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第36話 昼と突然の爆発

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出雲の言葉を聞かずに湖の側に走ると、そこに咲いている花を見て癒されると呟いていた。椿は花が好きなのかなと出雲が思うと、湖の側に大量の受験者がいた。全員ではないが十人二十人ではなく数えられないが五十人以上はいるようであった。

「こんなにこの場所に人がいるってことは、安全地帯なのかな?」

そう呟きながら椿の側に行くと、そろそろお昼だよと椿が出雲に話しかける。

「もうそんな時間!? 早いな……」

時間が経つのが早いと思っていたが、移動や戦闘に治療などで時間を使っていたなと思って妥当な時間かと思った。椿は鞄から小さな弁当箱を取り出すと湖の側の座れるぐらいの長方形の石に座った。出雲にも側に座って一緒に食べようと言うと、出雲はありがとうと言って椿の右側にある石に座った。

「出雲も弁当なんだね。 自分で作ったの?」

そう聞かれた出雲は雫さんに作ってもらったと言う。

「そうなんだ。 その雫って人どこかで聞いたことあるけど思い出せないな……」

そう唸っていると、椿は自身の弁当箱の蓋を開ける。そこにはウインナーに卵焼きがあり、鮭のふりかけがかけられている白米があった。出雲の弁当には美桜が言った通りにおにぎりがあり、数は五個入っていた。

「出雲のお弁当はおにぎりなんだね! 色々な種類ががあるのかな?」

椿に言われた通りに、何か具が入っているのかなと思って一つを手に取って食べると、その食べたおにぎりには昆布が入っていた。

「昆布だ! これ好き!」

出雲は勢いよく食べると次のおにぎりを手に取った。

「今度は何かな! はぐ! うお! 今度は梅干しだ!」

出雲が笑顔で梅干しおにぎりを食べていると、椿が美味しそうに弁当を食べる出雲にこれも食べてと、自身の弁当箱から卵焼きを出雲のおにぎりの上に置く。

「卵焼き? 椿が作ったの?」

出雲が聞くと、椿は私が作りましたと胸を張って出雲に言う。出雲は凄いと驚いて椿からもらった卵焼きを一口食べると、その甘さや一口食べたら溶けるように消え、その卵焼きの柔らかさに再度驚いた。

「美味しすぎる! これ椿が作ったの!?」

そう聞かれた椿は、そうだよと頬を掻きながら言う。出雲は料理できるの凄いよと椿に再度言うと、今度作ってあげるねと椿が言った。

「本当!? なら焼そばが食べたい!」

焼そばが食べたいと言われた椿は、練習すると意気込んでいた。出雲は作ってくれるなんてありがたいとと思いながら、俺に何かできることあるかなと聞いた。

「出雲にできることかー。 今は一緒に試験を合格することかな」

笑顔で出雲に言う椿を見て、当然だよと返答した。椿はまさか当然なんていわれるとは思わなかったのか、頬を紅く染めてしまう。

「顔が赤いけどどうしたの?」

出雲がそう聞くと、何でもないと言って出雲を突き飛ばしてしまう。突き飛ばされた出雲は地面に落ちると、地面が多少濡れていたらしく冷たいと言う。出雲は濡れたズボンをハンカチで軽く水を拭くと、石の上に座りなおした。

「ご、ごめんね! 恥ずかしくなっちゃって!」

椿がそう言うと出雲は大丈夫だからと湿ったお尻を気にしながらポジションを気にしていると、その動きを一緒にいて恥ずかしがっているのかなと勘違いをした椿は、出雲に話しかける。

「ねぇ……この試験が終わったら……」

そう椿が上目遣いで出雲に話しかけた瞬間、目の前の湖が爆発した。

「キャッ!? な、何が起きたの!?」

椿が湖の爆発を指さしていると、爆発の後から巨大な縦幅六メートル、横幅二十メートルのワニが現れた。湖の周囲にいた受験者達は悲鳴を上げて逃げ惑っていた。何人かの受験者はワニに攻撃を浴びせるも、威力が足りずに傷も負わせられなかった。

受験者達は攻撃を続けるも、効果がないので悲鳴を上げて逃げるしかなかった。何人かの受験者はワニの尻尾の薙ぎ払いを受けて血を吐きながら浮き飛ばされてしまう。

「こんな試験辛い……もう帰りたい!」

地面に倒れて血を吐きながら泣き叫ぶ男子や、ママ助けてと言いながら腹部を抑えて気絶をしている受験者が多くいた。出雲と椿はワニの攻撃に当たらなかったが、周囲の怪我をした受験者達を助けるために動いていた。

「大丈夫!? どこが痛い!?」

出雲は腹部から血を流している男子受験者に回復魔法をしつつ、椿に怪我を負っている人を連れてきてと言う。椿は分かったと言って怪我を負って呻いている受験者達を探しに行った。

「ねぇ! 大丈夫!? どこか怪我してる!?」

そう椿が腹部を抑えている女子に話しかけると、お腹かがと小さな声で呟く。椿はお腹を抑える手をどけると、そこにはワニの尻尾の攻撃で飛んできた椿の腕程の枝が突き刺さっていた。
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