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第3章
第23話 ステラの気持ち
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「それで、ノア君はどうしたい?」
「どうって、どういうこと?」
「ルナちゃんをどうやって取り戻すか考えているんでしょう?」
そうだ。うだうだと考える前に動かないと。
都市サレアに乗り込んで奪還をしたいが、そう簡単にはいかない。ステラに相談をし、これからのことを決めた方がいいと決めた。
「なあ、ステラ。都市サレアに乗り込みたいけど、簡単に殺される可能性が高いよな」
「そうね。あそこにはまだ民間人もいるから、盾にされるかもしれないわ。現にリルさんが民間人を守るために身体を張って重傷を負っちゃったの」
「あのリルさんが!? だ、大丈夫なの!?」
あれほど強いのでに重傷なんてありえない。
曲がりなりにもステラを護衛する騎士だ。民間人を守ったからだろうか。卑怯な手を使われなければ重傷を負うことはないはずだ。
「今はノア君のいるこことは別の場所治療を受けているわ。予断を許さない状態だけど、きっと助かるはずよ」
「そ、そうか……」
ベットに座って蹲るノア。
ルナを奪われ、リルもいない。二人しかいないこの状況でマグナ達に勝てるのだろうか。絶対に無理だ。敵わない敵を目の前にして重い現実のみが襲いかかってくる。
辛い現実に押しつぶされそうになっていると、どこからか聞き覚えのある声で「お母さん!」と叫ぶ声が耳に入ってくる。その声はこの重苦しい空気を吹き飛ばすには十分で、イラつきを覚えてしまうほどだ。
「お母さん! あったよー! ご飯があったよー!」
パンを両手に抱えて、メアがノア達のもとに走っていた。
クリスに気絶させられていたようだが、後遺症もなく元気なようだ。安心するが、喜べない。いくら洗脳されていたとはいえ、大切なルナを傷つけていたメアを簡単には許せない。
「メア! 転んじゃうから走っちゃダメ!」
「ステラちゃん小言ばかり! 小皺が増えちゃうよ!」
「なっ!? まだそんなの出ません! 油断してたらメアだってすぐに皺が出るんだからね!」
さながら姉妹喧嘩のようである。
重い雰囲気を壊してくれたのは嬉しいが、それでも状況が好転しているわけではない。二人の漫才を微笑しながら見ていると、突然メアが目の前に歩いてきて口に勢いよくパンを入れられてしまった。
「ふぁにすんの!」
「お腹空いていると思って、配給でもらった焼きそパンだよ! 絶品だよー!」
「ふぉいしいふぇどさ! ふぃきなりふぁ、やめてよ!」
何度も噛んで焼きそばパンを胃に強引に流し込んだ。
確かにメアが言う通り美味しい。だが、もっと普通に食べたいとノアは落胆してしまう。
「さ、お母さんとステラちゃんも食べて! 人を搔き分けてゲットできたんだから、美味しく食べてね!」
「ありがとうねメア。ゆっくり食べるわね」
「ま、焼きそばパンに免じて許してあげるわ。いただきます」
アリベルとステラが食べ始めたが、こんなことをしている場合ではない。
一刻も早くルナを救い出したいが、そんなことを言える雰囲気ではなくなっている。イライラとした表情を出し続けていると、それに気が付いたステラが「どうしたの?」と不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「こうしている間にもルナがどうなっているのか心配でさ。早く助けに行きたくて」
「そうね。私もそうだけど、何も考えずに行けばそれこそ無駄になちゃうわよ。ルナちゃんが戦ってくれた意味を無駄にしないで」
ステラの言う通りだ。
命を懸けて戦ってくれた想いを無駄にしてはならない。傷が癒えずに満足に戦えない身体じゃ無意味な死になってしまう。
「分かったよ。今は身体を癒すことに専念する」
「うん! そうして!」
途端に笑顔になるステラ。
それほどに身体を癒すというノアの言葉が嬉しかったのかもしれない。まだ会ってからそれほど時間は経過していないが、傷だらけでいる時の方が多いはずだ。
ノアは自身の印象がすぐ怪我をする人になっていないか心配になるが、余計なことは考えずに今は傷を癒すことに決めた。
「今はゆっくり休んで。次の戦いで全てが決まると思うわ。サレア村を守って、都市サレアを取り戻しましょう」
「そうだな。ルナを取り戻して、この戦いを終わらせよう」
ステラの言う通り、終わらせなければ。
しかし、近衛騎士副団長マグナをどうやって倒せるのだろうか。あの圧倒的な力を前に付け入る隙が未だに分からない。
ノアはベットに座りながらどう戦うか考えていると、警報に似た音が突然村中に響き渡ったのである。
「どうって、どういうこと?」
「ルナちゃんをどうやって取り戻すか考えているんでしょう?」
そうだ。うだうだと考える前に動かないと。
都市サレアに乗り込んで奪還をしたいが、そう簡単にはいかない。ステラに相談をし、これからのことを決めた方がいいと決めた。
「なあ、ステラ。都市サレアに乗り込みたいけど、簡単に殺される可能性が高いよな」
「そうね。あそこにはまだ民間人もいるから、盾にされるかもしれないわ。現にリルさんが民間人を守るために身体を張って重傷を負っちゃったの」
「あのリルさんが!? だ、大丈夫なの!?」
あれほど強いのでに重傷なんてありえない。
曲がりなりにもステラを護衛する騎士だ。民間人を守ったからだろうか。卑怯な手を使われなければ重傷を負うことはないはずだ。
「今はノア君のいるこことは別の場所治療を受けているわ。予断を許さない状態だけど、きっと助かるはずよ」
「そ、そうか……」
ベットに座って蹲るノア。
ルナを奪われ、リルもいない。二人しかいないこの状況でマグナ達に勝てるのだろうか。絶対に無理だ。敵わない敵を目の前にして重い現実のみが襲いかかってくる。
辛い現実に押しつぶされそうになっていると、どこからか聞き覚えのある声で「お母さん!」と叫ぶ声が耳に入ってくる。その声はこの重苦しい空気を吹き飛ばすには十分で、イラつきを覚えてしまうほどだ。
「お母さん! あったよー! ご飯があったよー!」
パンを両手に抱えて、メアがノア達のもとに走っていた。
クリスに気絶させられていたようだが、後遺症もなく元気なようだ。安心するが、喜べない。いくら洗脳されていたとはいえ、大切なルナを傷つけていたメアを簡単には許せない。
「メア! 転んじゃうから走っちゃダメ!」
「ステラちゃん小言ばかり! 小皺が増えちゃうよ!」
「なっ!? まだそんなの出ません! 油断してたらメアだってすぐに皺が出るんだからね!」
さながら姉妹喧嘩のようである。
重い雰囲気を壊してくれたのは嬉しいが、それでも状況が好転しているわけではない。二人の漫才を微笑しながら見ていると、突然メアが目の前に歩いてきて口に勢いよくパンを入れられてしまった。
「ふぁにすんの!」
「お腹空いていると思って、配給でもらった焼きそパンだよ! 絶品だよー!」
「ふぉいしいふぇどさ! ふぃきなりふぁ、やめてよ!」
何度も噛んで焼きそばパンを胃に強引に流し込んだ。
確かにメアが言う通り美味しい。だが、もっと普通に食べたいとノアは落胆してしまう。
「さ、お母さんとステラちゃんも食べて! 人を搔き分けてゲットできたんだから、美味しく食べてね!」
「ありがとうねメア。ゆっくり食べるわね」
「ま、焼きそばパンに免じて許してあげるわ。いただきます」
アリベルとステラが食べ始めたが、こんなことをしている場合ではない。
一刻も早くルナを救い出したいが、そんなことを言える雰囲気ではなくなっている。イライラとした表情を出し続けていると、それに気が付いたステラが「どうしたの?」と不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「こうしている間にもルナがどうなっているのか心配でさ。早く助けに行きたくて」
「そうね。私もそうだけど、何も考えずに行けばそれこそ無駄になちゃうわよ。ルナちゃんが戦ってくれた意味を無駄にしないで」
ステラの言う通りだ。
命を懸けて戦ってくれた想いを無駄にしてはならない。傷が癒えずに満足に戦えない身体じゃ無意味な死になってしまう。
「分かったよ。今は身体を癒すことに専念する」
「うん! そうして!」
途端に笑顔になるステラ。
それほどに身体を癒すというノアの言葉が嬉しかったのかもしれない。まだ会ってからそれほど時間は経過していないが、傷だらけでいる時の方が多いはずだ。
ノアは自身の印象がすぐ怪我をする人になっていないか心配になるが、余計なことは考えずに今は傷を癒すことに決めた。
「今はゆっくり休んで。次の戦いで全てが決まると思うわ。サレア村を守って、都市サレアを取り戻しましょう」
「そうだな。ルナを取り戻して、この戦いを終わらせよう」
ステラの言う通り、終わらせなければ。
しかし、近衛騎士副団長マグナをどうやって倒せるのだろうか。あの圧倒的な力を前に付け入る隙が未だに分からない。
ノアはベットに座りながらどう戦うか考えていると、警報に似た音が突然村中に響き渡ったのである。
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