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第65話 徹夜

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椿は雫の作ったシチューを見て眼を輝かせていた。雫さんの作った料理と呟きながらスマートフォンで写真を撮っていく。雫はそこまでしなくてもと言いながら喜んでいると、美桜がそこまでにして食べましょうと出雲達全員に言った。

「そうだね! 食べよう!」

蓮がそう言うと、琴音と椿も食べましょうとスプーンを手に持って食べ始めた。出雲も椿達に遅れはしたが夕食を食べていく。

「美味しい! やっぱり雫さんの夕食は天下一品だね!」

出雲がそう言うと美桜もそうねと言ってその言葉に同意をした。蓮と琴音は何度か雫の料理を食べたことがあるようで、懐かしい味だと二人して顔を見合わせて笑っていた。

椿は一口、二口と静かに食べているとふいに美味しいわと眼を輝かせて両手を両頬に当てて喜んでいた。

「美味しい! 美味しすぎですぅ! 最高ですぅ!」

椿は至福の時間なように天にも昇る気持ちでいるようである。その様子を見ていた出雲は、椿は美味しそうに食べるなと微笑してみていた。すると椿が何見てるのよとジト目で出雲を見た。

「いや、美味しそうに食べるなと思って」

微笑しながら椿に言うと、椿がお金とるよとと舌を出しながら出雲に言った。そんな微笑ましい楽しい夕食の時間が過ぎると、蓮達は家に帰る時間になってしまい、美桜の部屋から出て玄関口に集まっていた。

「今日はありがとうね。 楽しかったし、出雲の小テストもこれで大丈夫だと思うわ!」

美桜がそう言うと、出雲もありがとうと言って蓮達に手を振った。蓮達を見送った出雲達は夕食も済ませていたのでそれぞれの自室に戻っていった。美桜はのんびりとし、出雲は美桜に教わったことを復習し始める。小テストに万全の状態で臨むと決めていたので、出雲は美桜のためにも必ず良い点数を取ろうと思っていた。

「さて、復習をしますか。 せっかく美桜に教わったんだから、ちゃんと満点を取らないと!」

出雲は教わったことを再度ノートに書いて、ちゃんと覚えきれるようにしていた。その勉強は夜から初めて朝日が昇るまで続けてしまい、終わったころには朝ごはんの時間になっていた。

「結局朝まで勉強してた! 眠い!」

出雲はそう言うとガクッと頭を机に乗せて眠ってしまった。出雲が勉強をしているとは知らない美桜は、朝食の時間になっても出雲が来ないので、美桜は不思議に思っていた。

「出雲何しているんだろう。 遅いなぁ……」

美桜はそう言いながら出雲の部屋をノックする。しかし、いつもなら返事がるのだが今回は返事がなかった。美桜は何かあったのかなと思い扉を開けた。すると、机に突っ伏している出雲が見えた。

「な、何があったの!? 大丈夫なの!?」

出雲を揺らすもなかなか起きないので、美桜は大声で雫の名前を呼んだ。すると雫が何かありましたかと叫びながら出雲の部屋にかけてきた。雫は突っ伏している出雲を見ると、大丈夫ですかと駆け寄って出雲に声をかけた。雫に揺さぶられている出雲は、呻き声を上げ始めた。

「これは……寝ている!?」

雫が出雲が突っ伏している机を見ると、そこには魔法史の教科書とノートが置かれていた。美桜と雫は徹夜で勉強していたのねと声を合わせて言うと、美桜がそろそろ朝食よと出雲の耳元で言う。すると、出雲が寝言で美桜の可愛い声がすると呟いて、ゆっくりと眼を開けていく。

「んあ……あ、美桜に雫さん……どうしてここにいるの?」

出雲が寝ぼけ眼で見ると、美桜と雫がおはようと言った。出雲はおはようございますと返答をすると、美桜が魔法史の勉強をしていたのねと言った。

「うん……ちゃんと良い点数を取ろうと思って……」

目元を擦りながら出雲は言った。すると、美桜がもう朝食の時間だよと笑顔で言う。雫はすぐ食べられるようにサンドウィッチでも作ってきますと言いながら部屋を出ていった。

「ほら、出雲は雫が作ている間に風呂に入ってきなさい。 少し臭いわよ」

臭い。そう美桜に言われた出雲は、すぐに入ってくると言って部屋を出ていった。美桜は出雲が勉強をしていた机を見た。自身が教えていたことがよく纏めてあり、何度も覚えきれない単語や文章を書き綴っている個所もあった。

「ここまで勉強していたのね。 ちゃんと忘れないようにか……出雲は小テスト良い点数取れるわよ」

美桜が出雲の勉強道具を片付けると、そのまま朝食を食べようと戻っていった。
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