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《第4期》 ‐鏡面の花、水面の月、どうか、どうか、いつまでも。‐
『親友捜索隊』 5/5
しおりを挟む「そんな……メルちゃんが……」
三人に宥められどうにか落ち着きを取り戻したラミラミが語ったその数分前に起きたという一連の出来事はアサカにとっても眩暈がするほどの衝撃だった。
「はい……きっと、あの時、あの人だかりの中に、放り出されて……だから……もう……」
ラミラミの声が震え、その両目にまた涙が溢れた。
大勢の客らに踏み潰されてしまったのかもしれない。彼女の証言を聞く限りその結末を否定するのは難しいように思えた。
……しかし。
「でも、そのお客さんらが通った場所を捜して、その……メルちゃんが居なかったなら、もしかしたらお客さんの誰かの服にしがみついて、そのまま体育館の中とかに運ばれていったのかもしれませんよ」
ひづりが言った。そう。もしその時客らに踏まれてしまったのだとしたら、客らが通った後にメルの遺体が残っているはず。それが無かったという事は、メルはまだ生きている可能性があるという事だ。
「でも、でも、あたし、この後舞台が……あたしがメルを捜しに行ったら、舞台が……」
再び混乱した様にラミラミは頭を抱えた。
アサカは顔を上げ、ひづりとハナの眼を見た。彼女たちも気持ちは同じのようだった。
「ラミラミさん、私達でメルちゃんを捜して来ます。ラミラミさんは舞台の準備に向かって下さい」
「え……」
ラミラミはアサカの顔を見て、一瞬安堵の表情を浮かべたが、すぐに青ざめて首を横に振った。
「だ、だめです、舞台は、アサカさんとひづりさんに観てもらわないと、観てもらうために、あたしは……」
アサカはラミラミの両手を優しく握った。
「大丈夫です。直接観られないのは残念ですけど、後で録画されたものを観させてもらいます。それより今はメルちゃんです」
隣でひづりがスマホを取り出し、天井花イナリに手伝ってもらえるよう連絡を取り始めた。
「でも……だけどそれじゃ……」
「ラミラミさん、私たちを信じてください。必ず、絶対に、メルちゃんを見つけて来ます。ですからラミラミさんはラミラミさんの今やらなきゃいけないこと、やって来て下さい」
「…………」
ラミラミはまだ震えていたが、やがてうつむいて自身の両手をぎゅっと握り合わせると、何度も何度も深呼吸をし、それからアサカの手を借り、立ち上がった。
「ごめんなさい。アサカさん、ひづりさん、ハナさん。メルのことをどうかお願いします」
「はい!」
アサカ達が応じるとラミラミは体育館の搬入口の方へと走って行った。
「アサカ、ナイス」
ハナが親指を立て、にっ、と笑った。ハナの事はまだ心配だったが、しかし今は行方不明になってしまったメル捜索に全意識を集中させるべきだと思い、アサカは気持ちを切り替える事にした。
「アサカ、ハナ、渡り廊下の所で天井花さんと合流するよ。それから捜す場所を四人で分担しよう」
「了解!」
三人はそのまま体育館裏を駆け、渡り廊下へと向かった。
体育館の厚い壁越しに綾里高校演劇部による《ロミオとジュリエット》の開幕を知らせる喇叭の演奏が聞こえて来た。
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