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第3章
第27話 シェリア・ブラエ
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「クリスの言っていた彼女だろ!? どうして操るんだ!」
「あなたの知ることではないです。早く死んでください! 私達の幸せのために!」
「勝手なことを言うな! あんたら二人のために死ぬわけないだろうが! こっちこそルナを洗脳するな!」
「必要なことです。あなたを殺したら、あの子には奴隷のように使います!」
シェリアが奴隷と言った言葉をノアは聞き逃さなかった。
洗脳をして、さらに奴隷にもすると言っている。ありえない。ただただありえないことだ。大切な妹を奴隷にはさせられない。
「俺は初めて心から殺したいと思っているよ。容赦はしない」
「大罪人の癖に調子に乗らないで! 悪は悪らしく正義の前に滅びてよ!」
「勝手なことを言うな! 他人の命で得た幸せは不幸だ! そんなことクリスだって望んでいないだろうに!」
シェリアに向けて叫びながらノアは勢いよく駆け出す。
右手に持つ剣を水平に振るうが、その攻撃は黒い靄が形成した黒剣によって軽々と防がれてしまった。ガキンと金属音がしたので、構成は金属物質だと判断ができる。しかし黒い靄がどうして金属になったのかが理解できない。
「その黒い靄はなんだ? マグナ達が使っている不思議な魔法の類なのか?」
剣を押し込みながら情報を引き出そうとするが、シェリアは口を開かない。
「黙ってるか。なら、無理にでも情報を引き出すまでだ!」
未だに分からない不可思議な魔法を警戒しつつ、連続で斬撃を放ち続ける。
周囲に金属音を響かせながら横目でルナを見ると、剣を握ったまま呆然と立っているようだ。指示がなければ動かない様が、まさしく人形といえる。
「シェリアが指示をしていないから動かないか……」
やはり洗脳は指示があってこそ動くようだ。
このまま何も指示しないでいてくれるとありがたいと考えていると、ノアの視線に気が付いたシェリアが「二対一が基本よね」と最悪な言葉を発した。
「せっかく道具がいるのだから、ちゃんと使わないとね。教えてくれてありがとう」
「なっ!? もうルナに酷いことをするな! どれほど馬鹿にすれば気が済むんだ!」
「私達が救われるまでよ。あなたと頭がお花畑なステラを殺せば、私達は解放されるのよ!」
言葉を発、シェリアは力強く剣を打ち込む。
さすがはクリスの身体だ。意識が乗っ取られているとはいえ、騎士として修練した技術が凄まじい。しかし――それはノアも同じだ。
「俺だって伊達に大罪人をやってるわけじゃない! シェリア! お前を倒して、クリスもルナも解放してもらうぞ!」
「意気込んでいるけど、既にボロボロな状態で勝てるのかな?」
シェリアが言うことは正しい。
満足に休めておらず、傷は一つも癒えていない。だが、弱音は吐けない。
ステラも倒れ、ルナはシェリアの横で剣を構えている。誰かが救うのではなく、今この瞬間、ノア自身が戦って救わなければならない。
「可能性は低くてもやるしかない。俺は救うためにここにいるんだ!」
ルナがシェリアと共に襲い掛かってくる。
初撃はルナが縦に鋭い一撃を振り下ろすが、その攻撃を身体を逸らすことで躱す。続けてシェリアが斬撃を横に放ってくるが、剣に左手を添えて態勢を崩さずに防ぐことができた。
「よく避けるけど、次はどうかな?」
シェリアは刀身を右手でなぞると、黒い靄が光り輝く。
その光はさながらマグナ達が使っていた聖なる光のようで、黒と光の相反する色が神々しくも思える。
「やっぱり道具なのにいい動きね。そのまま合わせなさい」
「――――」
ルナが何を言っているのか分からないが、命令に従う他ないという感じだろうか。
シェリアは剣を眩く光らせ、連続で剣を振るって斬撃を飛ばしてきた。
「飛ぶ斬撃!? どういうことだ!」
ノアは見たことがない攻撃に驚きを隠せないが、受けたら危険だと思い炎壁を出現させて防ぐことにした。
「これでどうだ!」
「そんなちゃちな魔法で防げるわけないわ!」
シェリアの言葉通り炎壁を突き抜けて斬撃がノアに迫る。
身の丈程ある光輝く斬撃を防ぐために構えた剣に触れた瞬間、巨大な鉄球が衝突したかのような錯覚に陥ってしまう。
「お、重い!? な、なんだこれは!?」
「秘密なんて言うわけないでしょ! そのまま斬撃に切り刻まれろ!」
後方に押されてしまう。
地面にめり込むほどに踏ん張っているのにもかかわらず、押され続ける。
どういう原理かは分からないが、聖属性という不可思議な属性が強化していると見て間違いない。
「このままじゃサレア村に入っちまう! この斬撃を消すにはこれしかない!」
ノアは炎剣を激しく燃え上がらせると業炎一閃を放ち、辛くも斬撃を消すことに成功した。
「その技って必殺技らしいわね。でも、それ一つでどれくらい持つのかしらね」
戦場でしか使っていないから、騎士が記録でもつけていたのだろうか。
技を知られているとしたらかなり分が悪い。シェリアにどう打ち勝てばいいのか、ノアには答えが分からないでいた。
「終わらせましょう。これ以上戦っていても時間の無駄よ」
「俺にとっては無駄じゃない! お前を倒す時間だ!」
「あなたは私を倒せない。理由を教えてあげようか? あなたが私より弱いからよ」
その言葉と共に斬撃を二つ飛ばしてくる。
ノアは先ほどと同じように業炎一閃で消すが、斬撃の背後からシェリアが突っ込んで来る姿が目に入った時には既に左肩が剣で貫かれていた。
「このまま死んで! 私達の未来のために!」
勢いよく左肩から剣を引き抜いたシェリアによって、斜めに身体を斬られてしまった。
「そのまま私達の幸せの糧になって」
その言葉も耳に入らず、言葉を発することなくノアは地面に力なく倒れてしまった。
「やっぱり弱い。あとはステラを殺して終わりね。これでクリスとの幸せな生活が送れるわ」
勝手な事ばかりを言うシェリアの声は既にノアには届かない。
大量の血が地面に溢れ、今にも失血死をしてしまいそうだ。またしても勝てない。今までの大罪人として勝ってきたことは何だったのか。井の中の蛙とでもいうべきだろうか。
「まだ生きてる。早く死んで!」
言葉と共にノアの背中に剣が突き刺さる。
「あなたの知ることではないです。早く死んでください! 私達の幸せのために!」
「勝手なことを言うな! あんたら二人のために死ぬわけないだろうが! こっちこそルナを洗脳するな!」
「必要なことです。あなたを殺したら、あの子には奴隷のように使います!」
シェリアが奴隷と言った言葉をノアは聞き逃さなかった。
洗脳をして、さらに奴隷にもすると言っている。ありえない。ただただありえないことだ。大切な妹を奴隷にはさせられない。
「俺は初めて心から殺したいと思っているよ。容赦はしない」
「大罪人の癖に調子に乗らないで! 悪は悪らしく正義の前に滅びてよ!」
「勝手なことを言うな! 他人の命で得た幸せは不幸だ! そんなことクリスだって望んでいないだろうに!」
シェリアに向けて叫びながらノアは勢いよく駆け出す。
右手に持つ剣を水平に振るうが、その攻撃は黒い靄が形成した黒剣によって軽々と防がれてしまった。ガキンと金属音がしたので、構成は金属物質だと判断ができる。しかし黒い靄がどうして金属になったのかが理解できない。
「その黒い靄はなんだ? マグナ達が使っている不思議な魔法の類なのか?」
剣を押し込みながら情報を引き出そうとするが、シェリアは口を開かない。
「黙ってるか。なら、無理にでも情報を引き出すまでだ!」
未だに分からない不可思議な魔法を警戒しつつ、連続で斬撃を放ち続ける。
周囲に金属音を響かせながら横目でルナを見ると、剣を握ったまま呆然と立っているようだ。指示がなければ動かない様が、まさしく人形といえる。
「シェリアが指示をしていないから動かないか……」
やはり洗脳は指示があってこそ動くようだ。
このまま何も指示しないでいてくれるとありがたいと考えていると、ノアの視線に気が付いたシェリアが「二対一が基本よね」と最悪な言葉を発した。
「せっかく道具がいるのだから、ちゃんと使わないとね。教えてくれてありがとう」
「なっ!? もうルナに酷いことをするな! どれほど馬鹿にすれば気が済むんだ!」
「私達が救われるまでよ。あなたと頭がお花畑なステラを殺せば、私達は解放されるのよ!」
言葉を発、シェリアは力強く剣を打ち込む。
さすがはクリスの身体だ。意識が乗っ取られているとはいえ、騎士として修練した技術が凄まじい。しかし――それはノアも同じだ。
「俺だって伊達に大罪人をやってるわけじゃない! シェリア! お前を倒して、クリスもルナも解放してもらうぞ!」
「意気込んでいるけど、既にボロボロな状態で勝てるのかな?」
シェリアが言うことは正しい。
満足に休めておらず、傷は一つも癒えていない。だが、弱音は吐けない。
ステラも倒れ、ルナはシェリアの横で剣を構えている。誰かが救うのではなく、今この瞬間、ノア自身が戦って救わなければならない。
「可能性は低くてもやるしかない。俺は救うためにここにいるんだ!」
ルナがシェリアと共に襲い掛かってくる。
初撃はルナが縦に鋭い一撃を振り下ろすが、その攻撃を身体を逸らすことで躱す。続けてシェリアが斬撃を横に放ってくるが、剣に左手を添えて態勢を崩さずに防ぐことができた。
「よく避けるけど、次はどうかな?」
シェリアは刀身を右手でなぞると、黒い靄が光り輝く。
その光はさながらマグナ達が使っていた聖なる光のようで、黒と光の相反する色が神々しくも思える。
「やっぱり道具なのにいい動きね。そのまま合わせなさい」
「――――」
ルナが何を言っているのか分からないが、命令に従う他ないという感じだろうか。
シェリアは剣を眩く光らせ、連続で剣を振るって斬撃を飛ばしてきた。
「飛ぶ斬撃!? どういうことだ!」
ノアは見たことがない攻撃に驚きを隠せないが、受けたら危険だと思い炎壁を出現させて防ぐことにした。
「これでどうだ!」
「そんなちゃちな魔法で防げるわけないわ!」
シェリアの言葉通り炎壁を突き抜けて斬撃がノアに迫る。
身の丈程ある光輝く斬撃を防ぐために構えた剣に触れた瞬間、巨大な鉄球が衝突したかのような錯覚に陥ってしまう。
「お、重い!? な、なんだこれは!?」
「秘密なんて言うわけないでしょ! そのまま斬撃に切り刻まれろ!」
後方に押されてしまう。
地面にめり込むほどに踏ん張っているのにもかかわらず、押され続ける。
どういう原理かは分からないが、聖属性という不可思議な属性が強化していると見て間違いない。
「このままじゃサレア村に入っちまう! この斬撃を消すにはこれしかない!」
ノアは炎剣を激しく燃え上がらせると業炎一閃を放ち、辛くも斬撃を消すことに成功した。
「その技って必殺技らしいわね。でも、それ一つでどれくらい持つのかしらね」
戦場でしか使っていないから、騎士が記録でもつけていたのだろうか。
技を知られているとしたらかなり分が悪い。シェリアにどう打ち勝てばいいのか、ノアには答えが分からないでいた。
「終わらせましょう。これ以上戦っていても時間の無駄よ」
「俺にとっては無駄じゃない! お前を倒す時間だ!」
「あなたは私を倒せない。理由を教えてあげようか? あなたが私より弱いからよ」
その言葉と共に斬撃を二つ飛ばしてくる。
ノアは先ほどと同じように業炎一閃で消すが、斬撃の背後からシェリアが突っ込んで来る姿が目に入った時には既に左肩が剣で貫かれていた。
「このまま死んで! 私達の未来のために!」
勢いよく左肩から剣を引き抜いたシェリアによって、斜めに身体を斬られてしまった。
「そのまま私達の幸せの糧になって」
その言葉も耳に入らず、言葉を発することなくノアは地面に力なく倒れてしまった。
「やっぱり弱い。あとはステラを殺して終わりね。これでクリスとの幸せな生活が送れるわ」
勝手な事ばかりを言うシェリアの声は既にノアには届かない。
大量の血が地面に溢れ、今にも失血死をしてしまいそうだ。またしても勝てない。今までの大罪人として勝ってきたことは何だったのか。井の中の蛙とでもいうべきだろうか。
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