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番外編 降り積もるは 中編
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マーカスのシャツのボタンは全て外され、色白で薄い胸があらわになる。オーベリウスはシャツの隙間に手を滑らせ、胸から腰に連なる曲線を撫でながらキスの雨を降らせた。
その手つきは丁重というよりも臆病だ。オーベリウスは今この瞬間まで、誰かと肌を合わせたことはない。
それはマーカスも同じだ。オーベリウスの唇が肌に触れ、長い指がしなやかな身体をなぞるたび小さく声が漏れて身体が跳ねる。憧れてやまないオーベリウスの前で、肌を晒して触れられていると思うだけで身体が震えた。興奮からか快感からかは分からない。ただやめて欲しいとは思わなかった。
オーベリウスは自身のシャツのボタンを外して腹まではだけた。やや細身だが、マーカスより肩幅や厚みがあり均整のとれた肉体が現れる。
マーカスは吸い寄せられるようにそこに触れた。オーベリウスの胸元に掌を置く。指先から鼓動の強さと熱さが伝わってきた。
オーベリウスはそんなマーカスを不思議そうにながめる。それに気づいたマーカスは、気恥ずかしさにオーベリウスに抱きつき顔を隠した。素肌が触れ合い、その心地よさに驚く。抱き合えばお互いの心臓が重なる。鼓動のリズムも重なっていき、すでに一つなってしまったかのような充足感に満たされる。
だが二人の中心は下履きを押し上げ、それでは足りぬとばかりに主張し擦れ合った。
オーベリウスはマーカスのスラックスと下着を寛げた。まだ成長の途中にあるすらりとした陰茎を下から撫で上げる。マーカスの細い腿がビクリと震え、手はオーベリウスのシャツの袖をくしゃりと握る。
オーベリウスの手はいつもひんやりと冷たい。その手が陰茎を包み込み上下に擦られることで、マーカスは自身の熱さを自覚する。ぞわぞわとくすぐったくなるような、甘い痺れのような刺激がしなやかな身体をくねらせた。未知の感覚に身悶えていると
「暴れるな」
と、とうとうオーベリウスに手首を押さえつけられる。
「だって・・・」
マーカスは眉を下げる。初めての感覚に翻弄され、上手く言語化も出来なかった。どうしたらいいかわからず、息を乱し視線を彷徨わせる。
オーベリウスは溜息を一つ吐き、「じっとしていなさい」と言った後、マーカスの背中に腕を回し抱き込んだ。マーカスの熱が移りぬるくなった手で、再び陰茎を扱き始める。
「あっ・・・・・・!」
マーカスから声が上がる。オーベリウスの身体に押さえつけられ、身動きがとれず快感を逃せない。
「あっ・・・ああ!・・・ぅ・・・せんせ・・・待って・・・」
マーカスは必死にオーベリウスにしがみついた。奥歯を噛み締め息を詰める。オーベリウスの腕にも力が入りきつく抱き締めてくる。
「マーカス・・・」
耳元から発せられたバリトンが鼓膜を打った。その声さえ快感として拾い上げ、ぶわりと顔が熱くなる。
マーカスの陰茎からは透明な液が溢れ、水音と細かな泡を立てる。絶頂が迫るマーカスの身体はしなり、喉からは弧を描くような高い声が伸びていた。
オーベリウスもまた昂りを抑えられなかった。成人しているとはいえ、自分より十ほど年離れた少年を乱し腕の中に閉じ込めていることに背徳感を禁じ得ない。溢れる才能を持ち、この国の魔術師の頂点である宮廷魔術師が、あられもない姿を晒し自分の手によって乱されていることに倒錯的な目眩がする。
「あぅ・・・先生!せんせ・・・っ!あ・・・」
マーカスの身体が一際大きく跳ね、つま先までピンと伸ばしてブルブルと震えた。そして大きく息を吐いて、ベッドに身体を沈める。だが手はオーベリウスを離さず、目が合うと甘えるように腕に力を込めた。
純粋に自分を求めてくるマーカスに愛おしさが湧く。あんなに憎らしく、また煩わしく思っていたのに、と自分の心の変わりように驚く。悪い夢だったのだとマーカスは言うが、オーベリウスは指が首に食い込む感覚を、意識を失った瞬間に両の手にかかった重みを忘れられない。
「せんせい・・・」
マーカスが蕩けた顔でオーベリウスの袖を引く。後悔を抱えていない人間などいない。今オーベリウスがすることはそれではない。頭の隅に仄暗い感情を押しやって、マーカスの求めるまま唇を重ねた。
隙間もないほど身体を密着させれば、マーカスの腹に散った快楽の残滓がオーベリウスにも付着する。
オーベリウスは起き上がり、拭くものを取ってこようとするが、
「やだ。行かないで」
と目を潤ませたマーカスに手首を掴まれる。
「どこにも行かないよ。すぐ戻るから待っていなさい」
頭を撫でて寝台から降りた。布を持って戻ると、マーカスはまだほうっとした顔で寝台に座っていた。精液を拭おうとすると、ハッとして「自分でやりますから!」と赤面し布を引ったくった。
先程までもっとあられもない姿を見せていたのにと思うと、可笑さが込み上げオーベリウスの口の端が上がる。
汚れと汗を拭き取っても火照りは残り、温められた部屋では暑いほどだ。オーベリウスはシャツを脱ぎ上半身を裸にする。
マーカスは目のやり場に困ってしまい、また、体格の良い方ではないオーベリウスより貧相な自分の身体が恥ずかしくなり、シャツの合わせ目を寄せる。
オーベリウスはそんなマーカスをじっと見つめる。
「今日はもう休むといい」
「え、でも先生が」
「また機会があるさ。君も今日は疲れただろう」
城で公務を果たし、王子の元でも実家でも誕生祝いをし、あちこち飛び回ってきたはずだ。明日も昼までに城に戻らねばならない。
しかし
「・・・僕じゃダメなんですか?」
突飛な問いかけに、オーベリウスは首を捻る。
「先生は、僕とその・・・こういうこと、本当は・・・」
マーカスの言わんとすることが分からず、押し黙るオーベリウスの指に少年の手が絡まる。
「先生は、僕が欲しくないんですか?」
オーベリウスは面食らった。マーカスも適切な言葉が見つからず、咄嗟にあまりにも直接的な表現をしてしまった。瞬く間に顔が赤く染まり、口を結んで汗を垂らす。
「マーカス」
オーベリウスの言葉に顔を上げれば口付けを落とされた。
「服を脱いで」
はだけたシャツに手をかけ肩をめくられる。マーカスは消え入りそうな声ではい、と答え、下着にも手を伸ばした。
その手つきは丁重というよりも臆病だ。オーベリウスは今この瞬間まで、誰かと肌を合わせたことはない。
それはマーカスも同じだ。オーベリウスの唇が肌に触れ、長い指がしなやかな身体をなぞるたび小さく声が漏れて身体が跳ねる。憧れてやまないオーベリウスの前で、肌を晒して触れられていると思うだけで身体が震えた。興奮からか快感からかは分からない。ただやめて欲しいとは思わなかった。
オーベリウスは自身のシャツのボタンを外して腹まではだけた。やや細身だが、マーカスより肩幅や厚みがあり均整のとれた肉体が現れる。
マーカスは吸い寄せられるようにそこに触れた。オーベリウスの胸元に掌を置く。指先から鼓動の強さと熱さが伝わってきた。
オーベリウスはそんなマーカスを不思議そうにながめる。それに気づいたマーカスは、気恥ずかしさにオーベリウスに抱きつき顔を隠した。素肌が触れ合い、その心地よさに驚く。抱き合えばお互いの心臓が重なる。鼓動のリズムも重なっていき、すでに一つなってしまったかのような充足感に満たされる。
だが二人の中心は下履きを押し上げ、それでは足りぬとばかりに主張し擦れ合った。
オーベリウスはマーカスのスラックスと下着を寛げた。まだ成長の途中にあるすらりとした陰茎を下から撫で上げる。マーカスの細い腿がビクリと震え、手はオーベリウスのシャツの袖をくしゃりと握る。
オーベリウスの手はいつもひんやりと冷たい。その手が陰茎を包み込み上下に擦られることで、マーカスは自身の熱さを自覚する。ぞわぞわとくすぐったくなるような、甘い痺れのような刺激がしなやかな身体をくねらせた。未知の感覚に身悶えていると
「暴れるな」
と、とうとうオーベリウスに手首を押さえつけられる。
「だって・・・」
マーカスは眉を下げる。初めての感覚に翻弄され、上手く言語化も出来なかった。どうしたらいいかわからず、息を乱し視線を彷徨わせる。
オーベリウスは溜息を一つ吐き、「じっとしていなさい」と言った後、マーカスの背中に腕を回し抱き込んだ。マーカスの熱が移りぬるくなった手で、再び陰茎を扱き始める。
「あっ・・・・・・!」
マーカスから声が上がる。オーベリウスの身体に押さえつけられ、身動きがとれず快感を逃せない。
「あっ・・・ああ!・・・ぅ・・・せんせ・・・待って・・・」
マーカスは必死にオーベリウスにしがみついた。奥歯を噛み締め息を詰める。オーベリウスの腕にも力が入りきつく抱き締めてくる。
「マーカス・・・」
耳元から発せられたバリトンが鼓膜を打った。その声さえ快感として拾い上げ、ぶわりと顔が熱くなる。
マーカスの陰茎からは透明な液が溢れ、水音と細かな泡を立てる。絶頂が迫るマーカスの身体はしなり、喉からは弧を描くような高い声が伸びていた。
オーベリウスもまた昂りを抑えられなかった。成人しているとはいえ、自分より十ほど年離れた少年を乱し腕の中に閉じ込めていることに背徳感を禁じ得ない。溢れる才能を持ち、この国の魔術師の頂点である宮廷魔術師が、あられもない姿を晒し自分の手によって乱されていることに倒錯的な目眩がする。
「あぅ・・・先生!せんせ・・・っ!あ・・・」
マーカスの身体が一際大きく跳ね、つま先までピンと伸ばしてブルブルと震えた。そして大きく息を吐いて、ベッドに身体を沈める。だが手はオーベリウスを離さず、目が合うと甘えるように腕に力を込めた。
純粋に自分を求めてくるマーカスに愛おしさが湧く。あんなに憎らしく、また煩わしく思っていたのに、と自分の心の変わりように驚く。悪い夢だったのだとマーカスは言うが、オーベリウスは指が首に食い込む感覚を、意識を失った瞬間に両の手にかかった重みを忘れられない。
「せんせい・・・」
マーカスが蕩けた顔でオーベリウスの袖を引く。後悔を抱えていない人間などいない。今オーベリウスがすることはそれではない。頭の隅に仄暗い感情を押しやって、マーカスの求めるまま唇を重ねた。
隙間もないほど身体を密着させれば、マーカスの腹に散った快楽の残滓がオーベリウスにも付着する。
オーベリウスは起き上がり、拭くものを取ってこようとするが、
「やだ。行かないで」
と目を潤ませたマーカスに手首を掴まれる。
「どこにも行かないよ。すぐ戻るから待っていなさい」
頭を撫でて寝台から降りた。布を持って戻ると、マーカスはまだほうっとした顔で寝台に座っていた。精液を拭おうとすると、ハッとして「自分でやりますから!」と赤面し布を引ったくった。
先程までもっとあられもない姿を見せていたのにと思うと、可笑さが込み上げオーベリウスの口の端が上がる。
汚れと汗を拭き取っても火照りは残り、温められた部屋では暑いほどだ。オーベリウスはシャツを脱ぎ上半身を裸にする。
マーカスは目のやり場に困ってしまい、また、体格の良い方ではないオーベリウスより貧相な自分の身体が恥ずかしくなり、シャツの合わせ目を寄せる。
オーベリウスはそんなマーカスをじっと見つめる。
「今日はもう休むといい」
「え、でも先生が」
「また機会があるさ。君も今日は疲れただろう」
城で公務を果たし、王子の元でも実家でも誕生祝いをし、あちこち飛び回ってきたはずだ。明日も昼までに城に戻らねばならない。
しかし
「・・・僕じゃダメなんですか?」
突飛な問いかけに、オーベリウスは首を捻る。
「先生は、僕とその・・・こういうこと、本当は・・・」
マーカスの言わんとすることが分からず、押し黙るオーベリウスの指に少年の手が絡まる。
「先生は、僕が欲しくないんですか?」
オーベリウスは面食らった。マーカスも適切な言葉が見つからず、咄嗟にあまりにも直接的な表現をしてしまった。瞬く間に顔が赤く染まり、口を結んで汗を垂らす。
「マーカス」
オーベリウスの言葉に顔を上げれば口付けを落とされた。
「服を脱いで」
はだけたシャツに手をかけ肩をめくられる。マーカスは消え入りそうな声ではい、と答え、下着にも手を伸ばした。
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