天羽桜は世界を救う

天羽睦月

文字の大きさ
上 下
9 / 34

第9話 呼び出し

しおりを挟む
食券をカウンターに手渡して五分ほどたった時、手渡された番号札の番号が呼ばれて三人は料理を受け取りに行く。

先に受け取った桜はエリアの奥のほうにある窓際の席を確保し、料理を置いて桜は二人に手を振って自身の場所を教えた。

桜が確保した席は、窓から外の景色がよく見える最高の席であり、四人掛けで丸いテーブルの席であった。 二人が席に着くと料理を食べ始めることにした。 そして、オムライスを一口食べた桜はその卵の美味しさに衝撃を受ける。

「卵がここまで美味しいなんて……しかも包まれているご飯に入ってる肉も全てが美味しいとしか言えない!」

桜は目を輝かせて食べ進めていると、花音も料理が美味しいと同じ反応をしていた。 その二人の反応を見た葵はふふーんと口元をアヒル口のようにして笑っていた。

「悔しいけどこれは美味しすぎるわ! これで五百円だなんて最高よ!」

食券券売機ではすべてが五百円で統一されている。 これは儲けが良いからか定かではないが、他の料理屋とは違って近辺では安い値段であった。

桜はここにいつも食べに来たいと思っていたが、流石に通いきれないので諦めるしかないと落胆していた。 食べ始めてから十分ほどたった時に葵がふとこれからどうしようかと聞いてくる。

「そうだねー。 花音の元気な姿が見れたし、今日はこれで解散にする?」

桜がそういった時にスマートフォンからメールを受信した着信音が聞こえた。

「メール? 誰かしら?」

学生鞄からスマートフォンを取り出して内容を見てみると、受信したのはリーベからのメールであった。 メールの内容は、本日学校終わりにリーベに寄ってほしいとのことであった。

「急に連絡が来るのね……ちょっと急用が出来ちゃったわ……」

桜は二人に急用が出来たと伝えると、そろそろ食べ終わるし病室に戻ろうと葵が言う。 それから五分後に花音の病室に行き、テレビの電源を入れるとリーベのことを特集していた。

「リーベか……どんな機関なのかあまり知らないのよねー」

花音がそう呟くと、テレビでは政府直轄の怪人対策機関であるとされていると言う。 続けて、ここ二十年間怪人が出現しなかったために資金が減らされ続けていると言っていた。

「でもこの前の怪人出現でリーベが活躍して、やはり必要な機関であると再認識されたみたいね」

テレビの特集を消して、桜は先に帰るねと言う。

「今日は来てくれてありがとう! また来てね!」

花音が笑顔で手を振ると、桜も振りかえして葵より先に部屋を出ていく。 そのままリーベから来てほしいと書いてあった場所である本部に向かった。

水瀬記念病院から再度電車を乗り継いで、日本の都心の重要省庁が集まっている霞ヶ町に到着した。

月曜日の日中とのこともあり、働くサラリーマンで溢れかえり学生がいることが不思議なようで、周囲の目線が痛い。 

「流石霞ケ町……サラリーマンだらけね! インターネットで調べた地図だとこの辺りなんだけど……どこかしら?」

周囲をキョロキョロと見渡して地図の座標が示す場所を探していると、近くのビルの玄関口に立っていた警備員が話しかけてきた。

「こんな日中に学生さんがどうしたの?」

腰に付けている警棒が軽快な足取りと共に左右に揺らしながら、警備員が近寄ってくる。 その警備員は桜に近づくと、桜が手に持つスマートフォンに注目した。

「どこか行くのかい? 言ってくれれば分かるかもしれないよ」

笑顔で聞いてくる警備員に、桜はスマートフォンの画面を見せてここに行きたいと言う。 すると、警備員は目を見開いて驚くと、見学か何かかなと聞いてきた。

「ちょっとここに呼ばれてて行かなくちゃいけないんです。 でも、場所が分からなくて困ってまして……」

頭を掻いて困っていると言う桜に、警備員があそこのビルですと西側にある遠くの白い全面窓張りの地上五階建ての長方形のビルを指さした。

そのビルは人の入りと出が多くこの国の防衛を担っている組織が多数入っているため、なぜ高校生がここにと驚いていたが、その建物内にリーベが入っているのは秘密とされているため、桜がリーベに呼ばれたとは警備員は気づいていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。 これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。 1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ! いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります! 【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

月の砂漠のかぐや姫

くにん
ファンタジー
月から地上に降りた人々が祖となったいう、謎の遊牧民族「月の民」。聖域である竹林で月の民の翁に拾われた赤子は、美しい少女へと成長し、皆から「月の巫女」として敬愛を受けるようになります。 竹姫と呼ばれる「月の巫女」。そして、羽と呼ばれるその乳兄弟の少年。 二人の周りでは「月の巫女」を巡って大きな力が動きます。否応なくそれに巻き込まれていく二人。 でも、竹姫には叶えたい想いがあり、羽にも夢があったのです! ここではない場所、今ではない時間。人と精霊がまだ身近な存在であった時代。 中国の奥地、ゴビの荒地と河西回廊の草原を舞台に繰り広げられる、竹姫や羽たち少年少女が頑張るファンタジー物語です。 物語はゆっくりと進んでいきます。(週1、2回の更新) ご自分のペースで読み進められますし、追いつくことも簡単にできます。新聞連載小説のように、少しずつですが定期的に楽しめるものになればいいなと思っています。  是非、輝夜姫や羽たちと一緒に、月の民の世界を旅してみてください。 ※日本最古の物語「竹取物語」をオマージュし、遊牧民族の世界、中国北西部から中央アジアの世界で再構築しました。

処理中です...