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第102話 剣の名と暗い世界

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蓮は出雲の分も取っておくかと呟き、再度書類を取っていく。その際に青葉が蓮にどうしたのと話しかけると、出雲の分を取ってますと返答した。

「そうだったねぇ……任せるよぉ……」

精神的に未だに参っているのか、青葉にいつもの覇気は感じなかった。持ってきていた紙が全て無くなったのを確認した青葉は、みんな持ってると話しかけた。

「持ってるよー先生大丈夫?」

女子生徒が席に座りながら青葉のことを再度心配したのか声をかけると、青葉は少し良くなったわと返答をしていた。

「みんなごめんねぇ……」

青葉はそう言うと、生徒達に話しかける。

「今回は学校のセキュリティの甘さで怖い思いをさせてごめんなさい。 休校期間を経て、学校も教師も変わっていくから先生達に幻滅しないでね!」

そう青葉が頭を下げて言うと、蓮を含めた生徒達全員がそんなことないから大丈夫だよと様々な言い方で青葉に言っていた。

「ありがとう……このクラスの担任で良かった!」

青葉が涙目でありがとうと言い続けると、数人の女子生徒が立ち上が手青葉に抱き着いた。

「先生があの黒服の人達に私達のために立ち向かったのは見てたから! そんなことしてくれる先生に幻滅なんてしないよ!」

そう言われた青葉は女子生徒数人を抱きしめると、涙を流してありがとうと再度言った。それから生徒達は家に向かって帰宅をしていく。クラスメイト達が家に帰っている中で、出雲は暗い世界を漂っていた。

「ここは……俺は死んだのか?」

出雲は海の中に沈んでいく感覚で周囲を見渡すが、何も見えないし腕を伸ばしても何も周囲にはない。出雲は身体を預けるようにゆっくりと沈んでいくと。遠くから声が聞こえてくる。

「何だ? 誰かの声が聞こえる……誰の声だ……」

出雲は虚ろな目で声が聞こえる方を向くと、その声が少しずつ大きくなっていた。

「この声は……た・す・け・て?」

出雲は微かに聞こえた声を繰り返し言うと、その声を聞いて守りたいと思っている大切な人のことを思い出した。

「そうだ……これは美桜の声……そうだ、俺は美桜を救わないと……」

出雲はそう言葉を発すると眼に光が戻っていた。そして、身体に力を入れて上に上がるために手足を使ってもがく。しかしなかなか上に進まない。

「くそ! 俺はこんなところにいないで、美桜の隣にいるんだ!」

そう叫ぶと、左手首に装着していた金色の細い腕輪が震えていた。

「これは、試験時に手に入れた剣が変化したやつ……力を貸してくれるのか?」

そう呟いて右手で腕輪を触ると腕輪が変化して剣となった。その剣は手に入れた時とは違い、金色と銀色の貴重とした美しい色合いの剣となっていた。出雲は目の前に現れたその剣を掴んで、桜花と出雲はその剣の名前を力強く叫んだ。

桜花と出雲が剣を持って叫ぶと、その暗闇の世界が掻き消えるように青空へと変化した。出雲は青空に浮かびながら桜花に目線を移す。

「美桜を助けるために協力してくれ!」

そう力強く出雲が言うと、桜花が淡く光った。そして青空を突き抜けて出雲の意識が戻った。出雲はパチッと音がするほどに素早く眼を開けた。その出雲の様子を見ていた椿は驚いて声を上げてしまった。

「きゃッ!? い、出雲!? 目が覚めたの!?」

椿は身を乗り出して、ベットの横から出雲の顔を見た。出雲は目がまだ慣れていないのか誰かが目の前にいることは理解できているが、その人が誰かは見えていない。

出雲は髪の長さや体型から女性であることは分かっていた。出雲は美桜ではないこと分かっているので、多分椿であろうと考えた。

「まだ目が慣れなくて……椿がいるの?」

出雲の声を聞いて椿は出雲に抱き着いた。出雲は突然抱き着かれたので、何が起こったのか焦ってしまう。

「な、なんでここに椿が!?」

出雲は目が慣れてきたので抱き着いてきた人の顔を見て驚いた。何で椿がここにいるのか、自身がいるここはどこなのか驚きの連続で頭が回らなかった。出雲は抱き着かれている椿を一旦引き剥がすと、ここはどこなのと部屋中を見渡す。

「ここは病院の病室だよ。 琴音ちゃんのお爺さんが経営をしている病院だよ」

そう言われた出雲は琴音のお爺ちゃんは凄い人だと思い、琴音さん達はいないのと椿に聞く。

「緊急の貴族会議が行われるとかで、家に帰っちゃったよ。 一時間前までは蓮君と琴音ちゃんもここにいたんだよ」

そう教えてもらった出雲は、もう少し早く起きればよかったと思っていた。
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