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本当のはじまり

24話 久しぶりの・・・

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朝番のシェフ、立花は、店まで徒歩30分の場所に住んでおり、毎朝歩いて出勤していた。
その日もいつもと同じ道を通り、いつもひっかかる信号が変わるのをぼーっと待っていた。
毎朝会う、犬の散歩の人と挨拶を交わし、青信号を見て歩き始めようとしたときに、突然
ドンッ
と、衝撃が体を襲った。
片手スマホで両耳イヤホンの学生が、自転車で飛び出して立花を跳ねたのだ。
突然の衝撃に驚くも、なんとか体を起こした立花に
「すいませんっ」と声をかけながらも、走り去ろうとしたその学生を、犬の散歩の人がつかまえて、警察を呼んでくれた。

自転車だとはいえ、跳ねられた立花は体に痛みを覚え、足もがくがくして立っているのが辛いほどとなり、救急車に乗せられ、近くの病院に運ばれた。
幸い骨折などはなく、西洋医学的所見では打撲もないとされた。

意識もはっきりしていた立花は、警察と救急車がやって来るまでの間に、タモツにヘルプの連絡をし、店長にも電話をかけた。

病院でしばし休んだのち、タクシーに乗って店に行ったが、すぐに追い返されて落ち着くまで休むように言われ、ありがたく休むことにした。

そんなわけで、カフェは突然人手不足となった。
日曜日の朝のことだった。

「立花さん、大丈夫でしょうかねぇ」
「自転車にはねられるって、ちょっと笑える」
「いや、笑えないよ。けっこう大変だよ。細胞全部動くよ」
「相手は中学生だって?」
「なんでも、部活に行く途中だったとか」
「死ななかったからいいけど、下手すると、殺しちゃってたよね」
「人生終わりだよね。賠償金、すごいことになるでしょう」
そんな会話がカフェのスタッフルームでなされていた。

それよりも、シェフが一人抜けたことで、残りの二人、そしてスイーツ担当がフォローに当たることになる。
もともと誰かが休む時はフォローしていたのだが、長期となるとなかなか大変だ。
「しばらく、休み返上の長時間労働ですかね」
「仕方ないね」
「頑張るしかないかー」
「次の店休日までで、なんとか回復してもらえればいいのですがね」
ただでさえ、忙しいことが予想された期間、バイトスタッフのシフトも調整し直した。

毎日へとへとになって帰宅するが、メグミが家で待っていてくれると思うと頑張れた。

カフェの非常事態は雑貨屋には関係ない。メグミはいつも通り遅番の仕事をこなし、スーパーで買い物をしてタモツの家に帰ると、夕食を作る日々を過ごした。
一人で暮らしていた時は、夕食はごく簡単なもので済ませていたため、毎日ちゃんと食事を作ることがどれだけ大変か、身に染みて分かった。
料理が出来るとはいえ、レパートリーは少なく、毎日四苦八苦。
そして迎えた、メグミだけが休みの日の朝、相変わらず早出のタモツに合わせて起きて、玄関で見送る。
「タモツさん、今日はわたしは休みなので、料理も頑張りますけど、何か、食べたいものありますか?」
タモツは束の間考えた後
「そうだなぁ。手の込んだものより、家庭料理って言う感じのものが食べたいかな」
漠然としているが、タモツはメグミが作ってくれるなら何でも食べたいと思って、そう答えた。

タモツを送り出した後、洗濯をして掃除をしてから、自宅に帰り、自宅の掃除も済ませ祖母に電話をかけた。
「もしもし、おばあちゃん?」
「あら、メグミだね。声を聞くのは久しぶりだね。元気にしてるかい」
「うん。元気だよ」
「あ、電話代が高くなるから、こっちからかけてあげるよ」
そう言って祖母は電話を切って、かけ直してくれる。
「彼の写真、送ってくれてありがとうね。素敵な人だね。メグミも幸せそうで安心したよ」
祖母にメールで送った二人の写真は、家族全員が見たらしい。
母は喜び、姉は複雑そうで、弟は黙ってニヤニヤし、父は苦虫をかみつぶしたような顔をしていたとのこと。
想像出来るそれぞれの姿に、実際に会ったらどんな感じになるのかと思うメグミだった。

「それで、今日はどうしたの?」
優しく聞いてくれる祖母に、料理の相談をした。
大人の関係を持ったことや婚約したことは伏せて、近所に住んでいて仕事が大変だから、夕食を作ってあげたいけど、何を作ったらいいか悩んでいると伝えると
「今までに教えてあげた料理を、メグミが作ったことがあって、美味しく作れると思っているものを作ればいいよ。メグミだって仕事をしていて毎日大変だろうから、作り置き出来るお惣菜を作るのがいいだろうね。けっして背伸びをしないこと。派手な料理ではなく、今のメグミが作れるものが、望まれるものだとおばあちゃんは思うよ」
そしてアドバイスをくれる。
その後、少し他愛もない話をして電話を切った。

メールをチェックしてから、買い物をしてタモツの家に行き、料理にとりかかる。

祖母の勧めに従い、気負いのない慣れた料理をいくつか作るつもりで、手際よく調理を始めた。

立花からそろそろ仕事に戻れそうだと連絡があり、カフェスタッフ一同ホッとして、店休日までの数日、なんとか頑張れそうだと胸をなでおろした。
とはいえ、事故にあってから初めての出勤は、どれだけ体に負担がかかるか分からない。明日は様子見で、朝番より少し遅く、昼番より早い時間に出勤すると店長に伝えて、タモツはカフェを後にした。

今日は休みのメグミが、張り切って料理をしてくれているだろうからと期待をしながら自宅に戻ると、マンションの通路にはカレーの匂いが漂っていた。
いわゆる、おうちカレーの匂いだ。そういえば、カレーはまだ自分も作っていないし、カフェでもあまり出さないメニューだ。メグミが作るカレーはどんなだろう。
そう思いながら、玄関のドアを開けると、不思議と家の中はカレーではなく醤油の匂いが漂っている。

「おかえりなさい。タモツさん」
笑顔で迎えてくれるエプロン姿のメグミと、テーブルに所狭しと並べられた、和惣菜の数々。
「あれ?」
「あれ??」
「いや、外はカレーの匂いだったから、てっきりカレーだと思ったんだけど」
「へぇ?カレーは作っていませんし、カレー粉も使っていませんよ」
すっかりカレーモードだったタモツだが、まるで惣菜屋のように並べられた料理の数々を見ると、目を輝かせた。
「なんだかすごいね」
「ちょっと調子に乗りすぎたみたいです。でもこれ、今日全部食べるつもりじゃなくて、作り置きも含んでいるんです」
えへへと笑うメグミが今日も可愛らしい。
部屋着に着替えて手を洗い、テーブルにつくと、メグミがいそいそとご飯をよそい、スープを出してくれた。
根菜たっぷりのスープは、先日タモツが作った鯛めしの土鍋を使用して、かなりたくさん作ったようで、それは毎日少しずつ味を変えて出す、祖母のアイディア料理らしい。
「仕事で忙しい時は、よくこれを作っていたそうです。具だくさんのスープを飲んでいれば大丈夫。って言ってました」
お惣菜は、大根葉の炒め煮、高野豆腐の炊き合わせ、ヒジキの煮もの、いか大根、里芋のにっころがし、塩もみキャベツの浅漬けサラダと、ほぼ茶色いメニューだったが、家庭料理独特の優しい味わいで、タモツの疲れた体に染みわたるようだった。

「どれも美味しいよ。ありがとう」
「良かった。毎日ご飯を作るって、すごく大変だって実感しました。祖母や母の偉大さが分かったし、タモツさんもすごいなぁって、改めて思ったんです」
祖母も母も仕事をしながら、家事と育児をこなしていた。さぼりたくても毎日お腹は減るし、そうそうサボれるものじゃない。
「お店がお休みになるまであと数日、今日のお惣菜と、あとは何か魚を焼いたり、お肉を焼いたりしたものをプラスして、乗りきれないかなぁって思ってるので、全部食べちゃダメですよ」
「えっ。あ、そうだよね」
うっかり、ばくばくと全部食べそうな勢いだったけど、そう言われると、すこし遠慮しながら食べないとと箸のスピードを落とすタモツ。
メグミはそんなタモツを見て、一番好きなのはどれかしっかり覚えておこうと思っていた。

食事が終わり、残った料理を保存容器に移して冷蔵庫に仕舞い、二人で食器を洗って片付ける。
最後の皿を拭き終わると、タモツはメグミを抱き寄せ、キスをした。
「今日のデザートは、メグミがいい。まだ、終わらない?」
熱いまなざしで見つめられると、体に痺れが走る。
実は昨日、生理が終わったことを確認したのだけれど、毎日へとへとになりながら仕事をこなしているタモツに伝えられずにいた。睡眠時間が削られてしまうと、疲れがたまってしまうのではないかと心配したからだ。
「もう、大丈夫です。でも」
続きを聞かず、タモツは唇をふさぎ、舌を絡ませてくる。
ここ数日は、軽いキスしかしていなかった。その我慢はもう、しなくていい。そんな解放感にあふれるキス。
メグミの唇を、唇と舌で味わうように濃厚なキスをし、そのまま抱きかかえてベッドに連れて行くと、覆いかぶさり、顔中にキスを落とす。
その間も、手はメグミの体をまさぐっていく。
「はぁっぁ、タモツさん、シャワー・・・」
「そんなの、あとでいい」
メグミの服を脱がせると、首に、鎖骨にキスを落としていき、自らの服も脱ぐ。
体を重ねない、穏やかな日々も良かったが、すぐそばにいるのに触れることが出来ない状況は、仕事の疲れとストレスもあって、爆発寸前まで来ていた。

柔らかなメグミの体に唇と手をはわせ、じっくりと味わう。
秘部に指を入れると、そこはすでに蜜であふれ、決壊した。
「あぁぁんっ」
「メグミも、待ち焦がれていたんだね」
再び唇にキスをすると、メグミは応えるように舌を差し出して絡めてきた。
片手で乳房をもみ、乳首をつまみ、かるく引っ張る。
もう片方の手は、秘部をまさぐり蕾を刺激する。
メグミの息は荒く、熱をおびて、時折艶っぽい声を漏らす。

「あぁ、もぉダメ。お願い・・・」
いつもより早く、メグミがおねだりしてくる。
それに応えてタモツは手早くゴムを装着し、メグミの中へ一気に入っていく。
「あぁん」
根元まで一気に入れると、しばらく動きを止めて、強くメグミを抱きしめる。
メグミの足がタモツの体を抱き止め、膣口をぎゅっと締める。
「うぅっ」
まだだ。
締め付けに抗うように、ゆっくりと腰を動かし、メグミの中に刺激を与えていく。
「メグミ、キモチイイ?」
メグミはそっと目を開けて、とろんとした表情でタモツを見上げ、恥ずかしそうに頷く。
「ちゃんと言って。言わないと、止めるよ」
「いやぁ」
「じゃあ言って」
腰を動かしながら、首筋にキスを落とす。
「あぁん。キ、キモチイイ・・・」
メグミの片足を持ち上げて、さらに深いところに突き上げる。
「はぁっぁん」
メグミの膣口の締め付けがさらに強くなり、タモツは堪らず精を放出した。
どくどくと自分の中で波打つタモツを感じ、メグミは幸福感に包まれた。
そのまましばらく抱き合っていたが、名残惜しそうにタモツがメグミから離れる。
「あんっ」
残念そうに漏らされたメグミのため息に微笑み、その顔にキスの雨を降らせた後
「さすがに今日はここまで。お休み。メグミ」
優しく布団をかけて、髪をなでる。メグミはあっという間に眠りに落ちた。
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