臭そうにしていた。けれどもすぐニコリと笑う。
『気持ちよかった。思い切り声出せたし』
発音にかなり気を使うらしくて、考えなしに声を出すとスッキリする、とスマホで伝えてきた。絶叫マシンとかお化け屋敷とかもよく行くらしい。リア充め。
『セックスできるのって聞かれた時帰ろうと思った』
おっと。ヤバかったな。ペンを走らせる。
『ごめん。怒った?』
『たまに聞かれる。俺も男だぜ』
真木のスマホを叩く音が強くなる。
『そりゃそうだよな』
メモを差し出すも、スマホに釘付けでこっちを見ていない。
『俺だってセックスしたいよ』
『すげえわかる』
それは共感せざるを得ない。頷きにも力が入る。
『もう一回する?』
そう書いて、真木の肩を叩いてメモを見せた。スマホを叩く音が止む。
顔を上げた真木はナイフで削り出したような険しい顔をしていた。メモを見ると、ふっと顔の力を抜いて、少し微笑んで、向こうからキスしてきた。
そういえば今日はキスしてなかったな。
そんな事を思いながら、真木の身体に、ああそうだ。手を塞がないように、腕の下を通って背中に手をまわした。
やれやれ、本当に手間のかかるヤツだ。
二回戦をヤッてたら時間ギリギリになって、慌ただしくホテルを出た。携帯のアラームが無けりゃヤバかった。
『クラブ行く?』
「は?今から?」
真木は頷く。
アクティブにも程がある。あれだけ喘いどいてよく動けるもんだ。
『楽しかったから』
そうか?メシ食ってセックスしただけだったけど。
まあせっかくだし一回行ってみてもいいか。どんな曲流れてるか気になるし。
行く、と返事をするとしっぽを振る子犬のような顔をして喜んだ。
ホテルから一駅分離れたクラブまで歩いていった。この時点で疲れたんだけど。
ビルの3階にある部屋は照明で青く染まっていた。白やピンクや緑のライトが乱舞して、まるで水槽の中みたいだ。DJのかけるSeptemberに合わせて熱帯魚みてえに派手なヤツらが踊っている。確かに身体の芯に音が響いて、自然と身体がリズムを取ろうとする。
真木はフロアに躍り出て、群に混じって身体を揺らした。俺はコーラを口にしながら、部屋の隅っこで指先だけリズムを刻んだ。
わりとすぐに真木は戻ってきて
「つかれた」
薄っすら汗をかきながら言う。そりゃそうだろ、さっきまで動いてたんだから。
『帰る?』
メモを見せる。
『まだ遊ぶ笑』
マジかよコイツ。
『来年から仕事だから。やりたい事やらないとな』
真木は笑って、また人と音楽の渦の中に戻っていった。
結局晩飯まで一緒に付き合わされた。
人と話すのは疲れると言っていたくせに真木はおしゃべりなヤツで、新品同様だったメモ帳は半分以下の厚さになった。
別れ際に、真木はスマホに向かい『今日は』と打ち込んだところではたと指を止めた。文章を消してからこっちを見て、目をあっちこっちに動かしたり、口を開いたり閉じたり顔のパーツが忙しく動いていた。
なんだ、言いたいことがあるなら早く言え。
『色々言いたいことありすぎて、なんて言ったらいいかわかんね』
真木はニッと笑って画面を見せてきて、それからハグをしてきた。ギューっと擬音がつきそうなほど強く。
離れる刹那、
「ありがとな」
と、真木の唇が動いた気がした。
うちに帰ると、次の日にユウジが
「洗濯物に入ってたけど何これ」
と黒いカードを渡してきた。
「ああ、なんかクラブのカードだってさ」
昨日入るときにもらったやつだ。
「クラブ?お前行ってたっけ?」
「昨日会ったやつと行った」
ラミネートしてあってよかった。また行くかどうかわかんないけど、とりあえず財布にしまっておこ。
「これ以上変な遊び覚えてくるなよ」
「なんだよ、普通のヤツだったよ」
確かに面倒臭えヤツだったけど、ただそれだけの事だったんだから。
音楽もセックスも、すべての人間に平等なのだ。
『うるさかった?』
真木はスマホを見せてきた。頷くと、ごめん、と照れ臭そうにしていた。けれどもすぐニコリと笑う。
『気持ちよかった。思い切り声出せたし』
発音にかなり気を使うらしくて、考えなしに声を出すとスッキリする、とスマホで伝えてきた。絶叫マシンとかお化け屋敷とかもよく行くらしい。リア充め。
『セックスできるのって聞かれた時帰ろうと思った』
おっと。ヤバかったな。ペンを走らせる。
『ごめん。怒った?』
『たまに聞かれる。俺も男だぜ』
真木のスマホを叩く音が強くなる。
『そりゃそうだよな』
メモを差し出すも、スマホに釘付けでこっちを見ていない。
『俺だってセックスしたいよ』
『すげえわかる』
それは共感せざるを得ない。頷きにも力が入る。
『もう一回する?』
そう書いて、真木の肩を叩いてメモを見せた。スマホを叩く音が止む。
顔を上げた真木はナイフで削り出したような険しい顔をしていた。メモを見ると、ふっと顔の力を抜いて、少し微笑んで、向こうからキスしてきた。
そういえば今日はキスしてなかったな。
そんな事を思いながら、真木の身体に、ああそうだ。手を塞がないように、腕の下を通って背中に手をまわした。
やれやれ、本当に手間のかかるヤツだ。
二回戦をヤッてたら時間ギリギリになって、慌ただしくホテルを出た。携帯のアラームが無けりゃヤバかった。
『クラブ行く?』
「は?今から?」
真木は頷く。
アクティブにも程がある。あれだけ喘いどいてよく動けるもんだ。
『楽しかったから』
そうか?メシ食ってセックスしただけだったけど。
まあせっかくだし一回行ってみてもいいか。どんな曲流れてるか気になるし。
行く、と返事をするとしっぽを振る子犬のような顔をして喜んだ。
ホテルから一駅分離れたクラブまで歩いていった。この時点で疲れたんだけど。
ビルの3階にある部屋は照明で青く染まっていた。白やピンクや緑のライトが乱舞して、まるで水槽の中みたいだ。DJのかけるSeptemberに合わせて熱帯魚みてえに派手なヤツらが踊っている。確かに身体の芯に音が響いて、自然と身体がリズムを取ろうとする。
真木はフロアに躍り出て、群に混じって身体を揺らした。俺はコーラを口にしながら、部屋の隅っこで指先だけリズムを刻んだ。
わりとすぐに真木は戻ってきて
「つかれた」
薄っすら汗をかきながら言う。そりゃそうだろ、さっきまで動いてたんだから。
『帰る?』
メモを見せる。
『まだ遊ぶ笑』
マジかよコイツ。
『来年から仕事だから。やりたい事やらないとな』
真木は笑って、また人と音楽の渦の中に戻っていった。
結局晩飯まで一緒に付き合わされた。
人と話すのは疲れると言っていたくせに真木はおしゃべりなヤツで、新品同様だったメモ帳は半分以下の厚さになった。
別れ際に、真木はスマホに向かい『今日は』と打ち込んだところではたと指を止めた。文章を消してからこっちを見て、目をあっちこっちに動かしたり、口を開いたり閉じたり顔のパーツが忙しく動いていた。
なんだ、言いたいことがあるなら早く言え。
『色々言いたいことありすぎて、なんて言ったらいいかわかんね』
真木はニッと笑って画面を見せてきて、それからハグをしてきた。ギューっと擬音がつきそうなほど強く。
離れる刹那、
「ありがとな」
と、真木の唇が動いた気がした。
うちに帰ると、次の日にユウジが
「洗濯物に入ってたけど何これ」
と黒いカードを渡してきた。
「ああ、なんかクラブのカードだってさ」
昨日入るときにもらったやつだ。
「クラブ?お前行ってたっけ?」
「昨日会ったやつと行った」
ラミネートしてあってよかった。また行くかどうかわかんないけど、とりあえず財布にしまっておこ。
「これ以上変な遊び覚えてくるなよ」
「なんだよ、普通のヤツだったよ」
確かに面倒臭えヤツだったけど、ただそれだけの事だったんだから。
音楽もセックスも、すべての人間に平等なのだ。
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