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第82話 明臣の思い

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「マリアさんが来てくれたことで、私と明臣が考えていることが進みます。 私と明臣が御当主をここに連れてくるので、明臣とマリアさんが婚約をして結婚をすることを認めてもらいます」

美桜がそう言うと、マリアの両親が驚いていた。マリアの父親である修二と母親であるミレイユがマリアの方を向いた。

「明臣君のことが好きだと昔から言っていたが、そこまでだったの?」

修二がそうマリアに聞くと、マリアはそうですと修二の眼を見て答える。そして、ミレイユがそこまで好きなのねと聞くと、マリアは大好きですと笑顔で返答をした。

「私は明臣さんのことを大好きで、一生側にいたいと考えています!」

マリアは耳触りが心地いい鈴が鳴るような綺麗な声で、明臣と一生添い遂げたいと言う。美桜は決まったわと心の中で思うと、マリアの両親に考えがありますと話しかける。

「篁家の再建を明臣が行いながら、暫くの間をご両親とマリアさんが桜温泉のオーナーとして働くのはどうですか?」

美桜のその提案にその場にいる全員が驚いていた。いきなり篁家の再建を明臣がすることや、桜温泉を篁一家がオーナーとして働くと言われたからである。

「い、いきなりそんなことを言われても! お父様が許すかどうか……」

明臣が悩んでいると、美桜は明臣と名前を呼んだ。

「な、なに!?」

考えている最中に自身の名前を呼ばれて驚いていると、美桜は明臣の眼を真っ直ぐ見る。

「好きな女と一緒にいたいんでしょ!? なら、今根性を見せないでいつ見せるの! 今頑張れば一生マリアさんと一緒にいられるのよ!?」

美桜のその言葉を聞いた明臣は、眼を見開いて美桜を見ていた。眼を見開いて美桜を見ている明臣は、静かに立ち上がってそうですねと言う。すると、明臣は待っていてくださいと言って食堂を出ていく。その姿を見たマリアは、明臣の後姿を心配そうな顔で見ていた。

「明臣さん大丈夫かな? 心配……」

マリアが明臣のことを心配していると、ミレイユがマリアを座りながら抱きしめていた。修二はその二人を見て、マリアは明臣と一緒になることが幸せなのだろうと察していた。

「マリアさんは心配しなくても、明臣はちゃんと男を見せてくれるよ」

美桜の言葉を聞いてマリアは、そうですねと笑顔で返答していた。そして、明臣が食堂を出てから三十分程度が経過すると、食堂の扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

そこにいる誰よりも早く美桜が言葉を発していた。雫や修二達は、度胸があると思いながら美桜を見ており、マリアは凄いと考えていた。各々がそう考えていると、食堂の中に御当主と明臣が入ってきた。

「皆さんお揃いのようで。 息子から呼ばれたのだが、何かあったのですか?」

御当主の永臣が美桜や篁家を見ながら言うと、永臣の後ろにいた明臣がとりあえず座ってくださいと、永臣に話しかけた。明臣は永臣を美桜達と反対側に座らせると、明臣は美桜達側に座る。そのことに疑問を感じた永臣は、明臣にこちら側じゃないのかと聞く。

「いえ、私はこちら側です」

その明臣の言葉を聞いた永臣は、今まで意見をしてこなかった息子が初めて意見をしてきたことに驚いていた。


「そうか。 それで今回はどうしたのかね」

永臣がそう喋ると、明臣が冷や汗を流しながらも生唾を飲んで言葉を発することにした。

「私はこの隣にいる篁マリアさんと結婚をしたいと考えています」

明臣がそう言葉を発すると、永臣は目を見開いた。その目は何を言っているのかという眼でもあり、何故なのかという眼でもあるように美桜は見ていた。

「お前は何を言っているんだ? そこにいる天神家の娘と結婚をするのではないのか?」


そう言われた明臣は、緊張している顔で美桜の方を見た。美桜は溜息を吐くと、口開く。

「私と明臣さんとの結婚は、ここにいる篁家を謀略し、皇家に私を嫁がせることで天神家の家の位を上げようと考えた私の父親である弦十郎がしたことです」

そう言われた永臣は、それは本当なのかと明臣に聞いた。

「本当のことです。 私と美桜さんは会ったこともなく、この前初めてお会いしました」

永臣は明臣の言葉を聞いて、何か考えているようであった。明臣はその言葉に続けて、マリアさんと結婚をしたいと考えていますと言う。
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