13 / 39
第2章
第13話 反逆の王国騎士
しおりを挟む
「みんな入ったかな? じゃ、紹介するね。こちらが都市サレアに駐留している王国騎士の一人、クリス・フォールン卿よ」
メアが紹介してきた人は、まさかの王国騎士で貴族だ。
そんな人が協力をするとは思えない。もしかしたらヴェルニの差し金かもしれないと思ったノアは、剣を引き抜いてクリスに切先を向けた。
「な、何をするの!? クリスさんに剣を向けないで!」
「本当に協力者なのか? ヴェルニの差し金じゃないか?」
切先を向けながらジリジリと距離を詰める。
未だにフードを被っているので顔は見えないが、どこか余裕ある雰囲気を醸し出しているが、油断を誘う気だろう。ノアは目に力を入れていつでも斬り殺せる態勢を取り続けている。
「そう思うのも無理はない。だが、今は信じてくれとしか言えないかな」
鼻先数センチまでに迫っている剣に怯えることなく、クリスは優しく包み込むかのような声で「僕は味方です」と話かけてくる。
「堕落しきっている王国騎士の言葉など信じられるか!」
「ま、待って! クリスさんもこの国を変えたいの! そのために王国騎士でありながらヴェルニを倒すために協力してくれるんだよ!」
メアの言葉にステラとリルが同調し、一度話を聞きましょうと言ってきた。
一人で先走り過ぎたかと思ったノアだが、王国騎士のこれまでの行いを思い出すと信じられないのも無理はない。
「剣を下ろして。話を聞きましょう」
「ステラが言うのなら下げるよ」
騎士であるからにはステラには逆らえない。
鞘に剣を入れ、数歩後ろにノアは下がることにした。
「さ、これで話せるわね。クリスさんはどうして私達に協力をしてくれるの?」
ステラが話かけると、クリスがフードを取って素顔を晒した。
耳の長さまである金色の髪と、切れ長の目が印象的な美男子だ。泥臭いノアとは違い、高尚な貴族のオーラを放っている。
「これで少しは信用してくれるかな? ステラ様、お初にお目にかかります。クリス・フォールンと申します」
ステラに前で跪いて挨拶をしている。
その姿を見たリルが静かに口を開き、話しかけようとしていた。
「やはり私の知っているクリス・フォールンね。でもあれほどヴェルニやこの国の体制を心酔していたのに、どういう心変わりなの?」
「さすがはリルさんですね。手痛いお言葉だ。確かに僕は国王陛下の方針が正しいと思っていましたが、都市サレアの惨状を見て間違っていると思ったのです」
確かにクリスが言う通り、ヴェルニがいる場所以外はスラム街といっても過言ではない状況だ。痩せ細り、今にも死にそうな住民がいる。
既に亡くなっている子供もいるだろう。その現状を見て考えを変えたということだが、すぐには信じられない。
「ヴェルニはここで何をしたの? 聞いた話しか知らなくて」
「外には情報が出ないようにしているからね。僕が知っている情報はメアちゃんと同じのが多いね」
「多いってことは違うのもあるの?」
「はい。今日に限り、ヴェルニが国王に呼ばれて首都にいるので建物の警備が手薄になっているのです」
まさかヴェルニがいないとは思てもいなかった。
ここにいないのなら、危険を冒して侵入する必要はないのではないだろうか。
「いないのなら侵入することなくないか?」
「それは違いますよ。ヴェルニがいないといことは、メアちゃんのお母さんや洗脳されているルナちゃんを助けれれるということですよ」
そうだ。
ヴェルニがいないからメアの母親やルナを助けれる。すぐにその答えに辿り着かなければならないのに浮かばなかった。
自身の思慮の浅さを恥じていると、ステラが「チャンスじゃない!」と声を上げたのである。
「ステラちゃん声が大きいよ!」
「あっ! ごめんなさい!」
両手を口に当てて覆っている。
確かにステラが言う通りチャンスだ。ヴェルニがいなければ警備も薄くなるだろう。その隙に侵入して救い出すのが最善だが、分からないことが一つある。
「メアの母親はどこにいるんだ?」
「そうよ! メアのお母さんの居場所は知っているの?」
「そこが重要でしたね。もちろん知っています。ヴェルニが住む建物内の地下五階に監禁されているようです」
まさかの地下だった。
しかしなぜ監禁をするのだろうか。何か意味があるとは思えないが。
「さて、私が知っているのはこれくらいです。これからどうしますか?」
クリスはノア達にこれからの行動を委ねて壁に寄りかかっている。
「そうね。まだ日も出ているし暗くなるまで待機しましょうか」
「待機って結構時間あるけど、何をすればいいの?」
待機とメアは言うが、何もしないまま時間が過ぎるのを待つのは苦痛だ。
ノアは何かしらすることがあればとメアに話しかけることにしたが、返ってきたのは衝撃的な言葉だった。
「あまり離れなければ、この辺りを見てもいいよ」
「王国騎士とかにいるのがバレない?」
「この辺りにはいないから平気だよ。それに、王国騎士がいるのはヴェルニが住んでいる建物周辺だけだから」
まさかの返答だった。
確かに都市サレアに入った時に誰もいないのがおかしいし、住人に見られていたはずなのに通報すらされていない。それがこの周辺に王国騎士がいない証明だったのかとノアは思うことにした。
「そうなのか。なら、この辺りを見てくるよ。村以外は初めてだからさ」
そう言いながら外に出ようとした瞬間、ステラが一緒に行くと言い出した。
「私もノア君と一緒に行くね。リルさんはクリス君と積もる話でもしててね!」
「そ、そんな姫様ぁ! 私も!」
「ダメだよー。じゃ、行ってきまーす」
ステラに引っ張られる形でノアは外に行くことになった。
気ままに見たかったと心の中で呟くが、楽しそうに踊る背中を見て二人で見るのも悪くないかと考え直すノアであった。
メアが紹介してきた人は、まさかの王国騎士で貴族だ。
そんな人が協力をするとは思えない。もしかしたらヴェルニの差し金かもしれないと思ったノアは、剣を引き抜いてクリスに切先を向けた。
「な、何をするの!? クリスさんに剣を向けないで!」
「本当に協力者なのか? ヴェルニの差し金じゃないか?」
切先を向けながらジリジリと距離を詰める。
未だにフードを被っているので顔は見えないが、どこか余裕ある雰囲気を醸し出しているが、油断を誘う気だろう。ノアは目に力を入れていつでも斬り殺せる態勢を取り続けている。
「そう思うのも無理はない。だが、今は信じてくれとしか言えないかな」
鼻先数センチまでに迫っている剣に怯えることなく、クリスは優しく包み込むかのような声で「僕は味方です」と話かけてくる。
「堕落しきっている王国騎士の言葉など信じられるか!」
「ま、待って! クリスさんもこの国を変えたいの! そのために王国騎士でありながらヴェルニを倒すために協力してくれるんだよ!」
メアの言葉にステラとリルが同調し、一度話を聞きましょうと言ってきた。
一人で先走り過ぎたかと思ったノアだが、王国騎士のこれまでの行いを思い出すと信じられないのも無理はない。
「剣を下ろして。話を聞きましょう」
「ステラが言うのなら下げるよ」
騎士であるからにはステラには逆らえない。
鞘に剣を入れ、数歩後ろにノアは下がることにした。
「さ、これで話せるわね。クリスさんはどうして私達に協力をしてくれるの?」
ステラが話かけると、クリスがフードを取って素顔を晒した。
耳の長さまである金色の髪と、切れ長の目が印象的な美男子だ。泥臭いノアとは違い、高尚な貴族のオーラを放っている。
「これで少しは信用してくれるかな? ステラ様、お初にお目にかかります。クリス・フォールンと申します」
ステラに前で跪いて挨拶をしている。
その姿を見たリルが静かに口を開き、話しかけようとしていた。
「やはり私の知っているクリス・フォールンね。でもあれほどヴェルニやこの国の体制を心酔していたのに、どういう心変わりなの?」
「さすがはリルさんですね。手痛いお言葉だ。確かに僕は国王陛下の方針が正しいと思っていましたが、都市サレアの惨状を見て間違っていると思ったのです」
確かにクリスが言う通り、ヴェルニがいる場所以外はスラム街といっても過言ではない状況だ。痩せ細り、今にも死にそうな住民がいる。
既に亡くなっている子供もいるだろう。その現状を見て考えを変えたということだが、すぐには信じられない。
「ヴェルニはここで何をしたの? 聞いた話しか知らなくて」
「外には情報が出ないようにしているからね。僕が知っている情報はメアちゃんと同じのが多いね」
「多いってことは違うのもあるの?」
「はい。今日に限り、ヴェルニが国王に呼ばれて首都にいるので建物の警備が手薄になっているのです」
まさかヴェルニがいないとは思てもいなかった。
ここにいないのなら、危険を冒して侵入する必要はないのではないだろうか。
「いないのなら侵入することなくないか?」
「それは違いますよ。ヴェルニがいないといことは、メアちゃんのお母さんや洗脳されているルナちゃんを助けれれるということですよ」
そうだ。
ヴェルニがいないからメアの母親やルナを助けれる。すぐにその答えに辿り着かなければならないのに浮かばなかった。
自身の思慮の浅さを恥じていると、ステラが「チャンスじゃない!」と声を上げたのである。
「ステラちゃん声が大きいよ!」
「あっ! ごめんなさい!」
両手を口に当てて覆っている。
確かにステラが言う通りチャンスだ。ヴェルニがいなければ警備も薄くなるだろう。その隙に侵入して救い出すのが最善だが、分からないことが一つある。
「メアの母親はどこにいるんだ?」
「そうよ! メアのお母さんの居場所は知っているの?」
「そこが重要でしたね。もちろん知っています。ヴェルニが住む建物内の地下五階に監禁されているようです」
まさかの地下だった。
しかしなぜ監禁をするのだろうか。何か意味があるとは思えないが。
「さて、私が知っているのはこれくらいです。これからどうしますか?」
クリスはノア達にこれからの行動を委ねて壁に寄りかかっている。
「そうね。まだ日も出ているし暗くなるまで待機しましょうか」
「待機って結構時間あるけど、何をすればいいの?」
待機とメアは言うが、何もしないまま時間が過ぎるのを待つのは苦痛だ。
ノアは何かしらすることがあればとメアに話しかけることにしたが、返ってきたのは衝撃的な言葉だった。
「あまり離れなければ、この辺りを見てもいいよ」
「王国騎士とかにいるのがバレない?」
「この辺りにはいないから平気だよ。それに、王国騎士がいるのはヴェルニが住んでいる建物周辺だけだから」
まさかの返答だった。
確かに都市サレアに入った時に誰もいないのがおかしいし、住人に見られていたはずなのに通報すらされていない。それがこの周辺に王国騎士がいない証明だったのかとノアは思うことにした。
「そうなのか。なら、この辺りを見てくるよ。村以外は初めてだからさ」
そう言いながら外に出ようとした瞬間、ステラが一緒に行くと言い出した。
「私もノア君と一緒に行くね。リルさんはクリス君と積もる話でもしててね!」
「そ、そんな姫様ぁ! 私も!」
「ダメだよー。じゃ、行ってきまーす」
ステラに引っ張られる形でノアは外に行くことになった。
気ままに見たかったと心の中で呟くが、楽しそうに踊る背中を見て二人で見るのも悪くないかと考え直すノアであった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
悪役令嬢は高らかに笑う
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
婚約者に愛想を尽かされる為、これから私は悪役令嬢を演じます
『オーホッホッホッ!私はこの度、婚約者と彼に思いを寄せるヒロインの為に今から悪役令嬢を演じようと思います。どうかしら?この耳障りな笑い方・・・。きっと誰からも嫌われるでしょう?』
私には15歳の時に決まった素敵な婚約者がいる。必ずこの人と結婚して幸せになるのだと信じていた。彼には仲の良い素敵な幼馴染の女性がいたけれども、そんな事は私と彼に取っては何の関係も無いと思っていた。だけど、そんなある日の事。素敵な女性を目指す為、恋愛小説を読んでいた私は1冊の本に出合って気付いてしまった。何、これ・・・この小説の展開・・まるで今の自分の立ち位置にそっくりなんですけど?!私は2人に取って単なる邪魔者の存在なの?!だから私は決意した。小説通りに悪役令嬢を演じ、婚約者に嫌われて2人の恋を実らせてあげようと—。
※「カクヨム」にも掲載しています
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる