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第2章
第15話 近衛騎士副団長
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「逃げるぞ! リルさんはステラを、クリスはメアを頼むぞ!」
「ノア君はどうするの!?」
「俺の一緒に行く! こんな場所で死ぬつもりはないからな!」
目の前にルナがいるのに逃げるのは癪だが、今はそうするしかない。
こんな場所で死ぬのは最悪だ。ルナと会う前に朽ち果てるわけにはいかない。
「でもどうするの!? どこに逃げるの!?」
ステラが慌てるのも無理はない。
都市サレアに入った場所にはマグナが剣を持ってい立っているからだ。近寄れば斬り殺される恐れがるので、迂闊には近づけない。
「私と一緒に来てください! 使いたくはない手ですが、これしかありません!」
「何か手があるのね! 今はあなたを信じるしかないわ!」
この状況下ではクリスに頼るしかない。
未だにクリスを信じていないノアには不安があるが、リルもいるので託すしかない。今は目の前にいるマグナを抑え、自身も逃げる算段を整えるしかない。
「待ってるから! ちゃんとすぐに来て!」
「ああ。すぐに行くよ!」
前を見ながら返事をした。
背後からはステラ達が走る足音が聞こえてくる。どうやらクリスに先導されながら逃げたようだが、ノアはどこに行くのか知らない。
再度会えるか分からないが、今はマグナを抑えることに集中することに決めた。
「逃げたか。だがすぐに追い詰めて殺す」
凄まじい威圧感を放っている。
戦わずに心が折れそうになるが、ステラの騎士としてそうはいかない。時間を稼いで無事に逃げ切れるようにしなければならない。
「そんなことはさせない! 俺が相手になる!」
「大罪人風情が調子に乗るな。お前のような脆弱な犯罪者如き相手にもならん」
悔しいがマグナの言う通りだ。
今まで戦ってきたどの相手よりも強いと確信が持てる。一瞬でも気を抜けば即座に死ぬ。そう直感的にノアは感じていた。
「誰も勝つとは言ってないだろ? 俺はお前を足止めできればいいんだ」
「そんなことをさせるわけない。どこに行ったのか言え!」
「教えるわけないだろう! 今頃逃げ切って態勢を整えているだろうさ!」
ノアはどこに逃げたのか知らないが、機転を利かせて嘘を言った。
少しでも動揺をさせて時間を稼ぐつもりだが、そんな戦法が通じる相手でははないことは百も承知だ。それでもステラの騎士としてやるべきことをやり通すまで。
「大罪人に時間を使うのが惜しい。すぐに終わらせてもらう」
その言葉通り周囲の空気が張り詰める。
肌がピリピリとし、地面の小石が震えているのが見えた。魔力か闘気かは理解できないが、マグナから発せられていることだけは分かる。
恐怖。ただならぬ恐怖をノアは感じていた。マグナの背後に見たことがないが死神が浮かび、鎌を首筋に添えられている感覚に陥ってしまっている。
「怯えるな……恐怖に飲まれるな……俺は――ステラの騎士だ!」
歯を食いしばり、恐怖をかき分けてマグナに斬りかかる。
脚が重く、恐怖から呼吸が激しくなる。心臓の鼓動が速いためか身体が思うように動かない。
「そんなに軽い攻撃で何がしたい? 大罪人は剣もまともに扱えないのか?」
「黙れ!」
今まで通りに剣を振るえない。
これが恐怖なのかと実感していると、マグナの後方からヴェルニが「早く殺せ!」と叫ぶ声が耳に入ってきた。
「マグナ様! 早く裏切りの王女、ステラを抹殺してください! でないと……でないと私が殺されてしまいます!」
声を上げたヴェルニを見ると顔を両手で覆い、必死な形相でマグナに訴えている。
「国王陛下から第三王女であるステラ・オーレリアを殺せば私が殺されずに済むのです! だから、私を救うと思って早く!」
ヴェルニは何を言っているのだろうか。
自分が助かるためにステラを犠牲にすると言っている。どれほど傲慢で自己中心的なのだろうか。
「私はお前を助けるために来たわけではない。裏切りの王女を殺すついでにお前を支援しただけだ。国王陛下の足を引っ張るお前に価値はない――消えろ」
「えっ?」
言葉と共にヴェルニの頭部が地面に転がり落ちた。
その速度はノアにも見えないほどに速い。しかもマグナから離れている場所にいたヴェルにの首を落としている。斬撃を飛ばしたか、何か魔法を使ったのだろうか。
理解ができないことの一連の出来事に焦りを感じてしまう。
「煩わしい負け組が私の時間を奪うな。さて、お前も殺して裏切りの王女を殺すとしようか」
「させない……確かに今の俺じゃすぐに殺されるかもしれない……だけど、だけど俺は逃げない!」
「お前の意志など関係ない、散れ!」
言葉と共に白色の炎がマグニの剣から放たれた。
知らない魔法に虚を突かれるが、すかさず炎壁を出現させて防ぐことができた。
「何だこの魔法は!? 聞いたことがない……」
「大罪人が知らなくていいことだ。ただの肉塊になれ!」
一気に距離を詰めて来たマグナの攻撃を受け止めると、踏ん張っていた両足を起点に地面にヒビが入った。
巨大な鉄で勢いよく叩かれたかのような重さだ。しかも自身の剣が左肩に食い込み血が地面に滴り落ちている。
「よく防いだと言いたいが、既に瀕死だな」
「まだ戦いは始まったばかりだ!」
これくらいで負けたとは言えない。
既に遠くにステラ達は逃げていると思うが、それでもまだ逃げられない。もう少しここで食い止めていなければ、後々後悔するはずだ。
「諦めが悪いんでね、もう少し付き合ってもらうぞ!」
「その必要はない。これで終わりにする」
剣に白色の炎を纏わせたマグナは、連続で剣を力任せに振るってきた。
連続なので先ほどよりも攻撃は軽いが、重いことには変わりがない。ヘリスから受け取った剣が悲鳴を上げているかのように、鈍い音を響かせている。
「これでも折れないか。一級品の剣に助けられているな」
「これは大切な人から受け取った剣だ! お前の攻撃で砕けるわけがない!」
「大罪人に受け継がせるとは、相当な変わり者だな」
ヘリスを馬鹿にされたことでノアの集中力が切れてしまう。
その隙を見逃さなかったマグナは大きく振りかぶり、左斜めにノアの身体を切り裂いたのだった。
「弱いな。これぐらいで動揺をするとは」
「ぐぅううああああ!」
夥しい量の血が地面に滴り落ちる。
切り裂かれた傷を見たノアには”死„という言葉が脳裏に浮かんでいた。
「ノア君はどうするの!?」
「俺の一緒に行く! こんな場所で死ぬつもりはないからな!」
目の前にルナがいるのに逃げるのは癪だが、今はそうするしかない。
こんな場所で死ぬのは最悪だ。ルナと会う前に朽ち果てるわけにはいかない。
「でもどうするの!? どこに逃げるの!?」
ステラが慌てるのも無理はない。
都市サレアに入った場所にはマグナが剣を持ってい立っているからだ。近寄れば斬り殺される恐れがるので、迂闊には近づけない。
「私と一緒に来てください! 使いたくはない手ですが、これしかありません!」
「何か手があるのね! 今はあなたを信じるしかないわ!」
この状況下ではクリスに頼るしかない。
未だにクリスを信じていないノアには不安があるが、リルもいるので託すしかない。今は目の前にいるマグナを抑え、自身も逃げる算段を整えるしかない。
「待ってるから! ちゃんとすぐに来て!」
「ああ。すぐに行くよ!」
前を見ながら返事をした。
背後からはステラ達が走る足音が聞こえてくる。どうやらクリスに先導されながら逃げたようだが、ノアはどこに行くのか知らない。
再度会えるか分からないが、今はマグナを抑えることに集中することに決めた。
「逃げたか。だがすぐに追い詰めて殺す」
凄まじい威圧感を放っている。
戦わずに心が折れそうになるが、ステラの騎士としてそうはいかない。時間を稼いで無事に逃げ切れるようにしなければならない。
「そんなことはさせない! 俺が相手になる!」
「大罪人風情が調子に乗るな。お前のような脆弱な犯罪者如き相手にもならん」
悔しいがマグナの言う通りだ。
今まで戦ってきたどの相手よりも強いと確信が持てる。一瞬でも気を抜けば即座に死ぬ。そう直感的にノアは感じていた。
「誰も勝つとは言ってないだろ? 俺はお前を足止めできればいいんだ」
「そんなことをさせるわけない。どこに行ったのか言え!」
「教えるわけないだろう! 今頃逃げ切って態勢を整えているだろうさ!」
ノアはどこに逃げたのか知らないが、機転を利かせて嘘を言った。
少しでも動揺をさせて時間を稼ぐつもりだが、そんな戦法が通じる相手でははないことは百も承知だ。それでもステラの騎士としてやるべきことをやり通すまで。
「大罪人に時間を使うのが惜しい。すぐに終わらせてもらう」
その言葉通り周囲の空気が張り詰める。
肌がピリピリとし、地面の小石が震えているのが見えた。魔力か闘気かは理解できないが、マグナから発せられていることだけは分かる。
恐怖。ただならぬ恐怖をノアは感じていた。マグナの背後に見たことがないが死神が浮かび、鎌を首筋に添えられている感覚に陥ってしまっている。
「怯えるな……恐怖に飲まれるな……俺は――ステラの騎士だ!」
歯を食いしばり、恐怖をかき分けてマグナに斬りかかる。
脚が重く、恐怖から呼吸が激しくなる。心臓の鼓動が速いためか身体が思うように動かない。
「そんなに軽い攻撃で何がしたい? 大罪人は剣もまともに扱えないのか?」
「黙れ!」
今まで通りに剣を振るえない。
これが恐怖なのかと実感していると、マグナの後方からヴェルニが「早く殺せ!」と叫ぶ声が耳に入ってきた。
「マグナ様! 早く裏切りの王女、ステラを抹殺してください! でないと……でないと私が殺されてしまいます!」
声を上げたヴェルニを見ると顔を両手で覆い、必死な形相でマグナに訴えている。
「国王陛下から第三王女であるステラ・オーレリアを殺せば私が殺されずに済むのです! だから、私を救うと思って早く!」
ヴェルニは何を言っているのだろうか。
自分が助かるためにステラを犠牲にすると言っている。どれほど傲慢で自己中心的なのだろうか。
「私はお前を助けるために来たわけではない。裏切りの王女を殺すついでにお前を支援しただけだ。国王陛下の足を引っ張るお前に価値はない――消えろ」
「えっ?」
言葉と共にヴェルニの頭部が地面に転がり落ちた。
その速度はノアにも見えないほどに速い。しかもマグナから離れている場所にいたヴェルにの首を落としている。斬撃を飛ばしたか、何か魔法を使ったのだろうか。
理解ができないことの一連の出来事に焦りを感じてしまう。
「煩わしい負け組が私の時間を奪うな。さて、お前も殺して裏切りの王女を殺すとしようか」
「させない……確かに今の俺じゃすぐに殺されるかもしれない……だけど、だけど俺は逃げない!」
「お前の意志など関係ない、散れ!」
言葉と共に白色の炎がマグニの剣から放たれた。
知らない魔法に虚を突かれるが、すかさず炎壁を出現させて防ぐことができた。
「何だこの魔法は!? 聞いたことがない……」
「大罪人が知らなくていいことだ。ただの肉塊になれ!」
一気に距離を詰めて来たマグナの攻撃を受け止めると、踏ん張っていた両足を起点に地面にヒビが入った。
巨大な鉄で勢いよく叩かれたかのような重さだ。しかも自身の剣が左肩に食い込み血が地面に滴り落ちている。
「よく防いだと言いたいが、既に瀕死だな」
「まだ戦いは始まったばかりだ!」
これくらいで負けたとは言えない。
既に遠くにステラ達は逃げていると思うが、それでもまだ逃げられない。もう少しここで食い止めていなければ、後々後悔するはずだ。
「諦めが悪いんでね、もう少し付き合ってもらうぞ!」
「その必要はない。これで終わりにする」
剣に白色の炎を纏わせたマグナは、連続で剣を力任せに振るってきた。
連続なので先ほどよりも攻撃は軽いが、重いことには変わりがない。ヘリスから受け取った剣が悲鳴を上げているかのように、鈍い音を響かせている。
「これでも折れないか。一級品の剣に助けられているな」
「これは大切な人から受け取った剣だ! お前の攻撃で砕けるわけがない!」
「大罪人に受け継がせるとは、相当な変わり者だな」
ヘリスを馬鹿にされたことでノアの集中力が切れてしまう。
その隙を見逃さなかったマグナは大きく振りかぶり、左斜めにノアの身体を切り裂いたのだった。
「弱いな。これぐらいで動揺をするとは」
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