上 下
43 / 120

第43話 試験後

しおりを挟む
「それもそうだね。 だけどやっぱり緊張するよ。 昨日の今日ってなると何だかね……」

出雲がそう言葉を発すると椿が男でしょと言い、もっと自分のやったことに自身を持ちなさいと言ってくれた。

「ありがとう。 そう言ってくれて嬉しいよ」

笑顔で出雲が返すと椿は何度も笑顔で頷いていた。すると、試験官がもう質問はないですねと言って試験が終了した。席順の前から順々に退出していくことと言われた出雲達受験者は、順番に退出していく。出雲と椿の番になるとゆっくり立ち上がり、流れに任せて会場を後にした。

会場を出ると、受験者達は笑顔でいたり落ち込んでいたり様々な受験者達で駅周辺が溢れ返っていた。出雲と椿は笑顔で笑いながら駅に向かって歩いていた。

「試験お疲れ様! 色々不安とか危険とか沢山あったけど、今は出雲と試験中過ごせてよかった!」

椿は笑顔で出雲に楽しかったと言うと、出雲も楽しかったと返した。

「俺も一緒に試験受けられて楽しかったし、色々助けてらもって嬉しかった! ありがとう!」

そう感謝の言葉を言うと、椿は顔を紅く染めてこちらこそよと呟いていた。

「あ、そうだ! 連絡先交換しよう!」

椿が不意に出雲の右腕を掴んでスマートフォンを取り出した。出雲は突然連絡先を交換しようと言われて驚いていた。

「いや?」

目を潤ませながら出雲を下から椿が見上げると、出雲はそれに負けて交換をしようと言いながら鞄からスマートフォンを取り出した。

「はい俺のスマートフォン!」

出雲が椿に自身のスマートフォンを見せると、椿が出雲は最新機種使ているんだねと言いながら電話番号とメールアドレスを登録していく。椿は素早く出雲のスマートフォンに自身の連絡先を登録すると、出雲にスマートフォンを返した。

「もう登録したの!? 早い!」

出雲が驚いていると椿は当然よと言って胸を張った。出雲は新たな連絡先が登録されたことが嬉しいと思っていた。

「てか、全然連絡先登録されてなかったね! 女性が二人だけだったね」

出雲のスマートフォンに登録されている人を見た椿は、ジト目で出雲を見始める。出雲はその視線に気がつくも、たまたまだよと言って話を終わらそうとする。

「それに、このスマートフォンも美桜に買ってもらったから最新機種だとも知らなかったよ」

出雲の言葉を聞いた椿は、美桜って人におんぶにだっこで暮らしてるのかと顔を引きつらせていた。

「出雲ってヒモなの!?」

そう言いながら出雲の両肩を掴んで揺らす椿であるが、出雲はヒモじゃないわと即否定した。

「美桜が好意で家に住まわせてくれたり、色々家具や必需品を買ってくれてるの!」

そういう出雲に、本当かなと言いながらジト目をする椿。出雲はさらに説明をしていくことにした。

「俺は両親に捨てられて一人で家もなく彷徨っていたんだ。 当てもなく町を歩いていて一人で河川敷で暮らしていたら美桜に出会ったんだ」

異世界のことや美桜と出会ったことの詳しいことを言わずに、出雲は美桜に出会ったことを言う。それを聞いた椿は親が出雲を捨てたことについて怒っていた。

「子供を捨てるなんて酷い! 何を考えたらそうなるのよ!」

頬を膨らませて出雲の代わりに怒ってくれていた。出雲は何で椿がそこまでしてくれるのか不思議に感じていた。

「そこまで椿が怒らなくてもいいよ。 代わりに怒ってくれてありがとう!」

そう出雲が言うと、椿が怒らなすぎよと出雲を指さす。

「そうだけど、今は美桜や椿と出会えたしもうあの両親とは関係がないからさ」

出雲は辛いことを経験しているんだと椿は思い、自身も出雲の支えになることは出来ないかと考えるも、上手い答えが見つからない。椿は唸りつつも、出雲の眼を見て私がと言う。

「何? 何か言った?」

出雲も椿の目を見て言うと、椿が私がと再度口を開く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

Rich&Lich ~不死の王になれなかった僕は『英霊使役』と『金運』でスローライフを満喫する~

八神 凪
ファンタジー
 僕は残念ながら十六歳という若さでこの世を去ることになった。  もともと小さいころから身体が弱かったので入院していることが多く、その延長で負担がかかった心臓病の手術に耐えられなかったから仕方ない。  両親は酷く悲しんでくれたし、愛されている自覚もあった。  後は弟にその愛情を全部注いでくれたらと、思う。  この話はここで終わり。僕の人生に幕が下りただけ……そう思っていたんだけど――  『抽選の結果あなたを別世界へ移送します♪』  ――ゆるふわ系の女神と名乗る女性によりどうやら僕はラノベやアニメでよくある異世界転生をすることになるらしい。    今度の人生は簡単に死なない身体が欲しいと僕はひとつだけ叶えてくれる願いを決める。  「僕をリッチにして欲しい」  『はあい、わかりましたぁ♪』  そして僕は異世界へ降り立つのだった――

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...