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第38話 あなたの代わりに

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「出雲!」

出雲は吹き飛ばされてしまい、後方にあった木に衝突してしまった。出雲は空気を吐いて地面に倒れてしまうと、そのまま気絶をしてしまった。ワニは気絶した出雲を攻撃しようとして尻尾を高く上げた。

椿はワニの尻尾を魔法で作った真空の刃を飛ばして、ワニの尻尾を根元から切断した。ワニは突然のことに驚くも、自身の切断された尻尾の痛みで雄たけびを上げて呻いていた。

「出雲! こっちに……」

椿は出雲を引きずりながら人が沢山いる方向に向かった。出雲の怪我を見た回復魔法が扱える受験者の一人の女子が肋骨が折れていると言う。

「でも、私なら治せる!」

そう言った女子に椿は出雲を任せ、椿は先ほどの真空の刃を再度魔法で放つとワニは首を切断されるのを恐れて身体を捻って左足を切断された。

「首を狙ったのに! あのワニめ!」

椿はワニの首を狙って真空の刃を放とうとすると、ワニは右足で湖の水を椿達に飛ばした。その大量の水を受けた受験者達は転んだりその場に膝をつくなどバランスを崩してしまった。

「くぅ! 小癪な真似を!」

椿は大量にかかった水を払うと、ワニを見たワニは椿に狙いを絞って右足の爪で切り裂こうとする。椿は目を見開いて風魔法で後方に移動した。その移動する前の場所にワニの攻撃が地面に当たった。地面にワニの攻撃が当たると周囲に巨大な爆発音が響き渡り、周囲にいる受験者達は耳を塞いで動きが止まってしまう。それほどまでに耳を劈くような巨大な音が発生していた。椿はこの攻撃を出雲が受け切って避けていたのかと思うと、凄いとただただ凄いと感じていた。

「出雲はこんな攻撃を受け切って避けていたのね……出雲が復活するまで私が代わりをするんだ!」

椿は風魔法の下位の防御魔法であるウィンドシールでワニの攻撃を受け流しつつ真空の刃を放っていた。

「げほっ! 私の魔力が切れそう……」

椿は魔力がそれほど未だ多くないので魔力切れを起こしそうになりつつあり、目の前が霞んできていた。

「出雲まだなの!? もう限界よ!」

そう叫ぶと、出雲の治療に当たっていた女子がもう少しで治るからと椿に叫ぶ。椿は早くしてよと言うと、ウィンドシールドと真空の刃で時間を稼いでいく。周囲にいる受験生達も攻撃をしていき、少しずつワニの体力を削っていた。椿はもう少し頑張ろうと意気込んでワニの攻撃を凌いでいく。

「私がやらなきゃ、出雲が倒れている今、私がやらなきゃダメなの!」

椿はワニの爪の攻撃をウィンドシールドで受け流すと、ワニの顔の方に走っていき、ワニの顔に真空の刃を叩き込もうとした。しかし、ワニはその攻撃を察知したのか身体を捻って右側に移動をした。

「そんな!? 察知された!?」

椿はそう言うと、ウィンドシールドをすぐさま展開した。すると、ワニが頭部で椿を押し潰そうとして、顎を椿のいる地点に叩きつけた。地面にはワニの顎による攻撃で陥没穴が出来ていた。

「危ない! ワニのくせになんて強さなの! 早く倒れてよ!」

椿がそう叫んで真空の刃を放とうとすると、魔力が切れてしまいその場に倒れてしまう。

「魔力が……ここで死ぬの? そんなの嫌よ!」

椿が叫んで死にたくないって叫ぶと、倒れている椿にワニが右足の爪で斬り殺そうと振り下ろしてくる。

「死にたくない! 助けて!」

椿が叫ぶと、ワニの爪が何かに衝突した音が聞こえた。椿は上を見上げると、そこにはライトシールドを展開してワニの爪を防いでいる出雲の姿があった。

「大丈夫か! 俺が死なせない!」

出雲が背後で倒れている椿に前を向いたまま話しかけると、椿はありがとうと頬を染めながら言う。椿は出雲が助けてくれた瞬間、胸の鼓動が高鳴ったことに気がついた。

「初めて会った時は私の胸を見てくるただの変態だったのに、この短時間でこの変わりようはなんなの……」

椿は変態な出雲とこの目の前にいる出雲は同一人物なのかと疑問を感じていた。しかし、現実問題あの朝に自身の胸を見ていた出雲だと思うしかなく、こんなに頼りになるのだなと目を奪われていた。
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