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第62話 対策を講じる

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美桜は優しくなんかないわよと言うが、その顔は紅く染まっていた。出雲は美桜は優しいよと言った。

「なんやかんや言っても美桜は優しいよ」

そう言いながら美桜の頭を出雲は撫でた。美桜は撫でられていると、撫でている出雲の手に自身の手を重ねてありがとうと言う。

「あ、そろそろ部屋に戻らないとだめだね。 戻ろうか」

出雲がそう言うと、美桜もそうだねと同意をした。出雲と美桜が食堂を出ると、出雲の髪を切ってくれた美容師の男性が廊下に立っていた。その美容師の男性は、出雲を呼び止めると髪の毛が伸びていないかと聞いてきた。

「あ、そういえば少し伸びたかも」

出雲が自身の髪の毛を触って言うと、美容師の男性が今切っちゃおうという。そして、美桜にも学校が始まったからと言って髪の毛を整えるかと聞いた。

「そうね。 出雲の後にお願い」

美桜の言葉を聞いた美容師の男性は、了解したと言った。

「じゃ、出雲をお願いね」

美桜はそう言って自室へと返っていった。出雲は髪を切ってもらうために地下にある美容室に行くと、初めて来た時のように髪を切ってもらった。

「あ、そう言えばお金ってどうなっているんですか?」

出雲が部屋を出る前に聞くと、美容師の男性が小さく笑って出雲に言う。

「年間契約だから、お金のことは気にしなくていいよ。 この家にいる全員の美容のことについて任されているから」

そんなことを聞いて話していると、部屋の扉が開いて美桜が入ってきた。美桜は右手に一枚の小さなメモ用紙を持っていた。美桜はその紙をお願いねと言って美容師の男性に手渡した。

「それ何の紙なの?」

出雲が美桜に聞くと、琴音からの注文書よと言った。

「琴音はこの月影さんのオリジナルブランドを愛用しているのよ」

出雲は初め美容師の名前を聞いた。出雲は月影さんって名前なんですねと言うと、月影が名前言ってなかったねと出雲に話しかけた。

「俺の名前は月影正弘って名前なの。 覚えておいてね」

出雲はありがとうございますと言った。そして、美桜が出雲に今から髪切るから部屋戻ってなさいと言う。

「そうだね。 ゆっくり切ってもらってね」

出雲はその言葉と共に部屋を出ていった。部屋に戻ると出雲はメールをしたりテレビを見ることにした。部屋に入ってから一時間ほどが経過すると、誰かが部屋の扉をノックした。

「どうぞー」

出雲が言葉を発すると、扉が静かに開いた。扉が開くとそこには美桜が立っていた。出雲は切り終わったんだねと話しかけた。

「終わったわ。 どこが変わったか分かる?」

美桜が自身の髪を触りながら出雲に話しかけると、出雲は目を細めて美桜の髪の毛をじっと見る。出雲はすぐには分からなかったが、前髪と横髪が多少短くなっていることに気がついた。

「前髪と横髪を少し切ったんだね!」

出雲がそう言うと、美桜が気がついてくれたんだねと笑顔でありがとうと喜んでいた。そして、その後は夕食を食べて寛いで寝るといういつも通りの時間が流れていく。翌日は美桜達と教室で話しながら、魔法書を次回から持ってくることなど、各種授業の説明が主な授業内容であった。

午後の魔法の時間も、属性毎に集まって魔法の練習を行うことを説明された。魔法の練習では、一クラス毎ではなく一学年ごとに場所を分かれて魔法を教えてくれる専門の教員のもとに授業が行われることと説明を受けた。

そんな怒涛の授業の説明や通学に慣れるために毎日早起きをする日々が続いていた。出雲は美桜に怒られつつ、笑い合いつつ、連夜琴音に椿と楽しい毎日を過ごしていた。国立中央魔法学校に通い始めて一か月が経過し、変わり始めた毎日に慣れてきたころ、出雲は通学中に悩んでいた。

「あれが……あのことを覚えられない……ううぅ……」

出雲が頭を抱えながら歩いていると、右側を歩いていた美桜がどうしたのと話しかけた。出雲は美桜の方向を向いて助けてくれぇと涙目になっていた。

「ど、どうしたのよ!? 特に学校生活でそんな涙目になるようなことはなかったはずだけど!?」

美桜が驚きながら出雲に聞くと、出雲は魔法史の小テストがあるじゃんと言う。

「あるわね。 あ! 出雲は小学校や中学校で歴史やってないから、ゼロからなんだ!」

美桜は右手で自身の口を覆うと、これは対策が必要ねと決めた。
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