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第69話 魔法講習

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出雲達は授業が終わるチャイムを聞くと、雑談などをしながら楽しく教室に帰っていく。教室に戻ると六時限目の魔法講習Ⅰの時間となった。魔法講習は属性魔法以外の魔法の使い方の講習が主の授業を講義形式で教えている。

「次は魔法講習Ⅰか今日はどんな授業だったけ?」

出雲はど忘れをしてしまい、教室に入りながら蓮に聞いた。

「今日は回復魔法についてらしいから、よく聞いておくといいな」

出雲は美桜から教わった回復魔法についての授業だと喜んでいた。また、美桜も回復魔法だけは極めると意気込んでいるようである。

「あのさ、美桜は――」

出雲が美桜に話しかけようとした瞬間、教室のドアが開いて初老の男性教師が入ってきた。

「皆席に着いたか? これから授業を始めるぞ」

そう言いながら初老の男性教師は教科書を開いて、板書を始めた。

「皆も知っている通り、属性魔法と呼ばれる以外にも現代では多くの魔法がある。 これから教える回復魔法はそんな多くの魔法の一つだ」

初老の男性教師は属性魔法以外の魔法の一つ、回復魔法と板書していく。出雲達も説明を聞きながらノートに書いていた。

「回復魔法は以前あった戦争で魔法による回復手段がなかった時に、一人の前線にいた若い女性が死んでいく仲間達を救いたいと嘆いた末に発動が出来た魔法と言われている」

嘆いた末と聞いた出雲は、心や想いが関係しているのかと考えていた。出雲は突然魔法が発動するのかとも思っていると、初老の男性教師は説明を進めていく。

「回復魔法を発動させたその女性は、自身の魔力量も気にせずに倒れていく仲間達を治していったと言われている。 まだ発動したてて緻密な魔力操作も出来ないなかで、切断された腕や足、抉れた腹部に切り傷などの軽症から重症まで幅広い傷を治療したと伝わっている」

クラスメイト全員が、知っている回復魔法とは違うのではないかと思っていた。一般的に現在知られている回復魔法は、切り傷を治すことや手術に用いて救うことである。

切断された手足を戻したり抉れた腹部を治すなんて聞いたことがなかった。自分達が授業で習うということは大人達は知っているはずと思うと、知っていてもそこまでの回復魔法には達する人はいなかったということだろうとクラスメイト全員が思っていた。

「誰でも練習をすれば使用が出来る回復魔法と侮ってはいけない。 誰でも使えるということは、誰でも極められるということである。 しかし、今現在回復魔法のトップと言われている人でさえ数日かけて切断された腕を縫合して動かせるようにするのが精いっぱいなのだ」

出雲は属性魔法以外の魔法も凄いのが多いんだなと考え、光と闇に美桜に習った回復魔法以外にも使ってみたいと思っていた。

「全員にそうなれとは言わない。 ただ、守りたい人を守れるレベルの回復魔法を扱えるようにすると良いかもしれないな」

初老の男性教師はそう締めくくると、授業が終わるチャイムが鳴り響いた。授業が終わり、いつも通り蓮達と話しながら家に帰ると雫が慌てて玄関先にいる美桜に駆け寄ってきた。

「み、美桜様! 大変です!」

雫が慌てて美桜に一通の手紙を手渡す。美桜はその手紙の中身を見ると嘘でしょと言葉を漏らした。出雲は何があったのと美桜に話しかけると、手紙の中身を読んでいるようで出雲の言葉が聞こえていなかった。

戸惑っている出雲に雫が手招きをして、こっちに来てくださいと言う。出雲はそれに従って雫の側に行くと、雫があの手紙は美桜様のお父様からですと耳うちをする。

「父親からの手紙!? 美桜は何であそこまで驚いているの?」

出雲がそう聞くと、雫はそれはと眼を出雲から逸らした。雫が言おうか悩んでいると美桜が手紙を読み終えたようで、出雲の方を向いた。美桜は出雲にごめんねと一言だけ言うと自室の方向に歩いて行った。

「ごめんねって、何があったんだよ! 美桜!」

出雲が美桜に向かって叫ぶも、その声が届いているにも関わらず美桜は振り向かない。雫は出雲に説明をする時かと思い、食堂に出雲を連れて行くことにした。

「すぐに食堂に来てください。 美桜様の身に起きたことをご説明します」

雫は出雲にそう言うと、食堂に歩いて行く。出雲も早く行かないと思い、雫の後に続いてい歩いて行く。
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