上 下
4 / 120

第4話 散髪と食事

しおりを挟む
「今にも倒れそうな身体でお嬢様を助けてもらってありがとうございます……」

出雲がいない空間で呟く女性騎士は、少し微笑んで大浴場を後にした。そして、脱衣所で着替えている出雲に次は髪を切りましょうと言って脱衣所にあるウォーターサーバーで水を飲んだ。

「髪切るんですか? お金持ってないですけど……」

出雲がそう言うと、お金なんて取りませんよと女性騎士が返す。この地下の大浴場の反対側に美容師がいる部屋があるので、そこで切りますと言う。

「分かりました。 どんな風に切ってもらおうかな」

出雲が楽しみだと言っていると、奥に行ってくださいと言われる。

「ここが美容師がいる部屋か。 なんか普通の部屋に見えるけど……」

そう呟きながら引き戸を開けると、そこには出雲がいた地球と同じ設備の美容院と言えるゆったり出来るリクライニングチェアに大きめの鏡があり、部屋は十二畳程であるが、そこには個室美容院と言える空間があった。

「この部屋にこんな設備が!」

出雲が驚いていると、部屋の奥にある椅子に座ってテレビを見ていた髪色が独特な痩せ型の男性が出雲の方を見てきた。

「君が出雲君かな?」

そう話しかけられた出雲はそうですと答える。すると、肩までかかる髪の長さに右側が茶髪で左側が青色の端正な顔立ちの美容師の男性が出雲の髪型を決めたと指さして言う。

「さ、椅子に座って。君の長髪を切って爽やかさが溢れるツーブロックの髪型にしようと思う」

そう言い、出雲の髪を濡らしてリズムに乗って美容師の男性が切っていく。その間に出雲は誰かに切ってもらうのは最高だなと思いながら目を瞑っていると、いつの間にか眠ってしまった。次に目が覚めた出雲は鏡で自身の姿を見ると、窪んだ頬や栄養不足の顔や首が見えてしまうも、髪型が格好良く似合っていると言えた。

「一時間掛かってしまったが、良い作品が出来たよ。 ありがとう!」

爽やかな声と顔で出雲に言うと、美容師の男性はナチュラルな束感を出してるショートカットヘアにしたよと言い、眉毛も切るからねと言って椅子を倒した。それからはヘアの整え方などを教わると、お嬢様のいる部屋に戻りなと言ってきた。

「お嬢様の部屋ってどこ!?」

出雲が目の前にいる美容師の男性に聞くと、君が寝てた部屋だよと言われた。

「俺が寝てた部屋!? なら、あの寝てたベットは……」

出雲がそう言って目を見開くと、美容師の男性がお嬢様のベットだねとニヒルな笑顔を浮かべて言う。

「殺されないかな……」

出雲が顔を引きつかせながら言うと、多分平気さと美容師の男性が笑顔で言っていた。寝ていた部屋に戻ると、そこにはピンク髪の少女と女性騎士がいた。ベットの側にある椅子に二人とも座っており、出雲の姿を見ると寝てとピンク髪の少女が出雲に言う。ベットに入って布団をかけると、ピンク髪の少女がかなり印象変わりましたねと言ってくれた。出雲はこんなに汚かったなんて気がつかなかったと言うと、出雲のお腹が大きく鳴り出した。

「お腹減りましたよね! 食事にしましょう!」

ピンク髪の少女がそう言うと、女性騎士に晩御飯にしましょうと言う。晩御飯との言葉を聞いた出雲が部屋の窓から外を見ると鳥の鳴き声が聞こると共に外が薄暗くなってきていた。

「もう夜だったんだね……この世界も夜空は綺麗だね……」

出雲が窓から外を見ていると、部屋にメイド服を着た女性三人がそれぞれの晩ご飯を持ってきた。女性騎士はオムライスであり、ピンク髪の少女は海鮮丼、そして出雲はお茶漬けであった。

「俺も海鮮丼とか食べたい」

出雲がそう言うと、ピンク髪の少女は怪我したばかりだから仕方ないでしょと言う。出雲はそういえばと言って、二人の名前を聞いていなかったと言う。すると、女性騎士がそうでしたねと言った。

「私の名前は柊雫と言います」

そう言い柊雫と名乗った女性騎士は出雲に頭を下げた。そして、ピンク髪の少女も出雲に名前を言い始める。

「私の名前は天神美桜と言います。 てんのかみと書いて、天神美桜と言います」

あまかみ。天神美桜と聞いて、この人が俺が守り続ける人なのだと実感した。美桜をまじまじと出雲は見てみることにした。ピンク髪に艶があり、それは肩を少し超えたあたりまで伸びており、その前髪には重めにして目にかからない程度に調整してある。こだわりがあるセットのように見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる

月風レイ
ファンタジー
 あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。  周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。  そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。  それは突如現れた一枚の手紙だった。  その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。  どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。  突如、異世界の大草原に召喚される。  元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

処理中です...