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《第4期》 ‐鏡面の花、水面の月、どうか、どうか、いつまでも。‐
3話 『恒例お散歩会議』 1/6
しおりを挟む3話 『恒例お散歩会議』
十月十四日の土曜日。今日は、ひづりとその職場の友人こと《ボティス》たちを連れなったアインの散歩、第二回目だった。
空は朝から清々しいくらいに晴れていて、アインの体調もすこぶる良好だったが、しかし《ボティス》の状況も、また俺の立場も、決して良いとは言えなかった。
『先週の頭にお前から《アウナス》の名を《交信》で受け取った後、すぐに《冥王様》に例の件を伝えたが、やはりまだ《霊門の枷》は出せる段階ではないと仰った。《冥界》も《隔絶の門》のせいで《人間界》に配下を出せない現状、《アウナス一派》の動向は探れないんだ。そして……お前の《指輪》についても、やはり《冥王様》は将来的に《冥界》側で回収する方針を示された。いずれお前達が《アウナス》とぶつかり合い、俺の《枷》が発動すれば、アインを中心として《冥界》と《人間界》に道が開く。回収は恐らくその時、一方的に行われるだろう。……本当にすまない』
《ボティス》を襲撃し続けている今回の首謀者はどうやら《アウナス一派》らしいということ、味方を自称する《イオフィエル》という《天使》の接触と、そいつが語った《天界》の内情、そして夏頃から《ボティス》やその臣下である《悪魔》たちの身に起きていた謎の体調不良の本格的な悪化……それらこの二週間ほどの間に起きた出来事を《ボティス》は今日合流してすぐに前回の散歩同様俺に《交信》で話してくれたのだが、しかし残念な事に俺はそれらの問題に対し何一つ《ボティス》の役に立てる情報を持ち合わせておらず、それどころか、今回のことが終わっても《指輪》はお前が持ったままでいてほしい、《冥王様》には俺から頼んでみる、と前回大見得を切ったにも関わらず全く良い答えを《冥王様》から引き出せず、俺は今日こうしてただただ最悪の報告をするしかない無様な駄犬の醜態を晒すに至っていた。
だが、そんな俺の告白に、自身が今一番困っているだろうに、《ボティス》は以前と同じ様に何とは無い風にこう言った。
『《指輪》に関しては別にそれで構わぬと言うたであろう。《アウナス》や《イオフィエル》の事にしても、わしより出不精なのじゃ、お主が知らんでも仕方無い。そう面倒な声を出すな。むしろ此度謝るとするならわしの方じゃ。アサカを見守るという約束、果たせんようになってしもうたからの。すまぬな』
俺はもう全く呆れてしまうようで、何を言うんだ、と言い返した。
『前も言ったが、あれは俺にばかり都合の良い話だ。状況が状況のお前を一体どうして責められるだろう。今日だって折角訪ねて来てくれたお前に俺は何も手助けしてやれず、あまつさえお前をがっかりさせる様な報告しか出来ず、こうして無駄足を踏ませてしまっている。責める言葉の一つも無いのではとても耐えられない』
思わず俺はそうまくし立てた。
だが《ボティス》はまた落ち着いた様子で言った。
『無駄足ではない。今日の散歩はもう一つ重要な目的があるからの。確かお主、アインの体を少しであれば操れると言うておったな? ならお主も手伝え』
面食らう様だった。俺には何の話だかさっぱり分からなかった。
すると《ボティス》は面倒くさそうにちらりと後ろを見た。
『今日は、あの《役立たず》に助け船を出してやるのじゃ』
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