神崎くんは床上手

ハナラビ

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千葉1

千葉1-2

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 目が覚めると、オレの目の前にびっくりするぐらい綺麗かつ険しい表情の寝顔があって、ひゅっと喉が音を立てた。それからオレは、しばらく息を止めていた。ていうか、驚きすぎて息、できなかった。音を立てないように、そっと呼吸を再開する。
 えっと……えっと……そうだ、眠かったから記憶が曖昧だけど、昨日は先輩と一緒に寝たんだ。へへへ……
 うう~ッ先輩、寝顔もカッコいい。前髪が形のいい眉にかかってて、先輩の分厚い唇がちょっとだけカサついている。昨日は加湿器つけてなかったんだ。髭も顎以外にすこし生えていた。思わず自分の顎を触ったけど……やっぱりオレも生えてるよな。
 朝から先輩のこんな姿を見られるなんて夢みたいだ……!
 
「…………」
 
 オレはそろり、とベッドを抜け出そうと試みた。昨日先輩は疲れてたんだろうに……たぶん、ウンウン魘されてたオレを心配してくれたんだ。その気持ちだけでもう、十分。時計を見ると、まだ結構早い時間だ。最近の早番シフトの所為で目が覚めちゃったらしい。はぁ~……なんか損した気分だ。休みの日に限って早く目が覚めるの、何なんだろ。
 顔を洗って髭剃って、トイレへ行って、しばらくリビングでぼ~っとしていた。アッそうだ、ベランダの植物に水やりしないと!
 ペットボトルに水を入れて、ベランダに出る。これは神崎先輩が育ててる食用のハーブとかちょっとした野菜で、オレはどれがどれだかあんまり覚えてない。でも神崎先輩が言うには、水はやり過ぎても駄目らしい。だから本当にすこしずつ水をやった。冬場でも枯れないやつってすげえなぁ。寒くないのかな。
 そうこうしているうちに、神崎先輩が高確率で起きてくる時間になった。でも今日は全然その気配がしない。昼過ぎから出てくときもたまにあるから、正直よく分かんないんだよな。昨日、寝る前に聞いておけばよかった。
 ……昼過ぎからの予定なのに朝起こされたら……嫌、だよなぁ……ワンチャン、休みってこともあるし……
 オレはう~んと困って、もう一度だけ寝室に様子を見に行った。できるだけそっと。本当は先輩のスマホでも見れたら良いんだろうけど……頼んだとき以外は絶対に触るなって前に釘を刺されてるから、オレは大人しく神崎先輩の顔をベッドの端から窺った。
 ……すげーよく寝てる。やっぱり、昨日は疲れていて機嫌が悪かったのかも。
 そういえばちょっと前に、先輩が嘘みたいにヘトヘトで帰ってきたときがあって……話を聞いてみると、デートした女に何かの本の即売会的なものへ連行されて、死ぬほど働かされたって言ってた。鍛えてる神崎先輩をヘトヘトにするなんて、その女は一体どういう体力してたんだろう。
 いや、今はそんなことはどうでも良くて。
 どうしようかと思ってると、先輩がふっと目を開けた。
 
「あっ、お、おはようございます……」
「……なにやってんの」
「……っせ、先輩の寝顔……見てたっす……」
「…………」
 
 先輩の眉間のシワが無言で深くなる。まずいまずいまずい!
 
「アッあの、先輩……今日は、予定無いんすか?」
「ない」
 
 きっぱりと言われて、オレは眉尻を下げた。最悪だ。せっかく先輩が休みだったのに、起こしちゃった。
 
「す、すいません……まだ、寝ますよね」
「千葉、こっち」
「え、あ……いいんすか?」
「いーから、来い」
 
 先輩が手を伸ばすので、オレは大人しくベッドへ上がった。そうすると布団の中に引き込まれて、抱き締められる。
 
「冷てえ……」
「あッすいません」
「うぜえから何回も謝んな」
「でも……う……はい……」
「……結構前から起きてた? こんな体冷えるまでなにやってたんだよ」
「んと……顔洗って髭剃って、トイレいって、ベランダの草に水やって……ちょっと、ボーッとしてたっす」

 先輩は抱き締める力を強めてきた。なんだか咎められてる気がして、また謝罪の言葉が出かかったけど……なんとか我慢した。
 
「……俺も髭剃ってくるわ」
「……あ、はい……?」
「ここにいろよ」
「え……?」
 
 先輩は珍しく、寝室に緩めの暖房をつけて、加湿器も入れて、部屋を出ていった。
 残されたオレは。
 
「え、ええ~……?」
 
 困惑していた。神崎先輩、一体どうしちゃったんだろう。めちゃめちゃ優しい。
 オレは布団の中で神崎先輩の温もりの上にモゾモゾと移動して、丸くなりながら……すん、と鼻をすすった。風邪引いちゃいますよ、なんて昨日先輩に言ったのに、その前に自分が引いたら元も子もないよな。気をつけないと。
 ……くんくん。あ~……先輩の匂いだけの布団、好きだな……
 先輩、お休みだからまた寝るのかな。そ、それとももしかして……いや、だめだめ。期待しちゃだめだ。そういうのを繰り返したら、たくさんいる彼女たちみたいに重くなって、捨てられやすくなって…………結果的に、オレも辛くなる。経験あるし、知ってるんだオレは。ああ……思い出してきた。昨日寝惚けて言ったこと、全部取り消せないかなあ……
 う……でも、頭が勝手に考えてしまう。先輩、どうして中途半端に時間あけたんだろ。こ……このままじゃオレ、変なことばっか想像しちゃう……は、早く戻って来てーっ!
 
 パタン、とドアが閉まる音がして、ぱっと布団から顔を出す。先輩は、見たことの無いオレンジ色のラベルが貼られたボトルをサイドテーブルに置くと、ベッドに近寄って掛け布団を剥ぎ取った。無造作に追いやられた掛け布団が、ずりずりとベッドから落ちていく。
 
「せんぱ……っあ!?」
「もう勃ってんのかよ。期待した?」
「し、し、してないです。これは……そう、今ちょっと……う、うとうとしちゃったから、それで……」
「嘘つくな。朝勃ちがなんで起こるかも分かってねえくせに」
「でも、おれ……き、期待は……してないっす。ほんとに」
「いいんだよ、期待して。つーかしろよ。その為に時間空けたんだから」
「えっ!?」
 
 神崎先輩は呆れたように言って、スウェットの上から硬くなった膨らみを指で擦ってきた。
 
「あ、あッ!?」
「もしかしたらこの後、エッチするかもって思って……意識したんだろ?」
「うぅ……ッ♡」

 し、しました…… 
 覆い被さる先輩の腕を掴んで慌てて止めようとすると、先輩の声が飛んでくる。
 
「千葉。手邪魔。退けろ」
「う……ッあ、ぁ……ッはひ♡」
 
 大人しく手を引っ込めると、かり、かり、と軽く引っ掻くようにされてしまって、それだけで頭がおかしくなりそうだ。昨日抜いてなかったら、もうとっくに出てる気がする。
 
「うぅ……ッ先輩……♡オレ、あ、ああっだめ……♡」
「ホント、チンコよえーな」
「あ、な、中で出ちゃう、から……ああッ♡やめ……先輩ぃ……っ」
「千葉、舌出せ」
「えぅ、う……んッん……っ♡♡」
 
 言われた通りにすれば、大好きなキスがもらえた。そうしながら、先輩の手が、今度は服の上から乳首を引っ掻くから……
 
「ぅ、んんッ♡♡」
 
 溜まっていた熱が弾けて、パンツに染み込んでいく。
 先輩は下着ごとスウェットをずり下げた。
 
「う、ウッ」
 
 まだトロトロと精液を零しているそこを一瞥して、神崎先輩が笑う。
 
「エロい体だな、千葉」
「それは……先輩が……アッ」 
「俺が、何?」
「オレに、教えてくれたから……」
 
 先輩はニヤリと笑うと、オレにまたキスをして言う。 
 
「自分で脚持ち上げろ」
「は……はい……」
 
 先輩がサイドテーブルに置いてあったボトルを何度かプッシュして、オレのケツに塗り付けてくる。じわ、とあったかくて、思わず間の抜けた声が出てしまう。
 
「へ……? なんか、あったかい……?」
「温感ローション。千葉は女とも使ったことねえの? 冬場は結構いいぞ」
「あ~……温感……? これがそうなんすね……」
「これは割とさらさらしてるタイプだから、痛かったら言えよ」
「は、はい……ッぅ、んッ」

 先輩のあったかい指がローションと共に中へ入り込んできて、オレは思わずその指を締め付けた。内側がすこしずつあたたかくなってきて、変な感じ……
 
「あ♡んッ♡」
「気持ちい?」
「ん……っ♡気持ちぃ、っす……ッ♡」
 
 久しぶりな所為か、神崎先輩はかなり丁寧に解してくれた。オレの内側のことを誰よりも知り尽くしている人だから、好きなところも、オレの力が抜けてしまうところも、全部筒抜けだ。でもそれが、どうしようもなく嬉しい。

「あ……あッ♡」
 
 温度差にもぞくぞくする。熱が体に伝わっていくときに、一緒に快感も広がっていくんじゃないかと思った。
 柔らかくなってくると、神崎先輩が指を引き抜いて、服を脱ぐ。その服は無造作に放られた。いつも几帳面で潔癖気味の先輩が、エッチのときだけはこうなる。
 ……実は先輩のそういうところも、オレは好きだったりする。オレでもちゃんと、先輩のそういうスイッチ入るんだなって……思うし……
 オレの体はもうすっかり快感に浸ってて、力が入りにくくなり始めていたけど……なんとか今のうちにスウェットの上を脱ぐ。するとまだ腕に絡まる服を神崎先輩が剥ぎ取って、強引にキスをしてきた。かと思えば、仕草は強引だったのに、優しく何度も唇を食べられて……堪んなくなる。
 
「ん、ん……ッ♡♡」
 
 神崎先輩がまたボトルに手を伸ばす。
 ローションを塗り付けた熱いものが押し当てられて、オレは思わずぎゅっと目を閉じた。いつもより熱く感じられるそれが、オレの中へ潜り込んでくる。
 
「ぅあぁ……ッ♡」
 
 押し広げられる最初の感触は苦しくて、でも同時に嬉しくもある。だって……昨日からずっと欲しかったから。やっとしてもらえた。嬉しい。すき。先輩、大好き……
 
「千葉……ッ」
「あっ♡せんぱ……ッ♡♡あぁっ♡」

 もう開発がほとんど済んでいるので、オレの体は神崎先輩がただ出入りするだけでも喜んで泣く。チンコに触られなくても、すぐにまた出た。こうやって触らずにイっちゃうのも、何回もできるようになってしまった。
 
「あ……♡♡」
 
 やっぱ思うんだけど……正常位で神崎先輩に抱かれるのが、一番好きだ。抱き締められて、耳を齧られて、そこへ神崎先輩の吐息が聞こえてくる。そんなの、最高に決まってる。
 
「千葉……」
「先輩……っ先輩……すきです♡」
 
 先輩が体を起こして、ジッとオレを見下ろしてきた。……オレ、今どんな顔してるんだろう。先輩が呆れたように笑う。
 先輩の唇が降ってくる。ちゅっ、ちゅう、ってわざと音を立てるやつ。その間、腰を奥にぐりぐりってされて……ああだめだ、これ、すきだ……
 
「うッ♡ん♡ンッ♡♡」
 
 体から力がどんどん抜けていく。頭ん中も、あまりの幸福感にどんどんバカになって、もう神崎先輩が好きってことと、気持ちいいってことしか考えられない。
 
「ん、は……っんんっ♡♡」
 
 必死に息をして、神崎先輩のキスについていこうとしたけど……先輩ときたら、わざわざオレの息継ぎのタイミングを外してくる。苦しいのに、もうこのまま死んだっていい気すらしてきて、いよいよ思考が鈍っていく。
 
「ぅ……ッ♡ぅ♡」
「やべ……千葉、生きてるか?」
「は……い♡」
「ごめんな。苦しかった?」
「だ、いじょぶ、れす……♡♡」
 
 オレの舌っ足らずな返答に、神崎先輩はちょっとだけ笑った。それから口の端にキスをしてきて、顎、首筋、鎖骨、胸……ってどんどん下の方へ向かう。神崎先輩の分厚くて柔らかい唇が触れるのはもちろん気持ちいいし、絶妙な加減で吸い付かれるから……些細な刺激なのに、体がびくびくと反応してしまう。
 一体どうして先輩のスイッチが入ったのか分からないけど、でも朝からこんなこと、幸せすぎる。
 
「せんぱいっ♡♡すき……♡」
「……ッん、千葉……お前はホント……そればっかだな」
「あ……ッぁ……♡」

 先輩の肩に添えていた手が震える。下腹部からもう何度目か分からない強烈な快感が広がってきて、腹の奥が熱いような、もういっそ痛いような、気持ちいいのにおかしな感じがした。手の力が抜ける。ずり落ちるそれを神崎先輩が捕まえて、ベッドに押し付け、指を絡めてくる。そんでまた、キスされて。イってる最中にそんなことされたら、もう本当に死んじゃう。
 
「ん♡ン、んんッ♡♡♡」
 
 ローションの所為か、腹ん中がずっとあったかい。そこに先輩のがどくどくって入ってきて……やばい。この瞬間が、一番嬉しいかもしれない。
 
「千葉……ッ」
「う……♡あ♡あっ♡せんぱいの、出てる……♡♡」

 先輩がいつも寄せてる眉が、またきゅうっと近くなって、目を閉じて、めちゃめちゃ感じてる顔。はぁ、と息を吐くその唇が、微かに震える。あんまりにもカッコよすぎて、ドキドキして、思わずぎゅっと絞めつけたら……神崎先輩が目を開けて、こら、とオレを窘めた。
 
「千葉……いつからそんなのできるようになった?」
「わ、わかんな……ッあ、先輩……ッ耳、だめっ♡」

 耳にあったかいものが触れて、やらしい水音がすぐそこで聞こえる。神崎先輩の呼吸と声も、一番近いとこにある。
 
「せ、先輩の、イってる顔……すきなん、す♡」
「へえ」
「見てたら、ぎゅって、なって……アッ♡待……ッチンコ、だめっす、先輩ぃいッ♡♡」

 先輩が咎めるようにいきなりそっちを触ってきて……ほとんど萎えてたのに、またたく間に勃たされた。やばい。すぐ出ちゃう。
 でも、先輩の手がそこで一旦離れてホッとしてたら……すぐに熱い液体を塗り付けられて、慌てて腰を引く。

「こら、逃げんな」
「やっ……待って、だめっ♡あ、あ♡うぅッ♡」
「ほら、さっさとイけ。ったく……ケツに比べて、お前のここはマジで引くほど才能ねえな」
「あっイく、イ……ッ♡あ、あぁあっ♡♡」
「……っ、はぁ……中、キツ……」
 
 既に腹の上は白い液体でドロドロで、その上にまたすこし精子が飛ぶ。ローションでいつもよりチンコが熱くて、珍しくまだ萎えない。
 
「ちーば。おい、目ぇ開けろ」
「はぁ……っはぁ……ぅう……♡」
 
 ぐったりとしていたら、一旦引き抜いた先輩に腕を引かれ、体を起こされた。
 
「う……せんぱい……」
「好きに動いていいから、まだ意識飛ばすなよ」
「んん……ッ♡♡」
 
 座った先輩の両横に膝を立てて、何とか踏ん張ってみるけど、まだ力が上手く入らない。思わず先輩に縋り付くと、先輩も抱きしめ返してくれる。お互い勃起してるから、それが触れ合ってて興奮した。先輩のはデカさもそうだけど、勃ちが良くて、いつもすごく硬い。だから、擦り付けるだけでこっちも気持ちいい。
 ゆるゆると腰を動かして押し当ててみる。
 
「せんぱい……ッ♡せんぱい♡」
「……ッ千葉……」
「……ッう、ぁ、あっ♡♡」
 
 それ自体の気持ち良さというよりも、神崎先輩とこうしてるっていう状況にめちゃめちゃ興奮しちゃって、またすぐに出てしまう。今度こそ勢いがなくて、でもだからこそ先輩にもトロトロとかかった。見下ろしてみると、オレの腹に飛んでたやつも擦り当ててる間に先輩についていて、すごく汚してた。
 
「あ、ぅ……先輩も、どろどろになっちゃった……」

 オレだけ気持ちいいことをしてたから、先輩がジッと見上げてくる。なんだか拗ねた猫みたいで可愛い。
 もうちょっと腰を上げて、後ろ手に先輩のペニスを掴んで……先端を飲み込む。さっき出されたもの、先端にかけちゃったもの、そういうので滑りは足り過ぎるほどで、簡単に挿入ってくる。
 
「……ッは……」
「ん、んッ♡」
 
 神崎先輩を全部受け入れて、それだけでもの凄い満足感がある。でも、またオレだけ満足してたら、だめだよな。オレだって先輩に、すこしでも気持ちよくなってほしい……

「ん、ぁ……ッ♡あ♡」
「自分でナカのいいとこ、当ててみろ」
「は、はい……ッ♡」
 
 自分の腹ん中が、またこんなに感じるようになるなんて思わなかった。三年間ですっかり忘れられたと思っていたのに、神崎先輩はみるみるうちにオレを再開発してしまった。
 先輩の硬いやつを、言われた通りに自分の内側の気持ちいい部分に当てる。対面座位でヤッてるときは、すこしだけ浅くして小刻みに動かすと、先っぽがちょうどいいとこに当たる……
 
「ん……ッはぁ♡ぁ♡あっ♡♡」
「気持ちい?」
「あ、あっん♡」
 
 こくこくと頷く。オレの腰を撫でていた先輩の手が、今度はケツを掴んでくる。そんで、ズン、って下から突き上げられて、オレは声にならない悲鳴を上げた。
 
「~~~ッ♡♡♡」
 
 思わず先輩の肩から腕を回して、堪えるようにぎゅっと抱き寄せる。そしたら……先輩が笑ったのが聞こえた。たったこれだけで腰が砕けかけるなんて、悔しいし恥ずかしい。快感を堪えるために力を入れたら、先輩が苦しげに息を吐いた。

「っこんくらいで、へばんなよ……千葉ァ」
「うぅ……っあ! 待っ……ひっあッ♡」

 体を引き剥がされて、ああ抜かれちゃった、と思ったら、ベッドに勢い良く押し倒され、うつ伏せにされた。そのまま腰を持たれて、ぐっと乱暴に引き寄せられる。
 
「一番いいとこ突いてやるよ」
「あ、ぅ、うぁ……♡ああッ♡♡♡」
 
 あてがわれたと思ったら、その後はもう……ひと息に挿れられちゃって。そうしたら、先輩の反り立った部分がずるりといいところを全部撫で上げていく。オレはシーツをぎゅっと掴んで、情けない声を漏らした。
 
「はぁっ♡あ♡だめ、れすっ♡これ、これ……ッオレ、こわれる……っ♡♡」
「ふ……もうとっくにおかしくなってんだろ、お前は」
 
 そうかもしれない。先輩にこうされんのが、どんなに可愛い女の子とエッチするより嬉しいなんて、男としてもう、だめなのかも。
 先輩がぐっと腰を当てて体重をかけ、オレをベッドに押し付ける。
 
「ああぁ……♡♡」
 
 中が収縮を繰り返してるから、またイっちゃったのは多分バレてる。俺の体はもう、先輩の選ぶ動き一つで簡単にコントロールされてしまう。今回は前からはなんにも出ないやつで、こうやってイくとオレは本当に女にされたような気持ちになる。
 
「はぁ……♡♡」
「……っは、ほんと……っこっちの才能はすげーな、千葉……」
「あ……♡ぅ……♡♡」
 
 また中に出されてるのが分かって、オレは荒い呼吸を繰り返しながらも、感慨に浸る。ああもう、なんでもいい。女にされても、壊されても、どうでもいい。先輩がこうやって抱いてくれるんなら……
 
「……っなんだよ……」
「先輩……かお……見たい……っす……」
 
 オレが身動ぎをすると、先輩は軽く息を吐いて引き抜いた。何とか体を仰向けにして、先輩を見つめる。先輩もすこし呼吸が荒くて、汗をかいてて……髪を掻き上げるその仕草で、また性懲りもなく心臓が痛んだ。
 
「また……なんつー顔してんだよ、千葉……」
「え……?」

 先輩は呆れたように笑って、オレの隣に寝転がった。オレはいそいそと先輩の方を向いて、くっつく。多分今なら許されるはず。

「……ん」
「わ! いいんすか? へへへ……」
 
 先輩もオレの方を向いてくれたと思ったら、腕をオレの頭の上に持ってこられて……思わず体を起こすと、なんと先輩が腕枕をしてくれた。嬉しすぎる。こんなこと、あっていいんだろうか。
 ……先輩が、オレの唇を指で摘んでむにむにともてあそんだ。
 
「う~……?」
「アホ面してんな」
「…………」
「なんだよ」
「す、すきです……先輩」
「……あっそ」
 
 オレの何度目か分からない告白に先輩は素っ気ない返事だったけど、でも軽くキスをしてくれて……それだけで、しばらくは悪夢も忘れられそうな気がした。
 
「朝……いやもうほぼ昼だな……なんか出前でもとるか」
「あ……」
「どうした?」
「冷蔵庫に、オムライスひとつ、残ってて……」
「ふーん」
「あの、だから、オレはいいです。先輩は好きなもの出前とって、食べてください」
 
 先輩はジッとオレを見ていた。オレが何度も瞬きをしながら視線を返していると、いきなり耳を引っ張られる。
 
「いっ!?」
「風呂行くぞ」
「は、はひ」
 
 オレが涙目で体を起こせば、枕にしていた先輩の腕がさっと逃げていく。あーあ……もうちょっと、あのままいたかったな……
 
「……半分ずつ食えばいーだろ」
「へ?」
「千葉、タオル二枚持ってこいよ」
「は……はいっ」
 
 オレはベッドの上で元気よく返事をした。やっぱ今日、優しい!
 先輩と、ずっとこんなふうにすごせたらいいな。
 実はこのあと……あの下手すぎるオムライスにすげぇ苦言を呈されるんだけど……でも今日はそれを差し引いてもめちゃくちゃ幸せだったから……まあいっか!
 もっと練習して、次はもうすこし美味しいやつを神崎先輩に食べてもらおう。




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