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Trac01 So What/P¡nk
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『ーーーー私はケンカを始めたいの!』
Pink /So What
さて、ちょっとした問題が起こった。
ユウジがバイト先の楽器店に来た。
まあ、それはいい。店長とユウジは昔一緒にバンドやってたからな。んで、同じくバイトのアリサとも鉢合わせした。
アリサは「あれがユウジさん?」と羽根みたいにゴテゴテしたつけまつげを羽ばたかせながら聞いてきた。
あれ、会うの初めてだっけ。
「アンタって面食いだったのね」
「いや、セックスするのに顔は関係ねえよ」
見た目はいいに越したことないけど暗くすればわかんないし。
「やっぱりアンタ最低・・・」
ドン引きするアリサをほっといてステッカーの補充をした。店長に呼ばれたアリサは、ユウジも交えて何やら3人で話している。
あーあ、こんなクズでさえ真面目に仕事してるのにお前らときたら。
その日の夜の9時。
マンションの3階にある家に帰って、俺はピアノをいじってて、ユウジはスマホを触ってる時だった。
カホはとっくに寝ている。
ユウジはおもむろに
「カホに母親って必要だと思うか?」
とのたまった。
いや、知らねえよ。そんなんカホに聞いてみるのが一番手っ取り早いじゃねえか。俺に聞いてどうすんだよ。なんて言葉が浮かんでも、
「さあな」
としか答えられなかった。
「織田先輩がいい娘紹介してくれるって言ってんだけどさ」
マジか。てか店長に紹介できるような女がいたのか。あのスキンヘッドに強面のいかついオッさんに?
ユウジは煮え切らない態度で
「まだそんな気になれないっていうか・・・」
と首を捻っていて、「そうだな」と返しつつ少しほっとした。
「カホもいるしさ、でも、お前のことも気になってさ」
「は?」
なんで俺に関係あるんだ。
「カホの事任せっきりでさ、まともにバイト行けてない時もあっただろ?
そろそろ、お前も自分の将来の事考えて動かないといけないんじゃないのか?」
「なんだよ、急に」
そんなことは、今まで触れられたことが無かった。むしろユウジは、自分が収入と家事の大半を担っているんだから、俺がカホの世話をすることは当たり前っていう節があった。
「いや、俺自分が恥ずかしくなっちゃってさ。そんな事、年下の女の子に指摘されるまで気にもとめてなかった」
ちょっと待て。それもしかして
「アリサちゃんって、イイコだよな」
何でかわからないけど、こんなに女にムカついたのは初めてだった。
翌日バイト先に行って、アリサがやって来るや否や
「お前何余計なこと言ってんだ」
と自分でもビックリするほど低い声が出た。少なくともアリサが怯えて少し後ずさるほどには。
「人ん家の事にクビ突っ込んでんじゃねえよ」
アリサはガンを飛ばす俺に負けじと睨み返してきた。
「人ん家の事じゃないわよ、アンタの事よ。
それに、いつまでもフリーターやってる訳にいかないのもホントの事でしょ」
「だから余計なお世話だって言ってんだよ!ユウジはーーーー」
「何やってんだ!どうした?!」
ロッカーをぶっ叩いたからか、店長がすっ飛んできた。
「・・・すみません」
しまった。さすがにやりすぎた。
後、ヤバかった。要らないことまで言っちまいそうだった。
ユウジは俺のモンだ、なんて。
「あ、私が、余計な事言っちゃったみたいで、その、怒らせちゃったみたいで」
アリサが何故だか焦って弁解している。
店長は俺とアリサを交互に見て、盛大にため息を吐いた。
「お前らなら、そういうトラブルもなく仕事できると思ったんだがなあ」
「何の話だよ」
敬語、と店長に睨まれ、スイマセン、と目をそらす。
「お前がゲイだからアリサを雇っても大丈夫だと思ったんだよ」
だからなんの話だ。
「確かに、アリサは人ん家の事に首突っ込みすぎだ、反省しとけ。ハジメ、店のモン壊したらただじゃおかねえからな」
さっさと着替えてこい、と店長はロッカールームから出てった。
「ごめん。言いすぎた。でも、アンタの為を思って言ったの」
アリサはピンクの唇をキュッと結んで、エプロンを急いでつけると小走りしていった。
なんでアリサに俺の事を決められないといけねえんだ。
ここでバイトしてんのも、カホの面倒見てんのも、ユウジの側にいることも、全部自分で選んだ事だ。
てか紹介する女って誰だよ。まさかアリサじゃねえだろうな。この前呼ばれてたし。
「おいハジメ!早くしろよ」
店長に呼ばれた。馬鹿でかい声で返事をして頭からモヤモヤを追い出した。仕事しよ。忘れよう。
今夜、予定も入っている事だしな。
Pink /So What
さて、ちょっとした問題が起こった。
ユウジがバイト先の楽器店に来た。
まあ、それはいい。店長とユウジは昔一緒にバンドやってたからな。んで、同じくバイトのアリサとも鉢合わせした。
アリサは「あれがユウジさん?」と羽根みたいにゴテゴテしたつけまつげを羽ばたかせながら聞いてきた。
あれ、会うの初めてだっけ。
「アンタって面食いだったのね」
「いや、セックスするのに顔は関係ねえよ」
見た目はいいに越したことないけど暗くすればわかんないし。
「やっぱりアンタ最低・・・」
ドン引きするアリサをほっといてステッカーの補充をした。店長に呼ばれたアリサは、ユウジも交えて何やら3人で話している。
あーあ、こんなクズでさえ真面目に仕事してるのにお前らときたら。
その日の夜の9時。
マンションの3階にある家に帰って、俺はピアノをいじってて、ユウジはスマホを触ってる時だった。
カホはとっくに寝ている。
ユウジはおもむろに
「カホに母親って必要だと思うか?」
とのたまった。
いや、知らねえよ。そんなんカホに聞いてみるのが一番手っ取り早いじゃねえか。俺に聞いてどうすんだよ。なんて言葉が浮かんでも、
「さあな」
としか答えられなかった。
「織田先輩がいい娘紹介してくれるって言ってんだけどさ」
マジか。てか店長に紹介できるような女がいたのか。あのスキンヘッドに強面のいかついオッさんに?
ユウジは煮え切らない態度で
「まだそんな気になれないっていうか・・・」
と首を捻っていて、「そうだな」と返しつつ少しほっとした。
「カホもいるしさ、でも、お前のことも気になってさ」
「は?」
なんで俺に関係あるんだ。
「カホの事任せっきりでさ、まともにバイト行けてない時もあっただろ?
そろそろ、お前も自分の将来の事考えて動かないといけないんじゃないのか?」
「なんだよ、急に」
そんなことは、今まで触れられたことが無かった。むしろユウジは、自分が収入と家事の大半を担っているんだから、俺がカホの世話をすることは当たり前っていう節があった。
「いや、俺自分が恥ずかしくなっちゃってさ。そんな事、年下の女の子に指摘されるまで気にもとめてなかった」
ちょっと待て。それもしかして
「アリサちゃんって、イイコだよな」
何でかわからないけど、こんなに女にムカついたのは初めてだった。
翌日バイト先に行って、アリサがやって来るや否や
「お前何余計なこと言ってんだ」
と自分でもビックリするほど低い声が出た。少なくともアリサが怯えて少し後ずさるほどには。
「人ん家の事にクビ突っ込んでんじゃねえよ」
アリサはガンを飛ばす俺に負けじと睨み返してきた。
「人ん家の事じゃないわよ、アンタの事よ。
それに、いつまでもフリーターやってる訳にいかないのもホントの事でしょ」
「だから余計なお世話だって言ってんだよ!ユウジはーーーー」
「何やってんだ!どうした?!」
ロッカーをぶっ叩いたからか、店長がすっ飛んできた。
「・・・すみません」
しまった。さすがにやりすぎた。
後、ヤバかった。要らないことまで言っちまいそうだった。
ユウジは俺のモンだ、なんて。
「あ、私が、余計な事言っちゃったみたいで、その、怒らせちゃったみたいで」
アリサが何故だか焦って弁解している。
店長は俺とアリサを交互に見て、盛大にため息を吐いた。
「お前らなら、そういうトラブルもなく仕事できると思ったんだがなあ」
「何の話だよ」
敬語、と店長に睨まれ、スイマセン、と目をそらす。
「お前がゲイだからアリサを雇っても大丈夫だと思ったんだよ」
だからなんの話だ。
「確かに、アリサは人ん家の事に首突っ込みすぎだ、反省しとけ。ハジメ、店のモン壊したらただじゃおかねえからな」
さっさと着替えてこい、と店長はロッカールームから出てった。
「ごめん。言いすぎた。でも、アンタの為を思って言ったの」
アリサはピンクの唇をキュッと結んで、エプロンを急いでつけると小走りしていった。
なんでアリサに俺の事を決められないといけねえんだ。
ここでバイトしてんのも、カホの面倒見てんのも、ユウジの側にいることも、全部自分で選んだ事だ。
てか紹介する女って誰だよ。まさかアリサじゃねえだろうな。この前呼ばれてたし。
「おいハジメ!早くしろよ」
店長に呼ばれた。馬鹿でかい声で返事をして頭からモヤモヤを追い出した。仕事しよ。忘れよう。
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