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《第2期》 ‐その願いは、琴座の埠頭に贈られた一通の手紙。‐
4話 『勉強の成果、そしてしばしのお別れ』
しおりを挟む4話 『勉強の成果、そしてしばしのお別れ』
《和菓子屋たぬきつね》の休憩室。普段、その中央に置かれている机と椅子は現在すべて畳まれて、部屋の隅へと押し込められていた。
空間の広さとしては《和菓子屋たぬきつね》の中で二番目であるが、しかしフロアと違って客席同士を隔てる格子や梁などが無い分、その机と椅子を片付けるだけで即座に横にも上にも中々の広さを確保出来る、使い勝手としては最も優れた部屋であった。聞くところでは改築前や従業員が多かった頃にはこちらを第一厨房として使っていたらしく、大きめの調理台や流し台が備えられているのはその名残、とのことだった。
ただ今日、その一室は前途の通り生活家具の一切が隅へと退けられ、部屋の中央に置かれた蝋燭の火が照らすばかりの怪しげな雰囲気で満たされていた。
けれど《和菓子屋たぬきつね》の休憩室がこのような様相を呈したのは実はこれが初めてではない。三ヶ月ほど前にも、この店の経営者である吉備ちよこによって《ある目的》のために用いられていた。それも数回に亘って。
そして今日、その妹、官舎ひづりによっても、全く同じ事が行われようとしていた。
「では、始めよ」
ひづりの右斜めうしろ。部屋の壁に背を預けて立つ天井花イナリが厳かに合図を告げた。
眼を瞑って息を呑み、ひづりはゆっくりと静かに深呼吸をしながら掌を開いた右腕を正面に伸ばした。緊張で微かに指先が震えているのが分かる。
そっ、と自身の右肩に左の掌を乗せる。その《契約印》と、そしてその向こうの《悪魔(ボティス)》の存在を強く意識した。
刹那、ひづりの心臓がひときわ強く跳ねた。動悸が始まり、呼吸が乱れる。
あの日、《ベリアル》と向かい合った時に感じたのと同じ《疼き》が、いま再びその右肩に生じた故だった。
「繋がりを感じ取ったな? しかしひづり、恐れるな。わしはここに居る。安心して、お主のやれる事、それに集中せい」
ひづりはハッと我に返り、再度自身の《契約印》に、右腕に、そして正面の空間に意識を集中させた。天井花イナリの声は揺らぎかけたひづりの意識に心地良い渇を入れ、乱れた胸の鼓動と呼吸に確かな安心感を以って落ち着きを取り戻させてくれた。
――そうだ。大丈夫だ。今は、白蛇神社の時とは違う。これは自分の《ただの最初の一歩》だ。
けど一切気は抜かない。持ち得る限りの思考を全部集めて、この数日の練習を思い出せ。うしろで天井花さんが見てくれている。がっかりさせる訳にはいかないだろ。
やれるさ、官舎ひづり――。
天井花イナリと、ひづりの右肩の《契約印》を繋ぐ《魔力》の回線。それが今ついに《契約印》から右腕の先へと流れ出し、その内側を走る無数の血管を経由して、ついに開かれた右の掌から《外》へと噴き出した。
「《開け》……」
眼を開け、蝋燭の明かりから一メートルほど上の位置を確実に捉えたひづりの口から、自然とその言葉が漏れた。
直後、突き出した自身の右手の先。薄暗い休憩室の中心、蝋燭の火の直上に《紫色の小さな光》が生じた。そしてそれはすぐさまひづりの意のままに素早く動き、この一週間ひたすら彼女がその脳に刻み込み続けた、《ある平面の図形》を瞬時に描き上げた。
「……ほう」
天井花イナリの口から声が零されたのをひづりは背後で聞いた。
呼吸と鼓動が少しだけ乱れている。だが、それが『成功した』ことだけはひづりにも分かった。
直径二メートルほどの《紫色に輝く魔方陣》。他の誰が生み出したのでもない、この官舎ひづりという少女が人生で初、天井花イナリという《悪魔》の補助あってではあるが、確かに自らの体を介して生成した堅牢な《魔術の結晶》。
……あの時、姉のちよこによって発動、展開し、そしてひづりたちを守った強固な《魔術の盾》。
《防衛魔方陣術式》。それが今、ついにひづりの掌から作り出され、確かな《魔術》として完成を見ていた。
「いきなり成功とはな。さすがはわしの《契約者(ひづり)》よ。それに良き紫色じゃ……。実に良い……」
とはいえ、ひづりの意識は《それ》が崩壊しないよう……つまり天井花イナリから送られて来る《魔力》が自身の肩にある《契約印》を介してそこへ維持され続けるよう、その感覚へと集中する事に精一杯だった。
しかし背後に聞こえたその声音から、天井花イナリがとても喜んでくれている事だけは分かって、ひづりは安堵していた。
続けてきた甲斐があった。期待に添えられて良かった。何より、これで自分も――。
「よし、消せ」
すぱり、と言い放った天井花イナリの一言に、ひづりは反射的にすぐさま右の掌を軽く握りしめた。その動作を以って休憩室の中心に描かれていた《防衛魔方陣術式》は瞬時に消滅し、ひづりの右腕の先から漏れ出していた《魔力》も栓がされたように停止し、そして右腕に満ちていたそれは《契約印》を介して天井花イナリの元へとゆっくり逆流していった。
無音が休憩室に残った。右手を下ろし、ふぅ、ふぅ、と自身を落ち着けるようにひづりは丁寧な呼吸を始めた。
出し抜けに部屋が発光した。突然のことに思わずひづりが目を細め振り返ると、天井花イナリがいつの間にか部屋に明かりを灯すスイッチの所まで移動していた。
「初めてでこれならば十分じゃ。《防衛魔方陣術式》、最初の試験。まずは合格である。……ふふふ。よぅやったのぅ、ひづり」
目の前まで歩み寄ると彼女はひづりを見上げ、優しく、また厳かな声音と共に実に満足そうな微笑みを浮かべて見せた。
話は一週間ほど前に遡る。
「最初に言うておくべきことがある。ひづり、そしてお主の姉のちよこもじゃが、お主ら二人はそもそも《魔術》への関わりの順序が《真逆》である。まずはそこから自覚をせねばならん」
姉から《レメゲトン》を受け取り、読み進めていた《テウルギア・ゴエティア》の《召喚魔術》に関する記述にまでひづりが行きついたところで、天井花イナリはおもむろにそう語った。
「真逆、ですか?」
本から顔を上げ、ひづりは傍らの天井花イナリを振り返った。
「然様。お主が読んだ箇所にもうすでにあったやも知れぬが……《召喚魔術師》に至るには、まず《魔術師》としての基礎、素養を身につけねばならん。文法を習うならまず先に単語を覚えねばならん……それと同じ事じゃ」
《和菓子屋たぬきつね》の畳部屋。気の向くままに崩し倒した座布団の山へ半ば埋もれる様にもたれかかったまま、天井花イナリは淡々と続けた。
「通常ならばの、まず人は《魔術》の基礎を学び、《魔力》をその身に集め貯蓄する術を学び、《召喚魔術》の道を極め、そうしてやっと《悪魔》を召喚、《契約》し、その身に《契約印》を得る……。しかしお主ら二人はどうであろう? 《魔術》の世界とは何の関わりも無く生きてきて、それをある日突然、《召喚魔術師》である母親の万里子からわしとたぬこの《契約印》を譲渡された。……分かるか? 《魔術》の基礎、《魔力》の扱い、《召喚魔術》の知識、《悪魔》召喚、《悪魔》との《契約》……。本来あるべきこれらの順序、全てをスッ飛ばして、お主らはいきなり《契約印》を得たのじゃ。これはの、極めて稀な事なのじゃぞ。ゆえに、まず自身が特殊な《魔術師》であることを自覚せよ、ひづり」
ゆるり、と彼女のその細く小さな人差し指がひづりに向けられた。ひづりは彼女に向き直り、背筋を伸ばして頷いた。
「はい……。確かに、《テウルギア・ゴエティア》は読者に対し、そもそも今天井花さんが言ったような、《魔術》関連の知識と技術を得ている前提でその内容が書かれているように思えました」
ひづりの感想に、天井花イナリは、ふ、と微笑んで返した。
「であろうな。故に、本来、人が《レメゲトン》を読んで活用するならば、まずは万里子のように《魔術》の基礎から学ぶ必要があるのじゃ。しかし先ほど言うたようにひづり、お主は何よりも先に《契約印》を得た。おそらくは人の歴史上、非常に稀有な《召喚魔術師》なのじゃ。……とは言うても、ふん、万里子めのせいで、千登勢や凍原坂も《同じ》なのじゃがな。お主の周囲だけで言えば、まるで稀でも何でもないのじゃが……。ああ……そもそもじゃ。『《悪魔》との《契約》を他者に譲渡する』なぞ、普通はありえぬ事なのじゃ。何せ、《悪魔》の召喚には先も述べた基礎知識に加え、呼び出すための宝石や金貨等の供物、そして十分な《召喚魔術》の知識が必要となる。そうして財産を投げ打ち、短い人生苦労して学び、そのうえ最終的には呼び出したその《悪魔》に《契約》通り己の命を捧げねばならん……。それだけの事をするだけの決意が、人生を投げ打つ覚悟があるのじゃ、本来の《召喚魔術師》にはの」
厳しい表情で語る彼女のその物言いにひづりは思わず息を呑んだ。
「まぁそれは良い。お主は情報として一応頭に入れておくだけで良いことじゃ。お主がそこらの《召喚魔術師》に引けを取らぬほど肝の据わった童であることは、これまでの事を見てきて、わしが一番よぅ知っておる。侮辱する者がおれば、それこそわしが八つ裂きにして丸呑みにでもしてやろう……」
彼女はくつろいだ姿勢のまま、その眼を妖しげに細めて薄く笑った。あの《ベリアル》虐殺の記憶が蘇り、ひづりは先ほどとは別の意味で息を呑んだ。
「さて、ちと話が逸れたが、ここからが重要な話じゃ。何よりもまず先に《契約印》を最初に得たお主らと、他の、順当に《魔術》を学んで《召喚魔術師》となった連中……。この両者に一体、如何な差異があるのか? さて、分かるかの?」
天井花イナリは少しばかり身を乗り出して問い掛けたが、しかしひづりの返答も聞かずにそのままニヤリと口角を上げて自分で答えを言った。
「実に、利点しかない」
笑みと共に語った彼女の顔はこれ以上無いほど愉しげであった。何かしらの覚悟を胸にしていたひづりは思わず呆気に取られ無言になってしまった。
「……ふふ、ふふふ……。驚いておるな。そうじゃ。その反応が正しい。言うたであろう。稀有なことである、と。どれ、思い出してみよ。あの時何故《魔術師》でもない凍原坂と千登勢が稚拙ながらも《治癒魔術》を用いられたのか。二人とも《魔術》にろくに精通しておらん、《魔術師》でもない本当にただの一般人でありながら、じゃ。何故じゃと思う……? 答えは他でもない、その身に持つ、他者から譲り受けた《契約印》。それこそがお主らに《魔術世界に於ける希少な優位性》を持たせておるのじゃ」
天井花イナリはその指先をひづりの右肩に向けた。ひづりも左手で自身の右肩を触り、そして見つめた。《契約印》。自分と、天井花さんと和鼓さんを繋いでいる《契約》の証。母から姉を介し、譲り受けたもの。
「《契約印》とはただの証ではない。《契約者》と《悪魔》を深く結びつけておる、《契約》という名の強力な《魔術》の一つなのじゃ。故に、交わされた《契約》は互いを縛る。……これもまた、本来であれば、であるがな」
突き出していた人差し指をしまうと、笑みを湛えたまま彼女はひづりに愛しげな眼差しを向けてきた。
「《フラウ》と《火庫》、そして《ヒガンバナ》も、《契約者》である凍原坂と千登勢を愛しておるな? のぅ、分かるじゃろう?」
いたずらっぽく、しかし仮にいたずらでもあまりに度が過ぎるその妖艶な笑みをにわかに近づけられ、ひづりは思わず眼をきつく閉じて顔を逸らした。出し抜けにこういう事をするんだこの《悪魔(ひと)》は、この《悪魔(ひと)》は……!
「ふふふふふ……。それ故に、なのじゃ。わしも、《フラウ》と《火庫》も、そして《ヒガンバナ》も……《契約者》であるお主らに対し、その《契約印》という、《契約者》と《悪魔》とを繋ぐ《魔術》の回線を通じて、《魔力》を与えておるのじゃ。……分かるか? 《悪魔》が、《契約者》へと《魔力》を譲渡しておるのじゃ。本来ならばありえぬ事よ。《魔術師》は己の《魔力》で《魔術》を行う。それが当然じゃ。じゃがお主らは順当な方法で《契約印》を得た者ではない上に、《悪魔》から愛されておる……。故に、凍原坂も千登勢も、正統な《魔術師》でなく、知識もおぼろげながら、そこそこにではあるが《魔術》を用いる事が出来る。《悪魔》側から、その《魔力》の供給を受けておるが故じゃ。……ちよこが《魔術》を使えるのは、憎らしいことに、万里子の細工によるものじゃ。わしから《魔力》を勝手にくすねて使えるようにしておった。……じゃがひづり。わしは《フラウ》や《ヒガンバナ》と同じく、此度は自らの意思で以って、お主に我が《魔力》を授けると決めておる。その《契約印》を用い、わしの《魔力》の回路とを常に繋いで、その使用を永久に許可する……。わしもたぬこも、お主の事をとても、ああ、とても気に入っておるからのぅ……」
天井花イナリはその様に語りつつ、のそりのそりと互いの膝を並べる程まで這い寄って来ると、またその眼を細め、人差し指で、つつつ、とひづりの喉を撫でた。お戯れを。お戯れを。
「故にひづり。お主はただ《召喚魔術》を学ぶだけで良いのじゃ。わざわざ《魔術》を学び、《魔力》をその身に宿す、などという面倒な修練の工程を、一気に省くことが出来る。《悪魔》を召喚するための財宝も要らぬ。また万里子が仕掛けおった《契約》のために、わしはお主の魂を奪うこともない。……ふふふふふ、およそ世界中の《召喚魔術師》共が、お主を羨んで血の涙を流すことであろう。それほど、今のお主は《召喚魔術師》として優位な立場に居る。それは偶然の連鎖ではあるが、しかし何よりお主自身の行い、まさしくそれによって得られたものじゃ。胸を張れ。お主が《防衛魔方陣術式》や《治癒魔術》をいくら使ったところで、《七二柱の悪魔》であるわしから消費される《魔力》の量など雀の涙ほども無い。ゆえにそこの遠慮も要らん。――じゃからひづり」
天井花イナリは改めてその指先をひづりに突きつけて言った。
「《召喚魔術》を学べ。《防衛魔方陣術式》、《治癒魔術》、《転移魔術》。最低この三つがあれば、この間の《ベリアル》のような事態が発生しても、少なくともお主はその身と、お主が守りたい者たちの身を守る事が出来る。ついでに《認識阻害魔術》さえも身につけることが叶えば、ふふ、今度こそちよこめの、経営者として以外の存在価値は無くなろう……」
そう零しつつ彼女は悪そうな笑みをその顔に浮かべた。
「加えて、喜ぶが良い、ひづり。改めて言う事でも無いやも知れぬが、《七二柱の悪魔》の中でもわしはかなり『戦闘向きの悪魔』じゃ。わしの持つあの剣は実に鋭ぅてのぅ。《ベリアル》でその切れ味を見せてやった通り、そんじょそこらの《神性》や《魔性》なら片手で振るっても容易に両断出来る。……故にひづり、お主が十分にその身を守れる立派な《召喚魔術師》となり、《天使》や《悪魔》からの攻撃を完全に防ぐ《盾》を得るならば、わしも後ろのお主らに遠慮も気兼ねもなく、目の前の敵を斬り殺す事に専念出来る。……じゃから、まずお主はそこを目指せ。ふふふ、期待しておるぞ、ひづり……」
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